LINEの「位置情報」を最大限に生かした最新OMOマーケティングと今後の展望
国内でMAU(月間アクティブユーザー)8,200万で、DAUの割合(1日のアクティブユーザー)が86%というLINE。生活インフラと言えるLINEとコラボすることで、どんなマーケティングが可能になるのか。
「デジタルマーケターズサミット 2019 in大阪」に登壇したLINEの藤原氏は、毎日開くアプリでしかできない「位置情報を使ったマーケティング」などの最新OMOマーケティングについて解説。セッションの後半では、パルの堀田氏とPeach Aviation千歳氏によるパネルディスカッションが行われた。
現在LINEが行っている取り組み
藤原氏はLINEに入社して4年。O2Oカンパニーで、LINEショッピング、LINEデリマ、LINEトラベルなど6サービスを運営している。
LINEの強みは「位置情報」を使ったマーケティング
メッセンジャーからはじまったLINEだが、「ユーザーがより使いやすいもの」を目標にサービスを展開している。
国内のMAU(月間アクティブユーザー)は、8,200万人以上。日本の人口の約64%をカバーし、国内の生活インフラとして定着している。藤原氏は、「LINEの最大の強みは1日に1回以上利用したユーザーの割合を示すDAU(1日のアクティブユーザー)が86%いることだ」と言う。
LINEの成長戦略事業としては、今話題の「Fintech(LINEpayなどのpay系)」や「コマース」「AI」がある。コマースの情報が、FintechにもAIにもつながっていく、データの集約を担うようなサービスを作っている。
LINEを通して「お得」を感じてもらうO2Oサービス戦略
LINEがサービスを展開している領域は3つ。オンラインのサービスから設計をし、その取得したデータからオフラインのサービスにつなげていくことが可能だ。
- ショッピング領域
- グルメ領域
- トラベル領域
ショッピング領域
- 楽天やAmazon、Yahoo!など大手260社以上と提携
- 各サイトの独自ポイントとLINEポイントがダブルで貯まる
- 実店舗購買に向いている家電やアパレルの約20社と提携
- 会計時にショッピングGOが発効するバーコードをスキャンすることで、購入金額の数パーセントがLINEポイントで還元される
ショッピング領域において、「ダブルポイント」がユーザーに支持されている。楽天で買い物をする場合、Googleで検索して購入すると楽天のポイントしか貯まらないが、LINEショッピングで検索をして購入すると、楽天ポイントがたまる上にLINEポイントも貯まる。ユーザーの新しいショップの探し方のモデルとなっている。
藤原氏によると、この領域で力を入れているのは、「検索と価格比較」。各ショップの商品をその場で見比べることができる検索、ショップごとの価格やポイントの還元率の比較といった、これまで見えていなかった部分の比較も今後実装予定だ。
グルメ領域
- 有名チェーン16,000店舗以上と提携
- 食事の宅配サービス
- 3,500店舗以上と提携
- 事前決済で待ち時間なく食事を持ち帰れるテイクアウトサービス
グルメサービスは、デリバリーとテイクアウトといった対になるコンセプトを持つ。
特徴としては、専用アプリのダウンロードが不要で、既存のLINE IDを利用してすぐに開始できる。さらに、位置情報によってユーザーへ自動でレコメンドができ、注文可能な店舗やキャンペーン情報を配信できる。
トラベル領域
- 国内外の旅行比較サイト250社以上と提携
- 旅行サイトの価格比較
- 約10社と提携
- 旅行先での予約やちょっとしたお出かけに使うサービスが中心
旅行の検索と比較、LINEポイント還元が特徴のトラベルサービス。ショッピングサービスと似た特徴だが、こちらの方が「価格比較」に重きを置いていると藤原氏は言う。
「入口・出口戦略」で顧客ID化をサポート
EC事業者へのサービス提供について、藤原氏は、
