広告運用のインハウス化には何が必要? 最低限知っておきたい16の準備項目
昨今のプライバシー保護のトレンドを受け、運用型広告のインハウス化(内製化)が改めて注目されています。そこで、本連載ではインハウス支援のサービスを提供しているアタラとオーリーズが、インハウス体制での広告運用におけるヒントを解説します。
第1回では、今まで外部に広告運用を委託していたけど、広告運用をインハウス化することになった方、インハウス化を検討している方に向けて、インハウス化の計画段階で確認しておくべき項目を紹介します。
「うちもインハウス体制で広告運用するから!」と言われたとき、本当に実現できるのでしょうか? インハウス化に取り掛かる前に最低限のものとして考慮しておかないとインハウス化すらままならないものや、いざインハウス体制での運用を開始してもすぐに頓挫することが明確な項目を解説するので、参考にしてください。
広告運用のインハウス化の前に 最低限知っておきたい16の項目 | ||
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大分類 | 中分類 | 項目 |
インハウス化の前 | 広告アカウントの移管 | 1. 現在配信中の広告プラットフォーム/メディア |
2. 広告アカウントの所有者 | ||
3. インハウス化する広告プラットフォーム/メディア | ||
支払い条件の確認 | 4. 広告媒体費用の支払い方法者 | |
5. 請求サイクルへの対応 | ||
インハウス化完了後 | インハウス体制で必要な運用リソース | 6. ターゲット設定の変更頻度 |
7. 採用している主な入札戦略 | ||
8. 広告の追加/変更の頻度 | ||
9. 計測パラメータの設定ルール | ||
10. 改善施策の実装頻度 | ||
インハウス体制で必要な運用リソース | 11. レポーティングの内容と頻度 | |
12. レポーティング環境の保守 | ||
データ、ノウハウを蓄積する環境構築 | 13. インハウス化へ移行後のチーム体制 | |
14. 社内のコミュニケーションツールと施策管理/ログ化の環境 | ||
情報収集能力 | 15. 出稿中メディアの担当者の有無 | |
16. 最新情報の入手経路の有無 |
広告運用インハウス化のメリットは?
まず、広告運用の体制をインハウス化させるメリットを理解しましょう。メリットは以下です。
- データとノウハウの蓄積・活用によって広告パフォーマンス、ROIを継続的に改善する体制を作れる
- 広告配信の実績データ(=広告アカウント)のオーナーシップを獲得できる
- 施策展開が速くなり、リアルタイムに最適化できる
- 外注先に支払っていた手数料が削減され、取引の透明性が高くなる
良い面だけを見れば事業目標の達成に向けて必須の選択肢のように思えてきますが、インハウス体制に移行後はこれまで広告代理店などのパートナー企業が一式で負担してきた様々な業務やコストを自社に移行させることになります。
そのため、外注していたときは見えにくかった細かいコストも把握した上でインハウス化させなければ、始まってから致命的なリスクを発見することも十分考えられます。
実際に、大半の広告主がパートナー企業との協業関係を継続していたり、インハウス体制を取りやめて外部への業務委託を再開させるのは、インハウス化するまで広告主側の視点だけでは気づきにくい “死角” が多く存在するからです。
こういったリスクを避けるために、「インハウス化に向けて、最低限考慮すべき16の項目」を1つずつ解説していきます。
広告運用インハウス化の前準備をしよう
まず、広告運用をインハウス化する前に確認しておくべきことや、準備しなければいけないことを把握しましょう。準備に必要なのは以下の5つです。
- 現在配信中の広告プラットフォーム/メディア
- 広告アカウントの所有者
- インハウス化する広告プラットフォーム/メディア
- 広告媒体費用の支払い方法
- 請求サイクルへの対応
それぞれについて解説します。
広告アカウントの「移管」に向けて情報を整理しよう
まずは、自社が広告をどこに出しているのか、何を使っているのか、アカウントはどこかなど基本的な情報を整理しましょう。
1. 現在配信中の広告プラットフォーム/メディア
