【レポート】Web担当者Forumミーティング 2019 Autumn

機械学習によって「SEO」と「デジタル広告」はどう変わった? 担当者が知っておきたい現実と未来

機械学習によってSEOや広告では、これまでの成功パターンが効かなくなってきたという。元Googleの長山氏らJADE創業メンバーが対談し、テクノロジーの進化に対して、どう向き合うべきか語ったセミナーレポートをお届け。

「AI・機械学習」の実用化によって、SEOと広告にはどのような変化がもたらされたのか。

Web担当者Forum ミーティング 2019 秋」に登壇したJADEの小西氏と長山氏は、これまでの王道はもはや過去のものだと断言する。SEOと広告の専門家である二人が対談を通じて、これから担当者に求められることを語った。

左から、株式会社JADE 取締役/広告事業責任者小西一星氏、同社ファウンダー 長山一石氏

広告運用のテクニックが通用しなくなってきた?

JADEは2019年5月に設立されたばかりの会社だ。「インターネットをよくする会社」をキーワードに掲げ、WebサイトのコンサルティングやSEOを手がけている。

デジタル広告運用に長らく携わる小西氏は、よくわからないことが増えてきていると言う。

3C分析して、『これだ!』と思った訴求で失敗することが増えた。また、A/BテストをしてAが勝ったけど、その翌月には後にBが勝った、というようなことも増えた(小西氏)

また、前まで通用したテクニックが効かなくなっているとも言う。たとえば、明らかにコンバージョン率が高いであろうターゲットをピンポイントで狙ったり、コンバージョン率の高い検索クエリに対して入札単価を高めたりするといったような方法がだんだん通用しなくなってきている。「こうすれば、こうなる」というものではなくなってきていると小西氏は指摘する。

こうした現状へと至った理由として、小西氏がズバリ挙げたのが「ビッグデータ」と「機械学習」だ。もはや、聞き飽きた言葉だろうが、「実感できているか」と聴講者に問いかけた。実感し、正確に理解していなければ、今まで成功してきた人ほど将来が危うい、と警告する。

「機械学習」が変える現在と未来

株式会社JADE ファウンダー 長山一石氏

長山氏はGoogle在職時、検索やGoogle Playなど各種プラットフォームの改善に取り組んできた。そして日々、機械学習の進化を体感してきたという。

機械学習は「AI」「人工知能」とほぼ同義の存在として説明されることが多いが、長山氏はそれに違和感を覚えている。現状のAIは、今もなお「知能」と呼べるほどのレベルには達していないというのが、その理由だ。

ただ真なるAIの実現に向けて、世界のエンジニアらが粛々と手がけているのが「機械学習」であることは間違いないと長山氏は指摘する。機械学習はもはや、あやふやな概念ではない。Googleのような超巨大プラットフォームの改善に、機械学習は実際に役立っている。つまり「機械学習って本当に役立つの?」というようなフェーズは、とうに過ぎているのだ。

たとえば、プロダクト開発チームがサービス改善に取り組むとき、これまでであれば「仮説立案 → 設計変更 → 効果検証」といった3つのプロセスを、人間自身の手で行うのが普通だった。

これまでのサービス改善プロセスは「分析・仮説立案 → 設計変更 → 効果検証」が基本だった

機械学習が導入されることにより、このプロダクト改善プロセスはさらに強化され、迅速化される。それは、このプロセスに以下のような効果をもたらすからだ。

  • 人間には不可能な大量データの処理
  • 新発見の自動化
  • 改善の速度向上

機械は、仮説を形成するために、人間には到底できない量のデータを処理できる。人間の経験や勘に頼らず、科学的・数学的な処理ができる。

結果、機械学習によって「新発見の自動化」がなされ、「改善の速度向上」もまた進む。決して、人間がいらなくなったわけではないが、機械学習なしでは実現できなかったようなプロダクト改善が、こうして現実のものとなった。

広告運用のターゲティングでも、広告運用の現場では、かつてA/Bテストの条件設定を人間が考え、手動でおこなってきたが、機械学習の精度が上がればそうした広告運用の努力も、もはや必要なくなっていく。

リンクだけやってもだめ、コンテンツだけでもダメ

講演の後半では、長山氏と小西氏がSEOおよびリスティング広告運用の今後について対談した。

SEOは、2019年の今もなお、デジタルマーケティングにおいて重要項目である。小西氏はSEOの知識は少ないと明かし、果たしてどうすべきかを長山氏に聞いた。

Google の検索サービスは米国での誕生以来、すでに約20年の歴史を誇るが、その内部アルゴリズムは常に改良が加えられてきた。Google 検索はもともと PageRank などのリンク分析アルゴリズムを持っていたことが他の検索エンジンに対する強みであり、コンテンツスパムを用いた不正な操作に対してより強い検索エンジンとして登場した。しかし、リンクを操作するいわゆる「リンクスパム」の登場とともに、次々に現れるスパム手法との”いたちごっこ”が行われるようになった。

こうした Google 対 スパマーの“いたちごっこ”の中で、リンクスパムに対して Google が勝利をおさめるようになるにつれ、2010年代後半は「コンテンツマーケティング」「ユーザー行動」などの概念が注目を浴びるようになった。集客したい側が、SEO面で有利なコンテンツを作成し、最終的に本業(ECサイトなど)へと誘導するのが基本的な考えである。