「2,000万のセッション(各サイト)に集客し、自社IDを各企業で管理できるような仕組みになっている。リテンションも、LINEの公式アカウントで1対1でユーザーを刈り取る施策を考え、入口と出口で顧客IDを企業に取得してもらう「入口・出口戦略」で顧客ID化をサポートできたらと思う。」と言う。
「位置情報を利用したレポートの提供」と「自社開発中のMAツール」
今後の展開として、藤原氏は検討中の「位置情報を利用したレポートの提供」と「自社開発中のMAツール」を提示した。
位置情報を利用した「商圏分析レポート」
- どこで注文し、どこまで取りに行っているのかの移動距離の分析
- チラシなどの配布に活用
位置情報は「路線図」と紐づいており、電車の路線上にユーザーの分布図が出やすいため、駅や交通広告とタイアップを考えることにも有効だ。
- 自分の店舗に来ている人が、競合の店舗にどのくらい行っているかの併用率の分析
- 競合の分析に活用
藤原氏は競合だけでなく、「自分の業種と非常に相性のいい業種を探せる」とも話す。
スーパーのなかにドラッグストアが入っていることが多いのは、スーパーに来た人はドラッグストアで買い物する確率が非常に高いからだ。そのため、わざと同じ店内や隣接する場所に作ることが多い。服と電化製品が一緒に購入できるビックロも同じ理由だという。
- テイクアウトで利用したのち、再訪問してイートインの利用率の分析
- 再訪問からの購入率の分析に活用
自社開発中のMAツール
ユーザーの属性や行動、興味、関心に対して、タイミングやLINEの利用ステータス、位置情報を使ったプラットホームのMAをO2Oカンパニー内で開発している。各企業のLINEアカウントなどにこの仕組みを連携させ、最終的には各社でリターゲティングができるような仕組みが今後期待できる。
さらに、LINEショッピングのアカウントからお知らせを配信し、ECサイトのカート落ちの引き上げをサポートする仕組みも開発している。今まで自社内でしかできなかったことが、LINEを通してアプローチすることが将来的には可能になる。
LINE O2Oが目指す世界
LINEのO2O事業は、サイトの訪問歴、購入履歴、配信のON・OFF、打ち手を掛け合わせ、ユーザーのステータスごとに打ち手を提供できるプラットホームを目指すという。
パル・Peach Aviationを加えたパネルディスカッション
ここからは、三者のパネルディスカッションが行われた。
堀田氏は、アパレル会社に新卒で入社し、その後ハースト婦人画報社というメディア企業に5年ほど勤務。5年前にパルに入社し、現在はプレス・プロモーション・WEB・EC・オムニチャネルの責任者を務める。
パルは、60ブランドほどのアパレルと雑貨の製造から小売りまで行う会社。店舗数は1,000店舗近くあり、売り上げは去年で約1,300億円。EC率も5%から15%まで伸ばしている。堀田氏は、「ECと実店舗のオムニチャネルを推進し、どのように一緒に成長していけるかをLINEさんと考えたい」と話す。
千歳氏は、以前はMicrosoftやDellなどのグローバル企業でB2BやB2Cのマーケティングを経験。その後Peach Aviationに入社し、現在は新規事業の企画立案や部門横断型のプロジェクトマネジメント、地域創生などに従事している。
Peachは、2011年に創業して以来、国内線で19路線、国際線で19路線と順調に伸ばし、今年の6月に累計搭乗者数が3,000万人を突破。アジア圏へ商圏を拡大すると同時に、国内のニッチな場所を開拓し、ゼロから需要を作っていくかたちで成長を続ける。
千歳氏は「旅行は、いつモーメントが訪れるのかわからない。いかに日常の中で、関係性を維持するかを考えたときに、LINEさんのプラットフォームの生かし方がカギになると思っています」と話す。
LINEと連携後、反応は好調
藤原氏は初めに「現在のLINEと連携に至った経緯」について聞いた。
