『クリエイターのための権利の本』(全6回)

商用フォントを使ったロゴやタイトルの著作権はどうなるの?

ロゴの制作を依頼され、商用のフォントを使ってデザインした。フォントの制作者はロゴの著作権を主張できるのか? Web担特別連載(第3回)
北村 崇(TIMING DESIGN)+角田 綾佳(フリーランス、キテレツ)+古賀 海人(キテレツ) 3/6 7:00 |

書籍『クリエイターのための権利の本』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開。

CHAPTER 2 写真・イラスト・デザイン
SECTION 08
商用フォントを使ったロゴやタイトルの著作権はどうなるの?

Q. ロゴの制作を依頼され、商用のフォントを使ってデザインをしました。この場合、フォントの制作者はロゴの著作権を主張できますか? そもそもロゴに著作権は認められるのでしょうか?

基本的にフォント(書体)に著作権は認められない

フォントの見た目や形においては、一般的には著作権が認められないケースがほとんどです。情報伝達が目的である文字は、読めることが実用性として大事なので、その中で創作性を求めることは困難だということでしょう。

しかし、著作権のありなしにかかわらず、多くの有償フォントは利用規約が定められているので、利用規約のルールに従っての利用が必要です。例えばモリサワフォントの場合、ロゴやマークなどを作成することは問題ありませんが、作成したロゴのデザインや意匠を含めた商標として登録することはできません。

Memo

モリサワ「モリサワフォントの商業利用について」(http://www.morisawa.co.jp/products/fonts/ commercial-use/

フォントに関する裁判例〔ゴナ書体事件〕

ゴナ書体事件は、印刷用書体が「著作物に該当するというためには、それが従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、かつ、それ自体が美的鑑賞の対象となり得る美的感性を備えていなければならないと解するのが相当である。」と判示しています。書体については原則として著作物性は認められず、著作物として保護されるためのハードルは非常に高いといえます。

Memo

最判平成12年9月7日民集54巻7号2481頁〔ゴナ書体事件〕

フォントプログラムには著作権がある

フォントのデザインは原則的に著作物とは認められません。ただし、フォントのプログラムには著作権があります。

コピーしたり、ライセンス許諾を得ていない不正なプログラムを使用したりした場合は、プログラム著作物(著作権法10条1項9号)の著作権侵害となります。

文字のみをデザイン化したロゴは著作物と認められる可能性は低い

フォントデザインに著作権が認められないのと同様、既成フォント、自作フォントにかかわらず、文字のみで構成されたロゴは、原則として著作権が認められません。裁判例でもロゴマークについては、著作物性を否定しています。

ロゴマークに関する裁判例①(ロゴマークAsahi事件)

ロゴマークAsahi事件は、アサヒビールが、デザインが類似したロゴマークの使用差し止めを請求した裁判です。裁判所はAの書体は他の文字に比べて「デザイン的な工夫を凝らされたもの」とは認められるとしながらも、この程度のデザイン的要素の付加によって美的創作性を感得することはできないとして、ロゴの著作物性を否定しました(図01)。

図01 著作物性を否定されたアサヒビールのロゴ
出典:ロゴマークAsahi事件控訴審別紙

Memo

東京高判平成8年1月25日判時1568号119頁〔ロゴマークAsahi事件控訴審〕

ロゴマークに関する裁判例②(住友建機事件)

東住友建機事件は、角ゴチック体と丸ゴチック体を適宜組み合わせ、文字の太さ等を工夫したロゴについて、裁判所は「見る者に格別な美的感興を呼び起こすような程度には到底達していない」として著作物性を否定しました。

図02 著作物性を否定された住友建機ロゴ
出典:住友建機事件別紙

Memo

東京地判平成12年9月28日別紙判時1731号111頁〔住友建機事件〕

絵画的要素を有するロゴや書には著作権が認められる場合もある

ただし、文字を構成するロゴは著作物として認められにくいというだけで、イラストなどを用いて顕著な特徴を有する場合は、著作権が認められることもあります

例えば、ユニリーバのロゴは、様々なアイコンの集合体になっています(図03)。これくらい絵画的な要素が入っていると、著作物性が認められる可能性は高いでしょう。なお、ユニリーバのウェブサイトでは一つひとつのアイコンの持つ意味についても解説されています。

図03 ユニリーバのロゴ
出典:ユニリーバ・ホームページ
https://www.unilever.co.jp/about/who-we-are/our-logo/

ロゴマークに関する裁判例③(趣事件)

また、裁判例では、広告の目的に応じたデザイン文字としての書道家の書も「美術の著作物」として認められています(図04)。

「書」については著作物性が認められやすいという特徴がありますので、知っておいて損はないでしょう。

図04 著作物性が認められた「趣」事件原告の書
出典:「趣」事件別紙

Memo

大阪地判平成11年9月21日判時1732号137頁〔趣事件〕

まとめ
  • 原則としてフォントに著作権は認められない。
  • 文字のみをデザイン化したロゴなどは基本的には著作物とは認められない。
  • フォントのプログラムにはプログラム著作権があるので、無断使用は著作権侵害になる。
  • 絵画的な要素を取り入れた顕著な特徴を有するロゴや書の特徴を有するロゴであれば著作物性が認められやすくなる。

※Web担特別転載では掲載のないページの注釈も原文のまま掲載しています。指定のページやChapterご覧になりたい方は、書籍でご確認ください。

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  • 著者:大串肇、北村崇、染谷昌利、木村剛大、古賀海人、齋木弘樹、角田綾佳
  • 発行:ボーンデジタル
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