一人でできるWebサイト収益UP術-ウェブ解析士事例集

顧客目線のコンテンツ・マーケティングで営業ゼロでも施工依頼が殺到する塗装店のノウハウとは?

Webマーケティングのプロではない塗装店が下請けからの脱却を目指し、元請け100%になったノウハウと事例を紹介

Webマーケティングのプロではない塗装店が下請けからの脱却を目指し、顧客目線でコンテンツ・マーケティングを徹底的に行うことで3か月に1度問い合わせが来るWebサイトから、毎日問い合わせが来るWebサイトに進化。そのノウハウと実際のコンテンツ事例を公開する。

Webサイトのコンテンツ力で下請けから完全脱却
毎日問い合わせが来るサイトを作り上げた塗装店

この記事では、大阪の「永建工業」という塗装店の社長が自らWebサイトのコンテンツ(ページ)を改善することで下請けから完全脱却して、毎日問い合わせが来るWebサイトになった事例を紹介します。

永建工業サイト
大阪の戸建て住宅塗り替え専門店「永建工業」
http://www.eiken-kohgyo.jp/

この会社のWebサイトは2006年からありました。しかし、問い合わせが3か月に1度しかなく実質的に「売り上げに貢献できていない」サイトでした。そこで徹底的にWebサイトのコンテンツを改良した結果、現在では月間20~30件、毎日問い合わせがWebサイト経由で来るようになりました。

Webサイトのコンテンツを改良後、売上高も倍以上に増え、提供できるサービスの質、お客様の満足度が高まり、経営も安定するという成果につながりました。

なぜ下請けからの脱却を目指したのか、塗装業界の事情

Webサイトにどんなコンテンツを作ったのか事例を紹介する前に、なぜ下請けからの脱却を目指したのか、塗装業界の事情について説明します。実は、下請けはデメリットばかりでなく、考え方によってはメリットもあるのです。

下請けであることのメリット
  • 営業を自社でする必要がない
  • 施工内容はほぼ決まっているので、打ち合わせは電話で短時間で終わる
  • 予算の範囲で仕事をすればいい
下請けであることのデメリット
  • 元請けの商売に依存するため、経営が安定しない、利益が上がらない
  • 元請けからの理不尽な要求に対応しなければならない

下請けからの脱却で一番ネックとなるのは「営業」です。直接、施主(一般消費者)と契約をするためには、自社で集客から契約までを行う営業活動が必要です。しかし、もともと職人気質の業界のため、営業が上手な塗装店は少ないのです。

下請けから抜けたいけれども、抜けられない。自社でマーケティングやセールスを行えないという点が大きな課題でした。

顧客目線で他社サイトを研究してノウハウを蓄積

永建工業も営業面で課題を抱えていました。そこで、ダイレクトメールやチラシといったリアルの施策ではなく、Webサイトのコンテンツ(ページ)作りに力を入れたのです。

良いコンテンツを作ってしまえば、アクセスしてきた人に正しい情報を同じように伝えてくれます。小さな会社であれば現場に出ていて、問い合わせ対応ができないこともありますが、Webサイトは24時間いつでもアクセスしてきた人に情報を伝えることができます。

Webサイトに良いコンテンツを作るために社長がまず行ったことは「顧客目線による他社サイト研究」です。他社サイトの研究は、以下のようなことに注意して行いました。

  • どんな業種であれ3分以上見たサイトはすべて「お気に入り」に入れ、「なぜそのサイトを3分以上見てしまったのか」を解剖
  • 解剖した結果を「自社サイトに取り入れるにはどうすればいいか」を考察
  • 「文章の書き方」「ホームページで反応を得るには」といった内容の本を、手当たり次第読んで実践

つまり、お客様の目線に立って、「引き付けられるものは何なんだろう」「どんなコンテンツがどんな構成になっていれば人を引き付けることができて、メッセージを伝えることができるのか」を研究したのです。

