なるほど!アクセス解析ケーススタディ

唯一の販売チャネルから最大の成果を得るためにテスト&分析でコンテンツ貢献度をチェック/ライフネット生命保険のアクセス解析事例

ネット専業生命保険会社の先駆けとしてWebサイトを活用するライフネット生命保険にアクセス解析ツールの導入と活用について聞いた
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保険申し込みのコンバージョンとその手前の中間コンバージョンも含め、KPIは属性をクロス集計してチェック。新しいコンテンツを出したら動線がどう変わるかを確認し、新しい施策に関しては以前のものとA/Bテストも。

そして、もう1つ重視しているアクセス解析の指標が「コンテンツの貢献度」。

今後のさらなる飛躍の鍵は、「パーソナライズ」と「マルチデバイス対応」。

今回のアクセス解析導入事例

こう語るのは、ライフネット生命保険株式会社のウェブマスターを担当するマーケティング部の向井純太郎氏だ。

Webサイトがビジネスの根幹である同社にとって、アクセス解析はなくてはならないもの。そのツール選択について発せられたのがこの言葉だ。

ネット専業の生命保険会社として2008年に創業した同社は、Webサイトのみで保険商品の販売を行っている。それまでの生命保険といえば、外交員が足を使って営業し、顧客1人ひとりに説明するという対面販売が当たり前だった。

  • 複雑で、説明してもらわないとわからない
  • 人生設計にかかわるので、担当者がいないと不安

おそらく、多くの人が生命保険に対して抱くこのようなイメージを、ライフネット生命保険は変えた。常識に反して、保険のネット販売という新市場を開拓するために同社が採った方針が次の2つだ。

  • 商品をなるべくシンプルにしてわかりやすくする
  • 情報をできるだけ公開して顧客の疑問や不安を解消する

この方針を実践するうえで重要となるのが、唯一の販売チャネルとなるWebサイトの存在だ。外交員がいない同社では、その役割もWebが果たしている。当然ながら、顧客を知る手段としてアクセス解析は必須で、創業時から取り組んでいるという。

対面販売を行わない代わりに、Webサイトではどのような工夫をしているのか。向井氏、そして同じくマーケティング部でWebを担当する渡邉直俊氏、加納龍二氏の3人に話を聞いた。

「唯一の店舗」「ただ1人の営業担当」であるWebサイトは貴重な顧客接点

向井純太郎氏
向井 純太郎 氏
ライフネット生命保険株式会社
マーケティング部 ウェブマスター
スマートフォン用のサイト。高まるニーズに応えるため機能強化を図り、2013年10月からは申し込みにも対応した
スマートフォン用のサイト。高まるニーズに応えるため機能強化を図り、2013年10月からは申し込みにも対応した

「ネットだけで営業と販売を行う」と聞けば、よくある先進的なネット系企業をイメージするかもしれない。しかし、扱う商材が生命保険となれば話は別だ。今でこそ大手もあとを追うように参入してきているネットでの生命保険販売だが、まだまだ少数派の市場である。果たして、どのようなユーザー層に利用されているのだろうか。

ライフネット生命保険は、ネットだけで生命保険を販売するため、Webサイトが唯一の店舗。したがって、「ネットを利用している層」が前提となるが、向井氏によると一般的な生命保険と比較して「若い世代が多い」という。

生命保険の特徴として、一般的には年代に偏らない傾向があります。しかし、当社の場合は『子育て世代』と呼ばれる層に向けたマーケティングを行っており、実際の加入者割合も20代~30代が高い傾向にあります。

また、ネット販売ならではの特徴として、サイトへの訪問や加入申し込みが19時~23時の時間帯に多いことも挙げられます。

生命保険は、保険外交員(営業)による対面チャネルでの販売が王道とされてきました。当社の場合はネットに注力することで、営業のための人件費を抑えることができます。それを商品価格に還元しているため、類似商品では比較的手ごろな価格設定になっています。この点も若い世代のお客様に支持をいただけている理由だと思います」(向井氏)

ユーザーの利用環境に目を向けると、スマートフォンからのアクセスが急増しているという。

同社では、2009年からフィーチャーフォン向けのサイトは用意されており、スマートフォンからのアクセスに対しても代用していた。

しかし、2013年4月からスマートフォンに最適化されたサイトを用意し、さらに同年10月には申し込み機能を強化するためにリニューアルを行った

当社の中心的なお客様となる若い世代では、スマートフォンの普及率は9割以上と非常に高いです。ページビューやユニークユーザー数も着実に伸びています

今回のリニューアルで、主な機能はPC版でもスマホ版でも同じものを提供できるようになりました。

保険商品の特徴として『告知』というものがあり、病歴などを記入する必要があるため、お客様によっては入力項目が多くなります。その場合、スマートフォンではどうしても入力作業が大変です。これまでは、一部の健康状態に関する告知事項に該当するお客様には、PC版サイトから申し込みしていただくようにお願いしていました。それが今回のリニューアルで、そのようなお客様もスマートフォンからお申し込みしただけるようになりました。

また、スマートフォンで途中まで申し込み手続きをして、その続きをPCから行えるようにするなど、マルチデバイス対応を実現できました」(向井氏)

ネット専業=非対面販売には、メリットもデメリットも存在

渡邉直俊氏
渡邉 直俊 氏
ライフネット生命保険株式会社
システム部 兼 マーケティング部

ネット専業としたことでシンプルな商品構成や低価格化を実現し、それを支持する顧客も開拓できた。しかし渡邉氏は、対面での営業がないことはネット専業の弱点でもあると認める。ただし、その課題を克服するための工夫や商品の特徴付けも行っている。

