Web広告の効果測定は「評価指標」と「費用対効果」をおさえて集客最大化 #2/3
広告効果測定の基本業務は、まず「広告指標」と「費用対効果」を把握することです。CVRやCTRといったバナー広告やリスティング広告のデータを測定し、レポートするだけが効果測定ではありません。広告指標と費用対効果をもとに、なぜそのような結果になったのか、広告データを見て要因分析することが肝心です。
今回は広告効果測定の基本業務として、「広告指標と費用対効果の把握」と「広告データを見て要因分析する」という2つの業務を解説します。
基本業務1:広告指標を把握
広告にどんな効果があったのかを数値でチェック
広告の目的(認知・誘導・獲得)によって求める広告効果は異なります。たとえば、ユーザーAがバナー広告を見て(認知:インプレッション効果)、ランディングページに到達し(誘導:トラフィック効果)、資料請求をした(獲得:レスポンス効果)場合には、3つの広告効果が得られたことになります(図1)。
では、これらの広告効果を把握するためにチェックすべき広告指標を整理します。チェックすべき指標は、広告の目的や施策によって変化しますが、基本的な広告指標のチェックポイントは次のようになります。
1. 広告指標の理解
認知(インプレッション効果)のチェックポイント
ブランドや商品サービスの認知拡大を目的とする場合は、インプレッション(Imp)やインプレッション単価を中心に広告効果を把握し、ターゲットへのリーチ、フリークエンシー(あるユーザーに対する広告の接触回数)を適切に設定することが重要です。
目的 | 広告効果 | 効果測定指標 | チェックポイント例 |
---|---|---|---|
認知 | 表示された広告がユーザーに見られたか。広告を見てユーザーが内容を理解したか。 | Imp CPM など | 広告の配信ボリューム(広告表示回数)が足りているか、インプレッションあたりの単価効率を中心に把握する |
- インプレッション(Imp:Impression)
広告が表示された回数。 - インプレッション単価(CPM:Cost Per Mile)
広告表示1000回当たりの単価。
CPM=(広告費÷インプレッション数)×1000 - リーチ(Reach)
配信した広告が何人に見られたか、配信した広告に1回以上接触した人の比率。 - フリークエンシー(FQ:Frequency)
ターゲットユーザーに何回広告が表示されたか示す値。
※フリークエンシーキャップを設定することで、同一ユーザーに対する広告表示回数を制限できます。
誘導(トラフィック効果)のチェックポイント
ランディングページへの誘導を目的とする場合は、クリック数、クリック率、クリック単価(CPC)を中心に広告効果を把握し、クリエイティブ(バナー)が期待どおりにクリックされ、ターゲットユーザーを誘導できているか確認しましょう。
目的 | 広告効果 | 効果測定指標 | チェックポイント例 |
---|---|---|---|
誘導 | 広告を見てWebサイトやランディングページへ誘導できたか。ターゲットをどのくらい誘導できたか。 | Click CTR CPC など | 適切な広告選定とクリエイティブによるクリック数の確保ができたか把握する。掲載している広告枠(配信面)、投下予算、クリエイティブが適切か確認する。 |
- クリック数(Click)
広告がクリックされた回数。数値が高ければサイトへの誘導数が多いといえます。 - クリック率(CTR:Click Through Rate)
広告の表示回数に対してクリックされた比率。
CTR=(クリック数÷インプレッション数)×100(%) - クリック単価(CPC:Cost Per Click)
広告1クリック当たりの広告単価。
CPC=広告費÷クリック数
※数値が低ければ低単価で効率的にサイトへ誘導ができているといえます。
獲得(レスポンス効果)のチェックポイント
商品購入やメルマガ会員登録など、アクションの獲得を目的とする場合は、コンバージョン数、コンバージョン率、顧客1人当たり、または注文1件当たりの獲得コストなどを中心に広告効果を把握します。ランディングページに誘導した後で、資料請求・会員登録・商品購入などの獲得成果につながっているか、獲得効率が目標値の範囲内か確認します。
目的 | 広告効果 | 効果測定指標 | チェックポイント例 |
---|---|---|---|
獲得 | 商品購入や会員登録など獲得に結びつけることができたか。獲得効率を上げることができたか。 | CV CVR CPA CPO など | 獲得効率がKPIや目標値の範囲内か把握する。直接的な獲得効率などを中心に確認する。 |
- コンバージョン数(CV:Conversion)
広告を経由して資料請求・会員登録・商品購入などの獲得成果に至った件数。 - コンバージョン率(CVR:Conversion Rate)
広告を経由してサイトを訪れたユーザーの内、獲得成果に至った件数の比率。
CVR=コンバージョン数÷クリック数×100(%) - 顧客獲得単価(CPA:Cost Per Acquisition)またはオーダー獲得単価(CPO:Cost Per Order)
