Web広告研究会セミナーレポート

広告主・プラットフォームが語るジオデータ活用、位置情報の精度は「濃度」に変わっていくべき

ジオマーケティング実施のポイントを広告主とプラットフォーム、双方の視点から議論
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

位置情報のマーケティング活用と一言でといっても、GPS、Wi-Fi、基地局などいくつかの取得方法があり、情報の中身や精度が異なる。ジオマーケティングを実施するなら、それぞれの特性を理解する必要がある。

8月月例セミナーの第2部では、Twitter Japan、サイバーエージェント、日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)、Supershipの4者が登壇。広告主とプラットフォームの立場から、位置情報活用の課題や注意点、今後の展望について語った。

GPSデータの課題は精度

モデレーター
Supership株式会社
小林 秀次 氏
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
塩谷 旬 氏

最初に小林氏は、「位置情報にはGPSやWi-Fiなどのさまざまなデータがある。どのような特徴、用途、課題があるのか」というテーマでパネルディスカッションを始める。

2015年3月に自社アプリでGPSによる位置情報を活用しようとした。KFCの店舗に近づいたら情報をだすものだが、バックグラウンドで常に動かしていたため非常に重くなってしまった。そこから、広告での活用をトライするなかで、サービスの特徴を比較した(塩谷氏)

塩谷氏はこのように話し、独自に調査したジオターゲティングサービスの比較表を示す。

KFCで導入検討した3サービスの比較表

これまでトライアルとして、ソフトバンク契約者のLTEとWi-Fi基地局データをもとにジオターゲティングできる「cinarra」、独自ジオフェンス技術によって建物の形状もわかる「xAd」などを利用してきた塩谷氏は、今後はGPSとWi-Fiを使った「AIR TRACK」を試してみたいと話す。

株式会社サイバーエージェント
AIR TRTACK事業
湊 和修 氏

AIR TRACKの事業責任者である湊氏は、「基本的に位置情報にはGPSとWi-Fiがあり、Beaconを使うこともある」と説明する。GPSの精度問題は、8月に打ち上げられた衛星みちびきによって今後の向上が見込めるが、それでも生じてしまうズレをどうとらえるかがポイントだと話す。

また、東京中のWi-Fiデータを収集して回ったところ、Wi-Fiにも位置情報のズレがあり、どのように補足していくかが課題だという。そのため、AIR TRACKの位置情報のズレを加味して来店者数を出している。

位置情報データの量と精度のバランス

小林氏は、「位置情報の精度を上げると、ピンポイントになり過ぎて必要なデータ量が集まらない」と話し、パネリストたちがどのように使っているのかを問う。

湊氏は、「位置情報の精度問題は、濃度の問題に変わっていくべきだ」と話す。濃度が高ければ位置ズレの問題は補正できるというのだ。また、SSPから位置情報を入手すれば量は増やせるが、不正確なデータも多いことから、しっかりと行動履歴の取れるユーザーを増やすことが重要だという。来店計測や行動把握を正確にするには、1人あたり1日に60回以上の位置情報が必要だと感じていると湊氏は説明する。

塩谷氏は、以前に実施したアプリのジオターゲティングでは、正確な情報を得ようと、常にバックグラウンドで位置情報を計測して来店時にクーポンを出すようにしたが、KFCの一般的なユーザーには“心地よい”コミュニケーションではなかったと実感した。プロダクト視点になっていたと失敗談を話す。

また、広告で位置情報を活用しようとしたときには、正確さを求めれば求めるほどデータ量が少なくなり、単価も上がってしまうので、量と精度の問題は今後解決していかなければならない課題だと説明する。

Twitter Japan株式会社
長谷川 弥 氏

長谷川氏は量について、少なくとも10万件以上のデータがないと使えないと話す。

プラットフォーム側としては、量を増やそうと思えば精度が低くなるため代理店や広告主を満足させられず、量がなければ提案から外されてしまうこともある。幅広くリーチを取ることと、精度を高めることの両方を併用しながら全体最適を求めるのが、今のところ一番いいのではないか(長谷川氏)

なお湊氏の説明によると、AIR TRACKは独自開発のSDKを用いることで、位置情報の高い精度とユーザーの電池消費という課題を解決しているという。

AIR TRACKが位置情報を取得する仕組み。アプリ起動のタイミングではなく、ユーザーの移動にあわせて情報を取得する

位置情報の「瞬間」と「履歴」の使い分け

次のテーマは「Moment(瞬間)やHistorical(履歴)といった位置情報の使い方」について。小林氏はどのような活用例があるのか質問する。

長谷川氏は、「Momentという意味では、Twitterは今どこにいて何をしているかを最も把握できるプラットフォーム」だと説明する。一方で、第1部のDeNAの事例のように、過去に球場を訪れたユーザーのHistoricalなデータを検索して、野球が好きなユーザーを絞り込んでゲームアプリと連携させることもできる。このように興味関心をつなげられる点がTwitterの特徴だ。

