生田昌弘の「Web担当者に喝!」

CMSを運用ツールとしか思っていないWeb担当者に喝! CMSの導入とは、マーケティング基盤の構築と心得よ

CMSとは、お客さまのニーズや環境に合わせて最適なコンテンツを出し分けたり、管理したりするためのツールであり、マーケティングの視点を持って導入・設定すべきものだ

CMSを運用ツールだといまだに思っているWeb担当者や業者に喝!

CMSとは、お客さまへのニーズ最適化、つまりマーケティング施策のための基盤でなければならない。

「CMSは運用・更新ツール」とWeb担当者は言うけれど

CMSの普及とCMSについての認識が広まるのを感じる一方で、その認識があまりよくない方向に向かっているような気がしている

CMSツールが普及し始めたタイミングでは、CMSのことを「運用・更新ツール」だと、ほぼすべての人がとらえていた。しかし、CMSツールが普及していくにしたがって、CMSの本来の意味やCMSでやるべきことが理解されるようになっていった。喜ばしいことだ。

しかし、その後さらにCMSがより多くの人に、そして一般的に認知されるようになると、またもや「CMSとは、運用・更新ツールである」と理解する人が増えてきたようにも感じる。

CMSが何であるかは、この連載でも幾度となく語ってきた。

運用・更新ツールとしてしか認識していない方は、以下の記事をご覧いただきたい。いずれもWeb担当者Forum上のこの連載の記事だ。

何度も声をあげてはいるのだが、それでも次のような相談は後をたたない。

CMSを導入して、Webサイトの運用をもっと楽にしたいです。
Web担当者A
PCサイトが、スマートフォンでもきれいに表示されるようにしてください!
Web担当者B
簡単にスマートフォンにも対応できるWebサイトにしたいのです。
Web担当者C

スマートフォンサイトが必要なことは、多くの担当者にご理解いただけるようになった。しかし、どのようにやるべきかまでご理解いただいているケースはまれだ。

もちろんこれは、Web担当者だけの問題ではない。制作会社やCMSベンダーにも問題がある。

CMSを導入すれば、こんなに簡単にWebサイトの更新ができます!
制作会社A
見たままに編集できるので、技術に詳しくない担当者でも安心ですよ。
制作会社B
既存サイトのデータをそのままCMSに移せますよ。
ええ、来月には最先端のWebサイトに生まれ変わります!
CMSベンダーC

なにより一番の問題は、制作会社もCMSベンダーもCMSの本当の有効性を理解していない会社が多すぎることだ。

CMSのことを、本気で「運用・更新ツール」だと思い込んで、お客さまに売り込んでいるのだ。

もちろん、「運用・更新ツール」と「本来の意味でのCMSツール」の違いは、一般にはわかりづらい。制作者であっても理解するのは簡単ではない。

さらに厄介なことに、運用・更新ツールが必要とされており、それを導入することが最適なケースも存在する

だから、Web担当者も制作会社もCMSベンダーの皆さまも、きちんと考えてほしい。

CMSは、マーケティング施策のための基盤になりえるものだということを。

なぜ今、Web担当者がマーケティングを意識すべきなのか

Webサイト運営を担当しているチームとマーケティングを担当しているチームが、別部門になっている会社は多い。

また、マーケティング部門が使うマーケティングオートメーション(MA)ツールと称される製品は、リードありきで、そのリードがいかに有効かどうか見極めるためのツールであることがほとんどだ。

だからMAツールが備えるWebサイト構築機能は、フォームやランディングページ(LP)の作成に限定されるか、もしくはそのレベルのものしか管理できない場合が多い。

ほとんどの企業のWebサイトにおけるOne to One対応は、Webサイトだけで機能する。マーケティング部門は、Webサイトのそもそもの集客やお客さまの動線に興味がない、もしくは情報がない。

そういう状況でも問題ないこともある――たとえば、営業サポートのためにMAツールを導入する場合だ。

しかし、Webサイトを有効なマーケティングツールとして機能させるためには、Webサイト側のマーケティング機能を検討しなければならない。

考えてみてほしい。そもそもコンテンツが一元管理されておらず、レコメンドするものといえば商品そのものしかないようなWebサイトで、個々の顧客に合わせたマーケティングを実現できるだろうか? かなり難しいはずだ。

にもかかわらず、Webサイトの担当者が「自分はWebサイトの運用・更新が仕事」と考えていたら、どうなるだろうか。

マーケティング部門は、Webサイトを担当しているチームを巻き込まず、MAツールを導入して、自分たちの領域だけでマーケティングを行うことになるのだ。

そうした状況は、Webサイト担当チームには「マーケティング部門が勝手なことをしている」ように見えるだろう。しかし実際には「マーケティングを理解できないWebサイト担当チームを、マーケティング部門が見捨てた」という状況だと考えるほうが納得いくのではないだろうか。

PC中心の時代も、Webサイトは有効なマーケティングツールであったと確信している。ではなぜ筆者はこのタイミングで「CMSはマーケティング施策のための基盤」だと強く伝えているのか。

その大きな理由は、スマートフォンにある。スマートフォンのおかげで、インターネットにアクセスできる人は飛躍的に増えた。

ここでポイントになるのは、これまでは家庭や職場にある共有または複数のPCでアクセスしていた人たちが、個人のアクセス端末を手に入れたことだ。これを企業側からみると、「Webサイトを訪れているブラウザ=個人」となったということだ。

