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進化するビジネス向けクラウド「Zoho」の次なる構想は? ユーザー事例に見るZohoのメリットとは

クラウドサービス「Zoho」を提供するゾーホージャパンは10月24日、ユーザー向けイベント「Zoholics Japan 2018」を横浜で開催した。(イベン

企業向けクラウドサービス「Zoho」を提供するゾーホージャパンは10月24日、横浜ランドマークホールでイベント「Zoholics Japan 2018」を開催した。今年が10回目となる本イベントには多数のZoho ユーザーが来場。午前はホールでの基調講演および共通セッション、午後は「セールス&マーケティング」と「コミュニケーション&コラボレーション」の2トラックに分かれてのセッションが行われた。

本レポートでは、基調講演およびユーザー事例を中心に紹介する。

基調講演: The Big Picture: Zohoが描く壮大なCloud の世界

Zoho の開発元であるZoho Corporationより、チーフ・エバンジェリストのラジュ・ベジスナ(Raju Vegesna)氏を迎えての基調講演は、「The Big Picture: Zohoが描く壮大なCloud の世界」。Zoho の提供するクラウド・アプリケーション群がビジネスユーザーの課題をどのように解決するのか、そしてZoho が今後どのように進化してゆくのかが語られた。

Zoho Corporation のチーフ・エバンジェリスト、ラジュ・ベジスナ氏

ベジスナ氏は創業から22年を経たZoho の現況として、40のクラウド・アプリケーションを180カ国の4,000万ユーザーに提供していると紹介。外部からの投資を受けず自前の資本のみで成長してきており、買収されるリスクがなく安心して利用できると説明した。

Zohoがカバーする領域は、セールスやマーケティングはもちろんのこと、財務や人事、ITなどのバックエンド系、コミュニケーションやコラボレーションなど多岐にわたる。Zoho アプリケーション間はもちろん、サードパーティのアプリケーションとも柔軟に連携できることを重視して開発を行い、いまや"The Operating System for Business"(ビジネスのOS)と呼ぶべき統合されたアプリケーション群となったとベジスナ氏は語る。

統合されたアプリケーション群

これを受け、2017年7月にはZoho の全アプリケーションをパッケージ化した「Zoho One」の提供を開始。当初利用可能なアプリケーションの数は35だったが、その後の1年間で5つのアプリケーションが追加されている(料金はそのまま)。Zoho One 契約企業の中には、従業員規模が2万人の企業もある。利用企業では平均して16のアプリケーションが利用されているという。

※従業員数に応じた料金体系で、一人当たり4,200円/月。ミニマム5人から

つづいてベジスナ氏は、ビジネスOS としてのZoho One 上に構築された、3つの代表的な機能を紹介した。

  • Zia(Zoho Intelligent Assistance):AIエンジンを搭載し、アプリ間でさまざまなシグナルを処理
  • Dashboard:Zoho One 内のデータを集約し、ダッシュボードとして表示(BI)
  • Search:Zoho One 内をまとめて検索し、関連性の高い項目を表示

Zoho の今後として、直近ではeコマースサイトを構築可能な「Zoho Store」を2019年第1四半期にリリースすることを予告し、2019年中には新たに5つのアプリケーションが追加される見通しだ、と述べた。

また欧州におけるGDPR (EU一般データ保護規則)の発効など、データとプライバシーに関する意識の高まりについても言及。Zoho に格納されるデータはユーザーのものであり、必要に応じて暗号化されること、またユーザーのデータを用いた(広告等の)マネタイズはこれからも行わないと語った。

基調講演を担当したラジュ・ベジスナ氏のツイート。(大意:本日、Zoholics Japan を横浜で開催。11年前に日本で始まったZoholics は、今や世界中で開催されるようになった)

Zoho One ユーザー対談:イナバ写真館吉田氏×オフィスバンク森氏

「Zoho One ユーザー対談」にユーザー代表として登壇したのは、イナバ写真館の代表取締役である吉田弦矢氏と、オフィスバンクの経営企画部に所属する森麻紀子氏。進行役は両社へのZoho 導入を支援したカイトCEO の藤川勝廣氏が務めた。

左からカイト藤川氏、イナバ写真館吉田氏、オフィスバンク森氏

現在40才の吉田氏は、家業であるイナバ写真館を継ぐため29才で地元の福岡県に戻り、2016年に代表取締役社長に就任。同じタイミングで、顧客対応の向上を目的としてZoho CRMを導入した。以前、導入されていた写真業界に特化したCRM ではスピーディな顧客対応ができず、複数のツールを比較・検討する中で「攻撃的なマーケティングができる」とすすめられ、Zohoに決めたという。

一方の森氏は、ソーシャルメディアマーケティングの支援会社などを経て2017年1月にオフィスバンクに入社。当時導入されていた大手SFA/CRMは設定項目が多すぎて使いこなせておらず、更新のタイミングでいくつかのツールを検討。カスタマイズもわかりやすく、開発なしで幅広いサービスをすぐに活用できる点がエンジニアのいない自社の環境にフィットすると判断し、Zoho Oneの導入に踏み切った。

