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Twitterフォロワー獲得が4倍に! 地方での専門人材確保・戦略の秘訣とは?

SNS運用で難しいのはリソースの確保。特に地方では大きな課題になっている。外部人材を活用することでSNSのフォロワー数、エンゲージメント率ともに大幅にアップした事例を紹介する。

今回紹介するのは、茨城県東海村にある鈴木ハーブ研究所(社員数50人)のSNS活用事例だ。同社では、以前からSNSを運用していたが、Twitterのフォロワー数は4,000人で頭打ち状態だった。ところが、1年後には4倍の1万6千人に増加しただけでなく、エンゲージメント率も3倍に高まった。この壁を乗り越える鍵になったのが、外部のハイスキル人材=フリーランスの活用によるリソースの確保だ。

現在では、運用SNSアカウントとしてInstagramやLINE公式アカウントも追加。いずれもフォロワー数、登録者数は増加中。そこで、鈴木ハーブ研究所 販促事業部 チーフマネージャーの滝泰彦氏と広報の長山真貴氏、外部人材として施策を支援した津金澤健人氏にその取り組みを振り返ってもらった。

鈴木ハーブ研究所の販促事業部 チーフマネージャー 滝泰彦氏(左)
広報長山真貴氏(右)

SNS運用リソース不足を外部人材で解決

ムダ毛ケア化粧品「パイナップル豆乳シリーズ」販売などを行う「鈴木ハーブ研究所」は、社員数50人ほどの中小企業で、茨城県東海村にある。

鈴木ハーブ研究所ではパイナップル化粧品などを販売している

SNS運営での課題は「専門人材不足」

同社が抱えていたSNS運営の問題は以下の2点。専門人材不足が課題だった。

1.時間やリソース、教育コストの問題

SNS担当者はいるが専任ではないため、SNS運用だけに専念できず、PDCAも回せずに思うような成果は得られていなかった。

さらに、その担当者の部署異動も重なった。残ったメンバーをゼロから教育をするためには、時間や人的リソースを割かなければならない。しかし、そこまで時間をかける余裕はなかった。限られた中でどのように効果・成果を出していくかに課題を感じていたという。

2.地方での採用の難しさ

できれば即戦力のSNS専任担当者を採用したいと考えていたが、IT系の専門人材は獲得競争になっており、採用するのは至難の業。地方企業ということもあって、なかなか自社に適した人材を採用できなかった。

これらの課題を解決するために、同社が着目したのが「外部人材の活用」だった。

取材に答える鈴木ハーブ研究所の長山氏

経験豊富な専門人材を確保

経済産業省 関東経済産業局の「外部人材活用ガイダンス(https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/jinzai/data/kengyo_hukugyo.pdf)」によると、外部人材とは、業務委託等で自分自身のスキルや知見をもとに価値提供を行う人々を指す。その活用メリットはノウハウや技術の獲得だけでなく、資金と時間の節約、社員の業務負担の軽減など多岐に渡る。鈴木ハーブ研究所も、抱えていた課題(教育コストやリソースの限界、採用の難しさなど)を、外部人材によって解決できそうだと考えた。

そして外部人材を探すにあたり、鈴木ハーブ研究所は、マッチングサービス「ミエルカコネクト:https://mieruca-connect.com/business/を利用する。ミエルカコネクトを運営しているFaber Companyが長年企業のWebマーケティングを支援していることから、ミスマッチは少ないだろうと考えたからだ。

*Webマーケティングに課題を抱える企業に外部人材を斡旋するマッチングサービス。Faber Companyが運営している。

そして迎えたのがSNSマーケターの津金澤健人氏だ。津金澤氏は、SNSトレンドを把握し、各SNSの特徴を理解した使い分けなどで成果をあげてきた経験豊富なマーケターである。ただし、鈴木ハーブ研究所は茨城県にあり、津金澤氏は都内在住。業務は全てリモートで実施することに、コミュニケーションやマネジメントの面で若干の不安があったという。しかし、滝チーフマネージャーは津金澤氏の豊富な経験を選ぶことにした。

取材に答える鈴木ハーブ研究所の滝チーフマネージャー

津金澤氏のようなSNSの経験が豊富な方とは、フルリモート前提でなければ出会うことは難しかったと思います。これまでに蓄積されたノウハウを生かして、どんどん進めていただけそうな期待感がありましたので、お任せすることにしました(滝氏)

こうして、鈴木ハーブ研究所と津金澤氏の取り組みがスタートした。

ミエルカコネクト紹介の外部人材 津金澤健人氏。
SNSマーケター。大学在学中に教育事業を立ち上げ、SNS集客により事業を拡大。その後、法人化し取締役に就任。教育事業のSNSマーケティング活動で培ったノウハウをもとに、インフルエンサープラットフォーム事業も立ち上げ軌道にのせる。現在は、フリーランスSNSマーケターとして、医療・美容・飲食・不動産・アパレル等、幅広い企業のWebマーケティング支援を行っている。

Twitterフォロワー数が5カ月で1万5千人増!

