Web広告研究会セミナーレポート

個人情報保護とターゲティング広告の“これから”、資生堂・リクルートMP・ベネッセ・Supershipが徹底討論

一般層も目を向け始めた「ネット広告が抱える問題」について、Web広告研究会が採り上げる
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

デジタル広告のターゲティング技術は年々向上してきたが、昨今はプライバシーの観点からトラッキングへと議論が及んでいる。9月の月例セミナー第2部は、「ターゲティング広告の今後はどうなる?~GDPRとITP 2.0から考えるこれからのターゲティング広告~」をテーマに、資生堂、リクルートマーケティングパートナーズ、ベネッセ、Supershipがそれぞれの立場から広告コミュニケーションについて議論を重ねた。

一般層も目を向け始めた、ネット広告が抱える問題

モデレーター
株式会社日本経済新聞社
小林 秀次 氏

小林:第1部では、今後のネット広告に大きな影響を与えそうな潮流として、GDPRやITP 2.0が紹介されました。またアドフラウドの問題をマスメデイアが報道するなど、一般層での注目度も高まっています。こうした動向について、みなさんはどのようにお考えですか?

Supership株式会社
小嶋 泰我 氏

小嶋:報道番組で放送されたことで、Supershipでは話題を通り越して“事件”のレベルで社内がざわつきました。アドフラウドの対策は以前からとってはいましたが、代理店さんやクライアントさんからお問い合わせが殺到したので、ご説明の対応に追われました。

資生堂ジャパン株式会社
高橋 満 氏

高橋:資生堂ジャパン社内でも、メディア部門では話題になりました。ただ、それ以外、社内のブランド側からは、あまり問い合わせはなかったように思います。

株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
瓜生 翔 氏

瓜生:リクルートは、こうした分野の情報流通は比較的早い会社だと思います。基本的には「既知の内容」という印象を受けました。

株式会社ベネッセコーポレーション
秋山 大志 氏

秋山:私の周りではあまり話題にならなかったですね。アドフラウドやブランドセーフティについて、「うちがブランドセーフじゃなかったら、どこがセーフなのか」という思いで、正直にメディアビジネスをやっています。特にアドフラウドについては、うちは基本が会員制でクローズドなサイトだったので、ボットなどが入り込む余地がありませんでした。そのためこうした問題と無縁だったと考えています。

ビューアビリティに関して言えば、なぜネット広告だけここまで細かく言われるのか不思議に思っています。(効果や視認性が曖昧であっても)「屋外広告の闇」「テレビ広告の闇」とか言われませんよね(笑)。ネット広告だけ出広する側も媒体側も面倒くさい状況になっている。Web業界はここで一息入れて、「闇」と言った単語で切り取らないで、ちゃんと考えるべきだと思います。

高橋:「闇」というより、「その広告は、ちゃんと効果が上がっているの?」ということが問われていると思います。たとえば、屋外広告などは、2020年の東京五輪に向けて、あらためて注目が集まっている。デジタルだけではないというのが私たちの立場です。

小林:確かに、ネット広告にだけ「闇」という単語を使うのは、アンバランスに感じますね。

いま一番注目しているネット広告の問題は?

小林:こうした潮流を受けて、たとえばヤフーはアドフラウド対策を9月20日に発表しています(不正に広告費をだまし取る手法「アドフラウド」対策の強化について)。GDPRの規制を受けて苦戦しているプラットフォーマーもいます。ITPについては、現場対応の難しさから、いろいろとネガティブな話題が続いています。ポジティブな話題もなくはないですが、デジタル広告領域で、最近もっとも気にしていることはなんでしょうか?

高橋:予算的にはテレビスポットも雑誌広告も入れているので、それとデジタルがいかに有効にリンクするか、「態度変容」をテーマに見ています。デジタルシフトが重要だからといってマスをゼロにすることはありませんが、「効率を上げていく」ことは主眼の1つになっています。

アドフラウドは、ブランドセーフティと切り離せない問題だと認識しています。たとえば雑誌の話だと、ブランドセーフティでは「男性グラビアの対向面の広告はやめる」といった考え方がある。

小嶋:個人的には「ITP」が一番ホットだと思っています。ここができなくなると、自社の強みが失われる可能性が高い。ただこれは短期的な話であって、「デジタル広告をどうしていくべきか」という大きな視点で、業界全体がターニングポイントに差し掛かっていると思います。これまではデジタル広告の良いところばかりが前面に出ていましたが、ここに来てそれ以外のところにスポットが当たってきたという感想です。

