企業ホームページ運営の心得

高級感あふれるWebサイトと店舗のギャップにがっかり。コンセプトのずれが客を惑わす

サイトと店舗のミスマッチによって客を惑わせないためにコンセプトは統一すべきです
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の479

中身よりも見栄えにこだわる

kapulya/iStock/Thinkstock

およそ10年前に『人は見た目が9割』という本がベストセラーになりました。概ね同意します。美人やイケメンといった、造形的な美醜を指すのではなく、みだしなみ、目つき、態度に人柄が表れるからです。IT系の記号として重宝される「Tシャツとジーパン」にしても、身体とのフィット感、素材、洗濯状況により与える印象は異なり、一言で言うなら、その人なりに「似合っているかどうか」が印象を左右します。

Webも見た目が9割です。同じく華美な装飾、新進気鋭のインタラクティブなギミックの有無ではなく、サイトと店が似合っているかどうか。すなわち企業(店舗)とWebサイトの「コンセプト」が一致しているかどうかが重要だと考えます。絢爛豪華なサイトだからと訪問してみたら掘っ立て小屋でがっかり……、とは極論ながら、似たような事例はよくある話です。

今回はこうした事例から、Webサイトの「コンセプト」の重要性を紹介します。いつものように実例なので、細部は曖昧にしており、仮に思い当たるサイトや企業があっても気のせいと流してください。

高級店を演じる

すし屋のサイトを例に考えます。

しずる感に溢れた魚介類の躍動感、それとは対照的に静寂を連想させるモノクロームな板前の仕事風景、和モダンを感じさせる構図に切り取られた店内と、日常から隔絶した隠れ家を思わせる外観の写真で彩られたサイトから溢れるのは「高級感」。

激安スーパーがライフラインの我が家にとって、高級店の敷居は高いながらも、たまの贅沢と思い、少々緊張気味に尋ねた先はただの住宅街。不動産広告において、トリミングで周囲の景色を消し去ることはよくある演出ではありますが、私の粗忽さは、知り尽くした手口に騙されるところにあらわれます。

コンセプトのミスマッチ

「見た目はともかく、要は味、サービスだ」と、すし屋の暖簾をくぐるとそこは個人商店。普段着にエプロンを巻いただけの女将さんが迎えます。年季の入った板前の姿はサイトと同じですが、その白衣には年季のためか若干の黄ばみが確認できます。どこかで子供の泣き声もします。

サイトのコンセプトが、近所の人が気軽に楽しめる「アットホームなすし屋」なら、子供の泣き声でさえ癒しのBGMになったかもしれませんし、お握りぐらいのシャリの多さも、満腹を目的とする屋台発祥の江戸前すしと好意的に受け取ったかもしれません。ですが、高級感を出し過ぎた、いわば「盛り」すぎたサイトとの隔たりからくるガッカリ感は、「失望」の二文字がぴったりでした。

気取るなという訳ではありませんし、企業のサイトは広告ですから、多少の背伸びは必要です。しかし、アットホームがコンセプトともいえる店が、高級を連想させる記号で飾ってしまう「ミスマッチ」は、マイナスの評価へとつながりやすいということです。

客を迷子にさせる

別の例を見てみましょう。先日、ある地方都市の居酒屋から、新規サイト構築の相談がありました。

相談は現在の経営者である二代目から。依頼の際に参考として挙げられたのは、西日本の中核都市で歴史を誇る料亭でした。二代目は都内の一流店で修行を積み、修行時代に交流があったので腕が確かであることは知っており、料亭品質にこだわる心意気や良し。先ほどのすし屋と違い、高級感を打ち出しても間違いではありませんが、現実とのギャップから苦言を呈します。

バブル前夜の80年代に先代が創業した店舗の外観には、いまや懐かしい「ネオンサイン」が輝きます。レンガ張りを基調としたたたずまいは、当時流行した「わたせせいぞう」のイラストに登場しそうなポップ感で仕上げられています。

つまり、店舗外観のコンセプトが料亭ではなかったのです。店舗の外装をそのままに、サイトだけ料亭風に仕上げれば、訪問したお客が店の存在に気づかずに迷子になるかもしれないとアドバイスします。

気概とプライド

小さい店は小さいなりに、個人店は個人店らしく、ということでもありません。

うらびれた旧街道にある中華料理屋。都内の一流店で修行を積んだ店主と妻の二人三脚。これだけならアットホームが売りになりそうですが、店内はもとより広告物のすべてをシックな色合いで統一し、高級感の演出に腐心しています。

料理が一流なのは当然として、コック長でもある店主のコックコートはいつも新品同様、コック帽には毎日ぱりっとノリが効いています。お客がいないからといって、スポーツ新聞を広げてだらっとなどしません。

調理している店主の姿をモノクロ風に仕上げた、関西弁で言うところの「イキッた(格好付けている、気取っている)」ポスターも、調理場の本人からはそれ以上のオーラを感じるのでまったく問題ありません。店のコンセプトが明確なら、多少の誇張はむしろピッタリくるのです。

コンセプトで変わるモチーフ

「店主写真」にはコンセプトがダイレクトに反映されます。アットホームを売りにするなら、スナップ写真や写メ、スタッフと一緒に撮影した写真がいいでしょう。高級感を演出するなら写真館でしっかりと撮影し、「おしゃれ感」を望むならモノクロやセピアの色調に加工するといった演出が必要になるということです。

イメージしやすいため飲食店を例に紹介しましたが、コンセプトの大切さはすべてのサイトに通じます。アメリカンな生活雑貨を扱う通販サイトの背景画像が「唐草模様」ではしまらず、健康食品コンテンツのベースカラーがショッキングピンクでは違和感を覚えるように、取扱商品やサービスと「コンセプト」は可能な限り統一すべきだということです。

とはいえ、コンセプトの確認は現場における難題でもあります。社内でコンセプトが共有されておらず、社長とWeb担当者のズレどころか、お客が抱く店への印象のすべてが異なることがあるからです。そんなときは、ひとまず「雰囲気」を「コンセプト」に据えることにしています。整理整頓が行き届いている店内ならそれをコンセプトとし、雑多な空気が漂うなら、それをサイトに反映します。これは両者の「ギャップ」を最小に抑えるための苦肉の策です。

今回のポイント

コンセプトとデザインはできるだけ一致させる

違和感はお客を迷わせ、失望させる

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