今やるべきSEOとは? 「グーグル検索と検索者が好むWebサイトとコンテンツ」を木村氏が解説
「今のSEOは何をやらなければいけないのか?」「どういうトレンドなのか?」
サイバーエージェントのSEOラボ主催の「検索エンジンと検索者が好むウェブサイトとコンテンツ」に登場した同社の木村氏は、2018年はサイトのジャンルや運営規模によって大きな差が出た一年だったと述べ、京都大学との共同研究データも交えた、SEOラボの研究結果を紹介した。
現在のSEO
登壇した木村氏は、「最近のGoogle検索の順位は、大手企業が運営するコンテンツが並んでいることが多い」と指摘する。その意図を知るために、Googleが公開している「General Guidelines(以下、品質評価ガイドライン)」を読み解いていった。
品質評価ガイドラインとは
品質評価ガイドライン(General Guidelines)とは、Googleがユーザーテストを行うときのマニュアルである。あるURLに対して、そのページやサイトが「良い」のか「悪い」のかを判断するための考え方を基準として示している。ユーザーは、9段階でURL評価をする。
ユーザーテストから得られた結果を、Googleはアルゴリズムにフィードバックして、人が感じる良し悪しを反映していると言われている。
サイトの評価の仕方
品質評価ガイドラインには、YMYLという特別な領域を指定している。
YMYL(Your Money or Your Life)とは?
将来の幸福や健康、財務の安定性、またはユーザーの安全に影響を与えるページをYMYLの対象ページとすると書かれている。具体的には次の5つだ。
- ショッピングまたは金融取引ページ
- 財務情報に関するページ
- 医療情報に関するページ
- 法律情報に関するページ
- 市民にとって重要なニュース記事または公的/公式情報に関するページ
Googleでは、これらのサイトを「他ページよりも評価を厳しくするように」と示している。これらの項目の中で、ショッピングを除くページに関しては、納得ができると思う方も多いだろう。Googleでは「お金を支払う」というショッピングに関しても、評価基準を厳しくしている。また、E-A-Tの項目では「YMYLページには、高いE-A-Tが必要である」と言及されている。
E-A-Tとは?
E-A-Tとは、次の3項目の頭文字をとったもの。
- Expertise(専門性)
- Authoritativeness(権威)
- TrustWorthiness(信頼性)
有益な目的を持つすべてのページにおいて、専門知識、権威、信頼性が重要であると示している。また、コンテンツ制作者、コンテンツそのもの、コンテンツが載っているWebサイトにおいても、このE-A-Tが求められると品質評価ガイドラインには書かれている。
具体的には、高いE-A-Tの医療コンテンツは、医学的専門知識を持ち、資格を持つ人が作成、認定を受けた機関が作ることが望ましい。また、医療だけでなく、ニュース、科学的コンテンツ、財務、法律、税務においても高いE-A-Tを持った情報源から発信されるべきだと書かれている。
一方で、CGMや情報コンテンツといったYMYL領域以外のコンテンツでも、E-A-Tが重要であるという。たとえば、品質評価ガイドラインには、「家庭のリフォームや育児に関しては、専門家または経験豊富な情報源から発信するべきで、写真やギターなどの趣味についても同様である」と書かれている。
「経験豊富な情報源から発信するべき」とあるように、ある特定のトピックスにおいて、経験値が高い人をGoogleでは、「日常の専門家」として、WebページやWebサイトに不利益を与えない範囲で評価するとしている。
つまりGoogleは、トピックスによって求められる専門性、権威、信頼性の「内容とレベル」が異なることを理解していて、ユーザーテストによって求められる「レベルの違い」を読み取り、アルゴリズムに反映させているという。
データから見る現在のグーグル
ここまでは、Googleの品質評価ガイドラインから検索順位に影響する項目を読み解いてきた。ここからは、Webサイトと検索順位、ユーザー評価における関係性について紹介していく。
この共同研究では、定量調査と定性調査を行っている。定量調査に関しては、次のような項目を中心とした約180項目と、多様な検索クエリの検索順位の関係性を見ているという。
- サイト自体、サイト運営者を構成する要素
- サイトドメインのボリューム感と安定性
- コンテンツの単語数、キーワードの量
- サイトに集まる外部要因
- ユーザー行動
