リターゲティング広告――マーケチームが歓喜する高パフォーマンスの活用法と注意点
リターゲティング広告とは何か?以前に自分のサイトを訪問したことのあるユーザーをターゲットとするマーケティング手法。
ウェブ全体にまたがるディスプレイ広告ネットワーク上のバナー広告を用いて、過去に自分のサイトを訪問したことがあるユーザーに特定の広告を表示する仕組みのことをいう。「リマーケティング」と呼ぶ場合もある。
通常のディスプレイ広告は「知らない」人が対象
リターゲティングは「知っている」人が対象
リターゲティング広告では、以前にあなたのサイトを訪れたことがあり、あなたのブランドをすでに見知っているユーザーだけをターゲットにするマーケティング手法だ。
サイト全体を対象にすることもできるし、あなたのサイトの部分に行ったユーザーをターゲットにすることもできる(特定のコンテンツを見たユーザーや、以前に購買を完了したことがあるユーザーなど)。いずれにしても、過去にサイトにやってきたことがある人に的を絞って広告費を確実に使うことができる。
通常のディスプレイ広告は、購買行動の「じょうご」の第1ステージにいるユーザーをターゲットにしている。そうした広告では、実際に行動を起こさせるまでには長い道のりが必要だ。あなた自身を知ってもらって、信頼を構築し、効果的にブランドを印象づけるといった、さまざまな段階を積み重ねていく必要がある。
自社サイトにビーコンを仕込んでリターゲティング用のクッキーを喰わせる
登場するのは、次の3つのシーンだ。
- あなたのサイト(訪問チェック)
- ディスプレイ広告ネットワークのシステム
- 広告ネットワークの広告を掲載している他のサイト
リターゲティングは次のような流れで実現される。
まず、あなたのサイトに、リターゲティング広告用のウェブビーコン(ピクセルタグ、JavaScriptなど)を仕込んでおくことで、あなたのサイトを訪問したユーザーに「訪問したことがある」マークを付ける。
このビーコンのコードは、リターゲティング広告のサービスを提供している広告ネットワークから提供されるもので、前述のように(a)サイトの特定のセクションに仕掛けてもいいし、あるいは(b)サイト全体にも仕掛けることもできる。
あなたのサイト内のビーコンを置いたページへだれかがアクセスすると、その訪問者のブラウザに「この人はリターゲティングの対象ページを訪問した」ことを意味するクッキーが発行される。こうした訪問クッキーをもったユーザーは「オーディエンス」と呼ばれる。どのオーディエンスがどの広告主のどのビーコンページを訪問したことがあるかは、リターゲティングのシステム内で管理されている。
そして、あなたはディスプレイ広告ネットワークのシステム上でリターゲティング広告を出稿する。その際に「自社のビーコンページを訪問したことがあるオーディエンスに広告を表示する」ように指定するのだ。
すると、その広告ネットワークの広告が表示されている他のサイトをオーディエンスが訪問すると、広告ネットワークのシステムが「このユーザーはリターゲティングの対象である」と判断して、あなたの広告を表示する。
オーディエンスの規模は、リターゲティング広告キャンペーンの成否を大きく左右する。まだリターゲティング広告を試す段階ではないとしても、オーディエンスを獲得する取り組みを始めることは強く薦めたい。過去の訪問者からなる質の高い集団は、大きければ大きいほどいい!
