インタビュー

DMPを導入する一番のメリットって何ですか?――プライベートDMPシェアNo.1のRtoasterを提供しているブレインパッドで聞いてきた

このたびメジャーバージョンアップをおこなったRtoasterの担当者の方に、バージョンアップの狙いや、目玉機能、DMP導入のメリットなどを聞いてきた。
株式会社ブレインパッドの上川晃二朗氏と柴田剛氏

プライベートDMPで3年連続シェアNo.1(※)の「Rtoaster(アールトースター)」が、2018年2月、メジャーバージョンアップをおこなった。

「ユーザー分析機能」「キャンペーン機能」「自動チューニング機能」を拡充したほか、管理画面を全面リニューアル。マーケティング担当者にとって、これまで以上にマーケティング施策の立案・実施が容易になったという。

すでに多くの企業で導入され、大きな支持を得ているRtoasterだが、今回のバージョンアップの狙いは何なのだろうか? さらに、Rtoasterが3年連続シェア1位の理由や、DMPを導入する一番のメリットについて、株式会社ブレインパッドの上川晃二朗氏と柴田剛氏に、詳しく話を聞いてきた。

※DMP市場:ベンダー別売上金額シェア【2014年、2015年、2016年度実績】 出典:ITR「ITR Market View:メール/Webマーケティング市場2018」「ITR Market View:マーケティング管理市場2017」

そもそもDMPとは何をするためのツールなのか?

――今回のメジャーバージョンアップの詳細を伺う前に、そもそもなんですが、DMPとは何をするツールなんでしょうか。

柴田: 一言で言うと、データを統合的に管理して、マーケティング活動に活かすための仕組みを言います。

主にB2C企業において、Webサイト、リアル店舗など、さまざまな接点でユーザーと交わる機会があると思いますが、それらから得られるデータを1つに統合して、ユーザーとのコミュニケーションを「しっかりかつスムーズにしましょう」という目的で使われることが多いです。

――Web接客ツールみたいな感じでしょうか。

上川: Web接客ツールはあくまでポップアップで接客をする点に特化したツールが多いですが、DMPの場合、もちろん接客もやりますが、集客もするし、追客もできます、という部分が違いでしょうか。

ただ、ユーザーデータを統合する際に、マーケティングやプロモーションの観点から突き進めていくと、1to1に近づいていくと思うんです。そういう意味では、Web接客とは概念的に近いとは言えますね。

株式会社ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部 プロダクトデザイン部 部長 Rtoasterプロダクトオーナー 上川晃二朗氏、 マーケティングプラットフォーム本部 営業部長 兼 サービス推進部 部長 柴田剛氏

――DMPってさまざまなことができますが、どこまでがDMPの領域となるんでしょうか。

柴田: データを収集する、蓄積する、整理・分析する、セグメント化する、それをもとにアクションする、これらすべてが定義上DMPなのですが、Rtoasterに関して言えば、特に強い領域はアクションとなります。

――DMPって、どんなタイプが一般的なんですか。

柴田: 大きく2つ。1つはレイク型のDMP、溜める系ですね。もう1つが、アクション型のDMP。Rtoasterはアクション型です。

レイク型は、用途に関係なくとにかくデータを溜めるというのがメインです。アクション型は、アクションするためのリアルタイム性が大事なので、アクションに使うデータをメインで入れる点が一番の違いです。

上川: その前段階に、パブリックDMP(おもに第三者が提供するデータを利用するDMP)かプライベートDMP(おもに自社データを利用するDMP)かという分類がありますが、レイク型、アクション型を内包するのはプライベートDMPです。

導入を検討いただいた多くの企業を見て感じるのは、プライベートDMPを導入するとしたときに、その中でも2種類ある……。どちらを導入すべきかとなったとき、社内全体のコンセンサスをきっちり取る必要がある企業の場合は、最初に導入するのはレイク型のほうが良いかもしれません。

逆に、クイックにアクションのサイクルを回して、コミュニケーションを最適化することができる企業は、アクション型を選ぶことが多い印象です。またWebでのアクションはワンオブゼムで、広告やメルマガなどのアクションに注力している企業も、アクション型を選ぶことが多い印象があります。もちろん、両方を組み合わせて活用される企業もありますね。

――言い換えると、アクション型DMPは、サイクル短くPDCAをドンドン回していけるということですか?

