[コラム]長谷川恭久のCGM海原と共に

蛇が作った新しいプロモーションの形

作品の命はタイトルだと言っても過言ではありません。でも、タイトルを詩的でカッコ良いものにすればいいのかと言えば、一概にそうだは言えません。
CGM海原と共に

作品の命はタイトルだと言っても過言ではありません。でも、タイトルを詩的でカッコ良いものにすればいいのかと言えば、一概にそうだは言えません。

ファンサイトからネット上で渦巻いているSnakes on a Planeブームを一望できる。写真からゲームまでその数は限りない
SNSサイトTagWorldがスポンサーをしたサントラのコンテスト。ファンと映画の1つのコラボレーションの形といえる
TagWorld
http://www.tagworld.com/snakesonaplane/

2006年夏に全米で公開された映画『Snakes on a Plane』。直訳すると「飛行機上のヘビ」、これが正に映画の内容そのもので、最近ではほとんど見ることもない直球タイトル。「なぜ」「どうやって」なんて説明抜きの超B級映画なわけですが、主演のサミュエル・L・ジャクソンも台本を読まずにこの直球タイトルに惚れ込んで出演を決めたそうです。

タイトルが気に入ったのは何も出演者だけではありません。ネットユーザーもタイトルが発表された去夏から猛烈な支持を示し、予告編が公開される前からファンによるグラフィックアートやプロモーションが展開されています。オフィシャルサイトも「今週のファンサイト」やプロモーションキットのダウンロードなど、映画情報よりファンとのつながりを重要視した作りになっていました(2007年6月22日現在)。また、ファンの声を聞き入れて残酷シーンを増やすために再収録を行ったというエピソードもあります。

ソーシャルネットワークサービス(SNS)のTagWorldは、インターネット上のSnakes on a Planeムーブメントにいち早く反応し、映画のテーマソングを会員から公募するコンテストを開催しました。TagWorldの会員数を増やす良いプロモーションになっただけでなく、制作者とファンが一緒になって映画を作るという姿勢が一層強まった形になりました。日本でも映画ファンドのような企画がありましたが、B級映画で公開前からこれだけ盛り上がった映画は米国でもあまりないでしょう。

ある意味潔いともいうべき直球タイトルや映画そのものの内容がネットユーザーに受けたからこれだけ話題になったという可能性はもちろんありますが、ファンの声を聞き入れて柔軟な姿勢でファンと対話を続けてコンテンツを充実させてきたのが、このSnakes on a Planeの人気の秘密でしょう。

今までのプロモーションモデルといえば、クリエーターや広告主側が手法やコンセプトを決めて展開する一方通行型でした。ネットを利用するとしてもファンが主体となってプロモーションを動かしていくケースは大変少なかったわけですが、Snakes on a Planeの例に見るように、これからはファン(ユーザー)が中心になってプロモーションコンテンツを作っていく時代になっていくでしょう。今回はほんの一例に過ぎません。

最近、ウェブ業界では、やっとウェブサイトをウェブに適した形で作れるようになってきたと言われています。紙上にレイアウトを組むような手法ではなく、情報構造や柔軟性/拡張性を重視したものへと変化してきています。おそらくプロモーションやマーケティングに関してもウェブ以前の手法をそのまま使い回すのではなく、ウェブだからできるようなアイデアがどんどん生まれてくることでしょう。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウvol.1』 掲載の記事です。

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