ゲストスピーカー

>片山義丈氏

ダイキン工業株式会社/ 総務部 広告宣伝グループ長 部長

【IMJ LIP 〜パートナーに聞く〜】第1部

「デジタルマーケティングって本当のところ、どうですか?」ダイキン工業 広告宣伝グループ長 片山義丈氏 はこちら [1]

【IMJ LIP 〜パートナーに聞く〜】第2部

「デジタルをブランディングにどう生かせるか?」ダイキン工業 広告宣伝グループ長 片山義丈氏 はこちら [2]

下請けでも、業者でもなく、「パートナー」

竹内 片山さんとお仕事していると、ベンダーさんや外部の人の使い方がうまい!と感じます。突き落とし加減も絶妙で(笑)。どう使い分けているんですか。

片山 どうなんでしょうね。ただ「下請け」や「業者」という言葉が大嫌い。「下請け」だとクライアントのいいなりになってしまう。「パートナー」であって欲しいし、そうだと思っている。それは優しい言葉をかけるという意味ではない。専門性の高い外部の力をもらっていかないと、今日と同じことを明日やっていては勝てないですから。


竹内 チャレンジングなこともたくさん手がけていらっしゃいますが、どう社内で話を通して予算をつけているのかも、ぜひお聞きしたいです。

片山 「私、失敗しないのです(笑)」。だからチャレンジングなことができます。失敗しないというのは、投資した元は必ずとる。会社に損はさせない。でも「私、成功しないことも多いです」。例えば『雲プロジェクト』。これはチームラボさんとコラボして、雲に映像を映そうというプロジェクトで、失敗はしていないのです。投資対効果はばっちりで、失敗ではない。それどころか世の中の基準でいえば大成功はしたんですけれど、まぁ私が当初考えていた超大成功からはほど遠い大成功です。
はしょっていいますが、ダイキンの技術を使うと雲を作ることができるんですね。それをアートの力で拡散したかった。雲に映った映像がすごくて世界中に拡散して世界中の信じられないくらいのたくさんの人が「Oh! DAIKIN Great!!」というのが私の超大成功イメージだった。ただ、雲に映った映像は生で見るとすごくきれいなんですが、スクリーンを通してみても感動しにくいんですね…...。本当は東京でやりたかったけれど、いろんな条件から北海道のトマムでやらなければいけなくなった時に、当初の狙い通りではなくなった。その時点で私としては超大成功できなかったという意味で失敗。でも、失敗するわけにはいかない。発想もいいしやっている内容はいい。だから見た目によるインパクトではなく、チャレンジングなことに取り組むこと、やっていることに意味を付ける情報発信を強化した。おかげでNHKの21時のニュースなどさまざまなメディアでも紹介されました。投資した元をとるどころか、広告換算でいえばその50倍以上の効果があった。

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「継続もの」をやりながら、「面白いこと」のPDCAを回す

竹内 どうして、そういうユニークなことができるんでしょうか。

片山 この部分は私がいっても重みやありがたみがないので 権威のある人の言葉をお借りしたいと思います。私の言葉だけだと、ダイキンだからできること、片山だからできることと思われたくないので。たとえば超優秀なマーケターである、エステーの鹿毛さんは、「奇抜な企画をどうやって社内で通しているのかとよく聞かれるが、これに対しては『成功を重ねなければ許してもらえるわけがない。思いつきだけで実現できるほど現実は甘くはない』と言っておられます。
よく社風が柔らかいからできるのでしょう?とかいう人がいますが、企業ですから、わけのわからないこと、ユニークな施策を通そうとするならば、提案する人が今まで積み上げてきた成功、その提案を信頼できるかどうかの判断としての基礎になる部分はとても重要です。ユニークなことをするには、つまり成功を重ねないといけない。私は失敗はしません。

でも、つぎにこういう疑問がわきませんか? どうしたら成功を重ねることができるのですか?という大問題です。
こちらについては、やっぱり超優秀なマーケターであるマクドナルドの足立さんがおっしゃっています。「革新的なことをする時に『みんなの理解を得ようとしない』こと」。革新的なことをやろうとする時は、みんなの承認をとらずに、勝手にやることが大事だと言われています。そして成功したら大々的に公表して、ダメならもみ消せばいいと(笑)。私は小心者なのでもみ消したことありませんよ。ほんとですよ。さらにこうも言っておられます。「自分の決裁権限を最大限に利用すれば、小規模かもしれませんが後でもみ消せる範囲でも、やれることは結構ありますよ」。

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私も『雲プロジェクト』についてみんなに詳細全部は説明しなかった。「WEBでうちの空気の技術を紹介する新しい企画です!」というコアの部分しか。