1コンバージョン当たりの広告単価を示し、広告費をコンバージョン数で割った値。
CPA=広告費÷獲得成果件数。CPO=広告費÷注文件数
※CPAまたはCPOが低ければ一般的に投資効果が高いといえる。
なお、商品購入など、企業が達成すべき目標の達成度合いを測る定量的な指標のことを、重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicators)といいます。
2. 費用対効果を把握する
広告指標を把握したら、次に広告指標とあわせて、広告費に対する売上額や利益額の割合などを中心に広告効率を確認します。
目的 | 広告効果 | 効果測定指標 | チェックポイント例 |
---|---|---|---|
売上 利益 | 広告費が売上や利益に結びついたか。費用対効果を把握する。 | ROAS ROI など | 広告キャンペーンやクリエイティブ単位での売上状況、広告キャンペーン全体の売上、利益など費用対効果などを中心に確認する。 |
- 広告費用対効果(ROAS:Return On Advertising Spend)
投資した広告費に対して得られた売上金額の割合を示す。
ROAS=売上金額÷広告費×100(%)
※ROASが高ければ広告が効果的に売上に寄与しているといえます。また、媒体やクリエイティブの違いなどによる広告効果の違いを実際の売上に基づいて比較できます。 - 投資収益率(ROI:Return On Investment)
投資したコストに対して生み出した利益の割合。ROI=利益額÷投資した費用×100(%)
広告費に対する広告効果の良し悪しを判断するには、「数(ボリューム軸)」「率(割合軸)」「単価(費用軸)」の視点から広告指標を見て、数値が「高い/低い」「変化があった」「異常値」などを確認していきます(図2)。
基本業務2:広告データを見て要因分析
なぜその結果になったのか、どうすればもっと良くなるのかを把握する
広告効果測定では、なぜそのような結果になったのか、要因を分析して特定することが重要です。これによって広告の効果を判断するだけでなく、次の広告施策の効果改善にもつながります。
ポイントは、広告データの中で数値が大きく上下している部分(インパクトの大きい部分)から変化の要因を特定すること。その際に重要なのは、マクロの視点とミクロの視点でデータを見ていくことです(図3)。
1. 広告施策単位の要因分析(マクロの視点)
まず、リスティング広告やアドネットワークごとに広告施策をグルーピングし、広告施策単位で要因の特定を行います。要因分析で見るべきポイントは3つです。
- 媒体やキャンペーンなどの広告施策別に広告指標を比較し、広告施策全体の良し悪しを判断する。
- 目標KPIと実際の広告指標、広告費を比較する。
- 平均値を見る場合は、個々の広告ごとに成果が極端に良い/悪いものがないかを注意する。
2. 詳細別の要因分析(ミクロの視点)
広告施策の全体像をつかんだあとは、個別の広告施策ごとに要因を分析します。ここでは「キーワード分析」と「クリエイティブ分析(広告文とバナー)」について解説します。
リスティング広告の入札キーワード&入札単価分析
リスティング広告の分析のポイントは、「入札キーワードごとの検索クエリ」と「入札単価」の分析です。
- 入札キーワードごとの検索クエリ分析
ユーザーが検索エンジンに入力した単語やフレーズ(複合語)を「検索クエリ」といいます。広告費(コスト)、CV数、CTR、マッチタイプ※1などを入札キーワードごとに降順で並び替えし、ターゲットユーザーに届かない不要な検索クエリがないかを確認し、コンバージョンにつながりやすい検索クエリを探しましょう(図5)。
※1 マッチタイプ:登録している広告キーワードと、ユーザーが入力する「検索クエリ」がどの程度マッチングしたら広告表示するのかを決める条件のこと。マッチタイプの具体的な解説は、Yahoo!プロモーション広告の公式ラーニングポータルやGoogle AdWords広告のAdWordsヘルプページを参照してください。
- 入札キーワードの単価分析
入札キーワードごとの検索クエリを確認したら、次に入札単価の分析を行いましょう。現状のCPAと目標CPAとの乖離から、目指すべきCPCとCVRを逆算し、キーワードごとの入札単価を見直しましょう。
CPAを下げたい場合(図6)を例に考えてみます。課題となるCPAを低下させるには、まずはCV数を上げる必要があります。CV数が少ない要因の1つとして、クリック数が少ないことが考えられるので、「マッチタイプ」を「部分一致」や「フレーズ一致」などに変更することでインプレッション数を増やしたり、平均順位※2を上げるためにキーワードの入札単価の増額やキーワードの見直しを行い、検索ボリュームを増やすなどして調整することができます。
※2 平均順位(平均掲載順位):リスティング広告の広告が表示される順位のこと。平均順位は、上限の「クリック単価」×「広告の品質スコア」によって変動します。
リスティング広告のクリエイティブ分析(広告文)