自分で研究するという行動は、非常に大事なポイントです。いまは情報が玉石混交であふれているので、次のような行動をとってしまいがちです。

  • ネット上のノウハウだけを取り入れて実行してみる
  • 簡単に実行できそうなことだけを手当たり次第にやってみる
  • とりあえずセミナーなどに出て、その場では「おぉ、良いセミナーだった、実践してみよう」と思うものの、自分の会社では結局何も行えない

もちろんこれらを実践することは大事ですが、それ以上に自分がその意味を考えながら、自分なりにアレンジして実践して、フィードバックを確認することが大切です。ネット上にある「噛み砕かれた情報」だけを摂取していると、自分で噛み砕くことや解析することを忘れてしまいます。

魅力的なサイトに共通する3つのポイントを自社のサイトのコンテンツに取り入れる

社長自ら100サイト以上を研究した結果、魅力的なサイトに必ず存在する共通点を見つけました。それは「信頼感がある」「相手目線である」「理解可能である」ということ。

そしてこの3つのポイントを自社のWebサイトに取り入れていきました。では、具体的にどのように取り入れていったのか? 永建工業の実際のコンテンツを挙げながら説明します。

1.信頼感が伝わるコンテンツ

アクセスしてきた人の信頼感を得るために、代表者の素性をしっかりと書き、適切な写真を掲載する。信頼感を得ることはどんな業界でも大切ですが、最も効果的かつおすすめなのは、人間味を感じさせることです。

コンテンツ作成事例1社長の顔写真を載せてサイトに温かみを演出

永建工業のWebサイトでは代表の永濱社長のプロフィールページがあり、そこでは熱く仕事への思いが語られています。また、サイドバーには笑顔の写真が掲載されています。この写真があることで、サイト全体に温かみを与えています。この温かみが問い合わせのしやすさにつながっています。

温かみを演出することは、基本的にはどの業種でも効果があります(効果が無かったとしてもマイナスになることはありません)。サービスを検討する際に「どんな人が来るんだろう?」と不安になる業種に関しては、お客様(依頼する側)の不安感を取り除く効果があるので、担当者と代表者の顔出しをお勧めします。

特に「何となく不安感が多い・買い手と売り手の距離が近い業種」(リフォーム、不動産系、エステ、マッサージ、鍼灸、書士業、廃品回収)などのB2Cには効果が高いです。

コンテンツ作成事例2お客様からの声をコンテンツにする

「お客様の声」はアクセスしてきた人がサービスに興味を持ってもらって、信頼してもらうためにとても便利かつ効果的なコンテンツです。これは、どの業種でも効果があります。このようなお客様の声がびっしりと掲載されているページが、このサイトには4ページあります。

ここで大事なのは、こういったお客様の声は放っておいても集まらないということ。「集めよう」という気持ちで、仕組みを作ることが必要です。そして大前提として「良い声をもらえるように、お客様の目線で商売をする」ことが必要です。

話は少しそれますが、実際の会社に魅力がないと、Webサイトがどんなに良いものでも安定した商売にはつながりません。「Webサイトで見たら良さそうだったのに、実際に仕事をお願いしたら微妙だった……」と思われてしまえば、お客様の声も集まりません。口コミやリピーターも生まれません。商売はどこまで行ってもやはり人と人とのかかわり合いが重要です。

2.相手目線のコンテンツ

Webサイトのコンテンツはすべて「相手の目線」で書かれていて、主語が「あなた」になるように、相手のベネフィット(利益)に希求していることが重要です。つまり「会社が伝えたいこと」ではなく、「お客様が知りたいこと」にしなければなりません。

コンテンツを社内で作る際に陥りがちなのは「自慢話」ばかり書いてしまうことです。「自慢話」のコンテンツを読んだお客様に、伝えたいことが伝わるでしょうか。お客様にとってのベネフィットを書かないと、共感を得ることはできません。

