優良顧客を育てる! オウンドメディア運用入門

お金をかけてプロに任せれば成功する!? オウンドメディアの運営に潜む5つの落とし穴

今回はオウンドメディアを運用していくにあたって、一見正しいようで、鵜呑みにすると危険な5つの落とし穴について解説します。
優良顧客を育てる! オウンドメディア運用入門

今回はオウンドメディアを運用していくにあたって、一見正しいようで、鵜呑みにすると危険な5つの落とし穴を例に挙げ、その落とし穴にハマらないためには、何に気を付けなければならないかも紹介します。また、記事末では、もっと詳しくオウンドメディアについて学びたい方のために本記事の執筆者のセミナー情報も掲載しています。

オウンドメディアの5つの落とし穴

※各リンクをクリックすると詳しい解説に飛びます。

落とし穴①お金をかけてプロに任せれば成功する

お金をかけてプロに任せれば成功する

企業がオウンドメディアを運用するにあたって、社外の専門スタッフと組むことは決して間違った選択ではありません。むしろ社内にWebマーケティングやコンテンツ制作の専門スタッフがいなければ、社外のプロと組むべきでしょう。しかし、その際に気を付けたいのが、いわゆる「外注丸投げ」です。あなたはこれまで下記のような経験はありませんか? 1つでも当てはまることがあったら要注意です。「外注丸投げ」の落とし穴にハマっています。

  • コンテンツ案の千本ノック
    根拠がなくなんとなく好き、嫌いでコンテンツの良し悪しを決めていませんか。

  • バズ狙いのおもしろいコンテンツをめざす
    売上増加など本来のKGIから脱線してもおもしろければOKとしていませんか。

  • 最先端のデザインや機能にウキウキする
    見た目のクリエイティブでなんとなく自己満足できればOKとしていませんか。

  • 結果を焦って広告に頼る
    長期的エンゲージメントより短期的な成果を最優先としていませんか。

  • コスト最優先でできるだけ安い業者にバラバラに発注
    結果的に効率性が落ちて高くつくようなことをしていませんか。

これら「外注丸投げ」の落とし穴は、結果的にムダなお金と時間を費やすだけの非効率的な運用を招くことになります。弊社でも「オウンドメディアをはじめてみたものの、どうもうまくいかない」というご相談をいただくときは、たいてい上記のような落とし穴にハマっているケースが多くあります。

また、オウンドメディアとは文字通り企業が自らメディアを持つことなので、「外注丸投げ」では、せっかくの企業の素顔や魅力がなかなか伝わりにくかったりします。ユーザーは素顔の見えない企業とコミュニケーションをとろうとは思いません。

「外注丸投げ」の弊害は、「中の人」(企業のWeb担当者)の熱意と愛情が欠落したときに発生します。熱意と愛情がないと、往々にして企業の発注者は「外注スタッフの質が低い」と言い、外注スタッフは「発注者が何をしたいのかわからない」と、お互い不満が募ることになりかねません。

成功しているオウンドメディアの多くの共通点は企業人格に合ったコンテンツを発信し、ユーザーとコミュニケーションを図っていることです。それは企業や予算規模の大小と関係ありません。企業都合の一方的な情報を発信し、企業人格を無視した「バズ狙い」で一時的な集客を狙うだけならペイドメディア(広告枠をもつメディア)で済みます。あえてオウンドメディアでやる意味はありません。どんなに予算をつぎ込んで一流のプロと組んでも、ユーザーとコミュニケーションの最適化を図る目的なくして、長期的なエンゲージメントを築くことは難しいでしょう。

オウンドメディアを成功させるためには、まず社内体制を整備し、明確な目的をもって外部パートナーと組み、長期的視点に立って運用を継続することです。それを行って、はじめて「コンテンツ案の根拠を提示し、独自のコンテンツ資産によって価値を生み、コスト改善を図っていく」ことが可能になるのです。

落とし穴②最初から完璧なオウンドメディアをめざす

Done is better than perfect.完璧をめざすより、まずは作り上げてみる。by マーク・ザッカーバーグFacebookの創設者

これはFacebookの創設者、マーク・ザッカーバーグのお気に入りのモットーだそうです。直訳すると「完璧をめざすより、まずは作り上げてみる」。つまり「やったもん勝ち」ということです。