鈴木ハーブ研究所のSNSアカウントは、Twitter、Instagram、LINEがあり、これらの運用を津金澤氏が支援。現状分析から戦略策定、投稿内容や頻度の決定、配信までをサポートした。

成果は短期間であがり、特にTwitterでは、わずか5カ月でフォロワー数が1万5千人増になったという。どのような施策が成果につながったのだろうか。

Tips1 ロードマップを描き、ゴールまでのストーリーを設計する

津金澤氏は「SNSアカウントの運営はやみくもにやっていても成功が難しい。きちんと戦略設計を行い、その戦略にそった運用が肝になる」という。そこでまず行ったのは、SNS運営の「ロードマップ」を描くことだ。マーケティングファネルと対応するように、SNS施策を次々と企画・実行していった。

大まかなSNS運営ロードマップ

具体的には、次の①~③を順に実施していった。

  1. 認知を獲得するためのTwitterキャンペーンを企画。ただキャンペーンを行うだけでは効果が薄いので、いくつかの工夫を凝らした(後述のTips2参照)。
  2. ブランドの好意度向上や純粋想起率を高めるため、読み物コラムやユーザーボイスをTwitterやInstagramに投稿した。
  3. TwitterのDMやLINEメッセージなどで、ユーザーとの個別コミュニケーションをとり、関係性を築いていった。
マーケティングファネルから対応するSNS施策を企画した

重要な「ゴールまでのストーリー設計」

特に力を入れたのが、「ゴールまでのストーリー設計」だ。

SNSは、「結局どういうゴールが理想なのか?」を明確にしないまま運用している企業が多い印象です。鈴木ハーブ研究所様のようなTo C向けの商品展開をしている企業であれば、SNSを通じて商品が売れ、その方がファンになってくれることが最も理想的な状態だと考えました。ですので、認知獲得だけでは不十分。そのゴールに向かっていくために何が必要なのか、どうユーザーに動いてもらいたいのかというストーリーを考えていきました(津金澤氏)

そこで、TwitterとLINEをつなげていく戦略を立案。Twitterで興味をもってもらい、LINEにも登録してもらう流れをつくった。つまり、複数SNSで定期的にコミュニケーションをとり、その中でファンになってもらい、最終的には購入にもつなげていくという計画だ。

どんなSNS施策を行うにしても、最終的にはLINEに登録してもらうということに決め、導線を明確化した。津金澤氏は、「To C企業では、公式LINEをメルマガのようにして使うことは効果測定もしやすく、おすすめの施策だ」と話す。「SNS運用によって増えたLINE公式アカウント登録者数=見込み顧客リスト」と捉えると、SNSがどのくらい売上に貢献しているのかが数値として見えやすくなる。つまり、SNS運用の効果を社内に共有しやすくなるのだ。

Tips2 キャンペーン効果を最大化するための布石を打つ

取り組みの中で、大きくフォロワー数を増やしたキャンペーンがある。2021年11月末から12月に行った「年末感謝キャンペーン」だ。この取り組みについては、認知獲得のために工夫を凝らしたという。

Twitter上ではさまざまな企業がキャンペーンを実施しています。気を付けてほしいのが、ただキャンペーンをすればいいわけでは無いという点です。認知を獲得する前のキャンペーンでは、ユーザーが自社商品について知らないところからスタートしますので、認知が増えていかない(エンゲージが低い)というケースも多いです。そうした問題を解決するために活用したのが、有名人が出演する動画です(津金澤氏)

鈴木ハーブ研究所では、女優でフィギュアスケーターの本田望結さんを起用したCMを放送していた。そこで、このCMと商品説明を記載したツイートをTwitterアカウントの固定ツイートに設定。キャンペーンからTwitterプロフィールに訪れた人が、この固定ツイートを見ることで、一目でどんな会社なのかがわかるようにした。

*投稿したツイートをTwitterプロフィールページの上部にピン留めできる機能。

また、認知を獲得するためのSNSキャンペーンとして流行している「ギフト券」を活用した。

ギフト券を使って、多くの人にツイートを届けることができました。このキャンペーンからプロフィールに来た方が先の固定ツイートを見ることで、より興味関心をもっていただく流れをつくったわけです。今回は4週間連続でキャンペーンを行い、約9,000人の新しいフォロワーさんが登録してくれたので、成功したと思っています(津金澤氏)

この例のように、キャンペーン効果を最大化するための布石を打っていくことがTwitter運用のポイントの1つだ。さらに津金澤氏はもう1つの布石を打っていた。次のTipsで取り上げる「個別コミュニケーション」だ。これを裏の施策として重点的に行ったという。