デジタル広告では、「ブランディング効果の可視化の指標」が気になっています。

瓜生:「ブランディング効果の可視化」は、オフライン広告と同様に、定量調査によって果たせる部分も大きいと思います。

秋山:ブランディングについて言えば、うちのメディアに出していただければブランドリフトはあると思います。どうしてかというと、ウィメンズパークは、会員の月間の訪問者の平均滞在時間が約2.5時間もあり、なかにはセッション数が100以上の人もいる。場合によっては、テレビより長くサイトに滞在しています。ただ、最近はGoogle広告やDSP・SSPなどの運用型広告が中心で、媒体の運用型広告担当者は、自販機を置いている地主さんと同じような感じです(笑)。

最近「あなたの端末がウイルスに感染しました!」みたいな不正広告が増えてますが、こうした不正広告が出ると、問い合わせがドッと来ますが、媒体側では対応に苦労する場合が多いです。そもそも、メディア側は、自販機の商品と同じで、広告枠になにが出るかを選べない状態、不正広告が出ないように、きちんと、人、場所にあった広告が出るように、プラットフォーム側で対応、改善してもらいたいですね。

こういうユーザーアンフレンドリーな広告が出てしまう今の状況だと、「デジタル広告はブランドリフトにつながっているのか? 現状では相当厳しいのではないか?」という根本的な疑問を感じています。たとえば、特定メディアでの広告接触者・非接触者別のブランドリフト調査など、どんどんやってほしい。それできちんとした媒体がきちんと評価され、不正が発生するようなネット上のインベントリを減らせればと思っています。

ユーザーは思った以上に広告を冷静に見ている?

小林:高橋さんから「態度変容」に関する言及がありましたが、一方で秋山さんから「調査をどんどんやってほしい」という話がありました。こうした生活者の変化は、どう計測しているのでしょう?

高橋:会社全体で構築した調査パネルを入れて計測しています。ただ、まだまだマス中心の会社なので、ここ数年で強化している状況ですね。化粧品業界特有かもしれませんが、購入チャンネルとしてのECは、全体の売り上げから見たらまだ大きくはありません。ブランドリフトからの態度変容をどう構造化するかがいまの課題ですね。

小林:ブランディングやテクノロジーの話より、コミュニケーションの話になっていきそうですね。

ターゲティング広告で求められる“規模感”と“精度”

小林:今後のターゲティング広告に求めるものは何になるでしょうか?

瓜生:個人的には「規模感」だと思っています。キャンペーン設計上は、オフラインとのコンビネーションなど色々と作り込むことはできるのですが、結局、規模感に欠けるとビジネスへのインパクトは薄い。もっと規模が実現できれば、そこに対してリソースを投下することの価値も、より上がるなと思っています。

小嶋:「規模感」は重要で、これを出せないと事業をどうにもできない。一方でデータ量を追い求めすぎて、精度があいまいになりがちです。データ量があるのは大前提のうえで、綺麗なロジックやデータの出元が求められていると考えています。

小林:媒体の立場としてはいかがですか?

秋山:ウィメンズパークはすごく正確な(会員)データを持っているので、どんな方が閲覧をしているかもきちんと把握している。しかし、あるネットワークがサードパーティDMPのオーディエンスデータを使ってターゲティング配信をしたときに、我々が把握している該当のオーディエンスのインプレッションに対して、全然広告が表示されなかった。今、ターゲティング配信に使われているサードパーティDMPのデータやデモグラのなかにはあまり正確ではないものもある。規模も大事だけど、やはり精度も大事だと考えます。

ただ、我々はすごく正確なデータを持っていますが、お客さまから預かった情報について個人を特定しなければ、なんでもマーケティングに使っていいとは考えてはいない。「広告を見せるためにメディアをやっているのではなく、あくまでユーザー、読者に価値のある情報をお届けするためにメディアをやっている」という原則を見つめ直す必要があると思います。

小林:「企業とメディアのデータ連携」でいえば、こうした問題は、データを取り扱うという意味においてGDPRにもITP問題とも関連していると思います。またプラットフォームが間に入るのではなく、直接的な話し合いも増えるだろうと思います。

高橋:ブランド部門側からは「デジタルを活用すれば、ターゲットのことがなんでもわかるんでしょ?」みたいに言われます。でも我々からすれば、ちょっとよくなったかな、という段階にしか精度は上がっていないと感じます。

「動画広告」を巡るさまざまな視点と悩み

小林:最近注目している手法や指標についてお聞かせください。

瓜生:ベタですが「動画広告」ということになるのかなと思います。ベーシックにYouTubeやAbemaTVの活用などですね。あとは、(第1部で紹介された)「OneID」は非常にパワフルな仕組みなので、規模感を持って実現されていくとすれば、デジタルマーケティングが大きく進化するとは思います。1人ひとりを一気通貫で追えることになりますからね。

OneIDの可能性

小嶋:デジタル広告は、ただ配信するだけでは態度変容を起こさせるまでのパワーが足りないと思います。だから、広告フォーマットやタイミングは、ものすごく大事。単純にデータだけでは語りきれませんが、やっぱり「OneID」を使い、“その広告を見るに至った背景”を分析できればいい。また、クリエイティブのフォーマットも力を入れていきたいところで動画広告とかプレイアブル広告とか、新しい広告フォーマットで、ユーザーのマインドが変わるような広告を提供したい。リアルも含めて、「デジタル広告がどこまで新技術を取り込んでいくか」に注目しています。

小林:動画広告では、「YouTube以外にボリュームを出せる媒体がない」という悩みがあるのではないでしょうか?