わたしたちがオウンドメディアを立ち上げるときには、当然ながらKGI(重要目標達成指標)とKPI(重要な業績評価指標)を設定し、そのメディアを運用するための明確な目標を定めます。

ただし、PDCAを回していくなかでKPIは常に変動することも視野に入れるべきでしょう。最初に決めた目標設定に縛られるあまり、状況に応じてKPIを変更することを恐れ、KGIに辿りつけなくなったら本末転倒です。

メディアは生き物です。時の流れとともに、コンタクトしたいユーザーのペルソナや思考、行動心理も常に変わり続けます。企業とユーザーがコミュニケーションを図りながら一緒に成長していくイメージで運用していかないと、「一度失敗したから最初からやり直し → コンテンツの変更によってデザインも大幅変更 → キャンペーン施策と同じ一発勝負の繰り返し → オウンドメディアのメリットが生かせない」という負のスパイラルを招きかねません。

そんな事態を防ぐためには、下記のように柔軟かつ適応性の高い運用をしていくことが必要になります。

  • PDCAの回す中で課題を抽出し、改善策を実施しながら、理想形に近づけていく

  • シンプルなサイト構造にしておくことで、課題や問題点に直面した際、効率的かつスピーディに改修を行う

  • 運用中に生まれてくるユーザーの反応に合わせて、機能追加などを行いやすくする

オウンドメディアは長期計画です。上手に運用すれば費用対効果も高くなるので、失敗を恐れる必要はありません。重要なのは、スモールスタートで良いので、トライ&エラーを重ねながら前に進むことです。

落とし穴③コンテンツはたくさん作ったほうがいい

「オウンドメディアではコンテンツはたくさん作ったほうがいい」という記事をよく目にします。間違ってはいないのですが、そこに“質”が伴わないと、どんなに数を増やしても意味がありません。つまり誰も読まないような埋め合わせの記事を100本作るより、多くの人が求めている1本の記事にこだわるべきなのです。

世の中はすべての事象が8:2で構成されているというパレートの法則というものがあります。有名なのが次のような例です。

  • 売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している
  • 全所得の8割は、人口の2割の富裕層が持つ

ウィキペディアによると「仕事や経済でよく使われていて、経済学者のパレートが発見した経験に基づいた法則」だそうです。元「WIRED」編集長のクリス・アンダーソンが提唱するロングテールにも同じことがいえますし、オウンドメディアにおけるコンテンツについても例外ではなさそうです。

パレートの法則 上位2割のユーザー 残りの8割のユーザー 上位2割のユーザーがもたらす売上や利益

たとえばオウンドメディアでいえば「アクセス数の8割は、全コンテンツの2割が担っている」となります。問題は、このパレートの法則に甘んじてはいけないということです。なぜならこの法則に従えば、全コンテンツの8割はムダなコンテンツになってしまうからです。

コンテンツをつくるとき、数にこだわるあまりに全体の質が落ちて、ムダなコンテンツの8割の比率を増やしてしまうと、アクセス数の8割を占めている良質なコンテンツの2割の比率がどんどん下がっていくわけです。

コンテンツをやみくもに大量生産するのは、コストも時間もかかります。コンテンツの10割が10割のユーザーに読まれる、というのは現実的ではないかもしれません。ただし、おざなりな100本のコンテンツを量産するよりは、半分でも良質な50本のコンテンツに注力したほうが、長期的には費用対効果の高い施策につながることは間違いありません。

コンテンツを量産するよりも、“質”が大切です。つまり、20本の良質な記事と80本のおざなりの記事(2:8)の100本を作るよりは、半分のコストで30本の良質な記事と20本のおざなりの記事(6:4)の50本をめざすべきです。

落とし穴④おもしろいコンテンツがあれば成功する

「おもしろい」とは「fun」だけではなく、「interesting」「good」「excellent」などの意味も含まれます。ここで誤解されやすいのが「おもしろいコンテンツ」さえ作れば「新規顧客の流入が増える、ブランド価値が向上する、ファンが増えてサイトで囲い込みできる、商品やサービスが売れるようになる」などです。

