ソーシャルCRMの潮流

ソーシャルCRMの特徴を事例を交えてご紹介いたします。
※この記事は読者によって投稿されたユーザー投稿のため、編集部の見解や意向と異なる場合があります。また、編集部はこの内容について正確性を保証できません。

皆さまはソーシャルCRMというと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

CRMについては、1990年代に流行ったけれども高額な投資と無駄な業務が増えただけで良い記憶がない、という方もいらっしゃるかもしれません。実際に、従来のCRMの6割が失敗で、日本企業においては、「期待通りの成功」が5%未満、「ある程度は成功」と答えた企業を合わせても2割程度であり、8割が失敗だったという、ITコンサル/調査の大手Gartner社による調査結果があります。

しかしそのGartner社によると、ソーシャルCRMの市場は、2010年には約6億2500万ドルあり、2011年は8億2000万ドルになると予測されています。さらに2012年には全世界の売上が10億ドルを突破するとのことです。

ではなぜまた、ソーシャルを冠したとはいえ、一度は多くの企業が失敗したCRMに注目が集まっているのでしょうか。
今回のコラムでは、その点を含めソーシャルCRMの特徴を事例を交えてご紹介いたします。

ソーシャルCRMの特徴

一般的にCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)とは、顧客と継続的な関係を構築し、顧客満足度を上げ、顧客生涯価値(LTV)を向上させるという経営手法です。1990年代には、顧客DBの構築によって顧客との情報を一括管理するCRMシステムが作られるようになりました。企業は一人ひとりに最適な情報を提供することで顧客を見込み客→顧客→リピート顧客→熱心なファンへと育成しようとしましたが、結果は前述のように失敗も多くありました。

次に、ソーシャルCRMについて確認致しますと、文字通りCRMにソーシャルメディアの要素を追加したものになります。ブログやtwitter、facebook等のソーシャルメディアを活用することによって、顧客とのオープンで双方向な交流が可能になったのです。

さらに発展系として、ソーシャルメディアでの顧客の情報を今までの顧客DBに統合します。自社サイトでの購買履歴だけでなく、外部のソーシャルメディアでの行動や人間関係も顧客情報に紐付け、適切な情報提供を行うことによってLTVの最大化を図ります。

 また、今までは顧客の声を聞くことが重要視されていましたが、ソーシャルメディアを活用することにより、まだ顧客ではない人々のリアルな声も集めることができるようになりました。それによってその人たちにアプローチを行うことや、わざわざ言うまでもなく、お問い合わせにいたらずに、聞くことのできなかった自社に対する人々の些細な気持ち(しかしそれが人々の行動を左右しているのです)の収集や分析が可能となったのです。

ソーシャルCRM台頭の背景

ソーシャルCRMの市場が伸びている背景にはいくつもの要因がありますが、ひとつにはまず、SaaSによるCRMの導入コストの変化が挙げられます。CRMのシステムは、現在SaaSとして低コストで導入できるようになりました。以前のように何億円もかけて自社でシステムを構築する必要がないので、企業はCRMに対して多額の投資をする必要がなくなりました。次に、ソーシャルメディアの利用者が増え、大量のデータを取得できるようになったことが挙げられます。また将来的にソーシャルメディアの発展に伴って、ソーシャルインテリジェンス(ソーシャルメディア分析)が発達して詳細なユーザー情報が大量に取得できるようになると考えられます。ソーシャルメディア上での人々の声を取得し、分析をして企業活動に活かすことができるのです。

そして3つ目の要因として、ソーシャルメディアからの情報と今までの顧客情報が統合されていこうとしている動きがあることが挙げられます。実際ここ数ヶ月でいくつもの国内DB統合サービスがリリースされています。

こういった流れから、今後企業は自社に関するソーシャルデータを大量に集めることができるようになってきたのです。

ソーシャルCRMを実現している事例

しかし、膨大なデータが収集できるようになると、今度はそれをどう活かせば良いのかという問題に直面すると思われます。この膨大なデータはビッグデータと呼ばれ、最近何かと話題の言葉ですが、ビッグデータとは量として巨大なだけでなく、構造的データや非構造的データ、そしてリアルタイムデータとしての側面も持っている、管理や処理が難しいデータなのです。そのビッグデータに翻弄されないようにするためには、正しいデータの解析、分析、判断、活用が必要不可欠です。大量のデータがあるので、データを弄ってそれらしい数値や結果を出そうと思えば簡単に出せるかもしれません。ですが、売上の増加、コストの低下、顧客満足度や顧客LTVの増加といった、企業の最終的な目的に繋げるための目標値の設定やデータの分析を行わない限り、効果は見込めないでしょう。

