なぜ、Webサイトに来たのか? 「会話データ」と「行動データ」からユーザー心理を紐解く方法
Webサイトの「どのページを見たのか」「何分滞在したのか」「メールを開封したのか」といった行動から予測できるのは“何に”興味があったのかに過ぎず、“なぜ”そのページに来たのかはわからない。その“なぜ”を知ることができるのが、チャットボットだ。
「デジタルマーケターズサミット 2019 Summer」のセッションに登壇したギブリーの大熊勇樹氏は、“なぜ”興味があったのかがわかる「会話データ」と、“何に”興味があったのかという「行動データ」を組み合わせた1to1のアプローチ手法を紹介した。
会話データが重要な理由
まず、「会話データ」とは何かを定義しておこう。ここでいう「会話データ」とは、「単一方向ではなくインタラクティブにコミュニケーションをとることで生まれるデータ」という意味だ。音声だけではなくテキストの場合もあるし、広義には「双方向コミュニケーションによって明らかになったこと」も指す。
では、会話データがどうして重要なのか。大熊氏は「情報取得方法の変化で、ヒアリングが重要になっている」と述べ、その一例として「Sosiety 5.0」という言葉を挙げた。現在を4.0の社会として、おおざっぱに言うと次のように社会が変化するという考え方である。
- Society 4.0:情報社会
- Society 5.0:超スマート(AI駆動型)社会
情報取得の方法は、情報社会では検索し、検索結果の中から選ぶ。しかし、AI駆動型の社会では、自分に適している答えをひとつ、AIが提案する。スマートスピーカーをイメージするとわかりやすい。つまり、情報取得の方法が「自分で探す」から「提案をもらう」に変化していくというのだ。
このため企業は、ユーザーにとって有益だと思ってもらえる情報を渡せるかどうかが重要になる。ギブリーでは、そのような社会が実現するための「Conversation Tech(会話科学)」という手法を提唱している。
リアルの世界では当たり前に行われている“ヒアリング”
最適なものを提案するためには、相手のことをよく知らなければならない。実は、これはリアルの世界では当たり前に行われていることだ。いわゆるヒアリングである。BtoB企業であれば営業担当が「今はどのようなことにお困りですか」と聞くはずだし、BtoCの店舗では店員の声かけがこれに当たる。
実店舗では、来店した顧客が「前にも来店したことがある」「どの商品を手に取ったか」「何を見ているか(商品そのものか、値札か、スペック表かなど)」など“見ればわかる”内容をチェックし、さらに手に取っている物について「プレゼント用ですか?」「ご予算は?」などと聞くのはごく普通の接客である。
これによって、店員は相手の要望に合う商品をおススメする。顧客が「選ぶ」のではなく、専門家である店員がパーソナライズした内容を「提案する」形になっているわけだ。
この時、見ればわかることを「観測要因」、見ただけではわからないことを「非観測要因」と呼ぶ。
行動データがないとターゲティングできないデジタル領域のユーザー
デジタルでも店舗接客と同じことができれば良いのだが、それが実は簡単ではない。
デジタルの世界では、行動データが基本になってユーザーを把握する。行動データとは例えば、「どのコンテンツを見ているか」「流入経路はどこか」「何分滞在したか」といったものだ。MAでは、「メールを開封した」「その後Webサイトを訪問した」「料金ページを閲覧した」などの行動をスコアリングして、ホットリードと判定し、次のステップへと進める。
ただし、この方法では“行動してくれないユーザー”には手を打てない。さらに、店舗では声をかけて聞き出すことができた「非観測要因」がわからないので、ユーザーの意思決定のために足りない情報を提供することができない。
これをチャットボットで解決するというのが、ギブリーの提案だ。
チャットボットによる問題解決手法
以下に、チャットボットでこの問題を解決する2種類の手法を紹介する。
① 行動データを会話データで補完する
行動量が多く、ある程度の“温度感”が見えるユーザーは通常のマーケティングツールで対応可能だが、行動量の少ないユーザーの方が数としては多い。彼らは、名前やメールアドレスはわからず、ただCookie情報が判明しているだけの「匿名」顧客だ。