次に紹介する、「コンテンツは王様である」という金言にもこのような期待値が含まれています。しかし、「おもしろいコンテンツ」はオウンドメディアを成功させるために必要な最低条件ではありますが、十分条件ではありません。「おもしろい」コンテンツを生かすためには、下記の5つのことをチェックする必要があります。

  • 成し遂げたいことは何か?
    最終的な目的が明確になっているか? なぜおもしろいコンテンツが必要なのか改めて考える。

  • ユーザーに関係があるか?
    たとえおもしろくてもユーザーに関係のない一方的な情報だけでは成功しない。コンテンツを配信するとき、それがユーザーに役立つかを必ず意識する。

  • ユーザーの疑問や問題に答えているか?
    ユーザーの疑問や問題に答える。どんなにおもしろくてもユーザーにとって、ニーズがまったくない話題の情報を与えても、楽しんで逃げられるだけ。

  • 自社のビジネスに関係があるか?
    コンテンツがビジネス上の目的をサポートしなければ、リソースのムダにしかならない。

  • おもしろくする明白な理由はあるか?
    ほかの広告・宣伝費を削ってまでおもしろいコンテンツを発信するための理由と狙い、根拠を明白にしておく。

これら5つをチェックしてクリアすればオウンドメディアは成功するのでしょうか。残念ながらまだ足りません。それだけでは成立はすれども、成功するとはいえません。オウンドメディアは広告やキャンペーンのように即効性はなく、施策の効果が出てくるまでにある程度時間がかかります。

オウンドメディアを早く、効率的に成功させるためには、「オウンドメディア(自社で発信できるメディア)」「アーンドメディア(ソーシャルメディア)」「ペイドメディア(広告枠を持つメディア)」の3つのチャネルを上手に利用することも欠かせません。それぞれのメディアが果たす主な役割は、

  • アーンドメディアが「共有・拡散」
  • ペイドメディアが「認知・集客」
  • オウンドメディアが「顧客の育成」

といえます。そしてオウンドメディアのメリットを最大限に生かすには、アーンドメディアによる「共有・拡散」、ペイドメディアによる「認知・集客」という支援が欠かせないのです。

トリプルメディア オウンドメディア企業のメディア化重要性が高まる アーンドメディア ユーザー自らが情報を推薦、伝播、拡散「影響力が拡大」 ペイドメディア ユーザーのメディア接触時間が断片化する時代のマス広告「影響力が縮小」

アーンドメディアを利用するユーザーは、自分にとって有益な情報や友人からの情報を入手したり、人とのコミュニケーションを目的としています。そのユーザーと最適なコミュニケーションを図るためには、アーンドメディアに自社の情報を発信するだけではなく、ユーザー同士のコミュニケーションを傾聴する必要があります。ユーザーの声を傾聴するためには、彼らが何をシェアしているのかを観察します。観察を通してコンテンツ内容を改善し、ユーザーとの関係を深め、ひいては費用対効果の最大化を図っていきます。

また、最近は「認知・集客」を目的とするペイドメディアが抱える課題の解決策としてネイティブアドが注目を浴びています。従来のペイドメディアには、費用対効果が低くなってきている、効果検証が難しい、といった課題があります。一方、ネイティブアドは第三者(メディア)視点で作られるコンテンツのため信頼性が高い、ユーザーが楽しめる(役に立つ)コンテンツが作りやすい、といったメリットがあります。すでにユーザーと高いエンゲージメントを持つメディアの力を借りて届けるため、より共感を得やすくなります。

オウンドメディアの成功のカギを握るのは、オウンドメディアでおもしろいコンテンツを発信するだけでなく、「オウンドメディア」「アーンドメディア」「ペイドメディア」それぞれの長所を上手に組み合わせて効率的なマーケティング戦略を展開していくことです。

落とし穴⑤コンテンツは王様である

コンテンツは王様である

「コンテンツは王様である」とは、今日のコンテンツマーケティングの役割を説明するときによく引き合いに出される金言です。たしかにコンテンツなくして、ユーザーとのコミュニケーションはあり得ません。

しかし、これはあくまで発信側のスタンスです。「コンテンツは王様である」という言葉の裏には、王様であるブランド(広告主)にとって都合のよいコンテンツこそが正しいものである、という思いが見え隠れします。

