ソーシャルメディア広告の「使いどころ」「ターゲティングの基本」、4大メディアごとに初心者向け解説
ソーシャルメディア広告の目的は、「最適な生活者につながる・届けること」
メンバーズの小野寺翼と申します。企業のソーシャルメディア運用担当者を対象に、「複数ソーシャルメディアの統合運用」をテーマに連載を担当しております。今回は「ソーシャルメディア広告」をテーマにお話します。
読者の皆さん、ソーシャルメディア広告は難しいと考えていませんか? 実際、私も以下のような声をよくききます。
「ソーシャルメディアで広告」と言われてもピンとこない。
ソーシャルメディアだけなら、お金をかけずに情報発信できるので、さらに予算をかけたくない。
Twitter、Facebook、Instagram、LINE……各メディアごとに、いろいろな広告メニューがあってややこしい。
しかし、結論から言うと、企業がマーケティング目的でソーシャルメディアを活用するならば、今は広告をいかにうまく使うかがキモになっています。
なぜなら、各ソーシャルメディアをユーザーが爆発的に使うようになった結果、今は「ふつうの企業が発信したふつうのメッセージ」が(昔に比べて)ユーザーに届きにくくなっているからです。
もちろん、広告を使わず、日々の投稿で努力して多くの人にリーチすることも可能でしょう。しかし、企業活動としてソーシャルメディアを使っているならば、その時間をお金で削減したいというのも、自然な考えです。それを実現するのがソーシャルメディア広告なのです。
難しそうに見えるソーシャルメディア広告ですが、実はソーシャルメディア広告の目的はシンプルです。それは、より多数かつ最適な生活者に対して、「つながる」「届ける」ために予算を投資することです。
各メディアや広告の種類は、「つながる」を増やすのか「届ける」を増やすのか、その目的にあわせて活用します。
つながる ―― ファン・フォロワーになってもらうために広告を出稿する。
届ける ―― 予算をかけ、発信した情報(投稿・ツイート・写真)のリーチを増やすために広告を出稿する。
また、後半で言及しますが、いずれの広告も、自社が届けたいユーザーに詳細にターゲティングして広告を見せられる点が、ソーシャルメディア広告ならではの強みです。「年代」や「性別」といった属性情報はもちろん、「自社サイトを訪問してくれたユーザー」「顧客」といったさまざまな属性データをもとに、ターゲティングできます。さらにFacebookやInstagramの場合、独自のアルゴリズムを持っており、より最適なユーザーを識別できます。
まずは、Twitter広告・Facebook広告・Instagram広告・LINE広告それぞれで、「つながる」「届ける」の2つの目的でどううまく使えるかを、具体的に説明します。
①生活者との「つながる」を増やす広告
まずは、生活者との「つながり」を増やす広告を紹介します。
Facebookでつながる いいね!広告(Page Like Ad)
その名のとおり、Facebookページに興味を持って「いいね!」してくれる人を増やすための広告です。
ユーザー側では、ニュースフィードに(閲覧者がPCであればページの右枠にも)表示されます。
なおソーシャルメディア広告では通常、一般の投稿と見分けが付くように、「広告」もしくは「プロモーション」といった表示が付記されます。
少し話がそれますが、Facebookは、ファン獲得を目的としたインセンティブの提供(たとえば、ページへのいいね!を条件に参加をうながすキャンペーンの実施)は、規約で禁止されています。ゆえに広告は、数少ないかつもっとも有効なファン獲得ツールだといえるでしょう。
Twitterでつながる プロモアカウント
あなたのTwitterアカウントをフォローしてくれる人(フォロワー)を増やすための広告メニューです。
ユーザー側では、現在フォローしていないアカウントのなかから、ユーザーが興味を持ちそうなアカウントをお勧めしてくれる表示になります。タイムライン、おすすめユーザー、検索結果などに表示されます。
Twitterは、(Facebookと違い)フォロワー獲得を目的としたインセンティブの提供を禁止していません。そのため、Twitterキャンペーンをフックにフォロワー獲得につなげている企業も多いようです。
Instagramでつながる
