アユダンテではSEOのコンサルティング以外に自社サービスもやっています。
1つはソーシャルクライアントの「つぶやきデスク」、もう1つは全然関係ないですが、電気自動車の充電スポット検索アプリの「EVsmart」。
私は社内プロジェクトとしてEVsmartのSEOをお手伝いしてきました。今でこそ電気自動車の普及と共に急成長し、アクセス数もかなりあるEVsmartですが、ここまでくるのには様々な施策を実施してきました。
今回はそのEVsmartのSEO部分に焦点を当ててご紹介したいと思います。

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EVsmartについて

「“電気自動車”で1位になるまで」とキャッチなタイトルにしてしまいましたが(笑)、実はそこはあまり重要ではありません。
EVsmartは全国にある電気自動車の充電スポットを検索できるサイトなのですが、本命はアプリなのです。つまりKPIは「アプリのインストール数を増やす」こと。
アプリではSEOができないので、Webサイトでの対策となります。そして“電気自動車”という言葉は検索数が6万以上のビッグワードですので1位になればそこそこ流入は期待できますが、もっと重要なのはメーカーや車種やスポット名など細かいロングテールワードでターゲットユーザーを集客すること、そしてアプリインストールへつなげることなのです。

さて、そのEVsmartの誕生は2014年の秋、当然今ほど電気自動車もメジャーでなく、普及もしていなかった時代です。そこから5年以上経ち、現在では登録充電スポット数は2万件強、掲載口コミ数は6万件強、利用ユーザー数は10万ユーザーというサイトに成長しました。
そして最近では日産自動車やフォルクスワーゲンなどの自動車メーカーに充電スポットデータを供給したり、東京電力と日産による「電気自動車を活用したVPP実証実験 [2]」のようなプロジェクトに採用されています。
電気自動車の世界ではオーソリティになりつつあることを実感しています。

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EVsmartのSEO歴について

EVsmartには現在3つのサイトが存在します(+アプリ)。

EVsmartサイト [3]
本体と呼ぶ電気自動車の充電スポットの検索サイト。スマホはレスポンシブで展開。
アプリもあり。
EVsmartブログ [4]
電気自動車やEV関連の日々のニュースやコラムを扱うブログ。
1人で開始し、現在は5人のライター体制でデイリー更新。
Googleニュースにも登録。
EVsmartフォーラム [5]
個人間のコミュニケーションを目的とした掲示板。
昨年末にベータ版としてオープン、3月には正式オープン予定。

それぞれの変遷をまとめると次のようになります。

SEO的な転機はやはり2016-2017年のリニューアルです。EVsmartのようなDB型サイト(データベース型サイト)*はチューニングする箇所が多く、システムにも関係するのでやはりリニューアルのタイミングが一番効率よく施策できるのです。
このときはデザインリニューアルでしたが、それに併せてサイトの構造、テンプレート、URLとheadタグ周り、カテゴリなどSEOも全面的に見直しました。
詳しくはまた別記事でまとめてみたいと思います。

*DB型サイトとは

サイトがデータベースに基づいて生成されている規模の大きいサイト。ZOZOやAmazon、スーモ、トリップアドバイザーなど多くのサービスサイトはこれに該当する。

ブログに関してはblog.というサブドメインで2014年からスタートしています。当初は安川が1人で書いてましたが、頻度が追いつかず、2018年に複数人のチーム体制にしました。このチームのライターさんは自動車業界でかなり有名な方ばかりのようで、やはりその道の専門の方に執筆いただくと記事の質がすごいなと感じています。
コラムから取材記事、海外ニュースの翻訳などEVに関する様々なテーマを扱っています。

ちなみに”電気自動車”ではずっとこの記事 [6]が1位にヒットしていましたが、最近順位そのままでランディングページが本体のメーカー一覧 [7]に差し替わったという現象があります。1つのクエリでランディングページが差し替わるというのは他のサイトでも最近よく見かけます。どのページがユーザーにとって「その時」最も「最適か」、Googleにそんな実験をされているような気も(笑)。

ブログのターニングポイントはAMP化とGoogleニュースへの登録でしょうか。
AMP化では全然順位は上がらなかった割にAMPテンプレートのUXが悪くて直帰率が上がり(笑)、WordPressのプラグインのアップデートの関係でログが取れないという散々な状況でした。
Googleニュースは1回審査に落ち、複数体制にしたことでやっと登録されました。その効果もあってか、最近ではGoogle Discover経由の流入もかなり見られます。
ブログの施策についても詳しくはまた別記事でまとめてみたいと思います。

Google Discover経由の流入

掲示板に関してはかなり悩みましたが、クラスタリングなどいろいろ考えて別ドメインを選択しました。phpBBという海外のフォーラムソフトウェアで生成しています。ただ元のテンプレートやURL構成などはあまりSEO/UX面でよくなかったのでかなり手を入れてカスタマイズしています。
そろそろ正式オープンですので、個人間でのコミュニケーションや質問できる場として機能していくこと、そして本体とブログに続いて新たな集客導線となることに期待しています。

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SEOに効いたポイント

今のSEOはサイトの内部、つまりHTMLやキーワード周り、URLなどを最適化しても昔ほど大きな効果はありません(もちろん最低限の最適化はしたほうがいいですし、していない場合は効果もあります)。
それよりも商品やデータ、つまり箱ではなく、中身をいかに最適化するかが重要です。
またサイトやサービスを地道に認知させていき、ファンを作ってWebでの露出を増やす、指名検索を増やすということも重要です。
そういう観点からSEOに効いたと思われるポイントをを5点まとめてみたいと思います。