ちなみに、オーディエンスに属する訪問者がコンバージョンして、あなたにとって広告を見てほしいターゲットではなくなった場合、ターゲットから除外するようにコンバージョンページでクッキーを消すこともできる。コンバージョンした訪問者に別の広告を見せたい場合には、また別のクッキーを喰わせるビーコンを追加することもできる。クッキーの発行に使用するビーコンを仕掛ける順番については、かなり複雑なことができる。
広告を表示するサイトも、一般のディスプレイ広告ネットワークを購入する場合と同様に、自分で管理できる。あるサイトで成果があがっていないと判断したら、リストから外せばいい。広告を見せる相手や見せない相手は、かなり自由に制御できる。
サイトにやってきた人全員をオーディエンスにすることもできるし、まずは小規模なオーディエンスからスタートすることもできる(たとえば、カートのページまでは進んだが実際の購入には至らなかったユーザー)。いずれにしても、この追跡手法はきわめて効果的だ。SEOmozでは、われわれの側でつけた一意的なコンバージョンIDを送り返すようにし始めていて、リターゲティング広告の実施を任せている代理店と協力して、コンバージョンを二重、三重にチェックしている。こうした細かい追跡は、後でもっと詳しく説明しているとおり、非常に強力で信頼性が高いものになる。プロセスの一般的なイメージは下の図のような感じだ。
クリックスルー・コンバージョンと
ビュースルー・コンバージョンの両方を測定
一般的なディスプレイ広告の測定とは違って、リターゲティング広告は実のところ、クリックスルー・コンバージョンとビュースルー・コンバージョンの両方を判断材料にする。代理店に依頼しているなら、たいてい、合計のコンバージョン数だけでなくこの2種類を分けてレポートしてくれるから、パフォーマンスのあり方をどういう方向に持っていきたいかを決めなければならない。
クリックスルー・コンバージョンとは、表示されたリターゲティング広告をユーザーがクリックした直接的結果として起こるコンバージョンを意味する。
ビュースルー・コンバージョンというのは、アシストのようなもので、ユーザーがリターゲティング広告を見た時点ではクリックしなかったが、広告を見たことで企業名やサービス名を認知し、後日、別のルート(他の広告や自然検索など)でサイトを訪れてコンバージョンするものだ。したがって、ラストクリック要因だけを見て判断すると、別のチャンネルに起因するコンバージョンだと見えるものだ。
考えれば分かるように、2つの数値の割合はテストの間つねに変化するものなので、自分の広告やランディングページについては学ぶべきことがたくさんある。われわれがとても興味を引かれたのは、純粋にブランドのみの広告(ロジャー・モズボットとわれわれのロゴだけ)が、両方のコンバージョンについて信じられないくらい効果を上げていたということだった。これは、われわれがディスプレイ広告戦略全体を最適化するのに役立ってくれた。
グーグルの「リマーケティング」とはどう違う?
グーグルアドワーズでは1年ほど前、自社のディスプレイ広告ネットワーク内でリターゲティング広告の一形態といえるものの提供を開始した。グーグルはこれを「リマーケティング」と呼んでいるが、これは多くのマーケターにかなりの混乱を引き起こした。わかりやすくいうと、次のような関係だ。
- 「リマーケティング」というのは、グーグルアドワーズのディスプレイ広告ネットワークにおける呼び名(特定のサービス)
- 「リターゲティング」は、リマーケティングの土台となるマーケティング手法を指す呼び方(一般的なジャンル)
リターゲティング広告の使い方は?
リターゲティング広告の働きについての骨子が分かったところで、このマーケティング・チャンネルの実用例について説明しよう。
いちばん簡単に言えば、リターゲティングとは一度訪問したことのある人をサイトに呼び戻すことだということになるだろう。訪問者を呼び戻すことができれば、多くのコンバージョンがもたらされることは周知の事実だ。
リターゲティングは、「じょうご」のどの段階でも効果がある。ところで、たまには「じょうご」以外の呼び方があってもいいと思う。だから今回は、購買の「アイスクリーム・コーン」と呼ぶことにした。リターゲティング広告のバナーは、購買の「アイスクリーム・コーン」のどの段階でも効果的だ(下図参照)。
これはほんの一部に過ぎず、アイデアは文字どおり無限にある。実際のところ、リターゲティング広告は、特定の時期に特定のメッセージを伝えてユーザーを狙い撃ちするのにきわめて効果的な方法だ。ご存知のとおり、マーケターとしてわれわれはいつも、購入した広告が失敗していないか、あるいはメッセージを伝え損なっていないかをもっと詳しく把握するために、ユーザーが購買の「じょうご」のどの段階にいるかを知ろうと努力している。リターゲティング広告を上手に活用すれば、多くの推測を排除してきちんとしたデータに置き換えることができ、かなりの部分を管理できるようになる。ユーザーにとってもわれわれにとっても得な話だ。
ホントにそんなにうまくいくの?
