携帯サイトのアクセス解析ツール9製品厳選ガイド~選定のポイントは? 製品の特徴は?
携帯サイトのアクセス解析ツール9製品厳選ガイド
~選定のポイントは? 製品の特徴は?
このコーナーでは、ネットビジネスを強力に支援する製品について、それを支える技術や市場動向を説明し、さらに各社から提供されている製品を紹介する。競合商品がひしめく市場で、他社に差を付けるための武器として、ぜひ導入を検討してみてほしい。今回は、急速に拡大中の「携帯サイト解析」だ。
TEXT:内野 明彦
急速に顕在化してきた携帯サイト解析ニーズ
近年、携帯サイト(モバイルサイト)においても定量的にユーザーの行動を把握し、それを踏まえたうえで、仮説検証型のマーケティング活動を行う、もしくは行うべく準備を始めた企業が急速に増えてきている。いわゆるウェブサイトの「アクセス解析」といわれているもので、PCサイトを中心にウェブマーケティングを展開してきた企業にとっては、もはや必要不可欠の施策として、定着が進んでいる。
そして今年2007年は、まさに「携帯サイト解析元年」といってもいいくらいに、1年前には想像もできなかった勢いで、多種多様な規模・業種の企業が携帯サイト解析に着手し始めている。なぜこのように、急速なニーズの顕在化が生じているのだろうか。まずは背景に何があるのかを整理してみよう。
(1)モバイルマーケティング環境のオープン化
最も特徴的な背景は、各キャリアによる「モバイル検索エンジン」の本格的な提供が始まったということだ。これまでの携帯サイトの最も重要で、かつ効果的な集客方法といえば、「公式サイトへの登録」と「公式メニューの上位ランキング表示」だといっても過言ではなかった。この集客構造が「モバイル検索エンジン」の出現によって大きな転換期を迎え、マーケティングの「オープン化」が急速に進行したのだ。ある意味PCサイトにおける集客構造に近づいているともいえる。PCサイトでは、SEM/SEOつまり“検索エンジンマーケティングの実施効率をいかに高められるか”が、そのサイトのマーケティング活動の成否を決める重要要素となっているが、これと同じことが携帯サイトでも必要となってきたのだ。ちょうど1年ほど前にauのトップメニューにGoogleの検索窓が提供され、業界の話題となったことはまだ記憶にも新しいが、実際にその後のヒアリングや弊社のクライアントの状況などからも、その破壊力が鮮明に伝わってくる。つまり、検索エンジンを介して、非常に多くのユーザーが平均以上のモチベーションでサイトに来訪し、結果的に収益に結びついているのだ。モバイルマーケティングにおいても、検索エンジンからのトラフィックは、数・質ともに極めて有効な集客手法になってくることは間違いないだろう。
(2)クロスメディアマーケティングへの携帯サイト活用
もう1つの背景としては、「クロスメディアマーケティング」において、携帯サイトのより積極的な活用に拍車がかかっている状況がある。「新聞・テレビなどのマスメディア」と「携帯サイト・モバイル検索」という両者の関係が直接的であることは昔からいわれてきたことではある。しかし、ユーザーの携帯電話の利用スタイル(いつでもどこでも携帯電話が手元に)、携帯サイトとユーザー生活との密着度(何か気になったら携帯電話を見る・携帯電話で調べる)を考えると、モバイル検索の浸透により「テレビを見ながらケータイで検索→サイトに来訪」という具体的事例がより当たり前になってきたのだ。そして、この方法論が現実的になってきたことを踏まえ、いわゆるナショナルクライアントといわれている大手広告主層からのモバイルマーケティングへの予算配分が、今期から急増しているのだ。
ここで大事な点は、クロスメディアの明確な成功パターンをまだ誰も確立していないことだ。誰もがまだ手探りの状態であり、企画・実施と効果測定・効果検証のサイクルを回していく中で知見を貯めることで自らの体験から成功法則を見いだしていくしか、クロスメディアマーケティングの効果を最大化できないのである。
以上2つの背景から、「携帯サイト解析」の実施と蓄積がモバイルマーケティング、ひいてはウェブマーケティングの成功の鍵になってきている。このことを鑑みると、最近の携帯サイト解析の急速なニーズ拡大も当然の流れだといえるのではないだろうか。
携帯サイト解析の切り口
では、「携帯サイト解析」とは具体的にどういうものだろうか。携帯サイト解析といっても、PCサイトにおけるアクセス解析と本質的には大きく変わるものではなく、基本的な視点は同じである。サイトのコンテンツ閲覧状況を分析する「サイト分析」、サイト内でのユーザーの動きを見る「導線分析」や、「プロモーション(広告効果)分析」「検索エンジン分析」などの切り口があり、キャリアごとの特性を意識しながら各サービスを見ていくことになる。