最初に、現在広告を配信中のプラットフォーム/メディアを確認します。パートナーから送付されてくるレポートや、日頃のコミュニケーションの中でもプラットフォーム/メディア別の実績については議題に挙がることが多いので、おおよそ把握していると思いますが、この機会に全容を洗い出しましょう。
どのプラットフォームやメディアに広告を配信しているかは、パートナーの担当者に聞いていただければ配信中のメディア一覧はすぐ確認できます。また、レポートの「媒体別」といったデータや請求書の請求項目などでも確認できます。
2. 広告アカウントの所有者
続いて、現在広告配信中のアカウントの所有者を確認します。パートナーに外注してきた広告主にとっては馴染みのないものだと思いますが、広告を配信するアカウントには「所有権」という概念が存在します。
多くの場合、取引中のパートナー側で開設したアカウント(「代理店アカウント」などと呼びます)を使って広告を配信していると思いますが、パートナーが開設したアカウントの所有権はパートナー側にあります。そのため、インハウス化するには所有権を自社に移譲してもらいましょう。
所有権を譲渡してもらうには、まずパートナー側に対して広告アカウントの移譲が可能か、を確認します。移譲が困難な場合、自社でアカウントを新設することも可能ですが、新規で発行したアカウントは過去の配信実績を引き継ぐことができず、機械学習が完全にリセットされた状態で配信開始することになりますので、広告パフォーマンスの低下が予測されます。
なお、パートナー側がアカウントの移譲を承諾した場合でも、プラットフォーム/メディア側の技術的な仕様によって対応不可なケースもあります。たとえば、Google広告は別企業へのアカウントの受け渡しができますが、Facebook広告はできません。広告代理店経由でのみ出稿が可能なメディアも一部存在するので、注意しましょう。
3. インハウス化する広告プラットフォーム/メディア
配信中のプラットフォーム/メディアを把握し、アカウントの所有権を移譲できるかどうかを確認したら、次はどのメディアやアカウントをインハウス化するのか計画を立てましょう。
メディア単位で少しずつインハウスに移行させるのか、全広告アカウントを一斉に移し替えるのかを事前に計画しておかなければ、プロジェクト最初期でいきなり頓挫する可能性があります。
以後解説していく項目によって、第1フェーズで全部 or 一部を移管するかを判断しても良いかと思います。
支払い条件の確認をしよう。広告費はクレジットカード払いがメイン
広告主が単独でインハウス化までの計画を立てた際に見落としがちな部分ですが、インハウス化の検討段階で考慮しておらず、実際にプロジェクトが開始してから障壁になりやすいのが、支払い方法や請求サイクルへの対応といった経済条件です。
プラットフォーム/メディアへの広告掲載費用の支払いは、基本的にアカウントの所有者が行います。インハウス化する場合は広告媒体社への広告費の支払いも事業主側が直接行うので、支払い方法や請求のサイクルも把握しましょう。
4. 広告媒体費用の支払い方法
まずは支払い方法です。Google・Facebookを始めとする国外産の広告プラットフォーム/メディアの多くは請求書払いに対応していません(出稿実績を積み、各社が設ける一定の条件をクリアすれば請求書払いが可能になります)。
そのため、現在ポートフォリオの大半を占めるであろう大手プラットフォームの広告媒体費用は、クレジットカード払いで支払う必要があります(Yahoo!広告は前払い方式に対応)。そして、筆者の経験上、クレジットカードでの支払いがインハウス化への最初のハードルになる事業主が多く存在します。
たとえば、コーポレートカードを保有していても、他の用途の決済に使っていたり、利用実績が(カード会社的に)十分でなく、カードの上限金額より広告予算が多いというケースも散見されます。
また、JCBなど国産のクレジットカードは国外産のプラットフォームへの支払いに使えないこともありますので、出稿先の広告媒体社が提供する支払い方法と、請求サイクルを慎重に調査しつつ、各種条件が自社の状況にマッチするかを広告アカウントの移管と同時に確認しましょう。
5. 請求サイクルへの対応
次に、請求サイクルです。請求サイクルは、広告プラットフォームによっても選択した支払い方法によってもさまざまです。たとえば、Google広告では「お支払い基準額」という金額がアカウント単位で設定されており、この金額が上振れたタイミングで請求が行われます。一方、Facebook広告も「支払い単位額」という似た概念で、請求が発生するまでのコストの目安が設けられています(たいていの場合は数千円からスタートし、10万円ほどで上昇はストップします)。
