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音声SNSブーム到来!? Clubhouseで感じた視覚/聴覚メディア、主/副の関係とは?

マーケターコラム、今回はヤプリの島袋孝一さん。Clubhouseを使ってみて感じた「音/音声メディアや聴覚情報の可能性」について。
株式会社ヤプリ コミュニケーション室 マーケティングスペシャリスト 島袋孝一(写真右)

2021年の年明け早々、突然「音声SNSブーム」がやってきました。

私がこの原稿を書いている、2021年1月最終週。界隈の話題となっているのが「Clubhouse」という招待制の「音声SNSスマホアプリ」(執筆時はiOSアプリのみ)です。

さっそく私も友人から招待してもらって、ひととおり利用してみました。この記事が公開される頃にはおそらく熱狂的なブームは沈静化していると思いますが、このClubhouseは、「テキスト(画像)メディア」と「動画メディア」の狭間にあった「音声メディア」の市場を創出(可視化)し、定着させるきっかけになるかもしれません。

従来まで「音声」にまつわるSNSアプリがなかったわけではありませんが、今回「招待制SNS」などのさまざまな「巧妙な仕掛け」によって多くの人の興味・関心をそそって話題となりました。そのあたりの考察は、いろいろな方が他メディアに寄稿されていますのでそちらに譲るとして、本稿では、Clubhouseを使ってみて感じた「音/音声メディアや聴覚情報の可能性」について書いてみたいと思います。

ラジオっ子だった少年時代から音楽に傾倒した高校時代

私は小学生の頃、テレビやゲームに加えて、「ラジオ」にハマっていました。

千葉に住んでいた当時、家族で移動中のカーラジオや自室でのラジカセ(!)で、BayFM(千葉県を放送対象地域とするFMラジオ放送局)をよく聴いていました。聴くだけでなく、電話リクエストを受け付けていた生番組に電話をかけたり、FAXを送付したりしていました。

当時の電話リクエスト系の生番組は、事前にスタッフとつながるのではなく、「本番オンエアー中の番組にDJと直接つながる」という今では考えられない仕組みとなっており(今でもそうなのでしょうか?)、小学生とつながったときのDJたちの驚きを今でも忘れられません。また、NHK FMで深夜に放送されていた「ラジオドラマ(オーディオドラマ)」にもハマり、連続シリーズを、毎夜、手動でカセットテープに録音して、楽しんでいました。

中学〜高校時代も、「ウォークマン」などのポータブルオーディオプレーヤーは、カセットテープやMDだけでなく、ラジオも楽しめる機器を選んでいた記憶があります。番組の公開収録を訪問したり、リクエスト参加でいただいた番組ステッカーをお気に入りグッズにつけたりしていました。

並行して「邦楽(当時は「J-POP」という言葉はなかった)」にもハマっていたので、最新情報を入手するメディアは、テレビよりもラジオでした。私が高校時代以降、音楽の道を(うっかり)目指したのも、この原体験にあったことは間違いありません。

ちなみに高校以降は、完全な文系になっていたのですが、この「音」に関する分野だけは、興味は深まるばかりで、「音を科学する」つまり「物理」の「音」の分野だけは、よく記憶に残っています。

当時、小室哲哉さんに憧れ、シンセサイザーを触り始めていたというのもありますが、聴くことの「音楽」以上に、「音を創ること」への興味関心も高まって行きました。

物理での学びから、今でもコンサートライブホールでは、最前列よりもPA卓付近の席を好みますし、「ノイズキャンセリングのヘッドフォンは、なぜ外音(ノイズ)を遮断できるのか?」なんてことも、すっと理解できるようになっています。

このことは、回り回って、現在の業務、ウェビナー配信おいても、カメラよりマイク(音声環境)の品質を優先していることに、役に立っているのかもしれません(笑)。

「ながらメディア」の主・副関係

勉強中や仕事中に聴くラジオ番組は、「勉強が主で、ラジオ(音声)が副」ですよね。また、「運転中のカーラジオ」も同様に「副」です。

では、もはや日常となっている「テレビを見ながら、スマホでSNSやゲームアプリを利用する」といったシーンの場合、どちらが「主」でどちらが「副」なのでしょうか?

テレビとスマホは「ながらメディア」「ダブルスクリーン」などと呼ばれていて、一般にはテレビが「主」、スマホが「副」と思われがちですが、メディアを視覚と聴覚に分けて捉えてみると、意外なインサイトが明らかになります。

「テレビでドラマやバラエティを見ながら、スマホでTwitterをしているケース」は、多くの人がテレビ=「主」と感じるかと思います。このとき、視覚はテレビとスマホに分散されているのに対し、聴覚はテレビに奪われています。

次に、スマホでClubhouseを聴きながら、テレビをつけているケース。テレビからもスマホからも音声が流れていますが、おそらく、耳からの情報=「Clubhouseでの会話」に意識を多く奪われ、スマホからの聴覚情報が「主」、テレビからの視覚情報が「副」になっているのではないでしょうか。

一般に、視覚は複数のメディアから情報摂取できますが、聴覚情報はどれか一つのメディアに集中しがちです。これらの例から、「ながら接触メディア」において「主のメディア」になるためのカギを握っているのは、「聴覚情報」であることがわかります。

もちろん、メディアに載っているコンテンツやTPO、コンテキスト・文脈なども加味しないといけませんが、「副」と思われがちな音声メディア・聴覚情報も意外に影響力が大きく、「ながら視聴」で「脳内の主」を取れるチャンスがあるかもしれません。その際、大事になってくるのは「音声の質」です。

相変わらず続くウェビナー乱立時代に

コロナ禍が長期化する状況下、B2Bマーケティング界隈では、ウェビナーが新規ビジネス機会創出のニューノーマルになりつつあります。

私は、ウェビナー配信と同じぐらいの高頻度でウェビナー視聴もしています。多くは仕事をしながらの「ながら視聴」です。そして、その「ながら視聴」の際の「快適さ」は、「カメラ映像」や「スライド」といった「視覚」ではなく、「音声」の質に大きく左右されます。

もちろん音声の質は、通信インフラの状態にも大きく影響されますが、配信者として力を入れるべきは、PC・マイク環境の整備です。

私は最近、ウェビナーで遠方からゲストを迎える際、事前に先方のPC・マイク環境を確認させていただいています。

ゲストがPC標準マイクやiPhone付属のヘッドフォン+マイクを使用しているときは、場合によっては、あらかじめこちらから「配信専用外付けマイク」を送付し、収録・配信を実施します。

視聴者の多くが「ながら視聴」をしていると想定し、少しでも「聴」環境の質を向上させることで、視聴者の意識の「主」を取れるのではないかと意識しています。

「音声だけのメディア」によるマーケティングアプローチ・コミュニケーションは、まだまだブルーオーシャンです。Clubhouseの登場で、一気に市場が生まれ、急拡大するかもしれません。音声配信をビジネスに利用してみたいという方には、拠り所となる書籍がちょうどインプレスから出版されているので、手にとってみてはいかがでしょうか。

最後に、島袋が配信している音声メディアの一覧を記しておきます。「音声SNSメディア」に興味のある方は、ぜひ視聴してみてください。

参考情報

視覚情報と聴覚情報の違いについて詳しく知りたい方には、こちらの記事「聴覚情報と視覚情報の違いから読み解く音声マーケティング」が、マーケティング視点で解説が書かれているのでおすすめです。

また、少し前に、以下のような記事やTweetが話題になりました。これらは、役割的に「副」に位置する「音声・音楽」が与える影響の大きさを論じています。

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