ライバルには教えたくないキーワード広告の勝ち組戦略
~成果を出すための達人の思考とノウハウ
日本に上陸してからオンライン広告のあり方を大きく変え、検索エンジンからの集客手段として当たり前となった検索連動型広告。多くのマーケティング担当者がその重要性を理解している反面、そのメリットを十分に活かせていないのが現状だ。いま、広告主には変化が求められている。検索連動型広告を運用する上でマーケティング担当者が成すべきこととは何か、改めて探っていこう。
泉 浩人(株式会社ルグラン)
キーワード広告の市場は引き続き拡大を続けている。それに対応して、キーワード広告を提供するサービスも日々変化しているが、Web担当者にとっては、流れてくる情報のすべてが重要というわけではない。数年間通用する基本的な情報と、来月には変わってしまうかもしれない情報がないまぜになって流れ込んでくる。自社のキーワード広告戦略を考える上で重要なのは、情報の取捨選択だ。そこでこの連載では、これから数回にわたって、数年間はWeb担当者の必須リテラシーとして通用するキーワード広告の基本を整理してお伝えしたい。
キーワード広告をこれから始めてみようというWeb担当者の方にはもちろん、すでにキーワード広告を導入・運用しているWeb担当者の方にも、改めて基本を確認するのに役立つはずだ。
アドワーズとスポンサードサーチ、どちらか片方ではなく両方で
これからキーワード広告を始めたい、というWeb担当者の方とお話をしていると、こんなことを聞かれることが多い。
GoogleアドワーズとOvertureスポンサードサーチ、どっちから始めればいいんでしょうか?
これに対しては、私は次のように答えている。
どちらか片方ではなく、両方同時に始めましょう
一番の理由は対象ユーザーの取りこぼしを防ぐため
Googleアドワーズ広告とOvertureスポンサードサーチでは、ユーザーにダブりはあるものの、お互いシェアは100%ではない。
Overtureスポンサードサーチの広告が表示される検索サイトは、
- Yahoo! JAPAN
- Excite
- MSN Live Search
- 楽天
- All about
など。
一方、Googleアドワーズの広告が表示される検索サイトには、
- Google検索
- @nifty
- BIGLOBE
- livedoor
- goo
などがある。
自身の検索行動を振り返ってみればわかると思うが、検索に使う主なサイト(ツール)というのは、めったに変えないものだ。GoogleならGoogle、YahooならYahooと、普通は使い慣れた特定の検索サイトを毎回使うはずで、普通のユーザーが常にいくつかの検索サイトをランダムに使い分けるということはほとんどないのだ。
ということは、キーワード広告を出稿する場合、どちらか一方のサービスしか使わないということは、ある特定のユーザー層が対象からすっぽり抜け落ちてしまう可能性があるということになる。対象ユーザーの取りこぼしを防ぐには、両方を使う必要がある。
それに、広告が表示される機会も増える
最近は、マスコミでも圧倒的にGoogleが取り上げられることが多いので、検索連動型広告でもGoogleアドワーズの方がシェアが大きそうな気がするが、全検索に対するシェアでいうと、Yahoo! JAPANが約60%前後、Googleが約30%前後だと言われている。このため、OvertureスポンサードサーチとGoogleアドワーズの両方に広告を出稿した場合には、それぞれの広告が表示あるいはクリックされる回数も、おおむね2:1くらいの比率になることが多いようだ。
つまり、両方のサービスを利用することで、それだけ広告が表示される機会は増えることになるし、そうなれば、クリック数やコストも増えるが、同時に、コンバージョンを増やせる可能性も高まる。コストを抑えることももちろん大事だが、キーワード広告の一番の目的は売上につながるコンバージョンを増やすことだというのを、常に忘れてはいけない。
ちなみに、キーワード広告をこれから始めようと考えている読者の方のために説明しておくと、「コンバージョン」とは、キーワード広告をクリックして自社サイトにやってきたユーザーに最終的にとってほしい行動のこと。具体的には資料請求や、商品購入など。自分の会社のWebサイトのコンバージョンは何か、これは絶対考えておかなくてはならない。