「お支払い基準額」や「支払い単位額」はアカウント開設直後の段階では任意の金額に設定することができず、支払いの実績を積むまでは月中に何度も請求が発生することになります。これは経理部のリソースを圧迫する要因になりますので、事前に合意形成しておくのが理想的です。
また、これらの内容は現在取引中のパートナーからは基本的に協力を得にくい(契約終了を目前にしたパートナーにとっては直接的なメリットが無い)ため、プラットフォーム/メディアが提供するヘルプページを読み込んだり、サポートセンターに問い合わせたりなど、大部分を自力で調査し切るつもりで進めましょう。
インハウス化した後の運用工数を把握しよう
筆者がインハウス支援を行ってきた経験上、経済条件の確認も含めインハウス化する広告アカウントの整理や確認、方針決定だけでも数週間は要します。アカウントの移管作業が一通り終わっても、広告のパフォーマンスが低下してはインハウス化した意味がありません。
運用型広告において、パフォーマンスを左右する重要な項目は以下の3つです。
- ターゲティング
- ビディング(入札)
- クリエイティブ
この3つの項目にパートナー企業がどれだけ時間を割いてきたかを推察することで、今後発生し得るアカウント管理の工数を見積もり、インハウス体制へ移行後に担当チームが賄える業務量かどうかを判断します。広告運用をインハウス化するメディアやアカウントを決め、支払いの確認をしたら次はいよいよ具体的な運用を計画します。
インハウス体制で必要な運用リソースを確認しよう
まずは、広告をインハウス化するための運用リソースがあるかを確認します。これまでにパートナー企業が広告効果を得るためにどれだけの工数をアカウント管理に費やしてきたのか、推定でも良いので調べておきましょう。確認すべき項目は以下の5つです。
- ターゲット設定の変更頻度
- 採用している主な入札戦略
- 広告の追加/変更の頻度
- 計測パラメータの設定ルール
- 改善施策の実装頻度
上記の6〜8については、まず自動と手動のどちらの機能を使っているか確認します。キャンペーンの多くがGoogle広告の「P-MAX キャンペーン」に代表される自動化機能が中心で構成されているアカウントであれば、基本的に手動でメンテナンスやチューニングを行う必要はないため、管理工数は比較的少なく済みます。
一方、毎週のように手動で検索キャンペーンのキーワードの増減に対応しているアカウントや、新しい広告を高頻度で入稿しているアカウント(薬機法に該当する広告主は特に注意が必要です)は作業量が一気に増加します。
以下に、それぞれについて詳しく説明します。
6. ターゲット設定の変更頻度
まずはターゲット設定の変更頻度です。ターゲット設定は、「いつ」「どこで」「だれに」広告を配信するかをコントロールするもので、検索キャンペーンにおけるキーワードや、動画・ディスプレイ・SNSなどにおけるデモグラフィック(年齢、性別など)/サイコグラフィック(興味関心)データを使ったものや、リマーケティングで使用するユーザーリスト、配信先のプレースメント設定などが該当します。
一番簡単な確認方法はアカウントの変更履歴にアクセスする方法で、いつどのような変更を加えたのかがすぐにわかります。Google、Yahoo!、Facebook など運用型広告の代表的なプラットフォームは同様の機能を提供しています。
また、ターゲット設定に限らずですが、アカウントに変更を加える際は大小あれど「実績のデータを集めて分析し、仮説を立て、改善策を練る」というプロセスが必ず発生しますので、設定を変更するためにアカウント上で作業する工数はもちろんですが、変更を加えるまでにどれだけ時間を要するかについても考慮しましょう。
7. 採用している主な入札戦略
次に、入札戦略を確認します。自動入札機能を導入しているアカウントであれば、入札管理に必要な工数は限りなく0に近づきますが、手動入札を採用しているアカウントの場合は、定期的な実績の確認と入札金額の調整が必要になるはずです。
オークションで広告表示が決まる運用型広告の性質上、外部要因による影響を受けやすく、「入札金額は変えていないが先週に比べてインプレッションが急減した」といったケースは頻繁に起こり得ますので、可能な限り高頻度でモニタリングしましょう。