ここで、ソーシャルCRMを実現させている事例をふたつ、ご紹介したいと思います。
ひとつめは、ニッセンの取り組みについてです。

事例の紹介

- ニッセン

ニッセンは2002年に「お客様の声活用委員会」を設置するなどソーシャルメディアが台頭する以前から顧客の声を活用していましたが、2007年に自社コミュニティサイト「ハピテラ」を開設。自社ECサイトをソーシャル化し、顧客同士が交流・レビュー・ランキング・商品の購入等ができるようにして顧客の育成を行っています。さらに、twitterで友達を誘い合ってバーゲン品を取り合う「ニッセン バーゲンバトル」を開催。またYouTubeチャンネルを開設し、動画による商品紹介と、twitterやfacebookで呟かれている情報を見ることができるYouTube用のガジェットを用意するなど、自社でのCRMからソーシャルCRMへと展開しています。現在YouTubeチャンネル内のカスタムガジェット内で紹介される商品は23000点にも及びます。

もうひとつの事例は、アメリカンエクスプレスが米国で実施している、facebookと連動したクーポンプログラム「Link,Like,Love」です。

- アメリカンエクスプレス

これは、自分のfacebookアカウントとフォースクエアのID、そして所有しているクレジットカードの番号を紐づけて登録するプログラムです。正にソーシャルデータと自社の顧客DBの統合になります。アメリカンエキスプレス側は、ユーザーの許諾のもと、ユーザーとその友人が押したあらゆる「いいね!」情報、チェックインしている店舗・場所を収集し、分析します。例えば頻繁に本にいいね!を押している人は本のクーポン、レストランに多くチェックインしている人は食事のクーポンといったように、自社の顧客情報にソーシャルな情報を合わせ最適なサービスを提供します。

そして実際に利用するときも、クレジットカードで会計をするだけで、自動的にクーポン分の割引が行われるのです。これは自社DBとソーシャルデータを統合し分析、活用した先進的な取り組みです。

このように、現在企業と顧客を繋ぐ仕組みは、ソーシャルメディアが介在することにより、今までよりも広く深くなってきています。企業は今までの顧客情報だけでなく、人間関係、詳しい好み、行動履歴、といった情報を得ることができ、それらを利用することで最適な情報を発信することができます。また、顧客の情報だけでなく、まだ顧客になっていな人々のソーシャルメディア上の声を拾い、分析し自社のサービスに活かすこともできます。

ソーシャルCRMの課題

しかし、それを成功させるには様々な取り組みが必要です。
まずは、CRMの失敗の原因であった、戦略、継続、各部門での協力、組織への浸透。これらはCRMにソーシャルが付こうとやはり必須の項目です。

そして、ソーシャルデータと自社のDBの統合。そのためには、顧客にfacebook等のソーシャルメディアのアカウントを自社サービスに紐付けることを許可してもらわなくてはなりません。しかしこれは簡単なようでいて意外と難しいです。ユーザーは、特別魅力を感じていないサイトにわざわざ自分のソーシャル情報を与えるようなことはしないでしょう。ソーシャルメディアアカウントで登録してもらうためには、ユーザーに利便性やお得な情報、友人関係を利用したサービス等、それなりのメリットを与えなければなりません。

さらに、顧客外の声まで含めた膨大なビッグデータを判断し、有効に活用するための解析、分析、効果測定、経営判断が必要です。これらに正面から取り組み乗り越えた企業が、ソーシャルCRMを活かしきることができるのです。

現時点でソーシャルCRMについて非常に難しく感じられている方もいるかもしれませんが、90年代のときのように設備投資に数千万~数億円かかるわけではありません。必要なのは、聞くこと、考えること、協力すること、継続することです。これはソーシャルCRMだけの話ではなく、企業にとって元々大切なことです。ソーシャルメディアをはじめ、たくさんの情報技術が進歩していますが、基本は同じです。その基本に忠実に、ソーシャルCRMを実践してみるとよいのではないでしょうか。

加えて、顧客管理やビッグデータに関連して今後のトレンドをひとつ申し上げますと、スマートデバイスとソーシャルメディアの融合についても今後、重要なトピックになると考えられます。ソーシャルだけでなく、スマートデバイスからのM2M(Machine to Machine:様々なデバイス機器が通信によってインターネットサービスと連携すること)経由の情報も爆発的に増え、ビッグデータがさらに多様に大規模になっていき、ソーシャルデータ・顧客データ・M2Mからのセンシングデータ、それらを統合・解析し、活用することで、個人が持ち運ぶスマートデバイスがよりパーソナライズ化し、個人に最適な情報を提供するコンシェルジュのような存在になるのではないかと予想されています。

そうなってくるとますますデータの戦略的活用が必須となり、データ解析の必要性も一層増してきます。米国EMC社の2011年12月の調査によると、ビッグデータ活用に必要なスキルを持つ人材の需要に対し、供給が追いつかない状況が今後5年は続くとのことです。乗り越えるべきことはいくつかあるかもしれませんが、折角のデータもそのままでは宝の持ち腐れになってしまいます。ぜひ有効に活用することをご提案いたします。

 

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