ここがよかった!ここがスゴイ! 後藤真理恵の企業SNS活用事例ピックアップ

SNS上のユーザーの声/話題を速やかにとらえ、タイムリーな反応を!【新連載】

過去、もしくは直近で話題になったSNS投稿やSNS施策に関して、「なぜ話題になったか」「良かったポイントは」などをコムニコ後藤さんが解説。

企業・団体のSNS担当者のみなさん、日々のアカウント運用、大変おつかれさまです。お忙しい日々を送られるなか、良質で大量な情報インプットを続けることはできていますか?

SNS公式アカウントの投稿案を考えたり、(ほとんどの方は兼務だと思いますので)本業に追われたりしている間にも、SNS関連のニュースやトレンド、そして好事例はどんどん発生し、あっという間に流れ去ってしまいます。1人や数人でそれらすべてをキャッチアップし続けるのは至難の業といえるかもしれません。

当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこがすぐれているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、みなさんのSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しますので、よろしければどうぞお付き合いください。

さて、連載第1回で取り上げるのは、SNS上でのタイムリーな反応が大きな成果につながった事例です。

タイムリーな反応が引き出した「好意的なクチコミ」の連鎖
[ヤマト運輸]

まずご紹介するのは、ユーザーからの好意な的クチコミに適切な対応が行えた事例です。今年4月にあるユーザーが投稿したのは、車いす利用者をさりげなく助け仕事にすばやく戻る、ヤマト運輸のドライバーの姿。「優しい」というわずか3文字とともに投稿されたこの動画投稿は広く拡散され、ドライバー個人やヤマト運輸を称賛する返信や引用ツイートがTwitterにあふれました。

今回の善行に対する感想だけでなく、過去に自分がヤマト運輸やドライバーから受けた対応について書き込んだユーザーも多く、「良質なクチコミが話題化すると、他ユーザーからの好意的なクチコミを誘発する」らしいことがうかがえます。

反響のあまりの大きさに、ヤマト運輸自身がユーザー投稿や多くのクチコミに気付くまでさほど時間はかからなかったようです。そのまま静観していてもよかったわけですが、翌日(4月27日)になって同社は公式アカウントで引用ツイートを行い反応しました。

この対応により、以下のような波及効果が生まれたと考えられます。

企業からユーザーに感謝の想いを伝える機会となった

  • ドライバーの善行を見つけSNSで紹介してくれたユーザーへの感謝。
  • ドライバーやヤマト運輸を称賛してくれたユーザーへの感謝。
  • ヤマト運輸に対する好意的なクチコミを自発的に投稿してくれたユーザーへの感謝。

企業への好意度向上/ブランディングが起きた

  • 「該当の社員とは連絡がとれており」
    → 社員を大切にし、きちんと評価する企業の姿勢が伝わる。
  • 「これまでの他の模範となる取り組み同様、社内での共有を行っている」
    → 今回話題になった件以外にも“模範となる取り組み”が複数存在し、同社にとって「社員の善行は珍しいことではない」と暗示。
  • 「これから先も地域の一員としてお役に立てるように社員一同邁進して参ります」
    → 企業理念をさりげなく周知。
参考:グループ企業理念 | ヤマトホールディングス株式会社
https://www.yamato-hd.co.jp/company/philosophy.html

Twitter上で盛り上がっている自社への話題に対し、タイミングを逃すことなく公式アカウントが行ったアクティブコミュニケーションが、最終的に、さらに多くの好意的な反応を集めることに成功した事例といえるでしょう。

SNSに流れたデマをタイムリーに一蹴、ファンに与えた「安心感」
[パイン株式会社(パインアメ)]

次は、ソーシャルリスニングによってリスクの火種を発見し、早期に解消できた事例です。今年6月、パインアメの画像とともに「もう売ってないってほんと?」と書かれた投稿がTwitter上に流れました。しかしパインアメは終売しておらず、このツイートは間違った情報でした(現在は削除済み)。

この投稿を行ったアカウントのフォロワー数は5万人超と多いうえ、「これ知ってる人RT(リツイート)」と拡散を促していました。さらには「え、もう売ってないん?」と、この虚偽情報を信じてしまったと思われる返信も散見されました。ただの“悪ふざけ”や“勘違い”として、単純に片づけられない危険性を感じさせます。

このデマ(?)投稿に対して、パイン株式会社の反応も迅速でした。翌日(6月8日)に、パインアメ公式アカウントらしさを失わない投稿で、デマを否定したのです。

プロフィールにもあるとおり、ふだんは“ゆる~くつぶやいて”フォロワーを楽しませてくれる公式アカウントなのですが、この投稿では「ゆるさ」を控え、事実を正確に伝えることに終始していることが印象的です。

その一方で、堅苦しさや厳しさを感じさせることなくソフトな印象にまとめあげ、さらには「パインアメは今年で71年目」と豆知識まで(!)ここぞと紹介することで、フォロワーに「事実」だけでなく、「驚き」や「安心感」を与えることに成功しています。SNS上で発生したデマ・誤報を迅速に発見し、タイムリーに否定できたことで、炎上や売上低下などのトラブルを事前に防いだ好事例といえるでしょう。

さらに、デマを否定し事実を伝える投稿を公式アカウントみずから行ったことで、フォロワーをはじめ他ユーザーがその投稿を「公式情報」として積極的にシェアしてくれる可能性が高まります。これは、企業が公式アカウントを運用する意義の1つとして考えてよいでしょう。

まとめ

今回ご紹介した両事例に共通するのは、「話題に対するタイムリーな反応」です。

日ごろから「ソーシャルリスニング」を行い、自社/ブランド/商品・サービスに関する「ユーザーの生の声/リアルな声」に耳を傾けましょう。ユーザーからの疑問・不満・要望については社内で共有し、今後の参考にしたり、「アクティブサポート」を行ったり、さらには公式アカウントの投稿案の参考にしたりしてもよいでしょう。

好意的なクチコミに対しては、ヤマト運輸のように、タイムリーに反応することで感謝+αを伝えることが可能です(ただし、その際にここぞとばかりに「宣伝」「売り込み」に走ると逆効果になりますので、十分注意してください)。

また、日頃からソーシャルリスニングを行うことで、炎上の火種を発見できます。とくに、デマやフェイクニュースがきっかけで炎上に巻き込まれる「巻き込まれ炎上」は予防が不可能なため、早期発見・早期消火がきわめて重要です。パインアメにおける模範的事例をぜひ参考にしてみてください。

おまけ:この事例にも注目!(1)
[旅行読売出版社]

「日本で最高所にある駅をご存じでしょうか?」。意外に知られていない豆知識を紹介した投稿が、9割近い反応率を得ていました。「行ったことがある」「行きたい」といったユーザーからの反応が多く、さらに“他の人にも伝えたい有益情報”と捉えたユーザーが多かったためかシェア件数も伸びています。Facebookではこうした「知的好奇心をくすぐる投稿」が好意的に受け入れられる傾向がありますね。

おまけ:この事例にも注目!(2)
[スターバックス公式]

ご存じの方もいるかもしれませんが、満月の夜にスターバックス(一部の店舗)では、照明を落としキャンドルを灯す「Delight in the Night」を実施しています。そして満月の日にほぼ毎回、この取り組みを投稿で紹介しています。画像や動画は毎回変わっていますが、キャプション(文章)はほぼ同じものを繰り返し使用。地道ながらも「継続は力なり」を体現しています。認知を高めたい・浸透させたい情報は、繰り返しSNSで発信してみましょう。

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