データ活用経営を実現し労働生産性向上のポイント②”ひとつで”

前回より『データ活用経営を実現し、労働生産性を向上する3つのポイント』として、データ活用経営におけるポイントについてお話しています。
※この記事は読者によって投稿されたユーザー投稿のため、編集部の見解や意向と異なる場合があります。また、編集部はこの内容について正確性を保証できません。

 『データ活用経営を実現し、労働生産性を向上する3つのポイント』として、これまで2回にわたってデータ活用経営におけるポイントについてお話いたしました。 

  昨今、日本中で働き方改革が叫ばれています。多くの組織ではどうやって残業時間を減らすかなど、まず労働時間の抑制から着手しています。今後は時間あたり生産性を向上させる課題に多くの組織が直面すると考えらえています。そんな中、注目を集めているのがデジタルツール導入によって、データを活用した生産性を向上施策です。

 前回「データ活用経営を実現し、労働生産性を向上するポイント①“いつでも”」は、データマーケティングを実現するにあたり、企業が保有するさまざまなデータを「統合」し、「いつでも」使える状態にしておくことで、効果的なマーケティング施策をスピーディーに実施することが可能になることをお伝えいたしました。データが統合されることで、単純な業務工数削減はもちろん、これまで創出できなかった付加価値がデータ統合によってもたらされ、結果として労働生産性が向上する可能性を秘めています。
 

データ活用経営を実現し、労働生産性を向上するポイント2 “ひとつで”

 今回の連載で度々お伝えしておりますが、企業がマーケティングを実施する上でデータを活用し、生産性を向上させるためには、3つのポイントがあります。概念的にご存じの方も多いかと思いますが、改めて3つのキーワードをご紹介すると、”いつでも“、”ひとつで“、”だれでも”です。前回は”いつでも”を紹介しました。今回は”ひとつで”についてお話したいと思います。  
 
  まず前提として、マーケティングにおけるデータの活用をここでは「取得→取込→統合→変換→活用」という5つのステップで定義したいと思います。全ての5ステップの機能を網羅しているツールを導入することが大切であり、それが”ひとつで”ということです。これは一体どのような状態なのか、これから詳しく説明していきます。
 

マーケティングツール戦国時代

 近年デジタルマーケティング領域において、ユーザーとのコミュニケーションを最適化するために、さまざまなソリューションが登場しました。「マーケティング」とひとことで言っても個人の解釈や認識によって大きく変わります。ここで認識を合わせるため、本文内に出てくる「マーケティング」について先ほどの5つのステップになぞらえて、一連の流れを確認しましょう。

 まずは、広告やアクセスログなどのデータを取得。その後それらのデータを取り込み、DWHで統合させる。活用できるようにデータセット(変換)し、やっとMAやメール配信ツール、BIツールを使ってデータの活用ができます。このようにたくさんのフェーズがあるため色々なツールが乱立していますが、(1)データ取得、(2)施策、(3)分析、(4)統合基盤の大きく4つのカテゴリーにツールの種類を分けることができます。

 ここから、カテゴリー別に具体的に見ていきましょう。

 (1)のデータ取得のフェーズで使われるツールは、広告データを取得、分析し、効果測定を行ったり、Webのアクセスログデータなどユーザーの行動履歴を可視化したりすることができます。具体的には「ADEBiS」や「Google Analytics」などが有名です。

 (2)の施策のツールはPUSH通知やメルマガ配信など、(1)で取得したデータを基にセグメントしたユーザーに対して個別アプローチを可能にする、いわゆるMAツールです。「Marketo」や「エクスペリアン」などが有名ですが、実際導入して運用していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 (3)の分析はLTV分析やアクセス分析など、(1)で取得したデータを基に分析をするツールです。俗に言うBIツールで、「tableau」や「DOMO」などがあり、名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれません。

 (4)最後の統合基盤は、(1)で取得したデータが別々のIDで管理されている同一人物を1つのIDに統合して格納をしておくためのツールです。 「Salesforce marketing cloud」や「ORACLE Marketing Cloud」などがその部類に入りますが、これはマーケティングに携わらなくとも、ご存じの方も多いかと思います。

 このように、さまざまな機能を有するマーケティングツールが日々誕生し、マーケターは自社に合ったツールを検討、導入し、デジタルマーケティングを推進しています。
 

膨れ上がるコスト

 各社の経営陣がマーケティングのデジタル化やデータ化を推し進める一方で、現場レベルではさまざまな問題が噴出し始めています。労働生産性を高めるはずのマーケティングツールが、かえって現場担当者の負担を増やしてしまっています。

 各ツールの性能は素晴らしいですし、局所的に見ると成果も上がるかもしれません。しかし、データを活用できる状態に整備(=統合)しておかなければ、本質的な活用はできません。むしろ、後から発生するデータ設計業務などが膨れ上がり、かえって作業効率が落ちてしまうかもしれません。データ活用によって生産性を向上させるために導入したツールが、逆に自分たちの生産性を下げるというジレンマが起きています。

 では具体的に現場では何が起こっているのか。コミュニケーションコスト、金銭的コスト、そして時間的コストの大きく3つの観点から見ていきたいと思います

■1. コミュニケーションコスト

 より精緻なデータを活用することでマーケティングの質を向上させようと考え、要所要所でマーケティングツールを導入すると、各ツールベンダーとのやり取りが発生してしまいます。

 例えば、苦労して複数ツールを連携させている場合、1つのツール内で多少のデータ取得等の調整を行う際でも、他ツールも合わせて調整が必要になってしまい、何かアクションを起こす度に多くのコミュニケーションが必要になります。