実際のところ、我々がデジタルマーケティング戦略の一部としてリターゲティングをテストしていたときに注意していた点は多岐にわたる。たとえば、次のようなものだ。
リターゲティングはそれ自体が1つのチャンネルだ
過去のディスプレイ広告でうまくいったクリエイティブをリターゲティングにも使いたいと思うだろうが、それは良いやり方ではない。リターゲティングにはリターゲティング用のバナー広告とランディングページが必要だし、独自のものとして最適化してく必要がある。だから、リターゲティングというチャンネルを知り、学び、うまくやり、測定していく時間がなければ手を付けないほうがいいかもしれない。他のマーケティング戦術と同様に、それなりの時間を費やさなければお金が無駄になる可能性がある。
バナーはもっとクリエイティブに、非公式に
「非公式」という表現が適切かどうかはわからないが、バナー広告はもっとうまくやれるはずだ。リターゲティング用の広告はもっとパーソナル(個人的)で、変わっていて、ユーモアにできるはずだ。広告が表示されるページ上でユーザーの目をひき、以前に見たあなたのサイトのことを思い出させなければいけない。ロゴやブランド名はもちろん重要だが、リターゲティングは、これからサイトを再訪問してくれるユーザーに、もっと独創的なメッセージを伝えるチャンスなのだ。
リターゲティングもやり過ぎるとマイナスに
専門家によると、リターゲティングの理想的なペースは、ユーザーが30日間にあなたの広告を7回~12回目にすることだという。しかし、毎回見る広告がまったく同じだったり、それ以上の頻度で広告に触れたりすると、マイナスの影響がある可能性があるという。
実際にSEOmozでもこれは痛感している。というのも、サイトにテストがうまくいったので、リターゲティングの予算を増やしてもっと多くのデータをとろうとしたら、とたんにサポートチームやTwitterに、ユーザーの「SEOmozの広告にストーカーされている」という不満が寄せられるようになったのだ。そうしたユーザーにとって、お気に入りのサイトでSEOmozの広告を見る頻度はもっと低くしておくべきなのは明らかだった。ターゲティングとストーカーの境目は微妙なものだ。少しずつ試すのがいいだろう。
リターゲティングはコミットして取り組むべし
リターゲティングは時間と労力をかけて学ぶべきものだと書いたが、うまく回るようになったリターゲティングは非常に効果的だ。意味のあるオーディエンスが増えればすべてメリットだし、リターゲティングの専門家によると、あなたの広告をあちこちで3か月にわたって目にするのは、1か月間露出よりも効果的だということだ。ちゃんと進めることのメリットは大きい。だから、リターゲティングの可能性にワクワクしているあなたは、流れがノッてくるまで数か月かかることを心しておくといいだろう。
SEOmozで最初にリターゲティングのテストをしたときは、それはもう目がキラキラと輝くような結果だった。そして、それ以降も、リターゲティングのパフォーマンスにびっくりし続けている。とはいうものの、その過程において、我々もいろいろと失敗をしている。最近やった失敗には、コンバージョンのビーコンを間違ったページに貼っていたために、本来の8倍のコンバージョンがレポートされていたというものがある。バカな失敗だが、実際にやってしまったのだ。リターゲティングは「タグを入れて放っておけばOK」というものではないことは忘れないでほしい。
といっても、脅かすつもりはない。リターゲティングは、使った広告費に対して驚くべき効果を発揮するものだ。たとえば、ある月のSEOmozのお試し版の登録者数でみると、特定のサイトにバナーを出していたキャンペーンに比べて、リターゲティングのほうは4倍の数を獲得していた。同じバナーのクリエイティブだったのに、だ。その違いは、出稿先のサイトがすでに獲得しているユーザー層をターゲットにしたのか、それとも我々のサイトに触れたことのある「オーディエンス」をターゲットにしたのかの違いだ。
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