Instagramには、フォロワー獲得を目的とした広告メニューはありません(2016年12月時点)。
LINEでつながるスポンサードスタンプ
LINEについては、そもそも「公式アカウント開設に費用が必要なので、アカウント自体が広告」と考えられます。ただし、他のソーシャルメディア同様、友達獲得やホーム投稿のリーチ獲得につなげられる機能があるので、簡単に紹介しておきます。
LINEの場合、さまざまなインセンティブ提供を条件に友だち獲得につなげる機能が存在します。その王道が「スポンサードスタンプ」と呼ばれる、スタンプのプレゼントをきっかけに友だちになってもらうという方法です。
LINEスタンプをダウンロードしたユーザーが友だちとのトークで自社スタンプを使ったコミュニケーションを期待できます。日常の生活者同士の会話で自社のキャラクターなどがスタンプとして登場する、そんな独特かつ新しいマーケティングツールともいえるでしょう。
インセンティブはスタンプだけではなく、ユーザー自身のLINEアカウントの背景を切り替えられる「着せ替え」を提供するといったケースもあります。
②より多くの生活者に情報を「届ける」(リーチを増やす)ための広告
つづいて、「より多くの生活者に情報を届ける(リーチを増やす)ための広告」を紹介します。
各プラットフォームが提供する媒体資料を見ると、投稿タイプ別(リンク広告、動画広告など)にさまざまなメニューがあります。でも、広告メニューの多さに圧倒される必要はありません。基本的には、ページが発信する情報(投稿や写真)を、より多くの人に届けるために投資することだと考えてください。
それに加え、各メディアの広告投稿では、自社ECサイトに送客できる「購入する」 ボタン、スマートフォンからApple StoreやGoogle Playのアプリページに送客できる「インストール」ボタンなどを付けることが可能です。これらを活用すれば、より高いビジネス成果が期待できます。
Facebookで届ける 投稿広告(Page Post Ad)
Facebookでは、ページ発信するほとんどの投稿(近況アップデート、写真、動画、クーポンなど)を、広告として設定することが可能です。通常の投稿より、さらに多くの人たちに情報を届けることができるでしょう。
各ストアのアプリケーションページへ移動し、インストールを促すようなボタンも、広告投稿なら設置できます(スマートフォンの場合)。
FacebookやInstagramでは、移動先ページを作っておいて、資料請求やお問い合わせといったリード獲得につなげられる「リード獲得広告」というメニューもあります。手軽にフォームを作成できるメリットがありますので、活用してみてください。
詳細は以下のページを参考にしてください。
- リード獲得広告 | Facebookヘルプセンター
https://www.facebook.com/business/help/1462876307360828 - タップ数回で簡単にフォーム入力できる広告のテストを開始 | Facebook for Business
https://www.facebook.com/business/news/JA-lead-ads-test
Twitterで届ける プロモツイート
TwitterもFacebook同様、ツイートを広告として設定することで、より多くの人にツイートを届けることができます。
広告のツイートはユーザーのタイムラインに優先的に表示できるほか、ユーザーがTwitter検索を行った際に、検索結果に優先的に表示できます。
Twitter広告でも、Facebook広告同様に、ページ先誘導やアプリインストールなどにつなげることができます。
Instagramで届ける 投稿広告
Instagramも、FacebookやTwitter同様、投稿した写真のリーチ獲得(より多くの人に見てもらうこと)が目的の広告商品があります。
またInstagramでは、FacebookやTwitterと異なり、通常の投稿では自社サイトへのリンクを設置できません(URLを記載することはできますが、他メディアのようにリンク設定がされず、プレーンテキストでのURL紹介にとどまります)。
しかし広告を活用すれば「詳しくはこちら」「購入する」といったリンクボタンを付与できます。もちろん、他メディア同様アプリを「インストールする」ボタンを付与することもできます。