 また、社内でツール毎に担当者が割り振られている場合、社員同士のコミュニケーション量も自然と増えてしまいます。例えば以下のような場合が想定されます。

上司   「新しいマーケティングツールで昨日指示したレポートを早く出してくれ」
担当者 「分かりました!(マニュアル読んで、ようやくレポート出せたぞ)」
上司    「(遅いな……) 次は昨年からの店舗ごとの売上レポートを出してくれ!」
担当者 「これはマニュアルに載ってないぞ。ベンダーにメールで問い合わせてみよう」 

  ―3日後―

上司    「まだできないのか? ベンダーにさっさと確認しろ!」
担当者 「分かりました。(とはいえ、メールのやり取りだけじゃ分かりにくいし、時間も掛かるよ。
             自分じゃできないけど、コンサルに頼むと費用がかかるし……)」

  ツールごとに要件が異なると、問い合わせる必要が発生します。その問い合わせは電話であればリアルタイムで解決されますが、ベンダー側とコンタクトが取れない時は、欲しい情報がすぐにかえってこないかもしれません。このようなコミュニケーションコストはツールが増えれば増えるほど発生していきます。

■2. 金銭的コスト

 複数のツールや機能を使うことによって追加費用が増加します。つい価格の安さで選んでしまったり、必要としている機能を全て網羅していると勘違いしたりして導入したものの、全く想像していたものと違ったというのはよく聞く話です。

 例えば、以下のような会話は担当者と上司のよくある光景です。
 
担当者 「MAツールでメール施策は出来るようになりましたので、次は分析の予算をください!」
上司    「(また始まった……) なぜ今導入しているツールじゃダメなんだ?」
担当者  「先日導入したMAでは分析機能はカバーしていないので、新たに必要なんです。
      また、RFM分析やROAS分析などより詳細な分析を実施する必要があり、
      無料ツールでは不十分でして」
上司   「その予算を取ればプロジェクトは達成できるんだな?」
担当者  「いえ、アプリのLPOやA/Bテストなどもやらないといけないです」
上司   「分かった。 (今後どれだけ追加費用が必要なんだろう。
         管理コストもバカにならないな……)」  

  また、複数のツールを導入した場合、ツールにかかる費用はもちろんのこと、それぞれのツールを連携させるためにコンサルを雇う必要があり、さらに追加の膨大なコストが発生します。スキルがある人材が社内にいれば問題ありませんが、それでも膨大な時間がかかってしまいます。

■3. 時間的コスト

 複数のツールを同時に使おうとすると、現場担当者の工数は破綻してしまいます。金銭的コストでも記載しましたが、担当者レベルでそれぞれのツールを連携させるには、Excelでデータを落として名寄せを繰り返して、と相当な工数が発生するからです。一日中Excelでデータ作業をしているようなことも頻繁に聞かれます。

 他にも下記のようなやり取りは、あなたの身の回りでもよくある光景ではないでしょうか。   

上司      「データを活用して顧客LTVを挙げ、効率的に売上を上げるよう、
              最優先で取り組んでくれ!」
担当者 「分かりした。最適な施策を検討し、実行します!」 

 ―プロジェクト推進を命じられ、導入したMAを活用して、レコメンドメール施策を企画、2カ月後―

上司    「MA施策は進んでいるか? もう実行の時期だと思うが」
担当者 「施策のデータを整理する作業が膨大で進捗していません」
上司     「え? MAを導入したから自動で出来るんじゃないの?」
担当者  「MAでデータを活用する前に、対象のデータを抽出したり、
              整理したりと作業がありまして……。
              社内エンジニアの手も借りてやっているのですが、時間がかかっています」
上司     「それにしても時間がかかりすぎているぞ! 早く完了させろ!」
担当者  「(上司はでデータについて何も知らないし、ツールを魔法の杖だと思っている。
                作業が増える一方だ)」   

 このように、正しい知識がないままにツールの導入を決めてしまうと、さまざまなコストが発生してしまいます。売り上げを上げるためにツールを導入したはずが、結果的に全てのコストを足し合わせると大赤字になってしまいかねません。

 一度導入を決めてしまってからでは手遅れです。事前に自社にとっての最適なツールは何なのか、マーケティングの全体像を把握してから導入を決定する必要があります。
 

ツール”ひとつで”データマーケティングを実現するメリット

 ここまで見てきたように、世の中に乱立しているツールは部分最適になってしまっているため、性能としては非常に優れているものの、いざマーケティングの全体像を考える場合に不都合が起き、非効率な結果が生まれてしまいます。  

  昨今では、このような課題を解決するための統合型マーケティングソリューションが登場してきています。マーケティングクラウドやマーケティングプラットフォームと呼ばれる製品群です。これらのソリューションは、データの取得から活用までを一元的に実施できるため、前述したようはコストが大きく削減できるようになります。 
 
  またデータ統合がなされるため、これまでできなかった分析や、より対象を細かく区切ったセグメント(1to1マーケティング)も実現できます。   

 このように、”ひとつで”データマーケティングを実現できるソリューションを導入することで、今までデータを活用したマーケティングを実現させようとすればするほど、皮肉にもツールによって低下してしまっていた生産性を向上させることが可能になります。 

  複数のツールを使ってデジタル改革を推進するか、それとも“ひとつのツール”で推進するか、生産性を向上させていくためには、後者の効率的な取組みを選択するべきです。     

 次回、3つ目のキーワード”だれでも”の回では、デジタル化が進む現代において、誰でも簡単にデータを活用できることの重要性を詳しく説明します。

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