どちらかのCPA急上昇のリスクに備えるという意味も
また、キャンペーンの「全体最適」という視点からも、両方のサービスを利用することは大変重要だ。OvertureスポンサードサーチとGoogleアドワーズに、まったく同じキーワードを出稿したとしても、掲載順位やクリック単価はそれぞれ別の動き方をするし、それは、コンバージョン率やCPAの違いとなって現れる。
「CPA」とは、Cost Per Aquisitionの略で、コンバージョンを1件得るためにかかった費用のことだ。算出の仕方は簡単で、総広告費用をコンバージョン件数で割ればいい。
つまり、2つのサービスの間で、広告の費用対効果が同じになることはないということは、見方を変えれば、常に、どちらかが高く、どちらかが低いということになる。したがって、仮に、何らかの理由でOvertureスポンサードサーチでのCPAが上昇してしまったとしても、GoogleアドワーズのCPAを低く抑えることができれば、全体としてはリスクヘッジになり、採算ラインに収める、あるいは、少なくともOvertureスポンサードサーチでのCPA上昇のインパクトを和らげることができる、というわけだ。
効果のあるキーワードは試してみないと探せない
ちなみに、一般的な傾向として、次のようにいわれている。
- GoogleアドワーズはBtoBの商品やサービスに強い
- OvertureスポンサードサーチはBtoCの商品やサービスに強い
しかし、これはあくまでも一般論で、実際には、商品やサービス、あるいはキーワードによっても、結果はさまざまだ。
たとえば、私の会社がお手伝いしたある通販サイトでは、明らかにBtoCの商材である「もつ鍋」というキーワードをGoogleアドワーズとOvertureスポンサードサーチの両方に出稿してみたところ、Googleアドワーズの方が、コンバージョン数でもCPAでも、Overtureスポンサードサーチより断然良い結果が出た、ということがあった。
一方、ある旅行関係のサイトでは、GoogleアドワーズもOvertureスポンサードサーチも、全体のコンバージョン率やCPAに大きな違いはないが、コンバージョンを生んでいる上位キーワードの顔ぶれがまったく違う、といったことも起きている。
こうした違いは、先にお話をした通り、それぞれの検索エンジンを利用するユーザープロフィールの違いによるところが大きいと考えられるが、どのようなケースで、どういう違いが出るのかについては、実際に出稿してみないとわからないことが多い。そういう意味でも、両方のサービスを利用することは、理想とするCPAを実現しながら、コンバージョンの数を最大化するためには、とても重要な要素となることがおわかりいただけるのではないだろうか。
予算が少ないなら、まずは2:1で試してみよう
ただ、よくあるお悩みとして、予算が少ないために、両方のサービスは利用できないといった事情もあるかと思われる。出稿するキーワードの数やクリック単価にもよるが、ある程度、予算が限られている場合には、OvertureスポンサードサーチとGoogleアドワーズで、まずは2:1くらいの予算配分を目安に始めてみることを勧める。月額予算が3万円なら、Overtureスポンサードサーチが2万円、Googleアドワーズが1万円、といった具合だ。
あるいは1か月交替で掲載してみよう
一方、スタート時の予算が非常に限られているといった場合には、あまり、予算を細切れにしてしまうと、十分なデータ検証ができなかったり、場合によっては、掲載順位にも悪影響を与えてしまったりする可能性がある。そういう場合には、まずどちらか一方だけを1か月試してみて、次の1か月は、同じ予算でもう一方を掲載してみて、効果を比較・検証するというのも1つの手だ。
- どちらか片方ではなく、両方を同時に始めよう。
- 一番の理由は対象ユーザーの取りこぼしを防ぐため。
- それに、広告が表示される機会も増える。
- また、どちらかのCPA急上昇のリスクに備えるという意味もある。
- 効果のあるキーワードは試してみないと探せない。
- 予算が少ないなら、まずは2:1で試してみよう。
- あるいは1か月交替で掲載してみよう。
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