しかし、結局、これが行き着いた先は「コンテンツの粗製濫造」だった。ネット上のコンテンツがあまりにも増え、1ページ1ページの賞味期限はどんどん短くなった。加えて、Google もアルゴリズム改善を進め「長いだけのページ」を高品質扱いしなくなった。

このようにリンク、コンテンツなどSEOを行う上で重要な“シグナル”は、より多様化している。どれか1つに対処したからといって、効果を上げられる時代はもう終わったと長山氏は断言する。

ユーザー目線に立って、自社サイトやサービスのコアバリューを考え、それを数値化して、地道に改善していくしか、本質的には(SEOを有利にするための)方法はない(長山氏)

たとえば、自社サイトの被リンク数が100、競合サイトの被リンクが1000だからといって、それだけに右往左往し、不自然に人工リンクを稼ぐ必要はもうないだろうとも長山氏は話す。コンテンツの量についても同様で、内容のない、ユーザーが読んでもまったくためにならないコンテンツを増やしても、それはむしろ悪影響だろうとも述べている。

『週に3本コンテンツを作る』というような目標はやめて、高品質な1本をつくるようにしたほうが良い、ということですね(小西氏)

また小西氏は、リンク数やページ表示速度など、検索順位を判断する上で“一番重要なシグナル”はなんなのだろうかと質問したが、長山氏は「ない」と断言する。「ページの価値」を基準に、さまざまなシグナルを複合的に取り扱うのがGoogleであり、“裏技”が存在しないことを強調した。

株式会社JADE 取締役/広告事業責任者 小西一星氏

エステ広告のエピソードがあぶり出す「機械学習」の実力

対談は、広告運用の話題へと移っていった。

通常、Googleにおける検索連動広告では、その表示順が決定される過程において、キーワードに対する入札価格だけでなく、広告のリンク先となるランディングページ(LP)の利便性など、コンテンツ品質も重視される。つまり「お金を出しさえすればクリックされるという仕組みではなくなった」のだという。

Googleの機械学習が広告においても広がっていることを2015年頃から小西氏も実感しているという。

当時の小西氏は、エステ会社のディスプレイ広告の案件を担当していた。「エステ」というキーワードを登録しておけば当然、Googleの広告ネットワークに入っているエステ関連サイトで、その広告が表示されるのが自然だが、まったくといっていいほど表示されなかった。

だがほどなくして、恋愛関連のページに当該広告が表示されるようになり、コンバージョンを獲得する機会が増えていった。エステに興味を持つ人であれば、同じく恋愛にも興味を持つ可能性は高いと推察される。こうした、ジャンルの想定の広がりは「占い」を経て、「不倫」関連のページにまで至った。

ただ、話はここで終わらない。さらに、カフェ関連のWebサイト、男性アイドルグループ関連サイトに広告が表示され、しかもコンバージョンを獲得するようになったのだ。

広告の表示先がエステ以外にも自動で広がっていったのは機械学習以外の仕様の影響もあるが、これほどまでに配信先が広がり、かつ、コンバージョンも膨大に獲得していく動きはそれまで見たことがなく、真新しい何かを見ている気分だった。機械学習がどういうものかわかってきた後で改めて思い出すと、あれは機械学習が影響していたのだろうとしか思えないし、そう考えると納得がいく。

Googleの機械学習は2013年頃から導入されたそうだが、その後、音沙汰がなかった。ただ2015年くらいにグッと精度が上がったと言われているので、このケースがまさにその影響なのだろう(小西氏)

今までは人間がしていた仕事をマシンが行った訳で、小西氏も「(機械学習に)仕事をとられた」と感じたという。

SEOと広告の未来は?

長山氏はこの話を受け、「将来、広告運用の仕事はどうなっていくのだろうか」と漏らした。小西氏も、2019年の現時点では、“作業”という意味での運用の手間は大きく軽減されているとしたが、一方で、広告を上手く運用するために「Webサイトを改善する」ことが重要になってきたと語る。

検索キーワードに沿ったコンテンツを用意することはもちろん、広告から遷移してきたユーザーをサイト内で回遊・循環してもらえるようにナビゲーションメニューを作り込むことは、Googleによる広告評価を高めることにつながる。さらに、リマーケティング(リターゲティング)広告を外部サイトに出す際の重要データ源となるだろう。

こうして、「ユーザーのためにサイトを便利にする・作り込む」という観点において、SEOと広告は非常に近しい存在になってきているようだと小西氏は評する。また長山氏は、これまでSEOと広告がそれぞれ「部分最適」化を進めてきた一方で、ユーザーは“検索と広告が一体になった1つの検索結果画面”を見ているのだと指摘。SEO業者と広告会社の協調による「全体最適」が求められているとした。

最後のまとめとして、小西氏は以前の広告運用はPDCAサイクルでいうP(計画)が特に重要だったと話す。しかし機械学習を前提とするシステムが当たり前となった今では、Pに必要以上に時間をかけすぎるより、とにかく早く、多く、D(実行)をこなすべきだと。

しかし今後はD(実行)を数多くこなすべき

長山氏は「Model taming(モデル ティミング)」という考え方が重要ではないかと述べる。猛獣を飼い慣らすように、「機械学習モデルを飼い慣らす」という意味だ。機械学習モデルは、しばしばブラックボックスになりがちだが、目的としている数字に対しては的確な結果を出してくれる。使い手は、データという名の餌をしっかりと与えていき、モデルからの言葉に耳をしっかり傾けていくべきだと呼び掛け、講演を終了した。

猛獣ではなく、機械学習モデルを飼い慣らす
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