携帯サイトでは、画面の大きさや技術的な制約から、PC解析に比べてさらに効率的な情報提供、ユーザー誘導を行う必要がある。スクロールが必要な同一画面内のどのリンクが一番クリックされていて、そのリンクが見やすい位置に配置されているか、入り口ページに訪れたユーザーが知りたい情報をきちんと提供して次ページへの誘導ができているのかなどを、直帰率やユーザー導線を見ながら分析していくことになる。
こういった分析の視点や手法以上に重要なのは、「企画→実施→解析→最適化」のいわゆるPDCAサイクルを意識したうえでのサイト解析の運用スタンスである。コンテンツごとに効果測定と分析を行い、どのターゲットに対して、どのタイミングでコンテンツ提供を行っていくのか、具体的な運用フローを明確化し、また必要に応じてコンテンツの再検討を行い、そのうえでプロモーションの計画を立てるなど、投資対効果を見極めつつ効果を最大限に引き出していきたい。
携帯サイト解析サービスの分類
このような環境変化の中、多くの携帯サイト運営企業の担当者にとって、携帯サイトの解析は必要な要素になってきているものの、数年前までは携帯サイトの解析は難しく現実的ではないという捉え方をされることが多かったのも事実である。それが最近では、多くのソリューションベンダーから現実的かつ有効な携帯サイト解析ソリューションが提供されてきている。それらソリューションをいくつかの視点で分類してみたい。
まず、データの取得方式によって、大きく次の3つに分けられる。
- (サーバーログファイル方式)
- パケットキャプチャ方式
- 動的ウェブビーコン方式
PC向けサイトのアクセス解析ではウェブサーバーに蓄積されるログファイルを解析する方式もあるが、携帯サイト解析ではIPアドレスでユーザーを判別できないほか、ログファイルから得られる情報では十分な解析ができないため、主流ではない。
パケットキャプチャ方式は、モバイル端末とモバイルサイトを管理するウェブサーバー間のネットワーク上を行き交うパケット情報をすべて取得することで、パケット内に含まれるモバイルサイト解析に必要な情報、つまりモバイル端末に固有な「個体識別番号」やページURL情報、リファラー情報などを取得して、蓄積し、必要な視点で解析することでモバイルサイトの解析を実現している方式である。
これに対して、動的ウェブビーコン方式は、企業のモバイルサイトを含むウェブサーバーにASPベンダーが提供する独自のモジュールをインストールするなどして、サーバー側で解析時に必要な情報(ページ情報やセッション情報など)を付与したビーコンを動的に生成し、これを外部のASP運営会社のサーバーに飛ばすことで解析データを蓄積し、アクセス解析を行う方法である。ウェブビーコン方式と言えば、PCブラウザではJavaScriptのタグを各ページに挿入することで行うことが通常だが、モバイルブラウザではJavaScriptが実質上機能しないため、サーバー側の動的な処理によって行う必要がある。
次に、コスト体系で2つに分けられる。
- ライセンス買い取り型
- ASPサービス利用型
パケットキャプチャ方式には、ライセンス買い取り型と、ASPサービス利用型があり、「ライセンス買い取り型」の場合は、企業が管理するネットワーク内のサーバー環境に解析ソフトウェアを導入する形になるので、初期ライセンス費用を支払えばその後、携帯サイトのPV数などに応じての月額従量コストが発生することもなく、年間保守費のみの負担でいい。
「ASPサービス利用型」は、いくつかのIDC(データセンター)やCMS(コンテンツ管理システム)ソリューションの付加価値オプションサービスとして提供されている。たとえば、テック・インデックス社が提供するアクセス解析サービス「IndexAnalyZ」、ビートレンド社が提供するCMSサービスの「BeMss」のアクセス解析オプションサービスなどがあり、これらはそれぞれ解析したいドメインの数や解析要件などによって価格が決まってくる。
対して、動的ウェブビーコン方式は 基本的にはASP形態で提供されており、サイトPV数に応じて価格体系が変わる従量課金のものが多く、ダブルクリック社が提供する「MobileMK Analytics」など CMS (コンテンツ管理サービス)に内包されるサービスもある。
パケットキャプチャ方式 | 動的ウェブビーコン方式 | サーバーログ方式 | ||
---|---|---|---|---|
コスト | 月額固定課金 | PV従量課金 | PV従量課金など | |
モバイルサイト解析機能 | リアルタイム性 | ○ | × | × |
ページビュー | ○ | ○ | ○ | |
ユニークユーザー | ○ | ○ | × | |
