データドリブンマーケティングの成功に不可欠な3つの要素とは?~DeNAの事例から~
様々なデータを1つのプラットフォーム上に収集
「DeNAマーケティング部門を支えるデータ可視化ツール~データドリブンマーケティングの成功に不可欠な3つの要素~」と題した、データドリブン・マーケティング&ADフォーラムの講演には、ドーモ株式会社の代表取締役である水嶋ディノ氏、そしてDeNA デジタルマーケティング部のチームリーダー 川田穂高氏と佐藤久美子氏が登壇。データドリブンマーケティングに必要となる3つの要素について解説するとともに、DeNAがDomoのビジネス管理プラットフォーム「Domo」を活用し、同社が抱えていた課題を解決したのかが語られた。
2010年、米国ユタ州で創業したDomoは、従来のBI(ビジネスインテリジェンス)と全く異なるアプローチにより、データドリブンな経営を実現するためのビジネス管理プラットフォームをクラウドで提供するテクノロジーベンチャー企業だ。
近年、Excelやデスクトップ分析ツール、データベースをはじめ、SNSやクラウドアプリケーションなど、様々なプラットフォームから収集されたデータがマーケティング担当者の前に氾濫している。
Domoはそれらの情報を容易に1つのプラットフォーム上に収集、提示する。これにより、事業の状況をリアルタイムかつ俯瞰的に把握でき、適切な意思決定を下すことを支援する(水嶋氏)
素早いデータ確認に基づくシンプルな意思決定が成功の第一歩
このDomoを導入し、データドリブンマーケティングの実践にまつわる課題を解決したのがディー・エヌ・エー(以下、DeNA)である。
DeNAは主軸とするモバイルゲームやECをはじめ、エンターテインメント、キュレーションなど複数のドメインで事業を幅広く展開している。これらの各事業に対して横串で貫いたマーケティング活動をしているのが同社のマーケティング本部であり、川田氏の役割の1つは、その活動においてデータドリブンマーケティングを適用していくことにある。
川田氏は、データドリブンマーケティングの成功に不可欠な3つの要素として、次の3つを挙げた。
- データドリブンマーケティングのプロセスを踏めること
- 行動力のある組織であること
- データドリブンの成熟度を定期的にチェックし、成熟度を高める努力を怠らないこと
データドリブンマーケティングに不可欠な要素の1つ目の「データドリブンマーケティングのプロセスを踏めること」について、川田氏の言うデータドリブンマーケティングのプロセスとは、下記の3ステップだ。
- STEP1 : 素早く簡単にデータを見て
- STEP2 : シンプルに意思決定し
- STEP3 : マーケティングをする
これらのプロセスをきちんと踏んでいくことで、的確なマーケティング活動が実現されるのだ。単純で簡単な論理だが、その実践は難しい。
データドリブンマーケティングに不可欠な要素の2つ目の「行動力のある組織であること」については、そもそもデータドリブンマーケティングを的確に進めていくためには、各ビジネスユニットとの協力が不可欠となる。なぜなら、データに基づく意思決定ができても、それを実際の活動につなげられなければ意味がないからだ。ステークホルダーとコンテキスト(背景)についての共通理解を得られていなかったり、目標やKPIが揃っていなければ、組織としてアクションを取ることができない。
データドリブンマーケティングに不可欠な要素の3つ目の「データドリブンの成熟度を定期的にチェックし、成熟度を高める努力を怠らないこと」について、DeNAは定期的にその成熟度を評価するとともに、現状の課題を洗い出して優先順位に基づいた対策を行うことで、その成熟度を高めてきた。
Domoの導入で、データ可視化のための工数を83%削減
DeNAでは、データドリブンマーケティングに不可欠な3つの要素を実践し、マーケティング活動をしていくうえでどのような課題が生じていたのか、また、それをDomoの導入によりどのように解決したのかを見ていこう。
佐藤氏によると、これまでのDeNAでは、前項で紹介したデータドリブンマーケティングのプロセスにおいて生じる、「データ可視化工数の削減」、「データに関する意識向上/判断の高速化」、「ビジネスユニットとの連携強化」について問題を抱えていたという。
