インタビュー

全部信じて任せてください! 画像ファイル容量を3~10分の1以下にする「SmartJPEG」知ってますか?

画像軽量化ソリューション「SmartJPEG」について、誕生の背景や最新版の機能を聞いた。
「SmartJPEG」による画像軽量化の例。見た目に大きな違いはないが、右側の画像は5分の1ほどのファイルサイズになっている(圧縮画像の再掲載のため実際のデータとの相違あり。オリジナルデータはウェブテクノロジのサイトよりダウンロードして検証可能)

こちらの画像、左側(286KB)と右側(44KB)とで、ファイル容量が5倍以上異なります。でも見た目に大きな違いはありませんよね? 画像のファイルサイズが小さければ、ユーザー側はギガ消費を抑えられるし、読み込み速度も速くなります。サイト管理側も、ストレージ容量を削減できます。このように、サイトに掲載する画像を自動で最適化してくれるのが、ウェブテクノロジの画像軽量化ソリューション「SmartJPEG」。

「SmartJPEG」は、見た目そのままに画像容量を抑えてくれるサービス。バージョン2.0を7月10日にリリースし、アニメーションGIFの生成、WebPの出力に対応したほか、画像内容に応じてJPEG・PNGのどちらが適しているかを自動判断できるようになりました。さらに、ブログシステム「WordPress」から「SmartJPEG」を呼び出して、画像の軽量化を自動で行うプラグインも同時にリリースされました。

これって、Web担当者の救世主じゃないですか?

これらの機能強化の戦略について、ウェブテクノロジ 代表取締役CEOの小高輝真(こだか・てるまさ)氏、同社 経営企画部 マーケティングコミュニケーション サブマネージャの若狭譲(わかさ・じょう)氏が、会社設立やサービス展開の経緯、「SmartJPEG」の利点や今後を含めて語ります。

代表取締役CEOの小高輝真氏(左)、経営企画部 サブマネージャの若狭譲氏(右)

Web以前の時代から「ウェブテクノロジ」として活躍

――ウェブテクノロジがどういう会社か、どういうサービスを提供しているのか、今回新しく提供を始めるサービスはどういう狙いなのか、今回その3点を伺いたいと思います。ウェブテクノロジさんは、かなり歴史の長い会社ですよね。

小高: 会社の設立時期でいうと、当社はインターネットの普及よりも古い、1991年に創業しています。ですので、社名に「ウェブ」という単語は入っていますけれど、いわゆるWorld Wide Webという言葉を知らずに社名をつけました。社名の「ウェブ」という単語は、インターネットの「Web」ではなく、クヌース博士※が開発したプログラミング言語の「WEB」を元にしているんです。

※クヌース博士:ドナルド・E・クヌース。組版システム「TeX」、フォント設計システム「METAFONT」などの開発で知られる数学者。自身が提唱した“文芸的プログラミング”というコンセプトに基づき、プログラミング言語「WEB」も開発している。

――そうすると、もともとはWebサービスのための会社ではなかった、ということですね。

小高: 私ですが、大学在学中から、技術評論社やソフトバンク、アスキーなどの出版社で、PC関連の雑誌記事や書籍を執筆していたんです。大学院を修了したのを機に、会社の形にして、BIOSなどのシステム開発業務を受託するようになりました。1990年代後半には、画像減色ソフトの「OPTPiX」をリリースしたのですが、それがゲーム業界で強力な支持をいただき、画像最適化ツールとして、業界スタンダードの地位を獲得しました。ちょうどSCEさんからプレイステーション2が、マイクロソフトさんからXboxが出た頃です。2000年以降、SCEさん・マイクロソフトさん・任天堂さんと、それぞれツール開発の契約を締結しています。

