国内外大手のアドベリフィケーション先進企業はどのような施策を行っているのか(第3回)
Momentum株式会社の柳谷です。
今回は、アドベリフィケーションについて、次のような目的でお話しします。
- 日本国内では、どれぐらいアドベリフィケーションの必要性が広まっているのか
- 先進的な企業は実際にどのような取り組みを行っているのか
アドベリフィケーションとその対策が浸透していくためには、正しい知識の普及と並行して、広告主の間でケーススタディが共有されることが必要です。今回は、国内でのアドベリフィケーション実態調査結果サマリーを紹介し、どれぐらいアドベリフィケーションについての認識と対策が広がっているかを知っていただくとともに、国内外の大手企業である富士通株式会社(以下、富士通)と米ケロッグのアドフラウド、ブランドセーフティ対策事例をご紹介します。
アドベリフィケーションの認知度は現在どれぐらいなのか?
今回モメンタムが独自に行ったアドベリフィケーション意識調査は、
- 事業会社(業態を問わない)で自社の宣伝・広報活動に携わる広告主と、メディアで自社媒体の広告事業に関わる担当者
- 計380名程度
を対象に実施しました。昨年行った調査結果と併せて、2017年から2018年にわたっての変化もご覧いただければと思います。
ここでは一部を抜粋して解説しますので、詳細についてはモメンタムが配信したプレスリリースもご覧ください。
アドフラウドの認知度が大幅にアップ
まずは、「アドベリフィケーション」と「ブランドセーフティ」「アドフラウド」「ビューアビリティ」といった、それぞれのキーワードについての認知を見ていきましょう。
2017年と比較すると、全体的に認知が拡大しています。なかでも、「ブランドセーフティ」については、回答者のうちの半数以上である58.2%がキーワードと内容の両方、もしくはキーワードを知っているとなっており、認知度の高さがうかがえます。
また、アドフラウドについては、名称も内容も知っているという人が昨年の5倍となる25.1%へ急増しております。これらは第1回でも言及した「漫画村問題」といったようなさまざまな報道から問題が顕在化していった結果かと予想されます。
具体的な対策をとっている企業はまだ20%弱
次に具体的な対策への取り組みについてです。ブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティについて何らかの対策をとっているかを尋ねた結果、回答は以下のようになりました。
ここで注目していただきたいのは、濃い緑で表示されている「対策をとっていないが、今後対策をとっていきたい」と回答した人の割合です。すべての項目において、2017年の15%前後から今年は45%以上に引き上がっているという点です。前述の「漫画村問題」などをきっかけにして当事者意識が高まったことを示す数値と言えると思います。
この「対策をとっていないが、今後対策をとっていきたい」と回答した方たちに、さらに詳しく、まだ対策が実施できていない理由について尋ねてみました。回答をまとめたのが以下のグラフです。
もっとも多かったのが、「今回の調査までこのキーワードを知らなかったから」という理由でした。これはブランドセーフティ、アドフラウド 、ビューアビリティすべての項目で上位の回答になっています。問題として認識していたとしても、具体的にどのような対策をとればいいのか、まだまだ情報が浸透していない現状がうかがえます。
次に「担当するメンバーやリソースがないから」という回答も多く見受けられ、とくにブランドセーフティにおいては、もっとも多い理由としてあげられています。逆にみると、アドベリフィケーションのなかでもブランドセーフティについては、今後はリソースを割くべき対象であると認識されていると言えるのではないでしょうか。
日本国内ではまだアドベリフィケーションへの対策は不十分
以上のような調査結果から、日本においてはアドベリフィケーションの認知や対策の導入が徐々に拡大しているものの、アドベリフィケーションへの対策が先行している海外企業と比べると、まだまだ十分ではないのが現状です。
アドベリフィケーションへの取り組みが浸透していくためには、リスクや正しい知識の啓発と同時に、広告主の間でのケーススタディの共有が必要です。今回は、国内外で自社の取り組みについて、事例として広く開示されている2つの広告主、富士通と米ケロッグのアドフラウド・ブランドセーフティにおける対策をご紹介します。
事例1:ブランドリスクを大幅に減少させた富士通の取り組み
国内屈指のITサービス提供企業である富士通株式会社は、マスからデジタルまで、幅広いメディアに多くの広告出稿を行う広告主である一方、先進的な運用型広告配信プラットフォームの提供も行っています。自社の多様なプロダクトに関するマーケティングでは、自社プラットフォームや外部プラットフォームを活用しながら、施策の一環としてプログラマティック広告を実践されていました。
しかし、年間多くの配信面へ出稿していたデジタル広告では、一部ブランドリスクがある面への配信が行われてしまっていました。
リスクを削減するためにアドベリフィケーションツールを導入
そこで富士通では、ブランドリスクを回避する目的でアドベリフィケーションツールを導入、リスクの大幅な削減を実現しました。ここで導入したのが、モメンタムが提供する、広告主に特化したアドベリフィケーションツール「Hyper Transparency for Advertiser(ハイトラ)」です。実際にどのような形で導入いただき、どんな成果が出たのかを富士通のご協力をもとに詳細な数字でご紹介いたします。
