
2010年のSEOに関する8つの予測 - Twitterは? パーソナライズは? CROは?

1. リアルタイム検索は廃れる
Twitterのデータを検索結果ページに統合することに関しては、マイクロソフトが最初に発表してグーグルの機先を制した [1]。これに反応したグーグルは12月7日 [2]に、僕なりの見方では「Twitter統合の早期テスト版」といったものをリリースした。通常の検索結果ページにリアルタイム検索を含めて表示するものだが、これが完成品にはほど遠い代物だ。
グーグルは過去にも何度か、他社からメディアの注目を奪われるのを阻止する目的で見切り発車をしてきたが、今回は同社サービスのユーザビリティと関連性に深刻なダメージを与えていると思う(一般ユーザー [3]や検索 [4]マニア [5]など、ほぼ全員が僕と同じ意見だ)。
ダニー・サリバン氏が指摘している [7]ように、僕らは1997年のInfoseekに逆戻りしたようなものだ。第1位にランクインしたければ、コンテンツの質や関連性、人気については気にせず、あるトピックについてつぶやく最後の人物になればいい。そうすれば、(少なくとも数秒間は)最上位に表示されるだろう。
僕(と他の大勢の人々)の評価では、これはグーグルがこれまでに実装した新しい検索結果の中でも最悪のものだ。想像するに、クリックスルーと離脱率はすでに、グーグルのユーザビリティ担当者を憤慨させていることだろう。これが今まで(1週間半も)使われているなんて、PR的な観点からは面目を保つのにしか役立たない(それに、アーロン・ウォール氏がこの記事で大胆な言い方をしている [8]ように、「これが気に入らないって? じゃあ、お前ならどうするって言うんだ?」という、ますます尊大な態度でもある)。
2010年には、SERPでのリアルタイム検索統合は次第にフェードアウトすると思う。おそらく完全にはなくならないが、現在ほど多くのクエリで目にすることはないだろう。グーグルはリアルタイムが大好きかもしれないし、それによって多くのメディアの注目を集める(ただし、全面的に支持するメディアはごく少ない)のは確かだが、こんなふうにPRのために質を犠牲にし続けるわけにはいかない。グーグルではまだエンジニアたちが物事を仕切っていると思うが、彼らは統計データを見てすでに失望している。僕は具体的な数字を得ていないけれど、個人的な印象では、リアルタイムの検索結果が表示されるクエリ数は先週と比べてかなり減っている。
2. Twitterの「リンクグラフ」は本物になる
リアルタイム検索の統合へのバッシングは脇に置くとして、僕はTwitterがウェブのリンクグラフを「共食い」している [9]という自分の仮説を固く信じている。実際、「推奨されるリンク元」は、だいたい次のように変遷してきたと思われる。

