サイトの課題を洗い出し、優先順位を付けるには? #6
この記事は、書籍『いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開しているものです。
課題発見には第4章で説明した「KPIツリー」を使います。ほかにも課題を探すうえで役に立つ思考ツールがあるので、本レッスンではそれらを合わせて紹介します。必要に応じて課題洗い出しの前にこれらも使ってみてください。
Chapter 5 対処する課題を適切に決めよう
Lesson 27 [課題を探すツール]
まずは課題を探す:思考ツールを活用しよう
○課題を決めるのがマネジメントレイヤー
マネジメントレイヤーでは、改善の対象とする課題に何があるかを洗い出し、それらの課題に対して優先順位をつけ、対処するべき課題を決めていきます。
第4章で紹介したKPIツリーは、コンバージョン行動に至るまでの構造を分解したものですから、それぞれの要素が改善の対象となり得ます。しかし、KPIツリーにはユーザーの行動の順序のような時間的な概念は表現されていないため、ユーザーがサイト内で詰まりそうなポイントを見つけづらいなど、これだけでは課題の洗い出しは十分ではありません。
この章では、KPIツリーのほかに、課題の洗い出しを補完できる思考ツールをまずいくつか紹介します。その後、抽出した課題に対してどのように優先順位をつけていき、対処する課題を決めるかについて解説します。
○思考ツール①:カスタマージャーニー
「カスタマージャーニー」はすでに広く使われはじめており、描き方にもさまざまな作法があります。本書では、カスタマージャーニーをコンバージョン最適化の課題洗い出しのツールとし、以下の仮説を表現するものと位置づけます。
- ユーザーの行動とその順序
- 次の行動に行くのに何がクリアできれば良いか
- ある行動の前後で離脱する理由は何か
これらは細かく描き出すとどんどん掘り下げていけますが、まずは簡易的なものでいいので描いてみてください。これによりユーザーの行動プロセスに関する仮説が可視化されます。すると、離脱ポイントがどこにあり、どのポイントに対して施策を打つべきかをより明確にできます。
なお、カスタマージャーニーを描く際は、例えば「新規訪問者」と「何年にもわたるリピート訪問者」など、行動プロセスがまったく異なるユーザーセグメントに注意してください。行動プロセスの異なるセグメントがすでにわかっている場合は、セグメント別にカスタマージャーニーを描きましょう。
図表27-2のカスタマージャーニーの描き方は、清水誠氏が提唱する「コンセプトダイアグラム」を参考にしています。企業視点とユーザー視点のバランスが良いフォーマットです。
ワンポイント
プロジェクトレイヤーからマネジメントレイヤーへの手戻り
詳しくはレッスン34でも述べますが、プロジェクトレイヤーでの取り組み(特に分析)のなかから、マネジメントレイヤーとして位置づけるべき新たな課題が見つかることがあります。コンバージョン最適化の過程ではこうしたレイヤーの手戻りは避けられません。そのため、どのレイヤーの話なのかは常に皆さんが注意しておきましょう。3層構造はそのための地図の役割を担い、皆さんが迷子にならないようにサポートします。
○思考ツール②:顧客ポートフォリオ
顧客ポートフォリオは自社にとっての顧客の育成度(図表27-3)を考えることで、以下の仮説を表現できる思考ツールです。
- 顧客育成の段階や順序はどうなっているか
- 離脱やリピートの構造はどうなっているか
顧客ポートフォリオが役に立つのは、ユーザー育成という発想があるEC・コミュニティサイト・会員サイトなどです。第4章で紹介した、資料請求などリピート性の低いタイプのサイトには向きません。
顧客ポートフォリオは、特に単品系ECサイトでよく使われますが、「育成には段階がある」「育成にはダウングレードや離脱・復帰など後退・循環の考え方がある」などの発想は、ほかのサイトでも取り入れられます。
顧客ポートフォリオを作ると、長期的なユーザーとの関係性に目を向けやすくなります。ぜひ一度作成にチャレンジしてみてください!
○顧客ポートフォリオを描くには育成の段階・順序を決めよう
顧客ポートフォリオの作成にあたっては、育成の段階や順序を具体的に決めていきます。例えば、「初回購入後、半年以内に3回以上の購入があれば有望リピート購入者」「年間10万円以上の購入があればロイヤルカスタマー」など、判定条件や段階の名称を決めましょう。この定義自体が仮説になるので、訪問者をどのように育てていこうと考えているかを表現するときに便利です。
定義が決まれば実際のデータを当てはめることで、「各育成の段階から次の段階に進んでいるのか」「離脱が多すぎないか」といった課題の抽出が可能になります。
○思考ツール③:サービスブループリント
サービスの提供には、ユーザーには見えないバックエンド業務が必ず発生します。バックエンド業務とは、カスタマーサポート、システムインフラ、ECなら物流といった「ユーザーからは見えない業務」です。「サービスブループリント」は、ユーザーに直接サービスを提供するフロントエンド業務とユーザーからは隠れているバックエンド業務の双方の関連性を描き、「フロントエンドのユーザー体験を生み出すために、バックエンドで何が行われているか」を表現するフォーマットです。
サービスブループリントもマネジメントレイヤーの課題抽出に使えます。
○サービスブループリントで課題を抽出する
例えばコンテンツの更新頻度が訪問頻度の向上につながる場合などは、バックエンド側の業務KPIをKPIツリーに加えたほうがいいでしょう。このような気づきは、サービスブループリントを見ると得られやすくなります。
もともとサービスブループリントは、サービス立ち上げ時の設計図と位置づけられるものですが、Webサイトではこうした設計自体が「仮説」です。サービス立ち上げ時には設計図が最善に思えたとしても、実際にやってみると最善策は別にあったということが十分に起こり得ます。Webサイトは物理的な制約が少ないぶん見直しが容易です。バックエンド業務も含めて改善の対象と考えておくといいでしょう。
いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本
人気講師が教える実践デジタルマーケティング
どんなサイトでも必ず改善します!
大好評「いちばんやさしい教本」シリーズから、全デジタルマーケターの悩み「コンバージョン最適化」の実践書が登場です。コンセプトは「どんなサイトも必ず改善します」!
ECサイトだけでなく、コーポレートサイトやコミュニティサイトなど、どんな種類のサイトでも必ずコンバージョンを改善するためのPDCAの考え方などを丁寧に解説しています。
KPI/KGIの適切な定め方、課題の抽出方法、施策の優先順位の付け方なども実践的に紹介しているので、本書を読めば自社サイトを改善する具体的な道筋がハッキリ見えるはずです。
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