DMP導入のポイントは? リクルートが広告をさらに最適化させた手法とは
DMP(データ管理プラットフォーム)導入のポイントのひとつは、膨大なユーザーデータや環境データなどを活用して、WEBマーケティングにおけるDSPなどのマッチング精度を最適化することだ。ただ、DMPを導入してみたが思うような結果が得られないという話もよく耳にする。
そこで今回は、2015年4月に開催されたOracle Cloud World 2015で実施された、リクルートコミュニケーションズの金田 將吾氏による講演内容を紹介する。自社で開発したDSPによる広告配信の効果を、Oracle DMPで最適化させた手法とは。
「枠から人へ」と変化したデジタルマーケティング
リクルートグループは2012年に持株会社制に移行、主要事業部を分社化し、グループ各社がそれぞれの得意領域でビジネスを推進しながらグループシナジーを生み出している。そのなかにあってリクルートコミュニケーションズでは、グループにおけるマーケティング・コミュニケーション領域を専門とし、制作、流通、宣伝などの面でグループ内メディア・サービスのサポートをするほか、広告クリエイティブの最適化も行っている。
金田氏は「時代がWebマーケティングからデジタルマーケティングへと移り変わった」とし、それによって広告クリエイティブにも変化が訪れていると語る。
デジタルマーケティングにおける一番のポイントは、「枠から人へ」という変化です。ユーザーやカスタマーに対して、ユーザーデータ、環境データ、外部データといったさまざまなデータを駆使し、自社の商品やクライアントとカスタマーとのマッチングをどう最適化していくかが重要になっています(金田氏)
「枠から人へ」という考え方に基づき、「カスタマーとのマッチング」をどのように実現するのか。金田氏は、デジタルマーケティングの基本原則として、次の3つの観点での最適化が重要だとする。
- 誰に
- どのタイミングで
- 何を伝えるのか
たとえば、中古車情報メディアの「カーセンサー」の広告であれば、「誰に」は、車を扱っているので当然ながら車が欲しい人です。「どのタイミングで」は、車好きの人のブログにある広告枠にカーセンサーの広告を表示すると、比較的高い効果が得られると想像できるでしょう。
誰に、どのタイミングで、何を伝えるのか。すべての領域において、多変量テスト(MVT)などを使ってさまざまな組み合わせを確認し、一番効果の高い広告を選ぶことが求められています(金田氏)
このような背景から、リクルートコミュニケーションズではユーザーやタイミングの情報を把握し、最適な条件を高速でナレッジ化するために、自社でDSP(Demand-Side Platform)を開発した。
マッチング精度と効果の向上のためにOracle DMPを導入
自社開発したプライベートDSPにより、もっとも効果的な広告配信を目指してきた同社だが、さらなる最適化を求めてDMP(Data Management Platform)の導入にも踏み切った。それが、「Oracle Marketing Cloud」の1つであるオラクルの「Oracle DMP」だ。
金田氏は、Oracle DMP導入の理由を「ユーザーデータの拡張により、DSPのマッチング精度と効果をさらに高めるため」と説明する。
DSPによるバナー広告配信では、ページが見られた瞬間に、どのようなユーザーかを識別し、どのような広告を表示するかが0.1秒以内に判断される。この判断は、ユーザーデータと環境データを分析することで行われるため、データの量や質がマッチング精度に大きく影響することになる。
さらに、ユーザーデータと環境データには、自社データと外部データがある。リクルートコミュニケーションズでは、自社データとしてDSPを導入しているグループ内メディアのユーザーや媒体、広告効果のデータを自社のDMPに蓄積して活用している。しかし、それ以外のデータも加えることで、データの量と質をさらに向上させることができると判断した。
選択の決め手はデータの数とデータの整理力
DMPには、「プライベートDMP」「データエクスチェンジ」「DMP最適化インフラ」など、その役割や位置づけによって種別があり、それぞれ製品が存在する。リクルートのDMPの導入は、サードパーティクッキーをデータエクスチェンジを利用して組み込むことが目的だった。したがって、製品選定にあたって金田氏は次の2点を重視したという。