グーグルは常に、コンテンツの推薦や提示に使われる最新の手段に後れを取らないよう努めてきた。そうした取り組みが、PageRankを使って人気や関連性を判定した方法にも関係しているし、Twitterのデータは単に次の進化でしかない。この記事を投稿する直前の12月14日に、グーグルは独自のURL短縮サービスを開始した [10](これは、データ収集が大きな目的だったと思うが、bit.lyに対するPR上の先制攻撃だった可能性もある。というのは、bit.lyも12月14日にbit.ly Proサービス [11]を開始したからだ)。
グーグルは、Twitterのつぶやきや再投稿の件数に関して生の数字を取得することはないだろう。リアルタイム検索の検索結果にどのつぶやきやソースを表示させるかを決定する際に、グーグルが関連性や人気度を計算していることはみんなすでに確認していると思うし、僕の予想では、PageRankやTrustRankといったアルゴリズムや指標にも、グーグルがリアルタイムのデータを活用する方法を見出すだろう。現在、SEO担当者はつぶやきをリンクに振り向けて、SEOに恩恵をもたらすようにしたいと考えている。僕の予感では、Twitterのつぶやきは近い将来、ページの検索順位を上げる上で独自の重みを持つようになるだろう。
3. パーソナライズ検索は定着する
検索結果におけるリアルタイム性が一時的なものに終わりそうなのと違って、パーソナライズ検索は長期にわたって定着すると思う。グーグルは12月4日、ログインしていなくても「常に有効な」パーソナライズ検索をリリースし、Bingも12月15日に独自のパーソナライズ検索をリリースした。例によって、 SearchEngineLandの記事は完璧 [12]だが、1つの大きな疑問が残る。
どんな指標がパーソナライズに影響するのか?
単にオーガニックな検索結果からのクリックスルー率が影響するのか? 訪問履歴も何らかの役割を果たすのか? それとも、グーグルが提供している他の垂直検索サービスのクリックは影響するのだろうか? 検索結果ページやAdSense、DoubleClickの有料検索広告のクリックはどうか?
僕はぜひとも、こうした方面で実験が行われ、自分たちが今何に取り組んでいるのかをマーケターがもっとよく理解できるようになればと願っている。クリック課金(PPC)広告のクリックスルーを獲得するとオーガニック検索でもメリットを得られると証明されれば、これは2010年型の新しい「ペイドインクルージョン」(有料登録サービス)になるかもしれない。また、有料リスティングのクリックのためだけでなく、「オーガニックな」順位を獲得するチャンスのためにも企業が競争するので、入札価格が大幅に上昇する可能性がある。
パーソナライズがSEOに関係してくることも若干あるが、個人的な意見では、SEOの方法を根本的に変えることはないだろう。
有力なサイトはさらに有力に ―― これまで以上にこの法則が力を持つ。君のサイトが上位に表示されて、手堅くトラフィックを獲得している場合は、地位がさらに確かなものになる。新興勢力は以前よりもかなり苦戦するようになる。
ブランド化がさらに重要に ―― サイト運営者は、忠実な訪問者やファンたちが自分のサイトを探して検索結果ページを調べ、他のサイトも頻繁にクリックしてくれることを願っている。僕の予想では、一部の利口なスパム業者が、人力作業仲介サービスの「Amazon Mechanical Turk」を利用するとか、ブラウザに自分たちのブランドを検索させてその検索結果をクリックさせるようなウイルスに感染させるとか、あらゆる手段を用いて、これを操作しようとするだろう。グーグルがこれに対抗する良い防御策を用意しているかは、いずれわかるだろう。
普通のランキングは存在しない ―― あるいは少なくとも、パーソナライズされた検索結果ページの世界には、「平均的」な「普通」のランキングは存在しない。ランク追跡はまだ、パーソナライズされていない検索を行うユーザーがどうやって君のページを閲覧するかを理解するのにある程度役立つかもしれないが、検索トラフィックとその動向に関する分析ツールのレポートと比べると、こうしたデータはあまり役に立たないだろう。「パーソナライズ検索」における闘いに勝てば、従来の「ランキング」における闘いはそれほど気にならなくなるかもしれない。
SEOの世界でこうした「パラダイムが変化する」出来事に遭遇するといつも、僕はSEOの基本に関する自分の哲学 [13]に立ち返りたくなる。僕にわかることから判断すると、パニックを起こすほどにはまだ物事は変化していないように見える。激動の3か月だったけれど、「業界の流れを変えた」過去の出来事のようにSEOを変える出来事が、目前に迫っているわけではない。
5. ヤフーのSite Explorerと「linkdomain:」コマンドは消滅
6. SEO支出は大幅に増加
7. 2010年は、CRO(コンバージョン率最適化)の年だ
8. クエリは増えて、トラフィックは減る
4. 2つの検索エンジンと「80対20の法則」の世界になる
最新のデータ [14]が示唆しているのは、グーグルが米国で市場シェアをゆっくりと拡大し続け、その一方でBingとヤフーも、いずれは(そうなるとは思うが、規制上の障害がなくなれば)同じ傘下に収まるであろうシェアを取り合っているということだ。
僕の考えでは、大半のウェブマスターは今から1年後、コムスコアとHitwiseがレポートで示した予測が的中するのを目撃するだろう。つまり、Bingとヤフーで25~28%の市場シェアを確保するものの、両方の検索エンジンから送り出される検索トラフィックは全体の20%弱になるということだ(留意すべきは、調査企業2社がマイクロソフトとヤフーのすべての系列サイトにおける検索を――内部の検索も含めて――算出している一方で、グーグルは検索トラフィックの大部分を外部のサイトに送り出す傾向があるということだ)。
5. ヤフーのSite Explorerと「linkdomain:」コマンドは消滅
悲しむべきことに、ヤフーとBingについて僕が聞き及ぶ限り、Site Explorer [15]にはサヨナラすることになるようだ。ヤフーにとってウェブインデックスの維持費は、必要でなければ投資したくないものだし、Bingはリンク情報を提供するポータルサイトを再開する姿勢をまったく示していない。せいぜい期待できるのは、BingのWebmaster Tools [16]が提供する機能を向上させてくれることだが、やはり競争に役立つリンク情報を提供することはなさそうだ。