みなさんなりにそれなりに権限ってあるはずです。私は部長になった時はいろいろあってあまりうれしくなかったけど、課長になってほんとに嬉しかったのを覚えています。それは少額だけれど自分で決裁できること。競合と同じことをやっても勝てない。だからチャレンジングなこと、ユニークなことが不可欠。自らのタスクについては他の誰よりも一番自分が考え抜いている。その上でやるべきと思うこと、思いつきではないのであれば、やるんです。大きなコトはできないですが、仕方ありません。やってみてうまくいったら「うまくいきましたー!」と声を出す。「あいつのところ、なんかうまくいってる」と積み重ねる。小さな実績、成功を積んでいくしかない。その経験を積むと、失敗しないようになる。それで大きな力をつけていって、さらに大きな取り組みをやれるようにする。
継続することをやりながら、必ず新しいことを何割か入れていく。ダイキンなら面白そうなことをやってくれそうだと思ってもらえるようなことをやると、また面白い人がやってきてくれる。そうしたら、とりあえず谷底に突き落とす(笑)。そして這い上がってきてもらって、一緒に面白いことをする。実際には逆に相手から谷底に突き落とされることの方が多い。半泣きになってこっちも這い上がる、こんなPDCAを回していくんです。

「電車のドア上広告」という媒体開発

竹内 継続している施策についても教えてください。

片山 電車のドアの上の広告は年間で20年以上出し続けています。電車って乗っている時はみんなスマホを見ているけれど、さすがに出入りする時は顔を上げる。この広告はずっと出しています。あとは、テレビもずっとやっている。デジタルメディアは変化が激しいので、「いいよ」と聞いたものは試しながら、何を定番にするかに向けて試行錯誤しています。

施策を打ち出す際には、その効果のデータは見ないといけないけれど、データをどう見るかだと思う。ある時うちの研究所に霞ヶ関の偉い方が来られて、なぜか「ダイキンはいい会社だと思っている」とすごくダイキンに詳しくてほめていただいた。ほめていただいた内容はドア上広告でしか発信していないネットにもないネタ。それってその人が銀座線や丸の内線を使っているから、きっと5年間くらいダイキンのドア上広告に洗脳されていたんだろうと(笑)。「今はデジタルサイネージの時代だからもう紙媒体なんて」といわれるけれど、なんであろうと何回か触れているうちに好感をもってくれる。

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実はこの媒体スペース、はじめはJRの山手線や中央線でやったんです。もともと路線図が掲出されていたスペースで、広告メニューにはのっていない。
メニュー表の広告効果のデータはあるけど、それだけ見ていてもダメ。そのデータを踏まえてもっといいスペースがないかな?と考え抜く。路線図出すところだから最初は「売り物じゃない」と言われたんだけれど、「すごくいい広告スペースだから!」と2年くらいかけて交通広告のプロであるオリコムさんと一緒に媒体開発した。当時まだダイキンも知名度が全然なくて、最も効率よく知名度を上げるためには、メニュー表にのっていない新しい広告スペースが必要で、無ければ作るしかない。作ってやり続ける、ですね。

パートナーさんの情熱に刺激されて実現した『大ぴちょんくん』

竹内 来期はどんな面白いことを仕掛けようとしているんですか?

片山 あくまでも大事なのは地道で継続したコミュニケーションです。その本質を間違えてはいけない。ただ、それをやり続けるため、守るための打ち上げ花火や、他社と差別化するための新たな企画への取り組みはある程度必要。本質はドア上広告のような地味な広告、大事なのは継続するコミュニケーションです。

竹内 大阪駅前の『大ぴちょんくん』はいかがですか。

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片山 『大ぴちょんくん』は梅田の空気の快適性を色でお知らせする看板で、空気を見える化したもの。億単位をかけてやったものですが、約2年で8割がた回収できている。10年は保つので残り8年。とっくに回収のめどは立ちました。ほら、私は失敗はしませんでしょ。ただこの看板の実現までにはけっこう年月がかかっているんです。さらに舞台裏を明かすと、この企画はダイキンだけがこだわりぬいたわけではなく、屋外媒体の専門性をもつパートナーさんTOMOEさんや朝日電装さんの異常なまでのこだわりがなければ絶対にできなかった。とりわけTOMOEの担当さん、この方が4回谷底に落としても毎回這い上がってくるような人で。その情熱にほだされて、だんだんとこちらもやる気になってきて実現したもの。億単位のお金を動かすとなると『雲プロジェクト』のようにはいかず、役員会にもかけないといけなかったですし大変でしたが、担当さんの恐るべき執念とそれを支えた「雲プロジェクトやるようなダイキンさんならできるのでは」と思ってもらったこともポイントかもしれませんね。

専門性の高いプロ、外部のパートナーさんの力を最大発揮していただくと、自分たちだけなら絶対にできなかったことができる。世の中のメニューにないことができるようになる、差別化された強い情報発信ができる、という事例のひとつ。

竹内 大阪駅からとてもよく見えます。ぜひ大阪に行かれた時は皆さん見てみてください。夜がとくに綺麗です。

片山 昼間は色が変わらないんでね。予算の都合で(笑)。

竹内 (笑)。片山さん、本日はありがとうございました!

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【IMJ LIP 〜パートナーに聞く〜】第1回ゲスト ダイキン工業 広告宣伝グループ長 片山義丈氏からマーケティングやコミュニケーションの長年の変化に対する考え方、取り組み方、パートナー選定からどのような仕事をしていくかを伺うことができました。
コンサルタントとして、マーケターとして、本当に貴重な時間でした。

通常では伺うことができない本音。リアルな現場の声。

これからも【IMJ LIP 〜パートナーに聞く〜】ではパートナー企業様のスペシャリストをお招きし、さまざまな本音、声を発信していきたいと思います。

次回の【IMJ LIP 〜パートナーに聞く〜】の開催もお楽しみに!