多くの広告プラットフォームはキャンペーンで入札戦略を設定する仕様ですので、キャンペーンの設定を見れば現在採用中の入札戦略が分かります。
インハウス化に踏み切った場合、運用リソースの圧縮という意味でもそうですが、何よりパフォーマンスの向上という観点で基本的には自動入札の導入をおすすめします。本来的に一人ひとり状態がまるで異なる消費者を一様の入札金額で管理することは不可能であり、膨大なユーザーデータを持つ広告プラットフォーム側に最適化してもらった方が理論上パフォーマンスが改善する可能性が高いと言えます。
なお、アカウントの移管にも関わる部分ですが、自動入札は設定したキャンペーン目標を達成するために過去の配信実績をもとに適切な入札金額を割り出し、リアルタイムかつ自動で更新し続けます。そのため、仮に現在配信中のアカウントが自動入札を使っていて、パートナーから譲り受けることができなかった場合、配信実績がリセットされるため新設したアカウントでは要件を満たしておらず自動入札が利用できない可能性があります。
自動入札を採用中でもインハウス化に伴い一時的に手動入札を使わざるを得ないケースも度々ありますので、アカウント移管に並行して確認すると無駄がないかと思います。
8. 広告の追加/変更の頻度
次に、広告を追加したり、変更したりする頻度も確認しましょう。Google、Yahoo!の検索キャンペーンへの配信が大部分を占める場合は広告の更新頻度はそこまで高くないかと思いますが、FacebookやInstagram、Twitterといった広告のフリークエンシー(ユーザー一人あたりの表示頻度)がパフォーマンスに直接的に影響する可能性が高いプラットフォームには注意が必要です。
テキストのみで形成されるフォーマットを除いて、多くの場合広告の更新には静止画や動画の制作がセットになります(制作に取り掛かる前の分析なども含みます)ので、毎週のように広告を更新しているアカウントではその更新ペースを維持するだけでも相当なコストが想定されます。
こちらも6、7と同様にアカウントの変更履歴で確認できますし、多くは配信停止した広告でもデータを残しておくために削除までは行っていないかと思いますので、過去に配信した広告とそれぞれの実績、配信期間は管理画面上ですぐに確認できます。
なお、最適な広告の追加/更新頻度は広告主によって異なり、考えられる明確なタイミングとしては「目標に対してパフォーマンスが下回っている時」や「安定していたパフォーマンスが下降傾向にある時」などが挙げられますが、この場合もターゲットや入札設定を優先して取り組んだ方が期待できるインパクトが大きかったりと単純な基準で判断することはできないため、これまでアカウントを運用してくださっていたパートナーに相談してみるのがまずは良いでしょう。
9. 計測パラメータの設定ルール
計測パラメータの設定ルールはやや特殊ですが、これも必ず確認しておきましょう。もしネーミングルールが統一されていなければ統一する必要がありますし、設定ルール次第で入稿時に必要な工数が変わります(最小粒度の広告レベルでユニークなパラメータを付与している場合は入稿作業も大変です)。
10. 改善施策の実装頻度
運用リソースの確認の最後は、改善施策の実装頻度です。6〜8の内容は、ニュアンスとしてはアカウントの「保守・管理」を主目的とした項目ですが、広告効果を大きく改善させるためには定期的に新しい仕掛けが必要になると思います。
新規施策の立案はパートナー側で行い、そのままパートナーが実装させ、結果の報告だけ受けるような協業関係が多いのではないかと思いますが、この場合はレポートで新たに取り入れた施策の内容と結果について言及されているはずです。
新規施策が多かったアカウントということは、分析し、仮説を立て、実装(検証)し、振り返る、という一連の業務が日常的に増えるということもリソースを確保する上で考慮する必要があるでしょう。
自社で施策案を打ち出し、アカウントへの実装だけパートナーに依頼していた場合は最も高付加な業務プロセスを以前から自社で行ってきたということになりますので、過去の依頼内容とその結果だけ改めて整理していただければと思います(結果については同様にレポートにて報告を受けているかと思います)。
レポーティング業務量はどのくらい? 使っているツールは?