なお「Instagramの通常投稿では、外部への送客ができない」理由については、「写真や動画共有という世界観を重視するメディアであるがゆえに、Instagramの中での完結を良しとしているから」だと、筆者は個人的に推測しています。
そういうわけで、Instagramの場合、「広告を活用する=外部への送客が可能になる」という大きなメリットがあります。
上図は「購入する」が付与されたInstagram広告。クリックしてくれたユーザーを、自社ECサイトの商品ページへ送客できます。
同様に、上図ではアプリインストールを促しています。
LINEで届ける Timeline AD
「Timeline AD」は、ユーザーのタイムライン上の広告枠に、自社の投稿を紹介できるメニューです。Facebookなどと同様に、アクションを訴求するボタンを付与できます。
他にも、LINEポイントの付与というインセンティブをきっかけに、自社投稿のシェアをお願いできる「タイムライン共有キャンペーン」といったメニューもあります。ホーム投稿のシェアが増えれば、リーチはもちろん、友だちのシェアをきっかけに、新規友だち見込みのユーザーにも投稿がリーチし、友だち増加が期待できるでしょう。
他メディア同様に、トークやホーム投稿を性別や属性といった情報で、ターゲティングすることも可能です。こちらは、公式アカウントの管理画面から、追加費用などなしで利用できます。
つながりたい人たちと「つながる」ための、届けたい人に「届ける」ためのターゲティング
ここまでは、ソーシャルメディア広告の大枠の目的ベースで話を進めました。しかしソーシャルメディア広告の大きな特徴かつ強みが「ターゲティング」です。
ターゲティングは、広告を使って、より自社が「つながりたい人」に「つながる」ために、そして「情報を届けたい人」に「届ける」ためにぜひ活用すべき、ソーシャルメディア広告ならではの機能です。
ソーシャルメディアでは、生活者はプロフィール情報を登録していますし、さまざまな種類の投稿やアカウントやページに「見る」「いいね!する」「フォローする」「コメントする」などのアクションをしています。そうした、さまざまな情報を参考に最適なユーザーを識別して広告を出せるのです。
たとえば、次のような形です。
「20歳以上の男性」といった年齢や性別といった属性で絞り込んで広告を表示する
「スポーツが趣味」といった興味・関心をもとに絞り込んで広告を表示する
「東京・神奈川・埼玉・千葉に住んでいて、大卒でIT業界に勤めていてMacを使っている男性」に絞り込んで広告を表示する
生活者が情報を発信できる、企業や友だちとコミュニケーションをとる、ソーシャルメディアだからこその機能だといえるでしょう。
それではプラットフォームごとに、どのようなターゲティング機能があるかを見ていきましょう。
Facebook広告とInstagram広告のターゲティング
FacebookとInstagramは、広告の出稿方法・使用するツール・利用できるターゲティング条件が同じです。これは、どちらもFacebook社が運営しているサービスだからです。
FacebookとInstagramは、独自のアルゴリズムを持っており、その人が
- ファンになっているページ
- 発信する情報
- よく「いいね!」している投稿
など、さまざまな情報をもとに、興味・関心を判別し、より適切なユーザーにターゲティングして、情報を届けてくれます。
- 年代・性別: 「20歳以上の男性」「30~40代の女性」など年齢層や性別
- 居住地・使用言語: 住んでいる地域や使用言語
- 興味・関心: スポーツや音楽といった興味・関心の高いと思われる生活者をターゲティング
もちろん、これらの項目を組み合わせて、ターゲティングすることも可能です。たとえば、「東京に住む、20代男性」「ファッションに興味を持っている、30代女性」といった具合です。年代・性別のみを設定し、興味・関心はアルゴリズムに委ねるといったことも可能です。
その他、次のようなターゲティングも可能です。
自社が管理しているFacebookページへの「いいね!」の有無
Facebook広告では、自社ページへのいいね!の有無により切り分け、ターゲティングすることができます。これにより、
- 自社に対しすでに興味を持ち、ファンになってくれているか?
- これからファンになってくれるであろう新規見込みのユーザーなのか?