まず一つ目が、データ可視化工数の削減だ。佐藤氏は、「必要なデータをいつでも好きなタイミングで簡単にチェックしたいというニーズは以前からあったが、毎日のデータ抽出やレポート作成に多くの工数がかかっている状況だった。通常レポートの作成工数だけで毎日1時間30分以上がかかっていた
」と話す。
その理由について佐藤氏は以下を挙げる。
- 事業の数が多い
- データベースの種類が多い
- スキルが必要
- オフライン管理のデータがある
- 大幅な業務フローの変更は困難
これらの課題はDomoの導入によって解決できた。はじめに必要となるデータをすべてDomoに集約、必要なデータがすぐに取り出せるようにした。その上で、データの抽出から更新に至る作業をDomoにより自動化、あわせて各事業部がそれぞれ有していたデータの紐づけもDomoで実施した。これにより、ローカル環境で行っていた紐づけ、集計作業が不要になった。
さらに、それらの多彩なデータに基づいたレポート作成、グラフ化の作業もDomoで行えるようになり、専門的なスキルがなくとも、誰もが簡単に必要なデータを確認できるようになっている。「これらの対応を行うことで、データ可視化の工数の83%を削減できた」と佐藤氏は訴える。
必要なタイミングでの情報共有を実現し強固な協力体制を構築
シンプルな意思決定には、マーケティングスタッフによるデータに対する意識向上と判断の高速化が不可欠となる。しかしDeNAでは、次に挙げた理由から、蓄積されたデータがうまく活用されていなかった。
- 見たいタイミングでレポートが見られない
- 見るべきレポートがわかりづらい
- データから気づきを得づらい
- データを活用したコミュニケーションの習慣がない
こうした課題についても、Domoの導入によって解決された。まずは担当者の行動のタイミングに合わせてデータを更新するよう環境を整備。例えば事業データなら朝のミーティングに間に合うよう、前日夜までにデータを更新する、アクセス解析データなら施策開始日の速報データを時間帯別に更新するなど、すぐに行動につなげられるような時間帯や頻度でデータを更新するように設定した。
また、グラフについてもDomoを活用して一つ一つをシンプル化するとともに、ダッシュボードを構築し、必要なデータを一元的に閲覧、各メンバーでシェアできるようにした。
さらにダッシュボードも、マーケティング施策のスケジュールや概要をテキストやグラフで表示したり、担当者がそれだけを見れば、すぐに状況を把握できるよう整備した。
「Domoによるデータ活用の改善を図ったことで、行動力のある組織の実現、すなわち3つ目となるビジネスユニットとの連携強化という課題も進展した。
ビジネスユニットとの連携を強化してアクションにつなげる
部門間でデータ活用について認識にズレが生じてしまう理由は主に下記の3点だ。
- KPI、目標、課題のすり合わせが不十分
- 必要なタイミングでデータが共有されていない
- 共有されたレポートの活用がされにくい
まず重要なことは、マーケティング部門とビジネスユニットの間で、KPIや目標値、課題についての認識の共有を行うことだ。そのすり合わせをしっかり行ったうえで、Domoを導入、必要なタイミングでデータやレポートを共有できるように努めた(佐藤氏)
具体的には、ビジネスユニットの担当者は、Domoを使い、事業実績をダッシュボード化してマーケティングメンバーと共有することで、マーケティング施策が事業実績にどう影響しているのか、即座に状況を掴めるようにした。
一方、マーケティング部門側でも、施策の効果に関するダッシュボードをビジネスユニット側と共有。その効果を把握するだけでなく、さらにマーケティング施策を最大化できるための“気づき”を得られるような環境を整備している。
こうした施策により、両者間に強い連携が育まれており、マーケティング施策の効果も最大化できるようになると期待している(佐藤氏)
なお、佐藤氏によれば、Domoの導入期間は約2か月間程度で、実作業にあたったのも同氏一人だけだったという。
講演の最後に再び登壇した川田氏は、「今後はDomoの活用を経営企画や幅広いビジネスユニット、経営者層にも広げていきたいと考えている。これにより、データドリブンな意思決定が企業内により一層進展し、さらに競争力を高められると考えている
」と展望を語った。
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