Site Explorerのサービスでは月に何百万件ものクエリが実行されているので、その後釜を狙う他のサービスが登場するのでは、というのが僕の予想だ。
6. SEO支出は大幅に増加
フォレスター・リサーチは、「米国における双方向マーケティング支出 [17]」に関するすばらしいレポート(1749ドルという価格はちょっと高いが、興味深い)を発表している。特に目を引いたのが以下の2つのグラフだ。

マーケター(検索マーケターだけでなく、すべてのマーケター)が支出する対象として、SEOを上回っているのはソーシャルメディアとオンラインビデオだけだ。

一方でSEOは、年平均成長率(CAGR)の点でPPC広告を上回り続けている。SEOのクリックシェアとSEOに対する支出割合が釣り合うまでにはまだ長い道のりがあるが、その差は徐々に縮まっている。
8. クエリは増えて、トラフィックは減る
7. 2010年は、CRO(コンバージョン率最適化)の年だ
僕がもし現在、別の新興企業を手がけるなら、それはCRO(コンバージョン率最適化)用のソフトウェアに焦点を当てたものになるはずだ。思うに、これはマーケティング部門でまだ活用が最も遅れていて、ROI(投資収益率)が最も高い活動だろうが、認識は次第に高まっている。
CROは、単にテストすることだけでなく、コンバージョンを徐々に改善するためのプロセスを構築することが主眼となる。CROを活用することで、オンライン企業は非常に多くの収益を上げられる可能性があるが、この分野にはまだほとんど投資が集まっていない。僕が思うに、2010年はCROの年になるだろう。理由は簡単で、それは企業が支出と価値の派生元を査定する変曲点になるからだ。この連中 [18]は、大ヒットの年にうまく乗り合わせることができそうだ。僕も投資できればいいんだが(^^)。
CROの必要性をまだ理解していない人のために、僕が「予算・ビジネス目的別 9つのネットマーケ手法 選択チャート(後編) [19]」の記事で使ったマーケティングチャンネルごとの費用対効果の表を紹介しておこう。

8. クエリは増えて、トラフィックは減る
グーグルとBingは共に、さらに努力を重ねて訪問者の滞在時間を増やし、彼らが検索エンジンを去ることなくクエリへの回答を得られるよう工夫している。これは両社にとって良い製品プラクティスだ。グーグルが「ユーザーをグーグルから離脱させる」という視点から脱却するのにこれほど時間がかかったのは驚きだが、それが実現するのは間違いない。最近の例をいくつか見てみよう。
ここには僕が知るべき情報がすべて書かれている――つまり、最近行われた試合の得点、記録、対戦相手、次の試合の日時といったものだ。唯一欠けているのは、僕のいる地域ではどのテレビ局が試合を中継するかの情報だけだ。
クエリを最後まで入力する必要さえない! グーグルは検索キーワードの入力ボックスに天気予報を表示した。同社は、12月に提供を開始したこの機能についてブログに書いている [20]。非公式のブログ「Google Operating System」にも、このトピックに関する優れた記事 [21]がある。
- 飛行機の出発時間やゲート、ターミナルなどが表示されている
ありがたいことに、僕はアラスカ湾のコディアック島に向かわなきゃいけないというわけではないけれど、この検索結果はなかなか気が利いているし、運航情報を知るためにAlaskaair.comを訪問する必要もなさそうだ。
- 宅配便の処理状況問い合わせフォームや、カスタマーサービスの電話番号が表示されている。
顧客サービスの電話番号も、Bingが一層多くの情報を提供するために着手した要素だ(ただし、Bingがこうしたデータを保有していない企業が1社ある [22])。Bingで「FedEx」(Federal Express)を検索すると、結果ページの入力ボックスから発送済み貨物を追跡できるので、検索エンジンから離れる必要さえない(グーグルも同じような機能を提供している)。
僕の認識は、検索エンジンがより多くのクエリに「即答」できるようになり、その傾向が一層強まれば、他のサイトがこうしたクエリから獲得するトラフィックも減る、というものだ。そうなればユーザー体験が向上するし、ユーザーが忠誠心を抱きクエリを繰り返すようになる(両検索エンジンが必死で争って求めているもの)大きな力の1つになると、僕は確信している。
ソーシャルもやってます!