前回の記事でも、Post-Bid、Pre-Bidという手法を用いることで、
- ブランドリスクのある面への広告配信を行わない
- もし配信を行ってしまったとしても実際に消費者には見える形で広告配信を行わないようにすることが可能
ということを説明しました。これらの手法においては、
- アダルトカテゴリ
- 著作権侵害系カテゴリ
- ネガティブカテゴリ
- 悪質CGM
などの一般的にブランドリスクがあるカテゴリに対しては効果的です。しかし、企業におけるブランドリスクはこれらのカテゴリのなかだけでなく、個々の企業や展開するサービス・プロダクトが持つ潜在的なNGキーワードなどにも存在します。つまり、これらのキーワードが含まれた記事は、良質なメディアであっても該当企業の広告配信には適さないことになります。
NGカテゴリ×NGキーワードリストによりリスクを削減
富士通のケースでは、モメンタムがWebサイト上で行った分析をもとに、これら独自のリスク回避キーワードリストを作成し、広告制御のカスタムロジックとして設定を行いました。これを従来のブランドセーフティ対策用のカテゴリへの広告配信回避と組み合わせる形で複数のキャンペーンに導入することで、いずれのキャンペーンにおいてもブランドリスクは1%程度もしくはそれ以下となり、もっともブランドリスクのあったキャンペーンでは、ブランドリスクが14.5%から0.47%と大幅に減少しました。日本のブランドリスクのNorm値11.2%と比較しても著しく低い値になったことで、これは非常によい結果であったことがわかります。
事例2:アドフラウド排除に成功した米ケロッグの取り組み
アメリカ合衆国ミシガン州に本社を置き世界でもトップクラスのカテゴリーシェアを誇る食品製造企業であるKellogg(以下、米ケロッグ)は、世界的にもっとも早くアドベリフィケーションを実践していた企業の1つです。同社はブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティそれぞれにおいて取り組みを行っていましたが、アドフラウドについてはさらに改善の余地があるとして、大規模な改善施策を2016年に行いました。
具体的には「プレミアムなサイト群」におけるアドフラウドの除去への取り組みです。アドフラウドは一般的にはアドネットワークやDSPの中でも一部サイトにおいて発生するものと認識されていることが多いですが、実際にはプレミアムと呼ばれるサイト群においてもアドフラウドは発生しています。
例えば、第三者からトラフィックを購入した際にその中に不要なボットが含まれている「Sourced Traffic」という手法は、プレミアムサイトでも見受けられるフラウド手法の1つです。
アドフラウド排除のために米ケロッグが行った方法
これらの対策として米ケロッグは、
- アドベリフィケーションベンダーがインプレッション単位ですべてのキャンペーンデータを解析
- 解析したデータを外部DMPに統合
- DMPで無効なアクティビティに関連付けられているユーザーを検出
- 検出されたユーザーを排除リストに追加
- 排除リストをケロッグの広告配信に適用
という一連のプロセスを自動化することで、プレミアムなサイト群を含めたすべてのアドフラウドの排除を実現しました。その結果として、1年間で約200万USドルもの無駄な広告費の節約に成功しました。くわしく知りたい方は「ROI改善に向けたアドフラウド対策:ケロッグ、Kruxとのディスカッション」をご覧ください。
まずはベーシックな対策から取り組もう
このケロッグの事例は、ベーシックなアドフラウド対策を行ったうえで、さらに踏み込んだ対策として実施されたものです。
アドベリフィケーションへの取り組みに積極的な企業は、通常のアドベリフィケーションを行ったうえで、企業ごとにカスタマイズしたブランドセーフティ、プレミアムサイトにおいてのフラウド除去といった、プラスアルファした施策が行われています。その結果、ブランドリスクレートの低下や広告コスト削減といった目に見える成果が現れており、対策を行っている企業とそうでない企業での差は広まるばかりとなっています。
だからといって、焦る必要はありません。対策を行いさえすれば、どんな企業でもかならず成果は出るのです。アドフラウドに対する対策をまだ実施したことがない企業では、まずは第2回で説明したようなPre-Bid、 Post-Bid、ブラックリスト等のベーシックな対策をから取り組んでいただき、アドフラウド対策のPDCAをしっかり確立したうえで、さらなる対策を行っていただくのがいいでしょう。
今回はアドベリフィケーション の実態調査認識結果と国内外で実際に行われた取り組みについて解説させていただきましたが、今回の原稿で重要なポイントは2つです。
- 日本においてアドベリフィケーションの認知、導入は今後も拡大が予想される
- 対策を行っている企業とそうでない企業での差は広まっていく一方となる
次回は、広告主の皆様にリスクのない環境を容易に実現頂けるような新しい形のアドベリフィケーション施策をご紹介し、業界の健全化の一助とさせていただきたいと思います。
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