上川: そうですね。

Rtoasterが3年連続シェア1位の理由とは?

――Rtoasterは3年連続(2014年~2016年)でDMP市場シェア1位ですが、他のDMPツールと比較して、どういう点がお客様から支持されているんでしょうか?

柴田: 企業のビジネス目的達成のために、さまざまな顧客接点におけるマーケティング成果を最大化するパーソナライズアクション(施策)が実施可能であることと、効果が出やすいことが支持されている理由だと考えています。

――レコメンドエンジン搭載プライベートDMPとしてリリースしたのは2006年ですよね

上川: はい。もともとはレコメンドエンジンとして提供していました。

提供開始来から、自社のデータこそが一番重要で、そもそもデータを溜めるのは顧客にマッチしたレコメンドをするため、顧客を捉えてパーソナライズ化されたアクションをするためである、という思想でした。

DMPが流行りだした当初は、DMPと言えば第三者データを使ったパブリックDMPを指すことが多かったですよね。その中で我々はプライベートDMPとして提供をはじめました。

当初の思想のまま、プライベートDMPとしての機能追加を重ねれば、お客様にさらに価値を提供できる、という自信がありました。

――Rtoasterの得意分野を教えてください。

上川: 当社のデータサイエンティストがよく言う、データ活用・分析における「分類」、「マッチング」、「予測」、「最適化」の4分類でお答えすると、Rtoasterの得意分野は「分類」というセグメンテーションと、「マッチング」というユーザー1人ひとりにパーソナライズ化した最適なアクションがマルチチャネルで行えることですね。

――「分類」とは、行動パターンでユーザーを分けるというセグメンテーションという理解でいいでしょうか?

柴田: はい。その他に、CRMデータや店舗購買データ、パブリックDMPのデータなどを掛け合わせてより正確にセグメンテーションします。

――一般的にはセグメントの数はどのくらいでしょうか?

柴田: 50までぐらいな気がしますね。

上川: セグメントと言う言葉でいつも引っかかりを感じていたのは、セグメントとは、「その人」を表すのか、「その人が行動してきたコンテキスト」を表すのか、をまぜこぜにして呼ぶことが多いということです。

その人が持っているデモグラフィック属性なのか、行動によるものなのか、あるいはこのページに来たという部分だけを区切っているのか、それらをすべてセグメントとしてしまいがちですが、本来はもっとシンプルに「人」を捉えたうえで、運用しながら少しずつ分けていくべきだと思います。

――最初はある程度大きなくくりでセグメントしたほうが、結果的にアクションするのにも効率がよいということでしょうか。

上川: そう思います。仮説を持ちつつ、その結果を次のステップに活かすことを繰り返しながら、段階を踏んで実行していくほうがいい。そのためには「分類」の軸は、まずはシンプルであったほうがいいと思っています。

メジャーバージョンアップの目的は「枠から人へ」

――ここからがようやく本稿の本題になっていくと思うのですが、今回メジャーバージョンアップには、セグメントの捉え方への提案が大きな背景としてあるんですよね。

上川: はい。今回のメジャーバージョンアップでは、思想というか、ご使用いただく方の考え方を変えるものになればいいなという気持ちが大きくあります。

先ほど50セグメントと言いましたが、これらのセグメントを何に紐付けているのかというと、その企業のサイト、かつ枠(バナー)には「こういう人たち」がいるはずだよねと、分類していることが多いんですよね。実際に「こういう人たち」がいるわけではない。