また、京都大学との取り組みの中心となる定性調査では、Googleが実施しているユーザー調査と同様に、品質評価ガイドラインを理解したユーザーが行っている。SEOラボのセミナーでは、定量調査の結果と定性調査の結果をそれぞれ発表していたが、本記事ではまとめて紹介していく。
検索順位との関係性が高い項目
まず、調査結果からわかった検索順位との関係性が高い項目を紹介する。なお、今回の調査結果で発表する内容は、「大規模サイトや広告収入がメインのメディア、大手企業の運営サイトに対して有効な内容を中心に構成している。そのため、中小企業のサイトや大手ではないECサイトでは、当てはまらないこともあるが、傾向値として捉えておくとよいだろう」と木村氏は調査内容の活用について言及し、説明をスタートした。
被リンク数
被リンクが多いと検索順位が上がるという、ページランクのエコシステムは、現在でも有効である。
キーワードの出現回数
検索結果1位~5位のキーワード出現回数の中央値は15回程度だった。キーワード数が少なくなるにつれて、検索結果の順位が下がっている。誰が見てもどのトピックスを扱っているコンテンツなのかがわかるものが、上位表示される傾向にある。
ページの長さ・単語数・ユニーク単語数・総バイト数など
品質評価ガイドラインが定める「高品質のコンテンツ」の説明には、メインコンテンツに十分なボリュームがあること、と書かれていることもあり、ページの長さ、単語数、ユニーク単語数ともに多い方が、検索結果の上位に表示されている。
メンション数
オンライン上のメンション数とサイテーション(リンクはないが、言及されている数など)の重要度がじわじわと上がってきている。
ソーシャルメディア上でリンクをはって、他のコンテンツを紹介しても、ソーシャルメディアの多くはnofllowなので、被リンク扱いにならない。ページランクシステムが回らないことによって、検索順位を決めるのが難しくなっている可能性がある。そのため、サイテーションやメンション数の重要性が高まっているという。
サイトの平均滞在時間
サイトの滞在時間と順位の相関関係はあるものの、一概に長ければよいとは言えなくなってきていると考えられる。たとえば、ECサイトであれば、購入すれば即離脱するし、情報サイトは読了したら、即別の行動に移るものもある。検索クエリやWebサイトによって、ユーザーの理想的な行動は異なることを踏まえておくべきだろう。
h1の位置
上段からh1の距離が短いものの方が、上位表示されやすいという関係がみられる。ファーストビューの上の方に目立つようにある方がよく、トピックスがわかりやすいタイトルや見出しを付けるほうがよいと言えるだろう。
検索順位との関係性が明らかになってきた項目
次に、検索順位において重要度は高くないものの、関係性があると判断できる項目を紹介していく。
メインコンテンツの画像数
テキストだけのページよりも画像数が多いページの方が、情報量が多いとみなされる傾向にある。現時点の調査では「画像の質(内容)」と検索順位の関係性は見えてこなかったが、今後は「トピックスに対して画像の質(内容)も求められるようになってくる可能性が高いだろう」と木村氏は言う。
発リンク
かつては、外部サイトへリンクを流さない方がいいと言われていたが、現在では、信頼度の高いサイトに対してリンクをはる発リンクは、ポジティブになる。公的機関や論文などの信頼できる情報にリンクをはると上がるケースも見られる。
広告占有面積
広告占有面積に関しても調査しているが、広告があるからといって、検索順位が落ちるという関係性は見られない。しいていえば、広告がない方がユーザーにとってポジティブにとらえられやすい。
サイト運営者情報
1000ワード、20位以内のサイトを調査したところ、運営者実体が確認できない「アノニマスサイト」は、今回の調査では全体の3%しかなかった。つまり、ほとんどのクエリで運営者情報が確認できないと、上位表示されないと言える。
これから行うべきSEO施策
木村氏は、これから行うべきSEO施策のポイントについて、次のように述べた。
- 品質評価ガイドラインの高評価の要素をしっかり満たす
- 現在の検索エンジン上位表示の要素を満たす
- ユーザーから高評価の要素を満たす
具体的には、次の通り。
検索ニーズを満たすコンテンツを用意する
品質評価ガイドラインにあるように、検索ニーズをしっかり満たすコンテンツがあることが大前提である。さらに、専門性があるからこそ書けるオリジナル要素が必要であり、検索インテントやニーズをしっかり満たした、独自のコンテンツを用意することが大事である。