その他にも、音楽フェスの開催地域に限定してTwitter検索をすれば、音楽好きな属性の人をターゲットできる。さらにツイートの内容から、熱量の高い音楽ファンを見つけられると長谷川氏は説明する

塩谷氏は、位置情報を意識し始めたきっかけはMomentにあると話す。それまでも訪問履歴やアプリの起動、メルマガの開封などのデータは取れたが、Momentのデータを取れるのは位置情報だけだと考えたというのだ。しかし、「店の前に来たときにクーポンを出すのが本当に効果的なマーケティングなのか」という疑問を抱き、現在はHistoricalなデータの活用を考えているという。

湊氏は、Historicalなデータ活用事例として自動車販売の例を紹介する。車を買おうとする人が、「事前にどれくらいの期間検討するのか」「来店してから何週間以内に買うのか」といった購買に関わる情報は、ディーラーが経験値として持っている。そうした経験値とあわせて、検討期間中に来店している顧客にリーチしていく。

不動産や教育でも同様の事例があり、大学に入学した瞬間にリーチしたり、センター試験会場や予備校に行っている人にアプローチしたりできる。顧客となる人が行きそうなエリアを想定し、Historicalな位置情報を使うケースだ。湊氏は、プラットフォームとして、クライアントが気づかないような地点や場所を提案できることが理想だと話す。

位置情報はプラスアルファのデータの1つ

ジオマーケティングでも既存のマーケティング手法と同様、ユーザーを理解し、その動線とシナリオを設計することが重要だ。小林氏は、ジオマーケティングの顧客理解やシナリオ設計について、パネリストに問いかける。

塩谷氏は、位置情報だけですべてが解決できるわけではなく、これまでと同じように前提段階で顧客を理解し、ペルソナとシナリオを作ることは重要だと話す。従来のマーケティング設計のうえに、プラスアルファとして位置情報がある。

オンラインとオフラインをつなぐためにはどうするべきか。小林氏に問われた湊氏は、位置情報はまだOne of Them(データの1つ)でしかなく、オフラインのコンバージョン計測の議論が始まったばかりだと述べる。

今は、定期的な来店数を指標として提示できるようになった段階で、顧客理解に関しては、指標から逆引きして優良顧客が訪れている場所(店舗)が見せられるという。こうした行動は、オフラインのコンバージョン指標の1つとして使えるのではないかと湊氏は話す。

長谷川氏は、オンラインとオフラインをつなぐことにはビジネスチャンスがあると捉えていると話す。Twitterは人を動かすことができるプラットフォームであり、たとえば、暑い日の帰宅時の電車内でキンキンに冷えたビールのCM動画が流れれば、思わず帰りにビールを買っていく人が増えるだろうと説明する。

一方で、帰りの電車でビールのCM動画を見たことはわかっても、視聴後にコンビニでビールを買ったことは証明できない。これが現在の課題であり、将来、可視化することでTwitterの価値や有用性を高めたいと長谷川氏は述べる。

湊氏は、自動車販売店がジオターゲティングに取り組む場合であれば、オンラインの情報行動に加えて、オフラインのモーターショーや販売店、ガソリンスタンドやサービスエリアなどの行動履歴がわかるのが、位置情報の面白い部分だと話す。

顧客視点に立ったマーケティングを忘れないこと

「位置情報が目に見えてくることで、自社のユーザー像を捉えやすくなってくるのではないか」と話す小林氏は、塩谷氏に今後どのようなプロモーションを行うのかと問いかける。

塩谷氏は、「自動車は検討時間が長く、1台販売すれば大きな利益となるが、外食は単価も低く、瞬間で購買が決められる」と説明する。そのため、位置情報を使ってプロモーションする場合は、費用対効果が重要だという。

また、プロモーション手法として、新聞折込チラシのデジタル版のような手法を模索していると続ける。新聞の購読数が減少していても、折込チラシは数百円の総客単価でエリアをセグメントできることが魅力的なため、デジタルに代替手法がなければやめられないというのだ。今後、ショートタームで動く外食産業でも費用対効果が合うようになっていけば、プロモーションもデジタルのバジェットも変わっていくと説明する。

最後に小林氏は、ジオマーケティングの本格的な取り組みはまだこれからであり、今後さまざまなデータとつながることで価値を高められるだろうと話す。一方、顧客との適切なコミュニケーションを考えなければ過剰なターゲティングが逆効果になってしまう恐れもあるため、顧客視点に立って活用法を考えてほしいと述べた。

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:「広告主・プラットフォームが語るジオデータ活用、位置情報の精度は「濃度」に変わっていくべき」2017年8月22日開催 月例セミナーレポート 第2部

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