そこでちゃんとそのサイトに来る「人」を捉えたうえで、「目的」に対して「枠」を最適化していった結果、全体最適に至るという発想に変えてほしい、と考えて機能を追加しています。

DSPでよく言う「枠から人へ」という決まり文句がありますが、これをオウンドメディアでもやりましょうという発想が、今回のメジャーバージョンアップの背景にあります。

――Rtoasterではどのような機能でそれらを実現しているのでしょうか。

上川: Rtoasterの機能は、大きく2つに分かれます。

1つは1to1で、レコメンデーションする対象が、記事や商品である場合、最先端のアルゴリズムで自動的に最適化してくれます。もう1つは、マーケターのイメージ通りに戦略的に実行するアクション。たとえば、クーポンとか、キャンペーン的な訴求とか、興味のあるカテゴリへの誘導、などですね。

――今回のメジャーバージョンアップのポイントはどのような点でしょうか?

上川: 先ほど言った2つの機能のうち、自動的なマッチングは、サイクルが早いんです。ぐるぐるとPDCAを高速で回してくれますが、効果はなだらかに上がっていくというイメージです。

けれども、マーケターが本来やるべきことって、売上の大きな波を作ることですよね。自動でセグメンテーションしたとしても、それをもとに波を起こすのはマーケターの判断ひとつになる。つまり、マーケターが大きな波を作れることの方が重要です。

なので、最初のステップとして、もっとユーザーのことを理解するために、新たに「ユーザー分析機能」を提供しました。これが、今回のメジャーバージョンアップの目玉機能でもあるのです。

――Rtoasterを使って、もっとマーケターがより顧客を理解しやすく、施策を考え実行しやすく、効果を把握して、次に活かしやすく、したのが今回のバージョンアップなんですね。

「見る」「理解する」側面をさらに強化するために、ユーザー分析機能のUIをリニューアル

――メジャーバージョンアップ後のRtoaterは、自動でユーザーをセグメントしてくれるのでしょうか?

上川: 新機能と言うわけではないのですが、UIの向上も今回のメジャーバージョンアップの重要なポイントの1つです。以前から提供していた自動セグメント分析のグラフはシンプルに、「PV」と「直近の訪問」でユーザーを分類しています(下の図1)。基本的にはマーケターは、斜め上方向(PVは多く、かつ、直近訪問日数は少なく)にユーザーを動かしていかないといけないよね、という意味でのセグメンテーションと、ユーザーはどのカテゴリを見ているのかというのを自動でクラスタリングします。

図1:自動セグメント分析<PV・訪問間隔>

上川: 図2は当社のコーポレートサイトの分類なのですが、一番アクセスが多いのは、IR(/ir)や企業情報(/company)のカテゴリだとわかります。次が、採用(/entry)。最後が、ソリューション(/products)、事例(/case)、ニュース(/news)。ここからわかるのは、コーポレートサイトの主要アクセス層は投資家で、次が就職・転職活動をされている方、3番目にユーザーなので、ここで製品を訴求しても効果が薄いということがわかります(笑)。

このように、アクセス層の分類ができる機能自体はもともと提供していましたが、「見る」「理解する」側面をさらに強化するために、UIをリニューアルしています。

図2:自動セグメント分析<関連カテゴリ>

すぐに施策が実行できる「キャンペーン機能」

上川: 「ユーザー分析機能」と並ぶ、今回の新機能の1つが「キャンペーン機能」です。「セグメント分析・作成」画面から作成したセグメントに対して、すぐに施策実行できるのが特徴です。

この画面(図3)もUIを強化していて、見た目はアクセス解析に近いですが、アクセス解析はページ単位でページを軸にして集計するのに対し、Rtoasterはユーザーを軸にして集計しています。デバイスやURLも、UUを表示しています。

