Webデザイン、これからどうなるの?(全10回)

Apple、Google、Microsoft、Adobeが共同開発したバリアブルフォントって何?

ひとつのフォントファイルで複数フォントが利用できるバリアブルフォント。まだ一部のフォントでしか利用できないが、一般化していく可能性があるのでチェック(第8回)。
Webデザイン、これからどうなるの? キーワードから探るデザイン動向の現在と未来

この記事は、書籍『Webデザイン、これからどうなるの? キーワードから探るデザイン動向の現在と未来』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開しているものです。

Chapter 4タイポグラフィNo. 30バリアブルフォントバリアブルフォント

3行で理解!

ひとつのフォントファイルで複数フォント利用できる
新しい技術で、まだ完全には利用できない
レスポンシブデザインに合わせてフォントを調整できる

Apple、Google、Microsoft、Adobeが共同開発し、2016年9月に正式発表された新しいフォントの概念であるバリアブルフォント。まだ一部のフォントでしか利用できないが、これから一般化していく可能性があるのでチェックしておきたい。

可変フォントの標準化されたデザインスペース。
https://medium.com/@tiro/https-medium-com-tiro-introducing-opentype-variable-fonts-12ba6cd2369

バリアブルフォントとは?

バリアブルフォントとは、「ひとつのフォントファイルでありながら複数のフォントのように利用できる」フォントであると、アドビのタイプデザイナーであるジョン・ハドソン氏が定義しています。

ご存知のように、フォントは元々ウェイトや幅などによって別々のフォントファイルが存在していて、イラストレーターやフォトショップ等のデザインソフトウェアで利用する場合も、それぞれのPCにフォントファイルをインストールして利用していました。

前節でも述べたように、同じフォントでも複数のウェイトを使いたい場合は、それぞれ別々のファイルを用意して読み込ませる必要がありました。

つまり、使いたいフォントが多ければ多いほど、フォントファイルをページに読み込む時間がかかってしまうということです。バリアブルフォントは、ひとつのフォントファイルの中にフォントを可変させる情報を持たせることで、この問題を解決しました。

バリアブルフォントでできること

Webフォントを利用できるようになり、タイポグラフィをしっかり設計するようになってくると、次のようなことを思ったことはないでしょうか?

  • 「このフォント、ウェイトのバリエーション少ないな…」
  • 「Webフォント3つ使いたいけど、ページの負荷大丈夫かな…」
  • 「ブラウザーによっても、スマホによっても見た目がちょっと違うな…」

バリアブルフォントは、こうしたWebフォントにおける悩みを解決する可能性を持っています。現在のフォント制作の概念は、ひとつのフォントを作っても、その他のウェイトを制作するためには、すべてデザインし直して、ひとつひとつまたフォントを作らなければなりません。

そのため、ウェイトが少なければその中から利用するしか方法はなく、たとえ利用したいフォントがあってもウェイト選択の幅がなくて諦めたことはないでしょうか。バリアブルフォントは、ひとつのフォントファイルの中にフォントの太さや幅、傾斜などの可変情報を持たせておくことで、デザインに合わせて自由に調節することができます。つまり、フォント制作自体の概念を変化させる可能性を持っています図1

図1ウェイト、幅が自由に変更できる。
https://www.microsoft.com/typography/otspec/fvar.htm#VAT

すべてのフォントがバリアブルフォントベースになると、Web上で読み込む必要があるフォントファイルはフォント1種類につきひとつで済むことになり、読み込みの負荷を考える必要がなくなります。前節で紹介した「Denso Brand Site」は、カスタムフォントとして以下の各ウェイトのフォントファイルを使用していました。

  • Denso TP 2017 - Light
  • Denso TP 2017 - Regular
  • Denso TP 2017 - Bold

これがバリアブルフォントになると「Denso TP 2017」だけを読み込み、デザインに合わせてウェイトを細かく調整することができるようになります。

こういった調整ができるようになると、Webデザインでは一般的になっているレスポンシブデザインにおけるフォントの使い方にも変化が起きます。レスポンシブデザインは、さまざまなスクリーンサイズに合わせてデザインを変化させるデザイン手法です。

しかし現在、レイアウトやフォントサイズを変更することはできますが、ウェイトは別ファイルを使用しなければ変更することができません。

また、PCやデバイスに搭載されているさまざまなブラウザーによっても、太さがまったく違い、完全に統一することは難しい状況です。こうした中、バリアブルフォントによる自由なウェイトコントロールは、こういった問題を解決する手段になるかも知れません図2

図2_1
図2_2
図2_3
図2_4
図2_5エリック・ヴァン・ブロックランド氏によるレスポンシブレタリング例。ウェイトが可変する様子がイメージできる。
http://letterror.com/dev/mathshapes/page_25_Peace.html

サポート状況

バリアブルフォントを実用化していくには、レンダリングエンジンや各ブラウザー、そしてデザインするためのソフトウェアの対応が必要です。

2017年11月現在、ブラウザーで対応しているのはSafari 11のみで、Chromeはβテスト中であり、Firefoxは別途設定することで利用することができます。

Microsoft Edgeに関しては情報が見つかりませんでしたが、Windows 10 Preview版からDirectwWriteで動作するバリアブルフォント「Bahnschrift」が、macOS最新版でも「Skia」というバリアブルフォントがインストールされています。

デザインソフトウェアでも、Adobe CC 2018からPhotoshopとIllustratorともにバリアブルフォントに対応し、Typekitからもテスト版のバリアブルフォントが利用できるようになっており、着々と標準化への準備が行われています図3

図3_1
図3_2AdobeCC2018でテスト版として表示が確認できるフォント。ソフトウェアのUIもバリアブルフォントに合わせて設計されている。
https://blog.typekit.com/2017/10/19/new-variable-fonts-from-adobe-originals/
  • 著者:森本友理、鈴木慶太朗、福岡 陽、三宅太門 共著
  • 価格:2,000円+税
  • ISBN:978-4-8443-6730-7
  • 発行:エムディエヌコーポレーション

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