前のセクションでは日常的に発生する、いわゆる “運用” に必要な工数の確認でしたが、インハウス化した後は報告業務も担当チームが負担することになります。必ず以下の項目も確認しておきましょう。
- レポーティングの内容と頻度
- レポーティング環境の保守
それぞれについて説明します。
11. レポーティングの内容と頻度
まずは、レポーティングの内容と頻度です。報告先が複数ある場合は報告の内容と頻度も変わるでしょうし、そうなれば作成すべきファイルも掛け算式に増えていきます。報告にどのくらいの工数がかかっているのかや、現在の報告先が本当に必要か、ほとんど使われていないような有意義でないレポートはないか確認しましょう。
12.レポーティング環境の保守
レポーティング環境の保守では、レポートで作成するファイルの種類の確認を行います。Excel や PowerPoint 、あるいは Domo、TableauなどのBIツールで作っていたのかを確認しましょう。
Excel や PowerPoint で作られたものであれば、手動で更新してどうにかできるかもしれませんが、これまでBIツールなどでリアルタイムに更新していたレポーティング形式の場合は、同じ環境でインハウス化しようとすると、エンジニアリングの知識がある担当者をチームに引き入れるか、関係部署に協力を仰ぐ必要があります。
担当チームのリソースに対してレポーティングの業務量が多すぎると、本来は最も重要であるはずの広告効果改善に向けて必要なアクションを考え、実行していく時間にリソースを割けなくなるので、計画段階でしっかり洗い出ししましょう。
インハウス化のメリットを最大化に引き出す! ノウハウを蓄積、共有する環境作り
インハウス体制の広告運用の真髄は、短期的なコストカットではなく、「データ・ノウハウの蓄積、活用による広告効果の改善」にある、と筆者は考えています。(もちろん、パートナーに支払う手数料が削減できますので、短期的にも一定量の効果をもたらします)
“Data is the new oil” と言われてから久しくなりますが、広告配信という消費者のダイレクトなフィードバックのデータを、理想的な状態でコントロールできている企業は少ないでしょう。データ・ノウハウを計画的に蓄積し、いつでも好きな形で取り出せる状態/環境を作っておくことで、広告効果を継続的に改善し、急な担当者の離職などにも耐えられる体制づくりが可能になります。そのためには、チーム体制やコミュニケーションツールなどを整えましょう。必要なのは以下の項目です。それぞれについて詳しく解説します。
- インハウス化へ移行後のチーム体制
- 社内のコミュニケーションツールと施策管理/ログ化の環境
13. インハウス化へ移行後のチーム体制
まず、インハウス化へ移行後のチーム体制を整えます。理想形は、以下のスキルセットを持つメンバーでチームが構成されていることです。
- マネージャー
- 戦略・戦術の立案、KGI・KPI設定、各種プロジェクトの推進・管理、メンバーのマネジメントを担う
- アカウントマネージャー
- 毎日の進捗確認やキャンペーン設定の変更・更新、入稿作業、レポート作成など、広告アカウントの管理業務全般を担う
- デザイナー
- 広告に使用するクリエイティブアセット(動画、静止画、テキスト)の制作、ランディングページ・ウェブサイトの修正などを担う
- エンジニア
- チームの生産性向上を目的としたAPI活用(レポーティングの自動化/ダッシュボード構築、入稿・入札調整などの効率化/高精度化、など)や、広告効果の向上を目的とした技術的対応(タグの動的な値出力やCRMツールとの連携)などを担う
- アナリスト