「利用しているアプリケーションは?」との問いに対して、吉田氏はZoho CRM のほか、Zoho Social とZoho Survey を挙げた。特にZoho Survey は年賀状を受注するための仕組みとしても利用しており、顧客自身に情報を入力してもらうことで、打ち込み時のミスをなくすことができたという。

一方、現在CRM のローンチ作業を進める森氏は、社員がZoho に馴染むよう、先行してコミュニケーションツールをZoho Connect に変更。いずれは経理向けのZoho Books や人材系アプリケーションの利用も検討していると述べた。

今後の課題については、「自分以外にもZoho を使いこなせる社員を作りたい」(吉田氏)、「ゲーミフィケーションの要素なども取り入れ、営業が楽しみながら入力してくれるようにしていきたい」(森氏)と語った。

事例:約半年でZoho CRM へ移行し、現在は社内システムの中核に(アタラ杉原氏)

午後の「セールス&マーケティング」トラックには、システムソリューション事業と広告のコンサルティング事業を手がけるアタラCEOの杉原剛氏が登壇。2016年末から2017年にかけてZoho CRM を導入した際の体験と、現在のZoho One の活用状況を語った。

アタラ CEO 杉原剛氏

アタラでは、以前に利用していた大手SFA/CRM の利用料が高価であること、機能面で複雑になり過ぎて杉原氏以外に管理できない状況に陥ったことから、他ソリューションへの切り替えを模索。契約の更新時期が迫っていたこともあり、検討から導入までのスケジュールがタイトであったが、2017年1月にZoho CRM のトライアル利用を開始した。

2017年3月に、まずは1ライセンスを購入。データのインポートのしやすさ、カスタムモジュールの動作などを見極めながら、移行計画やマニュアルを作成した。6月にかけてデータを移行しつつ、当時の利用者数に応じた30ライセンスを追加購入。社内講習(2グループ×1時間×2回)を実施したうえで正式にローンチさせた。以前のSFAも1ライセンスのみ残し、うまくいかなかった場合の保険としてバックアップ体制をとったが、Zoho CRM のローンチ後は結局1度もログインしなかったという。

同社においてはデータの活用が事業の肝となっており、社内のシステムにおいてもAPI などを活用しつつ社内外のツールと柔軟にデータ連携を図っている。以下の画像は現在のシステム構成図だが、Zoho に格納された顧客データと、ダッシュボードとしてのDOMO がその中核となっていることがわかる。DOMO とZoho の連携は、そのための機能がデフォルトで用意されていたために非常に容易であったという。

アタラのシステム構成

同社で現在活用中のZoho アプリケーションをまとめたものがこちら。Zoho CRM を始め、Zoho Creator、Zoho Forms、Zoho Reports などを組み合わせて業務に活用している。固定料金のみですべてのアプリケーションを利用可能なZoho One のメリットを享受できている状態であり、今後はZoho Invoice やZoho People も使ってみたいとのこと。

活用中/活用予定のZoho One アプリケーション

講演を終えるにあたり、杉原氏はデータ経営を目指す人に向けて、次のようなアドバイスを送った。

ビジネスにおけるKPI やKGI を定めてはいるものの、最終指標しか見ない人が多い。分解した数値をきちんと追跡し、適切なアクションをとることが重要だ。数値がCRM にきちんと格納される状態を整備できれば、それらを活用してビジネスを伸ばすことができる。

事例:多様な関係者間のコミュニケーションをZoho Connect で(南房総市観光協会)

「コミュニケーション&コラボレーション」のトラックでは、南房総市地域おこし協力隊の相川武士氏から「観光まちづくりのための情報共有・プロジェクト管理」と題し、南房総市観光協会のZoho Connect 活用事例が紹介された。

南房総市地域おこし協力隊 相川武士氏

南房総市では近年、日本版DMO(観光まちづくり組織)の設立やインバウンド客に向けたWebサイトの多言語化などのプロジェクトが進められており、行政、観光協会、外部パートナーなど多様な関係者の間での情報共有やプロジェクト管理が課題となっていた。この解決のためにグループウェアの利用を検討し、いくつものツールを比較した結果、Zoho Connect の導入を決めたという。

選定の理由として相川氏は、連携先である市役所においてソフトウェアのインストールが困難であったこと、いくつかのクラウドサービスはアクセス禁止の対象となっていたこと(Zoho は対象外)、日本語化が完了していたこと、価格面で優位性があること、スマートフォンアプリがあったことなどを挙げた。

現在は内外の22名がグループに参加しており、主に情報共有のための「フィード」、プロジェクト管理のための「タスク」などを利用。基本は全員に共有するスタンスで、金銭がからむものなど必要に応じて非公開グループを利用しているという。

「かたくなに使ってくれない人がいて、メールで送ってほしいと依頼される」こともあり、Zoho Connect だけでどのように完結させるなどに悩みつつ、今後は旅行業務を手がけることも見据え、CRM などの導入に意欲を示した。

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