現状「ラーメン 50選」といった、情報を大量に列挙しただけのコンテンツが検索上位に表示されているが、今後は淘汰されていく可能性が高い。ユーザー評価が必ずしも高くないうえに、他にない情報を含めないと検索順位が上がりづらくなっている。
コンテンツの量を担保する
トピックスに関するページ数が増えると専門性がプラスされて、評価が高くなっていくと考えられる。そうすると、サイトの規模感も大きくなる。
ページごとのコンテンツ量も短すぎるものは、検索エンジンからも人からも評価は低いので、やみくもになんでも増やせばいいということではない。
運営実体をちゃんと明示する
HTTPSの証明書やWhoisにマスクをしない。サービスサイトの場合は、コーポレートサイトを相互リンクすることで、運営者を明示できる。また、GoogleマイビジネスやWikipediaでも実体を把握できる。
トピックがわかる見出しにする
画像もコンテンツとの関係性があり、わかりやすいものにして、タイトルや見出しもトピックスを示すわかりやすいものにする。これは直帰率を下げるのにも効果がある。
被リンクを獲得し、適切な発リンクを行う
被リンクを操作することはできないが、適切な発リンクは自ら行える。リンクはnofollowにはせず、たとえば、コンテンツで紹介したサービスや引用元へリンクをはる。
サイテーションとメンションを獲得する
プロダクトそのものに人気があれば、サイテーションを得られるが、そうでない場合はなかなか難しいのが現状だ。たとえば、SNS運用がうまく機能するとサイテーションやメンションは得られやすいが、広告・PR・CSRなどさまざまな要素と関係がある。
また、ダイレクトサーチ(指名検索)を獲得すると、サイテーションポイントが上がる可能性がある。たとえば、ログイン後のマイページに価値を持たせ検索させるという方法もサイトによってはあり得るだろう。
ネガティブな言及は検索順位に悪影響があるが、炎上しない限りはプラスに働くので、何もやらないよりは、SNS運用など何かしらにトライすべきだろう(木村氏)
読了させるコンテンツにする
ヒートマップを見て、コンテンツ内のボトルネックを見つける。たとえば、読まれている部分は、記事上部へ持っていき、離脱が多いポイントは記事末もしくはカットする、といった改善が可能だ。
さらに、先回りリンクをしっかり考えて配置することも大事である。ユーザーは読了後、どんなコンテンツをさらに読みたくなるのかを想像して、リンクを配置するとよい。
上位表示ページの頻繁なクロールを確保する
頻繁にキャッシュ更新しないと検索順位が落ちそうなものは、サイトマップの上位に置いて、毎日クロールを促す。特に大規模サイトの場合は、こういったケアが必要なケースがある。
ユーザーにストレスを感じさせない表示速度を担保する
単位情報辺りの表示速度(表示時間÷ページのバイト数)が速い方が、検索順位が上位になる傾向にある。情報が多いサイトは、画像も多いため表示までに時間がかかるというジレンマがあった。1バイト当たりの表示スピードが重要になってきている可能性もあるので、PageSpeed InsightsやLighthouseなどを使って、どこがボトルネックなのかを見つける。
また、画像やJavaScriptの最適化も行う。Webフォントの使用も遅くなることがあるので、使用する箇所を最低限にした方がいいかもしれない。
「サーバーサイドレンダリングSSRとSPAどっちがいいか?」ということをよく聞かれる。すでに運用をしているサイトで、これらを選択し直すというのは、かなりまれなケースなので、検索エンジンがレンダリングできないという場合を除いて、すでにある中で最適化するには……? ということを考えた方がいい(木村氏)
まとめ
講演の最後に木村氏は、今まで挙げた項目で現時点では相関が出ていないものの、これから出てくる可能性があるものとして、構造化データを挙げた。
構造化データを使うとトピックスがわかりやすくなるため、検索エンジンがコンテンツの内容を深く読めるようになり、高品質なWebサイトを作っていると見られる可能性もある。
検索エンジンにおいても人においても、品質が高く、安全で信頼ができるサイトが上がっていく。逆にいうと、特に今のSEOは、E-A-Tを重要視するYMYLのような領域では成功しづらい。現状は、直接的に検索順位と相関していなくても、品質が上がる、信頼が上がる、評判が上がるという要素を良くしていくことで、リンクやサイテーションを獲得し、最終的に順位が上がっていくことにつながるだろう。
今後は“知りたい”“買いたい”などの目的ごとにわけて、より詳細に分析していく必要がある、と述べ講演を終えた。
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