- 顧客、広告配信の実績、市場調査など、各種データの収集・分析と、それを元にした改善施策の立案の担う
兼務でも問題ありませんが、いち担当者の業務量が増えるとデータ・ノウハウを蓄積することの優先度が相対的に下がり、「いつ、何を、どうやって、どんな結果が出たか」という貴重な企業資産が失われる可能性があります。
14. 社内のコミュニケーションツールと施策管理/ログ化の環境
次に、社内のコミュニケーションツールと施策管理/ログ化の環境を整えます。メンバー間のコミュニケーションを円滑にするツールの導入はもちろんのこと、進行中の施策を管理するためのツール、過去の施策をログ化しておくためのツールなども必須です。ツールと言っても、業務を最適化できるのであればGoogle スプレッドシートのような無料のものから始めるのでも良いかと思います。
重要なのは、「過去に取り組んできたこと、取り組みから得たインサイトを逐一ログ化していく」ことです。
情報収集能力を上げておこう
最後は、情報収集能力についてです。実際にインハウス体制での広告運用を開始すると、担当者は目の前の仕事で忙しくなり、外部と接触する機会が減少していきます。
それ自体は特に問題ではないのですが、これまでパートナーを介して半ば自動的に受け取っていた広告製品のアップデート情報や、新しい配信手法やメディアの登場といった、広告効果とダイレクトに関係する情報が遮断されます。
特に、昨今のプライバシー保護関連に伴うアップデートは重大で、放っておくとある日突然広告が止まる可能性も十分にあるため、常にキャッチしておきたいところです。また、事前に調査した上で方針を決めて対応する必要があるような、質・量ともに重要な情報もあれば、新機能のクローズドベータ版の案内などは「早いもの勝ち」で、いち早くキャッチしておかなければ機会損失を招く情報もあります。以下の項目を確認しておきましょう。
- 出稿中メディアの担当者の有無
- 最新情報の入手経路の有無
15. 出稿中メディアの担当者の有無
まずは、出稿中メディアの担当者の有無を確認しましょう。インハウス化してからも広告媒体社側の担当者がサポートしてくれる環境かどうかを確認しましょう。ただし、担当者がサポートしてくれるとしても、業界全体のトレンドや新興メディアの情報は提供してもらえませんので、それだけでは決して十分とはいえません。
16. 最新情報の入手経路の有無
最後はまた、「15. 情報収集能力 - 最新情報の入手経路の有無」です。これも無視できません。これまで受動的に受け取っていた情報を、インハウス化した後は能動的に取りに行かなければいけないというマインドセットの変化があります。また、「メンバーの自己学習」でなく「広告効果改善のために必要な"業務の一部"」として組織全体がバックアップできる環境でなければ、インハウス体制を継続していくことは極めて難しいでしょう。
まとめ
ここまで、「インハウス化に向けて、最低限考慮すべき16の項目」について解説してきました。インハウス化には明確で多様なメリットが多くあり、良い面を羅列していくと目標達成に向けて必ず取り組まなければいけないことのように思えてきます。
しかし、今もなお多くの広告主が広告代理店などのパートナー企業との協業を継続しているのは、インハウス化するだけでも上記のようなハードルが待ち受けているからであり、高い専門性を有するチームで綿密な計画を立てて進めなければプロジェクトは失敗に終わる可能性が高いと言えます。
「広告運用、インハウス化できないの?」と聞かれたら、ぜひこの記事の項目を確認して自社がインハウス化に向いているかどうか考えてみてください。
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