自慢話を読んだときにお客さんが思うことは

  • ウチはこの技術が凄いんです
    そのすごい技術で、私にはどんなメリットがあるんですか
  • うちは歴史がある
    歴史があるから、どんなところが強いんですか
  • うちはこんなに大きな会社で従業員はこんなにいる
    たくさん人がいることで私にはどんないいことがあるんですか
  • こんなにすごい取引先がある
    取引先が大きいと、私はどんな得をするのでしょうか

お客様は、自分にとってどんなメリットがあるのか、にしか興味は無いのです。

コンテンツ作成事例3コンテンツの主語がお客様(あなた)になっている

永建工業のトップページには塗装工事専門店の長所が4つわかりやすく書かれています。これらの長所はすべて主語が「お客様(あなた)」です。メリット3だけ少し違いますが、お客様にとってのベネフィットになっています。これが「相手目線」のコンテンツの作り方です。サイト全体で、この相手目線が徹底されています。相手目線でコンテンツを作ることは、どの業種でも効果的です。

コンテンツ作成事例4お客様の声を代弁するコンテンツ

お客様の声を代弁してあげるというのもポイントです。これもどの業種でも効果的です。これは顧客リサーチであったり、お客様に対する深い理解が必要です。お客様にインタビューして、お客様の声を聴かせてもらうことも必要です。

「そうそう、そうなんだよ! そこが困っているんだ」とコンテンツを読んだお客様が共感してくれれば、成約率は一気に高まります。自分のことをわかってくれる人を、お客様はいつも探しています。このバナーはまさにそこをピンポイントで突いています。

3.コンテンツが理解可能

お客様が「わかる」「理解できる」ことを追求してコンテンツにする。相手が求めている情報を書いていても、伝わらなければ何の意味もありません。しかもインターネットは、リアルの世界に比べて読み手側の忍耐力は非常に弱いです。比較対象となるサイトもたくさんありますのでなおさらです。

そこで、できるだけスッと相手の頭に入るように、文章をすっきりとさせ、相手がわかる言葉を使い、相手の欲しい情報を出していくことが重要です。以下のことに注意して自社サイトを見返してみてください。

  • 専門用語や業界内でしかわからない言葉ばかりを使っていませんか
  • 曖昧な表現を使っていませんか
  • 読みやすい文章の流れになっているでしょうか

売り手の常識が買い手の常識と一致することはまずありません。お客様に寄り添ってあげることが大切です。「その内容が本当に相手に伝わっているのか」これは、アクセス解析やヒートマップといったマクロな統計データではわかりません。

サイトを身内やお客様などの第三者に定期的にチェックしてもらうと、思いがけないことが見えてきます。遠隔ユーザーテストなども有効です。費用を抑えつつ、効果の高いユーザーテストを行えます。そういう観点で永建工業のサイトを再度、見てみると発見があるのではと思います。

短期的な売上げ増以外に「顧客視点」のサイト改善で得られた成果

コンテンツを徐々に増やした結果Webサイトが「営業資産」になった

このようにWebサイトの改善を続けるなかで、サイトにはどんどんコンテンツが増えていきました。また、売り込みでは無いお客様目線のコンテンツは、自然とナチュラルリンクが集まっていき、「地域キーワード + 外壁塗装」などのキーワードで検索結果の1~3位をキープできるようになりました。

Webサイトは自社で更新できるようにCMS(コンテンツ管理システム)を入れました。これによってページの追加や修正を、自社でローコストかつ柔軟に対応できるようにしました。

その結果「リスティングなど含めた広告なし」「アウトバウンドの売り込みなし」で問い合わせが増え、しかも、元請け会社からの引き合いでは無く、施主本人が電話をかけてきてくれるようになりました。下請けから脱却し、元請け100%になることができ、他社に依存しない経営ができるようになりました。「じっくり育ててWebサイトをネット上の営業資産にした」のです。

