広告主なら知っておきたい「プログラマティック広告」の基礎知識

【保存版】広告主なら知っておきたい「プログラマティック広告」の基礎知識 ~ インターネット広告の歴史【前編】

プログラマティック広告はなぜ生まれ、なぜこんなに複雑なのか? 本質的に理解するため、前編では現在までのインターネット広告の歴史を振り返り説明する。
著:三谷壮平(電通デジタル) 編:Web担当者Forum編集部 2018/4/16(月) 7:00 |

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本稿では、前後編の2回に分けて「プログラマティック広告とは何か」について説明する。

先に意味だけ紹介すれば、プログラマティック広告とは「インターネット広告における、広告枠の自動買い付けのためのプロセスの総称」である。

ただし、これだけで説明を終えてしまうのはさすがに乱暴だろう。インターネット広告は技術の進歩が早く、言葉の定義も明確でない場合も多いため、ひとことで説明するとかえって正しい理解から遠ざかってしまう。特に初学者に対して表面的な結論だけを伝えることは、むしろ混乱を招く恐れがある。

経緯を知ることが本質的な理解への近道

そこで本質的な理解ができるよう、前編ではインターネット広告の黎明期からプログラマティック広告の登場に至るまでの経緯をていねいに振り返る。その目的は、「なぜ今プログラマティック広告が注目されており、簡単に説明できないほど複雑な構造となっているのか」を解きほぐしていくことだ。

そして、次回の後編では、プログラマティック広告が抱える課題とこれからの広告について触れる。

なお、「プログラマティック・バイイング(自動買い付け)」という言い方もあるが、本稿では「プログラマティック広告」と表記する。

インターネット広告の歴史
  • 1996年ごろ: 予約型広告(バナー)としてスタート
  • 1999年ごろ: 成果報酬型広告(アフィリエイト)の登場
  • 2002年ごろ: 検索連動型広告(アドワーズ)の登場
  • 2008年ごろ: アドネットワークの登場
  • 2010年ごろ: プログラマティック広告の登場
  • 2013年ごろ: ターゲティング対象が「枠」から「人」へ

初期のインターネット広告は「予約型広告」だった

いわゆる「4マス(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)」といわれるトラディショナルメディアの特徴は「一方向、一対多」である。メディアから視聴者へと情報が一方向に流れ、1つのメディアが発信した情報が多くの人に見られる形だ。そして、必然的に、それらのメディア(媒体)に掲載される広告も同じ「一方向、一対多」の特徴を持つ。

新聞広告なら、同じ日の同じ新聞には、誰が読んでも「同じ紙面」に「同じ広告」が掲載されている。テレビCMなら、同じ時間の同じ局であれば、誰が見ても「同じ番組」に「同じCM」が流れている。1人ひとりに違う広告が表示されることはない、とてもシンプルな掲載の仕組みである。

インターネット広告も、当初はこうした従来のメディア広告の様式を踏襲する形でスタートした。1996年ごろのことだ。

Webサイトの広告枠(広告表示エリア)への広告掲載権を事前に販売し、「購入した広告主のバナー広告が、契約期間中ずっと掲載される」という取引形態である。この仕組みを「予約型広告」という。取引形態としては基本は「手売り」で、売り手と買い手が契約を交わす相対取引であった。

図1:予約型広告の仕組み。ユーザーが誰かにかかわらず、決まった場所に決まった期間広告が表示される広告(広告代理店やメディアレップは省略している)
図1:予約型広告の仕組み。ユーザーが誰かにかかわらず、決まった場所に決まった期間広告が表示される広告(広告代理店やメディアレップは省略している)

ユーザーのアクションで広告費が決まる「成果報酬型広告」の登場

ところが、インターネットはトラディショナルメディアと異なり「双方向、一対一」という特徴を持つ。

それゆえにインターネット広告では、一方的に広告を流すのではなく、ユーザー側からフィードバックを得るといったやりとりが可能だ。不特定多数に一律に広告を流すのではなく、ユーザーごとに異なる広告を流すことも可能である。

さらに、この「双方向」という特徴は、「広告効果が明確にわかる」という利点もあった。

ここから発展して、掲載に対して広告費を支払うのではなく、成果につながった分だけ広告費を支払う「成果報酬型広告(アフィリエイト広告)」という取引形態が登場した。1999年ごろのことだ。

図2:成果報酬型広告の仕組み。ユーザーが広告を通じて購入したぶんに応じて広告費が発生する
図2:成果報酬型広告の仕組み。ユーザーが広告を通じて購入したぶんに応じて広告費が発生する