- データプロバイダ(データ提供元)の数/データの数
- 集めたデータの整理力/整理ノウハウ
まず、データエクスチェンジの価値について、中長期的な視点で考えました。結論としては、データエクスチェンジそのものが持つ整理力や整理するための能力が重要になります。また、膨大なユーザーの情報を整理するには、クラウドであることは必須です。
データをたくさん持っていて、整理ノウハウが高く、クラウドを得意とする提供企業はどこか。この条件を満たす製品はいくつかありましたが、そのなかでもOracle DMPは、米国でオーディエンス情報の整理力(タクソノミー)でトップの評価でした。
導入における平均効果としてコンバージョン数の倍増、メディア配信原価の20%削減を実現したという実績もあり、リクルートコミュニケーションズがやりたいことに合致していると判断しました(金田氏)
UIとセキュリティ面が現場スタッフから高評価
Oracle DMPの導入プロセスとしては、対象サイトにOracle DMP用のタグを設置して、リクルート内メディアにおけるユーザー行動の情報をOracle DMPに蓄積した。そのうえで、Oracle DMPにつながっているデータプロバイダからのデータを使うことでオーディエンス情報を拡張した。
実装は、次のような5名から構成されるチームが担当し、2か月程度で広告配信まで至ったという。さらに、「タグ設置では、エンジニアがいると導入がスムーズかつ迅速に進められます」と導入のポイントを語った。
- 全体を統括するリーダー
- Oracle DMPのタグ実装をするフロントエンジニア
- 自社のデータを深く知っているデータサイエンティスト
- キャンペーンのプランニング・設計の担当者
- アドオペレーション(マーケティング部隊)の担当者
Oracle DMPは多くの機能を備えているが、ユーザーの関心を示す「プロスペクト」(Prospect)機能には非常に期待しているという。これは、自動車に対する興味という属性がある場合、単なる「ある」「なし」ではなく、「強く興味がある」「少し関心がある」など、関心の度合いまでを情報として提供するもので、ターゲティング設定の際に力を発揮する。
Oracle DMPを実際に使い始めて、現場のスタッフが高く評価しているところが、UIとセキュリティです。UIについては、セグメントを切ったり、ソースを足したりすることが、ほぼリアルタイムで反映されます。どのくらいの母集団がファーストパーティやサードパーティに存在するか、俯瞰的に眺めながら操作できるところが便利です。
セキュリティについては、操作画面でロール管理がしっかりしていることです。複数のキャンペーンを扱うような場合に、担当プランナーは特定のキャンペーンのみ操作できるように切り分けがしっかりされています。こういった点は、さすがエンタープライズ向けに強い会社の製品だと感じました(金田氏)
導入3か月で「広告配信の最適化」を実現
2015年1月からプライベートDSPにOracle DMPを組み合わせた利用を開始して、約3か月が経過した。最初に見えてきた効果として、単純なブロード配信や見込みが薄いとわかったセグメントへの配信を止めるなど、ディスプレイ広告の配信最適化が進んだという。
最後に金田氏は、次のように今後の展望を語って講演を締めくくった。
これまではターゲット外の方に広告が配信されてしまったり、ターゲティングができないがゆえに同じ内容のクーポンをばらまくなど、有効なクーポン配信が実現できなかったりしました。しかし、今後は新規の特定のターゲット領域の顧客にだけ特別なクーポンを配信するといった出し分けなどを、視野に入れることが可能になります。
マーケッターとして見ると、領域だけではないメーカー・車種といった細かなレベルの関心について、さらに関心が薄いか濃いかなど、いろいろな情報があって施策の幅が広がります。どうやってコミュニケーションするかを考える立場として、ターゲットを想像しやすくなってきました。これは非常に大きなメリットです
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