それらを受け取るユーザーの立場でいえば、むしろコンテンツはユーザーにとって役に立ち、楽しませてくれる、思い通りにできるものであるべきなのです。つまり、従来のペイドメディア(広告)がユーザーに一方的に発するメッセージだとすれば、コンテンツマーケティングにおける理想のコンテンツとは、ユーザーが享受するものです。

コカ・コーラ社が2011年に「CONTENT 2020」という社内向けビデオで、これからはコンテンツマーケティングの時代だと宣言しました。同社はこのビデオの中でコンテンツは”Liquid and linked”であるべきであるという提唱をしています。

liquidは流動性があり、発信者がコントロールできないゆえに、思いもよらない広がり方をするという意味です。また、さまざまなメディアを通じて永続的につながり(link)、ユーザー同士もつなげる(link)ことで何か新しいことが生まれることです。

コカ・コーラ社の提唱したこのメッセージは、ユーザーに一方的に発するメッセージという時代ではなく、液体のように流動的でユーザーの意志によって自由自在に姿を変えて永遠につながり続けていくものである、ということを意味しています。つまり、王様ですらコントロールできないリキッドコンテンツこそが、これから求められるコンテンツなのです。

オウンドメディアで発信するコンテンツは、ユーザーにとって役に立ち、楽しませてくれて、思い通りにできるものであるべきです。つまり、ユーザーが享受できるものでなければなりません。

限りないポテンシャルを秘めたオウンドメディア

今日、オウンドメディアはデジタルマーケティングにおけるバズワードとなっていますが、オウンドメディアを単なる広告手法の1つという考えに留まっている人もまだ少なくありません。

オウンドメディアとして紹介される企業サイトを見ても、いまだにブランドキャンペーンや商品カタログの延長線上に終始している例は数多くあります。オウンドメディアはそれ単体でメディアパワーを持つには時間はかかりますが、オウンドメディア本来の特性を生かした運用をすれば、影響力の強いマスメディアやターゲティングメディアのようなパワーをもつことも可能です。

そして、そのパワーを持ったオウンドメディアに集まってくるのは、あなた自身が顧客にしたいユーザーです。そんな限りないポテンシャルを秘めているのがオウンドメディアです。

オウンドメディアの運営を成功に導くためのコンテンツの作り方・企画方法を学べる

「オウンドメディアのコンテンツ企画・作成ワークショップ」
2日間講座で本記事の筆者インフォバーンの成田氏が講師を務めます!

オウンドメディアのコンテンツ企画・作成ワークショップ

オウンドメディアを運営していくなかで一見正しいように見える落とし穴にはまらず、理想のコンテンツを作るノウハウを2日間にぎゅっと凝縮したワークショップ型の講座を9/11(木)・12(金)で開催します。

  • 顧客にしたいターゲットユーザーにいかにしてオウンドメディアに訪問してもらうか
  • コンテンツの品質や成果達成を継続的に維持するためにはどうすればよいのか
  • 企業サイトのコンテンツは、どのように企画してどのように運営していけばよいのか

といった、すでに運用をしている方の課題や悩みを解決するだけでなく、これから自社サイトをオウンドメディア化していこうと考えている担当者の方のための講座です。

■講座内容

講座1日目 9月11日(木)

  • 上司を説得するオウンドメディア5つのメリット
  • インフォバーンのオウンドメディア運用例
  • オウンドメディア事例にみる企画立案から運用プロセスまで
  • コンテンツマーケティング成功の条件
  • 【ワークショップ】オウンドメディア立ちあげ大作戦
  • オウンドメディアの予算と制作費用

講座2日目 9月12日(金)

  • おいしいコンテンツの作り方
  • オウンドメディア事例にみる企画立案から運用までのプロセス
  • 【ワークショップ】コンテンツ視点で考えるオウンドメディア
  • 【ワークショップ】「ペルソナ」を理解して、自社にとっての「ペルソナ」を作ってみよう
  • 【ワークショップ】カスタマージャーニーマップを作ってみよう
用語集
KGI / KPI / キャンペーン / クリエイティブ / ソーシャルメディア / マスメディア / リンク / 訪問
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