ユーザー導線 | ○ | ○ | × | |
広告効果測定 | ○ | ○ | × | |
SEM分析 | ○ | ○ | × | |
現状システムの変更 | ネットワークへのキャプチャ解析サーバーの接続 | ウェブサーバーへの追加モジュールインストールなど | なし | |
運用負荷 | なし | コンテンツの動作チェックやピーク時への対応など | 運用工数などの負荷 | |
サイト制作への影響 | なし | コンテンツに一部制約あり | なし |
自サイトに合った方式はこう選べ
これら方式と価格体系のいずれが自社の携帯サイト解析に適切かどうかを見極める基準としては、まず「サイト規模」がある。小規模サイトで、ページ量、PV数もそれほど多くない場合は、動的ウェブビーコン方式がマッチするだろう。最近はコンテンツ管理システムとの連携サービスも充実しているので、初心者でも導入がしやすい。ただし、既存のサイトの場合、ASPベンダー提供の独自モジュールをウェブサーバーにインストールするなどの既存のシステム環境に何かしら手を加えることが前提となっているため、導入時にいくらかのリスクが内在することは認識しておいたほうが良いだろう。
中規模サイト以上になると、サイトの規模やPV数ベースの従量課金ではコスト負担が重くなることが想定されるため、パケットキャプチャ型が向いている。ただしライセンス買い取りの場合は初期費用が比較的大きいため、短期的な視点での携帯サイト解析を想定している際は採算が合わない場合もあるだろう。また、諸事情によりパケットキャプチャ方式のソフトウェアの導入が難しいなどの物理的な制約があることも想定される。この際は、携帯サイトのリニューアルや新規構築のタイミングで、IDCやCMSソリューションを、パケットキャプチャ型アクセス解析サービスをオプションサービスとして提供しているものに切り替えるのもいいだろう。小規模サイトから大規模サイトまで、比較的安価に解析サービスを利用できる。
コメント
サーバーログ方式について。
『携帯サイト解析ではIPアドレスでユーザーを判別できないほか、ログファイルから得られる情報では十分な解析ができないため、主流ではない。』
とありますが本当ですか?
モバイルでIPアドレスが役に立たないのは当たり前の話で、それなのに何故ログ形式のツールが
実在するのかというと、それはユーザー識別IDなどの情報を元に十分解析できるからなんじゃないですか?
この記事で紹介されているビジョナリストにもログ形式の解析方法はありますし、
その他のログ形式のツールも私は知っています。
そして、それらのツールでユニークユーザーや導線、広告効果測定など、しっかりと解析できる事も知っています。
比較表を見るとログ形式は「×」ばかりついていますが、これは完全に誤りだと思います。
「リアルタイム性」以外全て「○」になると思うんですが・・。
このような公の記事を書く立場にあるなら、もう少し正確に調べられた方が良いかと思います。
解析ツール導入を真剣に検討されている方々に誤った認識を与えてしまいますからね。
気になったのでコメントさせてもらいました。
Re: サーバーログ方式について。
編集部の安田です。コメントありがとうございます。
いただいたコメントがフィルタにかかっていたため、発見して公開作業をするのが遅れました。失礼しました。
全体的に、ログファイル型のケータイサイト解析ツールの扱いが薄かったのはおっしゃるとおりです。もう少しフォローできれば良かったと残念に思っています。
> ユーザー識別IDなどの情報を元に
この情報は、いわゆる公式サイトでは取得できるものの、勝手サイトではauを除いて標準では取得できないということなので、ああいう記述になりました。
また、NTTドコモやボーダフォン時代の旧機種などではリファラやcookie情報の取得にも制限があるということで、経路や広告効果測定も「×」となっています(広告の効果測定は、特定のパラメータを付ければログ型でも大丈夫ですが)。
参考:株式会社ディー・ワークスさんの解説
いずれも、他の方式に比べると「正確な情報が取得できない場合がある」ということで、ああいった表記になっております。逆に言うと、「全然ダメだというわけではない」ということです。
また、サーバーモジュールやCGI的なスクリプトを使えばログファイル型でも他の形式と同様の情報を得られる場合もあることも確かですね。
そういったことを勘案すると、おっしゃるとおり、これらの情報は、補足を加えたうえで「△」としてもいいかもしれません。
コメントでのご指摘、誠にありがとうございます。
今後も、さらに正確な情報を掲載できるよう精進いたします。
(もう1つコメントが投稿されていましたが、同様の内容で同じIPアドレスからなので重複だと判断しました)