初代編集長ブログ―安田英久

“TV番組でタレントが○○と言った”を記事にするメディアサイトってどうよ?

「他人のふんどしで相撲をとる行為だ」「自分でコンテンツを作ってない」という意見もあるようですが……
Web担のなかの人

ここ2~3年でしょうか。テレビで「ネットで○○が話題になっています」という話題を進める番組が出てきたり、ネットでも個人ブログではなく企業がやっているメディアサイトで「昨日のテレビ番組△△でタレントの○○が◇◇と発言」といった内容を記事にするようになってきたのは。

あなたは、こういったコンテンツ作りの傾向をどう思いますか?

人によっては、「他人のふんどしで相撲をとる行為だ」「自分でコンテンツを作ってないからメディアではない」という意見もあるようです。

しかし、そうでしょうか?

結論から言うと、私は「現在のメディアとして果たすべき役割の1つである」と考えます。というのも、メディアの役割として、これまでの「独自のコンテンツを作ること」に加えて、「情報を取捨選択して整理して伝えること」が重要になってきているからです。

以前のコラムで少し触れましたが、2006年の時点ですでに、消費情報量の4317倍もの選択可能情報が世の中に流通していると言われています(総務省調査)。つまり、世の中に流れている情報すべてを把握することは現実的に不可能になっています。さらに趣味嗜好の多様化や社会構造の細分化・専門化により、人によって「大切だ」と思う情報がバラバラになってきています。昔のように、日本人のほとんどがピンクレディーや「ひょうきん族」に興味をもつといった時代ではないのです。

ブログやSNSのようなCGMも含めて多種多様な情報が大量に流通している世の中だからこそ、玉石混淆の情報の海から「これは良い情報」「この分野ではこれは見ておくべき」といった、情報の取捨選択と整理をする役割が価値を持ってきているのです。

イマドキの新聞というと、通信社や記者クラブからの情報の比率が増えています。しかし、新聞は限られた紙面にその日の情報をまとめる必要があるため、自然と「社会人として知っておくべき情報」を整理して載せているので価値があるのです。

Diggやはてなブックマークのようなソーシャルサイトも、「多くの人が良いと思った情報」を見つける場所として、すでに重要な役割を果たしています。

「2ちゃんスレまとめ」という類のブログも増えています。2ちゃんねるで書かれたおもしろいやりとりや情報を、1つの記事にまとめて自分のブログに掲載しているのですが、これも2ちゃんねるという情報のるつぼから「おもしろい情報」をピックアップする良い役割を果たしていると思います。

いずれも、情報の取捨選択と整理をしているものですね。

世の中では「編集者」というと文章を編集する役割だと思われているようですが、実は、それは編集者の役割のごく一部なのです。編集者の本当の役割は、こういった情報の取捨選択と整理にあるのです。

Web担でも海外&国内SEO情報ウォッチという、検索マーケティングの情報を1週間分まとめるコーナーがあります。このコーナーについて、「あの記事は自分の主張がない、他人の出した情報を寄せ集めているだけだ」という意見が寄せられたことがあります。でも、編集部では、世の中にSEOの情報がたくさん流れている時代だからこそ、ああいった形で「良い情報を取捨選択してまとめる」ことで、SEOに興味のある人が良い情報を探す時間を節約できるのだと考えています。

これはメディアに限らず企業サイトでも同じです。「オリジナルの記事なんて作れない」と悩むのではなく、情報の取捨選択や整理を考えてみてはいかがでしょうか? 特にB2Bならば、業界の情報を整理するだけでも価値が出てくるかもしれません。

◇◇◇

もちろん、取捨選択や整理といった分野はネットでのシステム化が得意とする分野ですから、現在は編集者が果たしている「情報の取捨選択と整理」の役割も、群衆の叡知を利用したシステムが果たしていくのかもしれません。

あ、あと、情報の取捨選択に価値があるからといって、オリジナルのコンテンツを生み出している人の著作権をないがしろにすることは論外ですよ。コンテンツを作る人がいてこそ、取捨選択に価値が出るのですから。はい。

用語集CGM / SEO / SNS
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