高橋:動画を扱う機会は多くなっていますが、たしかに在庫の問題がありますね。そしてクリエイティブの問題もあります。テレビCMと同じものを出せばいいという話ではない。同じ動画でも、Web動画を“資生堂的”にどう捉えてやっていくか、いままさに議論を始めています。テレビCMだと「資生堂らしいね」といってもらえるが、Web動画でも摸索しています。

小林:動画視聴がスマホナイズされていることを考えると、たとえば「縦型動画」などはどう感じていらっしゃいますか?

瓜生:縦型動画は、きちんと設計されて作られたものであれば、実際かなり有効です。ただ、その「きちんと設計する」ということが大変ではありますよね。

秋山:動画についてはたしかに引き合いも多くありますが、vCPM(Viewable Cost Per Mille)でいくらという話でいただくことが多い。先にお話ししたように、我々のメディアは1人のお客さまが1日に何回も、かつ、1回の訪問でたくさんのページを見ている。vCPMで売上を上げるためには、1人のお客さまに何度もその動画を見せることになる。お客さま視点で「その動画、本当に何回も見たいのか?」と考えないといけない。

実際に、動画を配信し始めたころには「ギガ消費するのでやめてほしい」という書き込みがあり、それに対して「AdBlockを入れれば表示されないよ」みたいな、やりとりがありました(笑)。いや笑えないんですが。そういう動画広告はポジティブよりネガティブな印象を与えていることもあるのかもしれません。“本当にユーザーが求めているのか”を考えたうえで、「スキップされない動画」「ネットに合わせて尺を最適化した動画」「お客さまにとって楽しい役に立つ動画」ならフリークエンシーキャップを適切にかけたうえで載せたいですね。

個人情報保護とターゲティング広告の“これから”の関係

小林:個人情報保護、法規制という今回のテーマに立ち戻ると、データの扱いがセンシティブになり、消費者とのコミュニケーションも変化するかと思います。これからのデータ活用はどうなるとお考えでしょうか?

小嶋:個人情報保護は、間違いなく世界的に加速していきます。そのなかで“不快感なくデータを活用し、広告を届ける”ことを考えるべきです。「不快感」「監視感」を与えないように気を付けないといけない。ウェアラブルやIoTなども加わってくるし、データマネジメントの難易度も増してくる。

あと、個人を特定しすぎるとダメなので、クラスタ的な形でデータをやりとりするフレームワークを業界全体で作らないといけない。情報銀行には期待しています。“データを能動的に提供してもらう世の中”になるのが双方ハッピーだということを、各ステークホルダーが意識するのが大事だと思います。

秋山:なぜいまAppleがITPをバージョンアップしたのか、なぜいまEUがGDPRを施行したのか。それは「ユーザーが勝手にトラッキングされることをキモいと考えている」ということがすべてです。ユーザーの行動をストーカーするのではなく、キチンと“顔が見える関係”を作り、ユーザー、お客さまに対して相対し、責任を持つべき媒体や事業会社(広告主)は、“1stパーティデータや・2ndパーティデータ連携など”で、お客さまを理解し、しっかり関係を作っていくのが大事でしょう。お客さまを気持ち悪がらせるコミュニケーションをするのではなく、きちんと説明、オプトインをとって疑われないマーケティングを行う。顔の見える関係を長期的に醸成し、そのときどきのタイミングでお客さまに必要な広告(情報)を出せば、ターゲティング広告も意味のあるものになると思います。

瓜生:これからも引き続き揺れ続ける性質のものだと思っているので、正直、その時その時にやれることのなかで、最大限工夫をしていくしかないとは思っています。あとは、データ活用の出口がWeb広告に閉じてしまってはつまらないので、もっとチャネルが広がっていくといいなとも思います。

高橋:消費者・生活者をいかに知り尽くすかが大事かと思います。資生堂は2012年にECサイトを立ち上げて、相当データを蓄えてきました。それをいかに外部のデータと組み合わせるかを試行錯誤しています。たとえば、結婚・妊娠を機にブランドを離れてしまうお客さまがいます。これをベネッセさんの情報とかけあわせて考察するとか。外部パートナーさんとやっていきたいと思います。

2018年9月25日開催 月例セミナーレポート第1部

(C)2018 Web Advertising Bureau. All rights reserved.

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:
「テレビ報道で高まるネット広告への関心、ターゲティング広告のこれからを徹底議論」2018年9月25日開催 月例セミナーレポート第2部(2018/11/19)

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