PayPalデベロッパーカンファレンスに見るモバイル決済&ネット決済の海外動向

カンファレンスのテーマはオンライン決済のイノベーションと未来
PayPal X

2010年10月26日~27日、米サンフランシスコで「PayPal X デベロッパーカンファレンス Innovate 2010 」が開催された。米EC大手eBay傘下のPayPalは世界最大のオンライン決済サービス企業であり、同社カンファレンスは、ネット取引決済の今後について垣間見るにはうってつけの場だ。

カンファレンスのテーマはオンライン決済のイノベーションと未来で、デベロッパーにとって最も重要な収益機会の最大3要素として、「モバイル」「ソーシャル」「ローカル」が掲げられていた。

PayPal社長 Scott Thompson氏
カンファレンスで講演するPayPal社長のScott Thompson氏

日本とは異なる形で進化する米国のモバイル決済

米国はごく最近までモバイル後進国と思われがちだったが、昨今はiPhoneやAndroid端末の普及に後押しされ、スマートフォン保有者が急速に増加している。同カンファレンス会場でも、スマートフォン片手に、新たなビジネスモデルを睨んださまざまなモバイル決済の仕組みを紹介する様子が伺われた。

日本でのモバイル決済は、通信事業者の課金システムを利用する形で定着し、モバイルコンテンツ市場が拡大していったが、そうした枠にとらわれない海外では、日本とは異なる形で進化しつつある。

たとえば「Bling Nation」というシリコンバレーの新興企業はPayPalと連携し、非接触ICカードを利用したステッカーを貼った携帯電話を使い、身近なお店で物品を購入できるサービスの実証実験を行っていた。おサイフケータイのアメリカ版を目指したサービスとでもいえよう。

そのほか、iPhoneをクレジットカードリーダーとして利用するシステムを提供する「VeriFone」という会社は、同社サービスにPayPalの「Mobile Express Checkout」サービスを統合することを発表するなど、さまざまなモバイル決済ソリューションが紹介されていた。

Osama Bedier
PayPal mobile決済サービス強化の発表時には対応各社がiPhoneアイコン風に並べて示された。

モバイル決済に加えて、もう1つ注目されたのは、デジタルグッズの購入支払い向けに発表された新たなリアルタイム・マイクロペイメント(低額決済)システムだ。このサービスを利用することで、好みのデジタル・コンテンツやソーシャル・ゲームサイトでデジタルグッズを購入する際に、それらサイトから脱することなく、2クリックのみで購入支払いをすませられるようになる。同サービスはフェイスブックで利用できるようになるほか、「ファイナンシャルタイムズ」や動画共有サービス「USTREAM」などでも導入される予定だ。

日本、アジアでは、外貨決済を中心に普及拡大を狙う

PayPalはイーコマース市場においてeBayのマーケットシェアの高い国々での利用は多いが、日本では米国ほど一般に浸透しているとはいえない。しかし、同社は2010年7月、日本国内および国際間(クロスボーダー)EC市場における事業拡大戦略を発表。新オフィスを開設し、日本での活動を本格化している。

現在、日本は世界第2位のEC市場であり、モバイル・イーコマースも活発な国だ。とはいえ、欧米や中国・東南アジア地域との取引も徐々に増加しつつあるものの、本格的なクロスボーダー取引やネット通販における外貨建て決済はまだまだこれからだ。そこで同社は、日本のECサイト、ネット通販、オンラインゲーム会社などに、世界的に認知度の高い同社オンライン決済サービスを提供することで、日本企業による海外市場への商圏拡大サポート業務を強化している。これまで国内のみで事業展開してきたECサイトにとっても、海外に販路を拡大しやすくなり、国内外で使えるオンライン決済サービスとして普及拡大の可能性を秘めている。

日本におけるPayPalアカウントは、国内およびクロスボーダー取引に利用するものが100万以上あり、2010年上期における総取扱高は前年同期より45%増加している。そのうち70%はクロスボーダー取引が占めているが、それだけでなく国内での取引額も1年で倍増している。

中国市場では、中国電子商取引最大手「アリババ」の決済サービス「アリペイ」が有力であることから苦戦も強いられているが、中国のクレジットカード大手「中国銀聯(ギンレン)」と業務提携するなど、オーストラリアを含むアジアパシフィック全体で2009年の売上は38%拡大している。

モバイル決済分野では、2009年に総額1億4000万ドルの商取引がPayPal上で決済され、2010年は7億ドル以上に拡大すると会社側は見込んでいる。同社は今年、アジアパシフィック地域における人員倍増を図り事業強化を行っているとのことだ。

  • PayPal
    PayPalは190の国と地域に広がる市場において24の通貨に対応。全世界で2億2400万人の利用者を持ち、世界800万のECサイトでインターネットショッピングを行うことができる。
    https://www.paypal.com/jp/
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