――CDメディアからDVDメディアに移り、“ゲームの大容量化”が進んだ時期ですね。

小高: ゲーム開発側からすれば、メディアが大容量になっても、まだまだ足りないという側面があります。またデータ容量を抑えることで、扱えるテクスチャ数を増やしたり、読み込み速度を向上させたりすることもできる。そういう観点から、画像最適化のニーズは衰えていません。メディアの容量が拡大しても、VRAM(ビデオメモリ)の容量が増えるわけではない。ユーザーが期待するような、すばらしいゲームを作るには、画像を最適化しサイズを抑えないと、ゲーム機本来のパフォーマンスが出せないんです。

代表取締役CEOの小高輝真氏

――同種のニーズがWebにもあります。

小高: 「OPTPiX」は、デジタル放送や携帯コンテンツ向けにもリリースされていますが、Web向けには、2004年から画像変換ASPの「OPTPicture」のサービス提供を開始しました。これはiモード向けですね。当時の携帯電話端末は、フルカラーが使えないとかGIF形式しか使えないとか、さまざまな制約がありました。JPEG形式に対応していても、最大ファイル容量が決まっているとか。さらに毎月のように新機種が発売される。2002~2004年頃は、携帯電話向け壁紙がコンテンツとして販売されていました。そうしたコンテンツプロバイダが機種ごとに画像を最適化するのが大変なため、「OPTPicture」のようなサービスが活躍したと思います。

――その延長として、“Webサイトに掲載する画像の最適化”サービスである「SmartJPEG」が生まれたんですね。

小高: そうですね。その他には、2Dスプライトアニメデータ作成ツールの「SpriteStudio」、スマホアプリ開発向けの「imesta」なども手掛けています。基本はBtoBの業態ですが、唯一BtoCで一般ユーザー向けに、マンガを生成できる3Dデザインツール「コミPo!」を販売しています。

――「コミPo!」は私どもの記事でも活用させていただいています。

ウェブテクノロジのサービスラインアップ(同社サイトより)

より導入しやすい形でSmartJPEGを提供

――「SmartJPEG」について、どういうサービスか教えてください。

若狭: 「JPEG」と入っていますが、JPEG形式だけでなく、PNG形式・GIF形式・アニメーションGIF形式・WebP形式にも対応する“画像軽量化・最適化ソリューション”です。綺麗な画像のままファイルサイズを3分の1~10分の1以下に抑えることが可能です。当社には「imesta」「OPTPicture」で蓄積した知見がありますので、これを活用して高度な軽量化を実現しました。1年前より提供を開始し、駿河屋さん、GYAOさん、それに御社(インプレス)等でご採用いただいてます。その他にも、大手出版社の電子コミックサイト、中古車販売サイト等でご採用いただいています。

――SmartJPEGの本体は、どういった形で提供されるのでしょう?

若狭: 「コマンドライン(Linux)」「Photoshopプラグイン(Windows、Mac)」「SaaS(クラウド)」の、3つの形態で提供するよう、サービスラインアップの整理を現在進めています。コマンドライン版は「SmartJPEG for Linux」という名称で、Linuxサーバーにインストールして使ってもらう形です。これはオンプレミスやAWSでの使用を想定しています。Photoshopプラグイン版は10月にリリースを予定していて、「SmartJPEG for Photoshop」として提供されます。そしてSaaS版は、お客様のサーバーではなく、弊社のサーバーにインストールされたSmartJPEGを呼び出す形態になります。現在WordPressプラグインは、コマンドライン版のインストールが必要ですが、SaaS版の呼び出しにも対応予定です。

――料金体系はどういったものでしょう?

若狭: 基本は月額制で、形態によっても変わってきます。プラグイン版なら月額1万円未満、コマンドライン版では月額5万円から、というのが目安ですが、利用条件や処理枚数によっても変わってきます。もともとは中規模・大規模なECサイトを想定していましたが、プラグイン版やSaaS版を用意するなど、ラインアップ整理に合わせいろいろ検討中です。お問い合わせいただければと思います。

ユーザー側の手間はとにかく最小限に、画像を最適化

経営企画部 サブマネージャの若狭譲氏

――画像の最適化はどのように実現しているのでしょうか?