スマートフォン中心の時代への変化は、すべての企業にとって、今まさにWebサイトが、個々の顧客に対応できる一番有効なマーケティングツールになった瞬間であるといえる。

だから、今まさにマーケティングを考えなければならないタイミングなのだ。

マーケティングだけの話ではない。

この連載では繰り返し、「お客さまのニーズに最適化できていなければ、Webサイトは機能しない」と伝えてきた。

PCであれば、お客さまに選んでもらう(「お客さまに選ばせる」のは理想的とはいえない)ことで、これを実現できるかもしれない。

しかしスマートフォンはどうだろう。

確かに、縦スクロールの許容範囲は、どんどん拡大している。無限スクロールも、問題なく受け入れられている。

しかし、お客さまが自分の問題を解決するために、どの程度の縦スクロールが許容されるのかは、考えなければならない。

つまり、マーケティングなどに興味がなくても、スマートフォンファーストに対応する気があるのなら、お客さまごとの出し分けは必須になるのだ。

もしかしたら、こんな風に思っている人もいるかもしれない。

自分はWebサイトの担当者だから、マーケティングなんて関係ない

もしあなたがそう思っていたのならば、認識を改めてほしい。これからのWebサイトは、お客さまへのニーズ最適化が必要になるし、そうすることでマーケティングの基盤として大きな価値を生み出せるのだから。

それは、すぐそこまで迫っている直近の未来なのだ。

自社Webサイトのマーケティング準備度合いを確認

Webサイトにおけるマーケティングは、非常に実践的なものだ。

マーケティングデータをとり、それを分析して、施策を実施するというようなこれまでのフローではなく、お客さまとの接点すべてで、お客さまへのニーズ最適化を施策していく。しかもオートマチックに

そうしたことは、数年前なら夢物語だった。しかし、ツールの進化は激しい。各社のツールがそれをなし得るレベルになっているかどうかは、皆さんの判断にゆだねたい。

※宣伝になってしまうが、まさにCMSがどのようにマーケティングに向かっているのかを確認できるセミナーイベントを2018年6月22日に御茶ノ水で開催する。キノトロープが毎年行っている「CMSカンファレンス」の6回目なのだが、今回はマーケティング基盤としてCMSを活用できる4製品について、各社の考え方を聞ける場だ。活用してほしい →セミナー情報は記事末尾に記載

しかし、「よし、ウチのWebサイトでも、それを実現しよう」と皆さんが思わない限り、いつまでもそれはなし得られないだろう。

私たちは、これをなし得るための実践をすでに始めている。

そのためには、まず自社の状況がどのステージにあるのかを理解してほしい。

以下の診断リストで、Webサイトでマーケティング自動化をなし得るための必要な準備がわかる。

Webサイトのマーケティング準備診断リスト

1. Webサイトのコンテンツは、一元管理されているか?

  1. 商品やサービスがデータベース(実際はデータベース化されていなくてもよいが、形式として)で管理されているか?
  2. 商品名、概要というように、別の場所に出しても成り立つような一元管理ができているか?
  3. 見出し、キャプション、本文など、文章構造が一定に管理されているか?

上記ができていなければ、そもそもCMSが機能しているとはいえない。

まずはマーケティングオートメーションをなし得るためのCMS基盤の再構築の検討が必要だ。

2. お客さまのニーズを把握できているか?

  1. 各コンテンツが、どんなニーズに対する問題解決のために存在するか理解しているか?
  2. 各コンテンツが、ニーズに対して、どんな順番で表示されるのが好ましいか理解しているか?

上記ができていなければ、Webサイトで解決すべきお客さまのニーズを明確にしてほしい。

このステージは、そもそもWebサイトが何であるのか、何をなし得なければならないのかを再度検討するステージになる。

できれば、「ユーザー体験シナリオ」などの手法を利用して、再度お客さまのニーズを再確認してみてほしい。

3. お客さまのニーズに対応できるコンテンツ(情報や説明)はあるか?

  1. 各ニーズに対応できる最低限度のコンテンツがあるか?
  2. 各ニーズに対応する複数のコンテンツがあるか?

上記ができていなければ、ニーズごとのコンテンツ、お客さまのリテラシーやステージに応じたコンテンツ、とにかく、コンテンツを拡張してほしい。

このステージの皆さんは、CMS基盤があるはずだ。

マーケティングオートメーションは無理でも、多くのコンテンツを用意できれば、十分にお客さまへのニーズ最適化はできるはずだ。

ここまでくれば、十分な準備はできたといえる。

自分たちが、どのステージにいるのか把握できると、次はいきなりすべてをなし得たいと望むかもしれない。しかし、繰り返すが、Webサイトにおけるマーケティングオートメーションは、MAツールのなし得るマーケティングオートメーションとは別次元のものだ。

多くのお客さまのニーズに最適化していかなければならない。

そもそも、そんなに出し分けるほど、コンテンツあるだろうか?

Webサイトにおけるマーケティングオートメーションは、コンテンツマーケティングと呼び変えることもできる。それほどコンテンツが重要なのだ。

コンテンツがなければ、お客さまのニーズに最適化できない。

だから何が最適なのかわからないままツールを導入してしまうと、単なる動線履歴というデータを残すだけのデータ収集の施策になるのだ。

それはマーケティングではない。

本日のまとめ

Webサイトはそれ自体が有効なマーケティングツール。お客さまのニーズが詰まった宝箱。

お客さまのニーズを教えてもらいながら、リアルタイムでそれに最適化していく。

それがWebサイトにおけるマーケティングオートメーション。

すべては、お客さまの問題解決のために!

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