Tips3 ユーザーと個別にコミュニケーションをとる

では、どのようにコミュニケーションをとったのだろうか。

SNS、特にTwitterでは、ユーザーと距離の近いアカウントにしていくことで、ファン化につなげやすいと考えています。一方的に情報を発信するだけでなく、ユーザーと個別にコミュニケーションをとることを大切にしています。
たとえば、キャンペーン結果を通知するときも、当選者だけでなく、落選された方にも「また次も参加してくださいね」など、きちんとお礼を伝えるようにしています。今回のキャンペーンだけの関係に終わらないよう、ユーザーとつながりを持ち続けようとすることが重要です(津金澤氏)

大規模アカウントではなかなか手が回らない細やかなコミュニケーションをとることこそが、差別化や独自性を出すことにつながるのかもしれない。津金澤氏は今後も個別コミュニケーションを重要視していくという。

ゆくゆくは、ユーザーごとにカスタマイズしたメッセージを送ることもやっていきたいですね。一斉送信するよりも"私だけに送ってくれた"というのは非常に嬉しいことだと思うので。今後も差別化を鈴木ハーブ研究所様と推進していきたいですね(津金澤氏)

外部の知見を取り入れ、フォロワー数4倍、エンゲージメント率290%に!

こうした取り組みの結果、Twitterのフォロワー数は1年で4倍に増えた。また、Twitterキャンペーン企画では、総計で約2万RT(リツイート)という反響を呼んだ。津金澤氏によると、広告なしのキャンペーンでは、かなり反響あったケースだという。

Twitterでの成果

これまでもSNS上でキャンペーンは行っていましたが、「4週間毎週違うプレゼントをしていく」などの企画はできていませんでした。思い切った企画やさまざまな仕掛けを施した結果、こうした反響を得られたと考えています。自社のみで運用していたら思いつかない運用法などを教えていただける、これも外部の知見を取り入れる大きなメリットですね(滝氏)

そして同社のTwitterアカウントは、フォロワー数を伸ばしただけでなくエンゲージメントが平均12%ほどを維持するホットなアカウントに変貌している(以前は4%前後)。

自社の担当者だけで運用を行っていた頃は、キャンペーンや各SNSでの施策がぶつ切りで、それぞれの導線やゴールを明確に意識できていたわけではなかった。そうした事前設計を、外部人材とともにしっかり行ったことが成果に繋がった。

今回の取り組みを通じて、いかに曖昧にSNSを運用していたかを痛感しました。津金澤さんのおかげで、SNS運用のPDCAを回すことができるようになったのは弊社にとって大きな収穫です。外部の方と会社のSNSを一緒にやってうまくいくのかと不安もあったのですが、そんな不安はすぐに吹き飛びました(笑)(長山氏)

いまではすべてのSNSアカウント運用を外部人材に委託

現在、鈴木ハーブ研究所と津金澤氏は「LINE公式アカウントの強化」に取り組んでおり、たとえば友だち登録してくれたユーザーに、キャンペーンやお知らせ、お役立ち情報などをLINE上で配信することも行っている。投稿では、画像や絵文字などをふんだんに使い、なるべく文字だけにならないよう気を配っているという。

本格的に公式LINEの運用を開始したのは2021年11月なので、まだまだ発展途上。今はまだ明かすことはできないが、さまざまな施策を水面下で仕込んでいるという。

LINE公式アカウントの強化に取り組んでいる

当初、津金澤氏に依頼していたのは、TwitterとInstagramの運用のみだったが、前述の成果やその信頼もあり、全SNSアカウントの運用をサポートしてもらうことにしたという。トータルでSNS戦略を考えていくことで、各SNSの統一感も出る。たとえば投稿内容なども連動させると、ブランドの世界観も出しやすい。

津金澤さんがされていることの全てが学びになっています。SNSは次から次へと新しい手法が出てきますが、その情報収集についても津金澤さんに先頭を走っていただいて、本当にありがたいです(滝氏)

広告から購入いただくことが厳しい時代になっているので、SNS経由で購入者を増やしたいとずっと思っていました。それが実現しつつあるのは津金澤さんのおかげです。
ただ、現状には満足していません。購入して終わるのでなく、購入後の使い方の解説、効果実感の口コミなどアフターフォローまできちんと行えるようなSNSアカウントに育てていきたいと思っています(長山氏)

最後に、津金澤氏は今後の展望について以下のように語った。

鈴木ハーブ研究所様の商品は、(私自身が)ムダ毛ケアに悩んでいた学生時代に使用していました。実際に使用していたブランドのSNS戦略に携われたことは非常に嬉しい出来事でしたし、よい商品を世の中に広めるお手伝いができたことはマーケターとして大きな喜びでした。SNSはトレンドにどれだけ乗っていけるかが重要です。しっかりキャッチアップしながら、随時新しい取り組みを一緒に進めていきたいと思います(津金澤氏)

編集協力:落合真彩

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