若狭: 独自の画像判別アルゴリズムで、クオリティを維持したまま、画像の最適化・軽量化を行っています。一律同じ圧縮を行うのではなく、1ピクセル単位で画像を評価して、情報量の変化を見て圧縮率を変更し、最適な圧縮を行っています。雑多な画像をまとめてアップロードしても、SmartJPEGが個別に判断して、画像ごとに最適な圧縮が可能です。メリハリのない画像であっても、メイクアップ機能であざやかにすることもできます。

――ユーザー側は悩むことなく、SmartJPEGに処理を任せられるんですね。

若狭: 被写体が人物か風景か物品かといった判別は行っていませんが、逆に、「信用して任せていただければ、確実に最適なデータに変換しますよ!」というスタンスですね。画像1枚ずつ設定を変えて……といった圧縮方法だと、作業量が厖大になるし、職人的なノウハウも必要になってくる。それを全部お任せで処理できるのは大きいと思います。

――画像ごとに細かくパラメータを設定する、といった手間は不要なんですね。

若狭: 「圧縮を強くかけず綺麗な画像を見てもらう(画質優先)」と「強く圧縮して容量を削減する(軽量化優先)」という2つの方向の間で、8段階の設定が可能です。一方で、導入にあたって、ECサイト・電子書籍サイト・ニュースサイトなど、サイトの特性に合わせてカスタマイズすることも可能です。たとえば、赤色というのはJPEG圧縮の場合、どうしてもくすんでしまいがちですが、サイトの傾向に合わせ、綺麗に発色するようにチューニングする、といったことを行いました。

――どういう導入メリットが期待できるでしょう?

若狭: 最近のWebの傾向として、画像の表示サイズが大きくなっているし、枚数も増えている。閲覧者側も大きな画像に馴れてきている。Webサイトの掲載画像容量を大幅に削減できるので、表示の高速化によるUX向上、ストレージ容量の削減、転送量の抑制といった効果が期待できると思います。他社との比較では、たとえばAkamaiのようにCDNと連携した画像軽量化ソリューションがありますが、当社のSmartJPEGは、シンプルに独立して導入できるのが利点ですね。

ユーザーの要望に合わせ今後も進化

――バージョン2.0で強化・追加されたのはどういった機能でしょう?

若狭: 画像形式として新たにWebPの出力に対応しました。また出力画像について、JPEGとPNGのどちらが最適かを自動で判断して出力できるようになったほか、連番の静止画を連結しアニメーションGIFとして出力できるようになりました。さらに、バージョン2.0のリリースと同時に、サーバーにインストールされているSmartJPEGを、WordPressから呼び出す専用プラグインの提供を開始しており、これが一番のメリットではないかと考えています。

――WebP自体がかなり軽量な画像形式だと思うのですが、それをさらに圧縮するのでしょうか?

若狭: 「WebPの画像を圧縮する」というより、「元がJPEGやPNGのファイルを、WebPに変換・圧縮して配信する」という用途を想定しています。

――今後はどういった発展を考えていますか?

若狭: 今回のWebP対応やWordPressプラグインなどもそうなんですが、基本的には、実際に現在利用しているユーザーからの要望に応じて、新機能を追加しています。要望があればどんどん対応していきたいですね。あとは、それぞれの画像内容を判断しさらに最適化を行う、という人工知能的なアプローチも、今後の方向性として考えています。

小高: JPEGとPNGのどちらが最適かは、現在すでに自動判断可能ですが、たとえば、人物ポートレートだったら、「人物はしっかり表示するけれど、背景などの要素は強めに圧縮する」といったことを、AIや機械学習を使ってできないかな、というのはありますね。

――ありがとうございました。

若狭氏(左)、小高氏(右)
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