を判断して広告を打つことが可能です。
また、Facebookページ開設後、しばらくしてからInstagramアカウントを開設した場合、自社のFacebookページに「いいね!」をしている人向けに、Instagramで広告を配信するといった使い方もできます。
カスタムオーディエンス
自社が持つ顧客情報(メールアドレス)をもとにターゲティングできます。まずは、自社の顧客と「つながる」ために「いいね!広告」に投資し、つながりが増えたら、新規開拓のため顧客以外に広告を出稿する、といった使い方が考えられるでしょう。
また、顧客限定キャンペーンなどの広告を、自社の顧客だけにFacebookやInstagramで表示するといった使い方も有効です。この場合も、自社顧客のメールアドレスリストを使ってターゲティングします。
リマーケティング
自社のサイトや特定のページに訪問してくれた人向けに広告を届けることができる機能です(事前にサイトに「Facebookピクセル」というコードを実装しておく必要があります)。
ECサイトであれば、
- 商品に興味を持ちサイトに訪問をしてくれた人向けに、商品の情報を届ける
- 特定の商品を購入してくれた(購入ページで購入を完了した)人向けに、関連商品の情報を届ける
といった使い方ができます。
Twitter広告のターゲティング
TwitterもFacebookとほぼ同様にさまざまなターゲティング機能を持っています。
詳しくは、以下のページが参考になるでしょう。
- 広告のターゲティング(Twitter for Business)
ターゲティングの例としては、以下の9つがあげられています。
言語ターゲティング ―― 特定の言語を使用しているユーザーに広告を表示します。
性別ターゲティング ―― 男性ユーザーまたは女性ユーザーに限定してメッセージを伝えることができます。
インタレストターゲティング ―― がTwitterで関心を持ったり反応を示したりしたトピックに基づいてユーザーを絞り込みます。特定の商品やサービスに関心を示すと思われるユーザーを対象にできます。
フォロワーターゲティング ―― 特定のユーザー名のフォロワーに似ているユーザーにリーチします。特定の商品やサービスに関心を示すと思われるユーザーを対象にできます。
端末ターゲティング ―― 特定のモバイル端末からTwitterにアクセスしているユーザーをターゲティングします。
行動ターゲティング ―― Twitterユーザーのショッピング履歴やライフスタイルの傾向に基づいて、購買意欲の高いTwitterユーザーをターゲティングします。
テイラードオーディエンスターゲティング ―― 各社独自のマーケティング用の顧客リスト(メールアドレスのリスト、リターゲティングリスト)を使って、Twitterの特定のユーザー層をターゲティングします。
キーワードターゲティング ―― ユーザーの最近のツイート内容や検索キーワードに基づいて、ユーザーが関心を持っていると思われるメッセージをタイムリーに表示します。
地域ターゲティング ―― 世界中のオーディエンスとつながることも、特定の国や地域、都市にキャンペーンの対象を絞ることもできます。
マーケティングにおいて、ソーシャルメディア広告活用は重要
今回、ソーシャルメディア広告とは何なのかを、目的や機能を軸に解説しました。ソーシャルメディアは、企業と生活者の双方が情報を発信しコミュニケーションができる場です。ゆえに、企業視点でも生活者発信同様に無料で情報発信できるという認識をお持ちの方も多いでしょう。
それは正しいのですが、ソーシャルメディアもメディアの1つです。企業がビジネス成果につなげるためには、広告というカタチで投資して有効活用するほうが、より早くより効果的に、成果につなげられるのではと考えています。
Facebookであれば、広告を使わないオーガニック投稿への、ファンのリーチ率は、おおよそ10%程度です(弊社独自調査)。このリーチをさらに増やしたほうが、情報がより多くに届いてその価値が高まることはいうまでもありません。
何よりもソーシャルメディア広告は、有効かつ精度の高いターゲティング機能を持っており、企業目線で届けるべき・届けたい人に情報を届けることができます。これは、ソーシャルメディア広告だからこその機能であり、マーケティング視点で活用しない手はないでしょう。活用の仕方もいろいろあります。
ファンやフォロワー獲得を中心に、広告を活用する。
オーガニック投稿をベースに発信し、勝負に出るときに絞って広告を活用する。
頻繁に情報発信を行う体制がないため、ペイドメディアと割り切り、広告中心に情報発信をする。
自社の顧客層・見込み顧客層向けの情報発信ツールとして、広告を積極的に活用する。
自社のサービスや製品、運営体制や予算などを考慮し、自社にあった広告活用を見つけてください。
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