この匿名顧客の重要性が増している。かつては自社のWebサイトに来るのはある程度購入意向の高まったユーザーがほとんどだったが、デジタルネイティブ世代の増加やスマホの普及で、そうではないユーザーのアクセスが大きく増えているためだ(大熊氏)
以下のマーケティングファネルで言えば、かつては購入前の「検索・比較」と、購入後の「満足・継続」を考えておけばよかったが、そのファネルが両方向に広がったということだ。このため、従来通りの方法で対応するのは、かなり無理があると大熊氏は言う。
例えば、匿名顧客はまず実名化して次の段階に進めようというのが従来のアプローチだったが、大量の匿名顧客をプレゼントなどで無理やり実名化しても有効活用できない。それよりも、匿名・実名に関わらず、サイト訪問者全員の“温度感”が把握できればいいのである。それを可能にするのが、アンケートなどよりも気軽に答えられるチャットボットだ。
② 行動データと会話データを掛け合わせる
行動量の多いユーザーの“温度感”はMAツールなどである程度見える。とはいえ、行動量が多くてもCVしないユーザーもいる。大熊氏は「モバイルファーストの加速とともに、欲しい情報はどこからでも手に入る時代になり、単純な行動データだけでは顧客の姿が見えなくなってきた」ことが理由だと言う。つまり、行動量が多ければホットリードと判断するのは早計で、「ホットリードの再定義が必要」ということだ。
そこで、「行動量が多いユーザーにも、会話で不安要素を払拭するなどの手厚いコミュニケーションをする」のがおススメだと大熊氏は言う。
例えば、以下の図のように、特定のルートを辿っており、MAならホットリードと判断されるであろうユーザーに、「送料無料」というお知らせと、不安があるか質問するポップアップを出す。仮にこれでコンバージョンしなかったとしても、「なぜ購入しなかったか」をデータとして蓄積できる。このような会話によって、本当にホットリードなのかを見極めることが可能になる。
タイプ別チャットボットのおススメ活用
ギブリーでは、「SYNALIO」というチャットボット型マーケティングツールを提供している。主な機能はチャットボットとポップアップによるWeb接客で、これによりサイト訪問者すべての行動/会話データを取得、分析、活用し、個々のユーザーにパーソナライズしたコミュニケーションを自動で提供する。
チャットボットには特徴の異なる以下の2種類があり、SYNALIOでは両方提供している。
① 言語認識型
テキストで話しかけ、ユーザーにテキスト入力で答えてもらうタイプ。オペレーターが対応する有人対応メイン型と、自動言語処理によるAIメイン型がある。言語化するにはユーザー側にある程度の知識や理解が必要なので、カスタマーサポートなどに向いている。
② オートリプライ型
あらかじめ設定した質問に対して、選択肢の中から答えてもらうタイプ。ユーザー側に知識がなくても答えやすく、FAQやCVのためのヒアリングに向いている。
また、ポップアップはCVR向上に効果がある。ポイントは、「どのような人に」「何のために」使ってもらい、「ゴール」は何かによって、適したチャットボットを選択するということだ。
ECサイトでのチャットボット活用事例
以下の図は、ECサイトでのSYNALIOの活用例である。
例えば、ユーザーが広告を見てトップページに流入、ある商品ページを閲覧し、2分間滞在したとする。SYNALIOでは「ラベル」という考え方でユーザーの行動情報を蓄積するが、この段階では「広告流入」「商品ページ」「2分滞在」という3つの行動ラベルがついた。これで、「購入しそうなユーザー」と判断できる。
するとポップアップが出て、そのページを見ていた理由(購入目的や予算など)をヒアリングする。その結果は、「会話ラベル」としてそのユーザー(Cookie情報のみの匿名ユーザー)に追加される。これにより、商品のレコメンドが可能になるというわけだ。
名前がわからなくても、行動データから「何に興味があるのか」がわかり、チャットボットでのやり取りから「なぜ興味があるのか」がわかる。大熊氏はSYNALIOの特徴を、「匿名顧客に対して、行動データに合わせて会話を展開し、背景にある状況や行動などの会話データを把握する。そして、その属性に合ったクロージングで提示することで、顧客満足度を向上する1to1マーケティングをライトに実現できる」とまとめた。
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