- 広告文のチェックポイント
リスティング広告のクリエイティブ分析では、広告文を誘導(CTR)と獲得(CVR)の視点で見ます(図7)。
ユーザーが情報を検索するときは、当然ながら入力した検索ワードに関する情報にしか興味がないため、広告効果を上げるにはユーザーが知りたい情報と広告文(タイトル、テキスト)の一致、さらに広告文をクリックした後に誘導されるランディングページとの整合性が重要になります。
ユーザーの検索ワードに対して、表示された広告文や広告のリンク先ページとの関連性が高い(CTRが高いなど)と判断されると広告品質スコア※3が高くなり、その結果、広告掲載順位やキーワードの入札単価を低下させることができます。
※3 広告品質スコアまたは品質インデックス:検索されたワードに対して表示される広告文やリンク先ページの品質は、クリック率やキーワードと広告文との関連性などによって自動評価され、1~10段階で表示されます。実際のクリック単価や広告の掲載順位に大きく影響します。
- 競合分析/USP分析
同じ入札キーワードに対して、競合他社がどのような広告文を掲載しているかを確認し、広告表現のポイントとなる自社のセールスポイント(USP※4)を見極めて、広告文の改善につなげることも大切です(図8)。
※4 USP(Unique Selling Proposition):顧客がその製品やサービスを選ぶ理由となりうる独自の訴求ポイントのこと。広告キーワードと広告文を競合他社と比較し、自社の強みが明確に表現できているかをチェックする。
ディスプレイ広告での入札単価分析
- 共通単位はCPM
DSPやアドネットワークでのディスプレイ広告の入札には、クリックごとに課金される「CPC課金」とインプレッションごとに課金される「CPM課金」の2つの課金方式があります。しかし、「CPC課金」で入札している場合でも、DSPからメディアへの広告在庫の買付はCPM換算されて行われます(図9)。
その換算方法は各DSPによって異なり、実際の入札CPMをチェックすることはできませんが、一般的にCPMを高くすれば、より良質な広告枠に広告掲載することが可能になります。
- 課金方式を使い分け、入札や広告クリエイティブの見直しをする
リスティング広告に慣れている場合は、CPC課金で入札しがちですが、場合によってはCPC課金からCPM課金に変更することで広告効果を改善することも可能です。単純化するために、CPCとCPMが同じでCTRだけが違う2つの広告の配信コストを考えてみましょう(図10)。
広告を1,000インプレッション表示させたとき、CTRが低ければCPM入札価格よりもCPC入札価格の方が割安となり、逆にCTRが高いバナーBはCPM入札の方が割安だと判断できます。
広告効果を改善するためには、CPC課金とCPM課金の入札を変更するタイミングを見極めること、広告クリエイティブ(バナー)のCTRを高めることが重要です。
ディスプレイ広告のクリエイティブ分析(バナー)
- バナーのチェックポイント
バナーの効果検証では、リスティング広告のクリエイティブ分析同様、誘導(CTR)と獲得(CVR)を確認します。さらにバナーのレスポンス状況を把握するために、CTVR(CTR×CVR)を確認します。ターゲットユーザーに対して適切な広告訴求ができているかを確認することが重要です。
また「勝ちバナー」を見極めるにはCTR、CVR、CTVRによる分析だけでなく、多変量テストに用いられている実験計画法※5やA/Bテストに用いられている有意差検定※6などの統計学的手法を用いたクリエイティブの検証改善が必要になります。統計学的手法を用いた広告クリエイティブ検証は、次回の「検証改善」で解説します。
※5 実験計画法:バナーのクリック率を高めるため、バナーのどの要素(コピー・画像・背景色など)がクリック数に影響しているのか効率的に検証(テスト)を行うための統計学的手法。
※6 有意差検定:複数のバナーで、クリック率などに差が出ているときに本当に意味のある差なのか判別する統計学的手法。
- バナーのフリークエンシー
ターゲットユーザー1人当たりに対するバナーの表示回数(フリークエンシー)を適切に設定することで、リーチの拡大、CTR改善が可能です。図12の例では、4回目のバナー表示からCTRが低下しています。フリークエンシーキャップを3回までに設定し、同じユーザーに対するバナーの表示回数を制限することでクリックされない無駄なインプレッションを減らし、逆に新たなリーチの拡大につなげましょう。
第2回はリスティング広告やディスプレイ広告の「効果測定」の基本を解説しました。広告集客同様、全体像を把握したうえで要因分析をすることが大切です。また、広告運用スケジュールや実施した入札調整などを振り返り、次の改善につなげるための発見や気づきを得ることが大切です。
第3回は、これまでの内容をふまえて広告クリエイティブの検証改善、検証改善に必要なアドテクノロジーの概要とその活用優先順位、広告運用に必要な最適化の考え方について解説します。
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