図3:セグメント分析・作成。ユーザーを軸に集計している

上川: また、CRMデータを投入すると、ユーザー数を表示する機能を搭載しているので、さらに深くユーザーを理解できると思います。ページの特徴を抽出して、どのようなトピックに興味がありそうかといった傾向も、ユーザー単位で紐付けて確認することができます。

全体感をつかんだうえでユーザーを分類する、もしくはある特定の特徴を持つユーザーを捉えたい、という仮説が出てきたら、そのユーザーはどういうデバイスで見ているのか、どのURLを見たのか、どのパラメータで来ているのか、属性、キーワードなどがこの画面(図4、図5)からわかるので、これでユーザーを分類することができます。

テストとしてWeb担からの流入セグメントを作ってみましたが(図4、図5のオレンジのマークの「Test」)、ページの閲覧傾向とどう違うのか、デバイスも全体ではPCからが多いけど、このセグメントではスマホが多いなど、全体の傾向と比較することができます。

図4:セグメント分析・作成画面<デバイス、URL、属性>
図5:セグメント分析・作成画面<キーワード>

上川: Rtoasterの製品紹介ページにポップアップを出していますが(図6)、このように強力にパーソナライズしたポップアップやバナーを出すこともできます。

図6:強力にパーソナライズしたポップアップやバナーを出すこともできる

上川: このように、セグメンテーションから、資料請求や商品購入を目的としたキャンペーンまでを一連で行えるのが「キャンペーン機能」の特色です。もちろん、広告にも、メールにも連携できます。

――データを活用して、アクションを常に意識したWeb接客に加えて、広告等での集客からメールでの追客を自動的・戦略的に実行できるのが、Rtoasterならではの特徴ということでしょうか。

上川: そうですね。これまではWebサイト上にどんなユーザーがどの程度いるかわかったとしても、すぐにアクションに展開することができなかった。アクションする前提でいざ見てみると、実際には(企業が求めているような)人はいないことがわかることもあります。人がいないなら連れてこなければならないし、Webでの接客を充実させる前に集客施策をする必要があります。データを読むとき重要なことは、アクションを意識し、現状を把握したうえで、最適なチャネル選択による施策実行をする、ということです。

プロセスをちゃんと設計したうえで、それを施策にどう活かして、どう管理すべきか、という部分を見えやすくしたところが、今回のメジャーバージョンアップの一番のポイントだと思います。

DMPを導入する一番のメリットとは?

――DMPを導入するメリットは何でしょうか?

上川: 特にデータを活用したデジタルマーケティング活動が重要となっている中で、今後それらの活動を促進する上でDMPの導入は大変価値のあるものだと考えます。ただ導入したら何かこれまでの問題が自動的に解決されるというものでは決してありません。最終的にはマーケターが主導していかなければならない。だからこそ、今回のメジャーアップデートでは特に、ツールの設定や効果測定のためのデータ集計などの作業に忙殺されることなく、マーケティング活動を「考える」という本来の業務に時間を費やせることを意識しました。

――でもDMPの導入や運用は企業にとってハードルが高いですよね?

柴田: いえいえ、仕様にもよりますが最短で1週間程度で導入したケースもありますし、導入のためのコンサルタントもいるのでぜひご相談いただきたいです。そして導入後も企業様と伴走しながら運用のサポートも行っております。

DMPを使いこなすには、仮説→実証の繰り返しが大事ですが、お客様だけで仮説を立てるのはなかなか難しいケースが多いので、最近では一緒に仮説を立てるところから始めることも多くあります。

上川: DMPを入れてどんなメリットがあったかを読み解いていくと、DMPの導入をきっかけに、もっと大元のところをちゃんと考え直すことができましたというケースが多々あります。ちゃんとユーザーを、お客様を見なきゃいけないということを通じて、データを統合するのと一緒で、組織もプロジェクトとしてまとまって行くといったケースもあります。そんな事例に出会えると、とても嬉しいですね。アクション型DMPの豊富な活用事例は、Rtoasterでご確認ください。

――ありがとうございました。

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