数字で話す文化を作る。データの見える化とシェアで実現する組織のデジタルシフト
データの取得方法が変化し、データの種類や量が膨大になっている。これをビジネスに活かすには、分析もさることながら見える化が重要だ。誰にでもわかりやすく、伝えたいことが分かるようなビジュアライゼーションが求められる。そのための道具が「ダッシュボード」だ。
「数字で話す文化を作る必要がある」と言うPtmindの安藤氏が「デジタルマーケターズサミット2017」で、「数字で話す文化を作る。データの見える化とシェアで実現する組織のデジタルシフト」と題して、ダッシュボードの機能や活用の体制について解説した。
2016年はデジマにとって変化の始まりの年だった
デジタルへの変革は大半の人が思っているよりはるかに早く起きていると言われる。安藤氏は次のように言う。
2016年は企業のデジマにとっても変化の始まりの年であった
それを端的に表すのが、マーケティングテクノロジーのプレーヤーを一覧にした通称「カオスマップ」だ。変化のイメージが掴みやすいので、2014年から16年までの3年分のカオスマップを並べてみよう。
カオスマップはマーケティングのテクノロジーをジャンル分けしている。2014年には、「マーケティングエクスペリエンス(赤い部分)」「マーケティングオペレーション(オレンジの部分)」「インフラストラクチャー(黄色の部分)」という3分野があり、2015年もほぼ同様だ。テクノロジー(ベンダー)の数は増えているが、構造の大枠は変わっていない。しかし、2016年になると様子が一変する。もちろん数も大きく増えているが、そもそもカテゴリーの分類が変わっている。
まず、「マーケティング」という言葉はカテゴリーから消えた。赤・オレンジ・黄色という色分けは担っていた役割をそのまま踏襲しているが、カテゴリーの名称が「広告・プロモーション」や「コンテンツ・エクスペリエンス」というように変わっている。さらに、「データ」「マネージメント」といった新しいカテゴリが登場している。マーケティングテクノロジーの分布なのかどうかも怪しい様相だ。
安藤氏は次のように言う。
2016年時点のマーケティングテクノロジーを俯瞰すると、ポイントは次の2つ
- 分離していたインフラとマーケティング分析が「データ」としてまとめられる
「マーケティングで使うデータはWebと広告」という時代は終わり、それ以外の基幹データやIoTデータなどが使われるようになっている。デジタルとリアルの境界がなくなり、データ統合に向かっている。
- プロジェクトやチームを管理する「マネージメント」カテゴリーが新設
プロジェクトワークフローや部門横断型コラボレーションがこれまで以上に重要になるなど、仕事の仕方が大きく変わる。
データの取得方法や種類が変わり、ワークスタイルが変わった。データとチームワークが、かつてないほど重要になったということだ。マーケティング領域は、それを解決するフェーズに入っている。
数字で話す文化を作るための道具「ダッシュボード」
データが統合され、チームの働き方が効率化に向かうためには、多様で大量のデータと組織による協働を助けるインフラが必要となる。それが「ダッシュボード」で、「数字で話す文化を作る道具」だと安藤氏は言う。日本でも潮流は来ている。
それを示す本として紹介されたのは、株式会社デジタルインテリジェンスの横山隆治氏が書いた『デジタル変革マーケティング』という本だ。
「非常に参考になるのでお勧め」とのことだが、要約すると「デジタル変革時代の高速PDCAはプランニングもアクションもすべてリアルタイムデータ(KPI)が見られる気軽な状態でなければならず、そのためにダッシュボードが必要」ということだ。
この本では、ダッシュボード(複数のデータを集めて1画面に見やすく収めて表示する機能)が重要になった理由として、次の3点を挙げている。
- データの入手経路が多様化した
- 施策から後付けでデータを出すのでは遅い
- だが、データ統合はまだExcelで手作業
データの入手経路が多様化して統合は必須になっているが、いまだにExcelの手作業というケースは多い。この作業を減らして、生産性の高い仕事に時間を使うことが重要になっている。また、ダッシュボードの利用に必要な人物像についても説明されている。検討する際には、次のような3種類の人物がいるといいという。
データビジュアライズ : 社内のデータをなるべくわかりやすくステークホルダーに伝えるための「デザイン」をする人
データマネージメント : 業務推進のためにどの指標をKPIとして共有するか定義する人
データコーディネート : ダッシュボードで表示するデータを整理・整形し、標準化する人
ちなみに、ダッシュボードと同様にデータをビジュアライズするツールとしてBIがある。しかし、この2つはまったく別物だ。大きく違うのは使う人のリテラシーで、検討する際には違いを意識する必要がある。
- ダッシュボードは、データを見える化して、さまざまな人に伝えるもの
- BIは、データサイエンティストが使う、高度な分析をするもの
データ統合、見える化、シェアが特長「DataDeck」
最後に、Ptmindが昨年提供を開始したダッシュボードサービスである「DataDeck」について、安藤氏はデモを交えて紹介した。主な機能と特長は、次の3つだ。
①データ統合
SaaSやクラウドサービスなども、アカウント情報で接続し、データを1か所に集めることができる。
②ビジュアライゼーション
集めたデータをビジュアライズしてレポートを出力。データはリアルタイムに更新される。また、画像やコメントなどを貼り込むことができるので、情報ポータルのような形で提供できる。
③シェア
レポートのURLをステークホルダーに送信することで、オンラインで共有できる。常に最新のデータを、どのデバイスからでも確認できる。
データ経済が変えた新しいROIの定義
また、データビジネスが発展し、データが価値を持つようになったことで、ROIの定義が変わったと話題になっている。従来は、Return on InvestmentをROIと略していたが、現在は、Return on Informationの略だというのだ。
従来は決裁権者(お金を持っている人)が意思決定をしていたが、それには時間がかかる。スピーディな意思決定が必要な現在は、データを持っている現場に経済価値がシフトしていくのではないか。実は、Return on Informationを定義する式も、既にある。
データ価値をコストで割るのがROIだが、このデータ価値を出すための式には時間(Time to Value)が入っている。つまり、単に分析すればいいのではなく、いかに早くステークホルダーに共有するか、それによっていかに早くアクションを起こすかが重要なのだ。
決済が下りるまで数か月かけて情報を価値に還元するという時代は終わりだ。A/Bテストをし、現場がデータを見て、数日のサイクルで改善していくのがトレンドで、安藤氏は次のように言う。
これからは現場が主導的にビジネスを動かす世の中になると思う
さらに今後は、集めたデータを機械学習させ、KPI値の変化からアクションまでの時間をゼロにしたゼロレイテンシー企業を作ることがPtmindの目標という。
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