堀田氏は、ブランド数が多くパルクローゼットという自社ECもあるため、もともとLINEの公式アカウントやLINE@を、広告も含め運用していたと話す。すでに連携しているLINEショッピングは、想像よりも成果が出ており、今後SHOPPING GOとも連携し、LINEから実店舗に送客することも考える。6月のLINEのカンファレンスで発表された、LINEの中に自社アプリのようなコンテンツを作れる「MINI App」というサービスを利用する予定。
千歳氏は、バニラエアとの統合を含め、首都圏に強化していかなければならない中で、どのように攻めるかが非常に大きな課題になっている、と言う。それに対する打ち手を探すためにLINEを使い、ある程度絞り込んだターゲティングのリクエストに応じてもらい、テストを行っているのが今の段階だと話す。テストの結果は非常に反応がよく、これをいかにコンバージョンへつなげられるかが今後の課題となる。
利用価値の高いLINEの位置情報レポート
次に、「3つのレポートの利用イメージについて」聞いた。
まず藤原氏は、用途によって位置情報の利用方法は異なるためLINEでは「日常の位置情報」「位置情報ヒストリー」「今いる位置情報」の3つに分けていると話す。テイクアウトサービスで、注文する位置と受け取り位置の関係性を調べたところ、注文から20分以内で受け取れるオーダー注文が人気なことがレポートから分析できた。
堀田氏は、店舗が多数あるため一番利用するのは移動分析だろうと話す。駅のターミナルにある店舗と郊外のモールにある店舗では、マーケティング手法が異なります。人の動きがわかることで、より効果的な施策ができる可能性が高いと期待する。
千歳氏も移動分析に魅力を感じていると話す。どこから来た人がどこへ行ったのかがわかることで、ユーザーが移動するルート上で不安に感じることを事前にフォローできる。また、併用分析も含めると、過去の旅行者の併用率を分析し、フライトまでの残りの時間はここに行ってみませんかと働きかけを行うこともできる。サービス、おもてなし、提案をするときに、こちらの思い込みではなく、分析に基づいて行うことで説得力が増す。
LINEを通してつながることに価値がある
次に藤原氏は、「OMOの取り組みとKPI」に関して質問した。LINEのO2Oカンパニーでは、新規と既存に分けてレポートをつくり、分析している。
堀田氏は、OMOに限らず、新しいお客様に知ってもらい利用してもらうことが一番大事だという。店舗で発信するだけでは届かなかったお客様と、LINEを通してつながることに価値がある。
千歳氏は、KPIとしては新規、リピートで利用してもらい、より気軽にお出かけをしてもらう。そして、そこからどのように収益を上げるかというところだという。旅行は、人が本当にその場所を感じたい、味わいたいという生の体験を望むもの。その体験だけは、デジタル化しにくいが、そこに行くまでの道のりや、そこで得た喜びはデジタルで支援していくことができる。とにかく旅に出てもらえるようにLINEの持つ力を生かし、働きかけていくと話す。
今後のLINEへの期待が膨らむ
最後に藤原氏は「今後LINEに望むこと」を聞いた。
堀田氏は、新しいお客さんと接することのできるサービスのソリューションができ、より使いやすくなっていくと良いと話す。店舗には投資するが、デジタルなどの目に見えないものには投資しないというのが小売業にはありがちな話。今後も使いやすいものを提示してくれることで、さらに日本中がIT化、デジタル化されるという使命をLINEは担っている。それを、サービスとしてきちんと享受していきたいと期待を寄せた。
千歳氏は、アジアでのプレゼンスを上げてもらい、一緒に開拓していけたら頼もしいパートナーになれるのではと期待を抱く。Peachは、「インバウンド6,000万人」と高い目標を掲げている。しかし、いまだ来た人たちをどう受け止めるかを考えているレベルだ。
藤原氏は、海外は台湾にもコマースチームがあるため、今後はより連携ができるように頑張りたいと話し、パネルディスカッションを終了した。
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