客質が大きく改善された

小さい会社であればあるほど重要なことがあります。それは「客質」です。たとえば「高圧的で、自分の思い通りに進めようとする」「ひたすら値切りをしてくる」「言ってもないことを言ったと言いはる」など、企業としては避けたいお客様は、残念ながら存在します。

しかしこうやってWebサイトで自社のことをしっかりと表現していると、自然とそういったお客様は減っていきます。また、Webサイトに「◯◯な方には当社はおすすめできません」と明確に記載することも、客質の向上に効果的です。

商談がスムーズに進むようになった

Webサイトのコンテンツを読み込んでから問い合わせしてくるお客様がほとんどですので、すでに信頼関係がある程度できていることが多く、商談が非常にスムーズに進み、気持ちよく仕事もできます。

永建工業のサイト内にある「月々雑感」というブログに、商談がスムーズに進んだエピソードが記載されていますので、それを紹介します。

永建工業「月々雑感」(2014/2/8)
http://www.eiken-kohgyo.jp/category/1991313.html

外壁塗装は、実はかなり高額です。たとえば「2F建て延床面積30坪の場合」でも安くて70万円程度、良いものであれば100万円はゆうに越えます。その100万円前後のものが、ポンと30秒で売れるんです。電話とフォームでの問い合わせコンバージョンレート(成約率)は1%を超えています。これはWebサイトを通じてすでに信頼関係ができ上がっているからです。

最後に:コンテンツは将来のあなた(企業)を支える

この事例は2009年の話です。この時代からこの塗装店は、

Webサイトというオウンドメディアへの集客 →
サイト内での見込み客育成(リードナーチャリング) →
問い合わせ

といういわゆるインバウンド・マーケティングを実践していました。インタラプト型マーケティングは一切行っていません。

つまり、リアルとネット両方からお客様をWebサイトに集客し、Webサイト内のコンテンツを読んでもらい、自然に「技術力の高さ」や「信頼感」を感じてもらう。そして、サービスに魅力を感じてもらい、結果として、問い合わせの電話やメールをしてくれるという流れです。

この仕組みが回ったことで「テレアポ」や「お伺い営業」のような、興味のない人に嫌がられるような営業活動をする必要はなくなり、下請けからも脱却できました。

Webサイトの成約率(CVR)を上げるには、今回紹介したコンテンツの改善や作成以外にもさまざまな方法があります。その中で、手間がかかり、スキルを手に入れるために労力と経験が必要なものの1つがコンテンツです。しかしコンテンツは他の手段と異なり、一度作ってしまえば、長期的に効果を発揮してくれます。「売り上げに繋がるコンテンツを作ることができる能力」と「作り上げられたコンテンツ」は企業にとって大きな営業資産なのです。

また、お客様のために商売をしている企業が、その魅力やメッセージをWebサイトできちんと発信していくことは、自社だけではなく、その業界、そして社会を良くしていくことにつながっていくはずです。この塗装店業界では、共感する企業で「日本塗装名人会」を立ち上げ情報を発信し、業界全体の健全化と消費者のサポートを行っています。消費者が自分に合った企業と出会えるように、情報発信をしています。

今回の内容を踏まえて、顧客視点でWebサイト全体のコンセプトから見なおしてみてはいかがでしょうか。社内でアイデア出し(ブレインストーミング)など行ってみてはいかがでしょうか。きっと、アクセス解析からはわからないような問題点が見つかります。

その観点で、Webコンサルタント・Web解析スキルを持った人材を養成するウェブ解析士講座も、業務の合間を縫って少人数制で定期的に開催しています。まだまだ埋もれている素晴らしい企業やサービスがたくさんあると、中小企業専門のコンサルをやっていて思います。今回の内容は決してこの業界に限られたことではありません。すべての業界の方に、さらにもう一歩、Web活用への道を踏み出して頂きたいです。

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