日本における不正ネット広告やブランド毀損のリスクは海外と同様の高さ、電通ら5社が調査結果を公開

アドベリフィケーション推進協議会は「2017年度 日本のアドベリフィケーション調査レポート」を公開した。

電通など5社で組織するアドベリフィケーション推進協議会は、インテグラル・アド・サイエンス(以下「IAS」)およびMomentum(モメンタム)による共同調査の結果を取りまとめ、「2017年度 日本のアドベリフィケーション調査レポート vol. 1」として公開した。これは国内におけるアドフラウド、ブランドセーフティー、ビューアビリティーの状況を正しく理解することを目的としたもの。以下に概要を紹介する。

※参考:アドベリフィケーション推進協議会の発足についてのニュース(2017年10月)

アドフラウド比率: 世界と日本で大きな差はなし

主要各国のプログラマティック広告取引におけるアドフラウドの割合は8.6%(IASの調査による)。これに対し、日本の数値はIASの調査で8.4%、Momentumの調査で9.1%となっており、数値としては主要各国と比較して大きな差は見られない。

図1:日本と世界のアドフラウド比較(日本)
図1:日本と世界のアドフラウド比較(日本)
※IAS、Momentumそれぞれのアドフラウド対策ツールのフィルターにより検出されたアドフラウドと疑われるインプレッションの割合を算出。対象デバイスはスマートフォン、PC両方。動画を除くディスプレイタイプの広告が対象
図2:日本と世界のアドフラウド比較(主要各国)
図2:日本と世界のアドフラウド比較(主要各国)

ブランドセーフティー: 日本は掲示板やまとめを含めるとリスク高

主要各国のプログラマティック広告取引におけるブランド毀損リスクのある広告の割合は、IAS社の調査によると8.6%。これに対し、日本の数値はIASが6.7%、Momentumが11.2%となっている。

図3:日本と世界のブランドセーフティー(リスク比較・日本)
図3:日本と世界のブランドセーフティー(リスク比較・日本)
※IAS、Momentumそれぞれのブランドセーフティーツールのフィルターにより検出されたとブランド瑕疵(かし)リスクがあると疑われるインプレッションの割合を算出。対象デバイス、対象フォーマットは前項と同じ
図4:日本と世界のブランドセーフティー(リスク比較・主要各国)
図4:日本と世界のブランドセーフティー(リスク比較・主要各国)

日本の数値に差が出た理由として、日本国内にフォーカスしてサービスを提供するMomentumのツールでは巨大掲示板やまとめサイトなど日本独自のサイトカテゴリーもブランドリスクフィルターの検出対象に含めており、グローバルと比較して数字が高く出た可能性が考えられる、としている。

ビューアビリティー: 日本は主要各国と同程度もしくはそれ以下

主要各国のプログラマティック広告取引における広告枠のビューアビリティーは、IASの調査によると52.8%。これに対し、日本の数値はIASが54.8%、Momentumは41.0%で数値に開きがあった。同団体では「ビューアビリティーは広告枠の設置箇所に大きく依存する点が強いことから、両社の数字を単純に比較することは困難」としながら、「日本は主要各国と同程度の水準、またはそれ以下」だとの見方を示している。

図5:日本と世界のビューアビリティー比較(日本)
図5:日本と世界のビューアビリティー比較(日本)
※米Media Rating Council(MRC)が米広告業界団体Interactive Advertising Bureau(IAB)とともに策定したビューアブルインプレッションのガイドライン(=広告表示領域の50%が1秒以上表示されたもの)を基準としてIASとMomentumがそれぞれ調査
図6:日本と世界のビューアビリティー比較(主要各国)
図6:日本と世界のビューアビリティー比較(主要各国)

日本のデバイス別アドフラウド率: PCが15.4%で突出

Momentumの調査によれば、国内のプログラマティック広告取引におけるアドフラウドと疑われるトラフィックをデバイスごとに見ると、PC向けの広告配信におけるアドフラウド率が15.4%と、他デバイスと比較して高い数値が観測されている。

図7:日本のデバイス別アドフラウド率
図7:日本のデバイス別アドフラウド率
※2017年10月、国内のディスプレイ広告のインベントリーを中心に6億インプレッション強を対象として調査

この理由としては、「機械的なトラフィックを作り出すために広く用いられているいくつかの手法についてはアプリ面ではなく、Web面での実装が容易であること」「PCユーザー向けのクリックインセンティブ付きのサイトが国内で広まっていること」を挙げている。

ブランドリスクのあるコンテンツ: 「性的/アダルト」のほか「ヘイトスピーチ」も

国内のプログラマティック広告取引において検知されたブランド瑕疵のリスクのあるコンテンツ属性の内訳は、Momentumの調査では、「性的表現」のカテゴリーが51.2%と半数以上を占めた。次いで、匿名掲示板やまとめサイトなどのCGM(Consumer Generated Media、消費者生成メディア)が24.9%。

図8:日本のカテゴリ別ブランドセーフティー(リスク率・Momentum調査)
図8:日本のカテゴリ別ブランドセーフティー(リスク率・Momentum調査)
※2017年10月、国内のディスプレイ広告のインベントリーを中心に6億インプレッション強を対象として調査

同じくIASの調査では、海外と比較すると、国内のブランド毀損リスクは「ヘイトスピーチ」が顕著で、「不快な表現」や「暴力」、「アダルトコンテンツ」の割合は海外と同程度だと分析。

図9:日本のカテゴリ別ブランドセーフティー(リスク率・IAS調査)
図9:日本のカテゴリ別ブランドセーフティー(リスク率・IAS調査)
※調査対象はPC、スマートフォンの両方で、動画を除くディスプレイ広告。調査期間は2017年1月~6月。調査規模はIASの方針で非公表

ただし、IASは対応する40カ国の言語すべてにおいて、国ごとの文化や公序良俗の定義を加味してリスクカテゴリーのモデルを構築していることから、この結果はヘイトスピーチのコンテンツの多さではなく、「ヘイトスピーチに対する感度の高さ」を反映するものだとしている。

動画広告: アドフラウド、ビューアビリティーともディスプレイ広告より良好

日本の動画広告におけるアドフラウドとビューアビリティーの状況をIASが調査し、海外と比較している。

図10:日本の動画マーケットインサイト
図10:日本の動画マーケットインサイト
※調査期間・調査対象ともにIASの方針で非公表

アドフラウドは「海外では高CPMを意図的に狙うボット業者の動きにより動画広告での発生率が高くなりがち」だが、「国内においてはソーシャルプラットフォームやプレミアムネットワークの比重が高い」ため、動画広告のほうが低くなっていると分析。

ビューアビリティーについては、主要各国において動画広告はディスプレイ広告よりも高いビューアビリティーの水準を保っており、このトレンドは日本国内についても同様であると指摘している。

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