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1. データの質とオリジナル性

EVsmartで使っているスポットデータは完全にオリジナルです。専用チームがいて、全国の充電スポットデータを収集し、電話をかけて1件ずつスペックなどを確認しています。
道の駅などは案外施設の方でもそのスペックを理解していないこともあり、本当に時間をかけて正確な情報を聞き出してデータベース化しているのです。
データが「オリジナル」であり「正確」であり「豊富」であること。
これがSEO的にも非常に評価されるポイントとなります。

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2. 口コミ

やはりコンシューマー向けのサービスサイトの場合は口コミが重要です。
EVsmartではアプリと連動してこの口コミを利用ユーザーに投稿してもらっています。
口コミの増加により各スポットの最新情報や写真など重要なデータが自然と増えてきました。

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3. サイトのUX

本体の目的は充電スポットの検索です。「検索」がメイン機能である以上、UXは非常に重要です。ここはリニューアルの際にPC、スマホ両方の画面を徹底的に見直して(レスポンシブでも出し方が違うため)、上層からの遷移、詳細検索などの使いやすさ、地図での選びやすさなど探しやすさを意識しました。
一例として、都道府県レベルではGoogleマップは出したくないというのがあり(広義すぎる)、地図をオリジナルで作成しました。その際にGoogleアナリティクスで県内と県外のユーザーどちらのアクセスが多いか比較し、県外が多そうなので県外ユーザーにもわかりやすい地域区分で地図化しました。ただ比べるとわかりますが、PCとスマホで表示要素は結構違います。

埼玉県のページ(PC)
埼玉県のページ(スマホ)
↑PCでは地図から選ぶニーズが強かったので地図を表示(エリアクリックで細かい市区がポップアップ表示)。スマホでは画面幅の関係や行動を考えて詳細条件ブロックを最上部に。ちなみに利用ユーザーはPCとスマホが半々。

これらのデザイン/IA関連は浦上未央さん [8]というデザイナーさんにすべてお願いしました。
ちなみに簡単なところでは直帰率が全体平均10%、大きく見直した都道府県では20%近く改善しています(もともとかなりひどいUX…)。

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4. ユーザーの検索ニーズ

未成熟なジャンルながら「電気自動車の充電に関するユーザーの検索ニーズはなんだろう?」そこは最初に考えました。なぜならユーザーニーズからサイトの構造が決まるからです。
近所の充電器を探す?遠出するので出先の充電器を探す?コンビニやスーパーなど充電中に待ってられる場所のニーズはある?などなど。

エリア名+充電スポットや具体的な施設名、電気自動車に関するハウツーやニュース、初心者向け/上級者向けのコンテンツ、それら各ワードをどのサイトのどこで取っていくかを最初に定義しました。各サイトの位置づけとドメインを最初に考えることで対策するキーワードも決められますし、キーワードのカニバリ(食い合い)を防ぐこともできます。

そもそも当時は検索があまり発生していないジャンルでしたのでキーワード調査はかなり困難でした…(ほとんど推測、専門者からのヒアリング)。

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5. ソーシャル活用とリアルのコミュニケーション

大企業ではないので多大な広告費はかけられません。そのため、EVsmartの主な露出はソーシャルとイベント出展です。
ソーシャルを積極的に活用してフォロワーを増やし、アカウントを成長させたことで、現在では充電スポット情報の更新を投稿したり、ブログ記事を投稿した際に拡散=露出をはかることができています。

↑Twitterは14000人のフォロワー、Facebookは27000人のいいね

また積極的に電気自動車関連のイベントに出展したり、チラシやノベルティグッズを配ることで電気自動車オーナーや検討しているユーザーに存在を知ってもらう試みもしています。
どれもとても地道なことですが、新しいサービスの場合、少しずつ露出して認知度をあげてサイト名の検索やサイテーションを増やしていくことがとても重要だと感じています。

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SEOの効果

さて、あまり重要ではないのですが、“電気自動車”で1位(日によっては2位)になるまでを時系列で見てみましょう。確か昨年くらいからようやく1位に表示されるようになったと記憶しています。EVsmartの競合となる充電スポット関連のサイトはあまりないのですが、自動車メーカーが競合になるのでそこそこ難易度が高いワードです。

オーガニック流入もリニューアル後から順調に伸びています。
では“電気自動車”の1位は流入にどの程度貢献しているのでしょうか?実はわずか8%しかないのです(サーチコンソールの検索パフォーマンスより)。そもそもスマホでは”電気自動車”の検索結果に動画や地図などユニバーサル検索が多数出ており、1位を取ってもクリックが期待できないのです。

↑広告、動画、ローカルなど様々な結果が並んでようやくオーガニック1位のEVsmart。

スマホの検索結果はPC以上に多様化しているクエリも多く、ビッグワードの効果はますます薄れているように思います。
またスマホ時代になって、ユーザーの検索クエリのバリエーションは非常に増えていると言われています。
あらゆる検索ニーズに対応してロングテールの獲得をすることが今のSEOには非常に重要だと感じています。

次回以降は本体の施策(データベース型のサイトのSEO)、ブログの施策(メディアのSEO)、について詳しくまとめていきたいと思います。

この記事を書いた人
江沢 真紀
江沢 真紀
SEOコンサルタント

アユダンテの創業メンバー。SEOは2001年から、イージャパンにてJeff Rootに師事。大手通販サイトを中心にいままで手掛けたSEOプロジェクトは100サイト以上。検索ニーズからのサイト設計、カテゴリ設計などを得意とする。