成果報酬型広告は大手メディアでは広まらなかった

しかし、成果報酬型広告は、インターネット広告の取引形態全体に波及するほどの影響力は持たなかった。その理由として次の2つが挙げられる。

  • 広告主の業種が、Eコマースや消費者金融など一部に限られたこと
  • 媒体側である大手のインターネットメディアが、成果報酬型での広告取引を受け入れなかったこと

成果が発生した分だけ広告費が発生する成果報酬型広告は、広告主側から見れば「少ない予算で済む」というメリットがある。しかし、そのメリットは媒体側から見れば、デメリットだともとらえられる。事前に取り決めた金額が確実に売上として入る予約型広告のほうがリスクが小さいため、媒体側は予約型でも売れている広告枠を、あえて成果報酬型として開放する必要はなかったのである。

そのため、成果報酬型広告(アフィリエイト広告)を導入するのは、一部の中小メディアや個人運営のWebサイトに限られた。

オークションシステムで一気にインターネット広告の主流に踊り出た「検索連動型広告」

一方で、インターネットのもう1つの特徴である「一対一」にもとづいて登場した広告は、インターネット広告の取引形態を大きく変えていくことになる。それが、2002年ごろに登場した「検索連動型広告」だ。

検索連動型広告とは、検索エンジンにユーザーが打ち込んだ文言(検索クエリ)に対応した広告を検索結果画面に表示する広告形態だ。

ユーザーが興味を持って検索した瞬間を狙って広告訴求できるため、不特定多数に向けた予約型広告に比べて、広告効果の効率が非常によい。そのため、広告主は積極的に利用するようになり、かつ広告を掲載する媒体である検索エンジン側も、予約型広告より検索連動型広告を推進した。その取引をスムーズに行うために導入されたのがオークション(入札)の仕組みだ。その結果、検索連動型広告は瞬く間にインターネット広告の主流に躍り出た。

インターネット広告における「オークション」とは、その広告表示に対して最も高い出稿額を提示した広告主の広告から順に表示していく仕組みだ。具体的には、ユーザーの検索文言に対して、購入を希望する広告主がそれぞれ「自社の許容できる獲得効率から逆算していくらまで出せるか」をオークション形式で事前に申告しておき、入札額の高かった広告主が掲載権利を獲得する、という流れだ(実際には現在の入札システムは、広告の品質や関連性といった金額以外の要素も入り、より複雑なものだが、ここでは割愛する)。

ディスプレイ広告にもオークション取引が波及

検索連動型広告の普及によって一般化した「オークションによって価格をリアルタイムに決定していく」取引形態は、ディスプレイ広告(バナー広告)にも波及していく。検索連動型広告に1年遅れ、2003年ごろに「Google AdSense」というあらゆる規模のサイト運営者が導入できる広告主ネットワークの仕組みが生まれたのが、この先駆けである。

黎明期のインターネット広告は、先述のとおり、大手のポータルサイトなどの一等地に、事前に決められたバナーが掲載されるという「予約型」で始まった。しかし、トラディショナルメディアに比べ、インターネットメディアは参入障壁が低い。印刷や放送といった大規模な設備が必要ないからだ。

そのため、インターネットにはメディアが大量に生まれ、それに伴い広告を掲載する枠も大量に生まれた。下図にあるように大手とされるメディアだけでも大量だが、日本で2000年ごろから増加した個人のブログなども含めれば、広告枠は無数にあるといっても過言ではないだろう。

図3:大手メディアの一例
図3:大手メディアの一例

広告主と媒体の間で交通整理をする「アドネットワーク」の登場

その大量の広告枠を、人力で1つひとつ売っていくのは現実的ではない。そのために2008年ごろ生まれたのが、「アドネットワーク」という仕組みである。

アドネットワークは、「主体となる事業者が、登録済みの各社メディア(媒体)を横断して広告枠を買い付け、仕入れた広告枠を、各広告主にバラ売りしていく仕組み」をいう。アドネットワーク事業者が無数の広告枠を一括(バルク)で仕入れることで取引コストを下げて、広告主の購入の手間を削減する、というところが本質的な提供価値だ。

ただし、実質的な買い方で見ると予約型広告と変わらない。事前に取り決めた固定の単価で、事前に取り決めた量を買い付ける部分は同じで、「掲載先の媒体が1つに限らない」ところだけが、予約型広告との違いである。

図4:アドネットワーク
図4:アドネットワーク

アドネットワークの登場は、「複数の媒体と個別交渉しなければならない」という広告主の手間は解決したものの、媒体側から見ると「結局売れるのは大手メディアやプレミアム広告枠だけ」という状況は変わっていない。あまりアクセスが多くないページや目立たない場所など、媒体側が売りたい広告枠はほかにもたくさんあるが、売る術がなかったのだ。

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