生命保険は、お客様が自分の人生を預けたり設計をお願いしたりするサービスです。不明点があれば、担当者にすぐ確認したい。しかし、Webだとそれは難しい。ただ、これは最初からわかっていたことでもあり、対面がないことをカバーする工夫はしています。

まず、Webサイトではなるべくわかりやすく商品を説明し、お問い合わせに対してはコールセンターを用意して平日22時まで対応しています。さらに、日々つながりを感じてもらうために、TwitterやFacebook、メールマガジンの発行も行っています。

一方で、ネットだけの販売にはメリットもあります。対面にわずらわしさを感じるお客様からは、気楽に24時間いつでもどこでも申し込める点が評価されています」(渡邉氏)

ライフネット生命保険が提供しているコンテンツは、大きく分けると以下の4つだ。

  • 保険料見積ツール
  • 保険商品の案内
  • 保険のいろは(保険に関する基礎知識)
  • プラン提案ツール
見積ツールでは、簡単な入力で保険料のイメージがつかめる。「大切なことを、わかりやすく」が同社のモットーだ
見積ツールでは、簡単な入力で保険料のイメージがつかめる。「大切なことを、わかりやすく」が同社のモットーだ

非対面であることをカバーするために、なるべく多くの情報を出すように心がけている。また、顧客に若い世代が多いため、保険そのものの基礎知識や考え方についての説明にも力を入れており、その1つが「保険のいろは」だ。

さらに、新興の保険会社であるため、安心してもらえるように企業情報も積極的に発信している。

ネットで買い物をすることに不安や抵抗があるというお客様もいますので、できるだけ社員の顔が見えるようにしています。これまで外交員による対面販売が常識でしたから、なるべくその要素を再現できるように工夫しています。

また、社員ブログをやっていたり、会長や社長が全国行脚して講演したりと、積極的にアピールしています。

当社のお客様には、『自分で調べたい』という方が多いです。そういった方に対して、なるべく多くの情報を公開しています。24時間調べられて、忙しいなかのちょっとした空き時間を使えることはメリットだと思います」(渡邉氏)

客層が若いということを考えると、能動的に情報を集めて検討するような、ある程度ネットに慣れ親しんでいるユーザー層とは相性がよさそうだ。

ユーザーの属性をクロス集計して分析
「コンテンツの貢献度」も欠かさずチェック

加納龍二氏
加納 龍二 氏
ライフネット生命保険株式会社
マーケティング部 ウェブディレクター

3人のミッションは、アクセス解析に基づいてWebサイトの改善や新企画の提案を行うことだ。

渡邉氏は、エンジニアとしてさまざまな指標を計測するための実装面を担当している。たとえば、現状ではデータとして取れない数字を調べたいときに、Webサイトの作り込みやデータのつなぎ込みを行う。

加納氏は、アクセス解析ツールを使って分析やレポート制作を行う。同社が導入している「SiteCatalyst」をもっとも使いこなしているのも加納氏だ。

向井氏は、Webチームをまとめており、渡邉氏や加納氏を含む5人のプランナーとともに「店舗としてのWebサイト」を運営している。

日々のヘルスチェックとして見ている指標はPV(ページビュー)とUU(ユニークユーザー)で、特にUUはメインのコンテンツがどれくらい見られているかチェックしています。ほかには、保険の申し込みがどれくらいあったか(コンバージョン)。さらに、そこに至るまでの中間コンバージョンも把握しています。

基本となるKPIは、属性をクロス集計して見ることもあります。たとえば、年代と性別なら、

『PVは増えたけどUUは減ったね』
『このコンテンツは急に30代が増えた』
『Webのしくみは変えていないのに流入量に変化があった』
『新しいキャンペーンの反応はどうか』

などを属性視点でとらえています。

また、新しいコンテンツを出したら、動線がどう変わるかも確認しています。ここで必要があれば新たな指標を設けてチェックします。

さらに、新しい施策については、以前のものと新しいものとでA/Bテストを行い、有意な差が現れてきたら、どちらかに寄せていくという判断をしています

アクセス解析の数字は、申し込み数などの基本的なKPIは全社員が把握できるようにしています。また、部長クラスならUUまで把握しています」(加納氏)

もう1つ重視しているアクセス解析の指標が「コンテンツの貢献度」だ。どのメディアや広告からアクセスしたユーザーのコンバージョン率が高いかどうかを把握することで、メディアの優先度を判断したり、広告費用と効果の最適化を図ったりできる。

Web専業の同社にとって、最大の成果を上げるには「選りすぐりのコンテンツ」だけを掲載していく必要がある。

加納氏は「コンテンツの貢献度を把握するために、流入経路はきちんと見ています。同様に、どのような検索ワードで訪れているかも重視しています」と説明する。

創業時からアクセス解析とPDCAサイクルを実践
仮説検証の高速化のためにツールを追加導入

SiteCatalystを選んだ理由
  • ダッシュボード機能がすぐれている

  • 多くの変数を扱える

アクセス解析関連ツールの導入歴
  • 2007年: SiteCatalyst導入

  • 2012年: Adobe Target導入

  • 2013年: ad hoc analysis導入

ネット専業の生命保険として、創業時から当然のようにアクセス解析に取り組んできた。

SiteCatalystにした理由は、当時あったツールのなかで特にダッシュボード機能がすぐれていたからだ。また、ネットからの申し込み数が中心となるため、多くの変数を扱えるものという条件もあった。

さらに2013年5月からは、「ad hoc analysis」(以前はDiscoverとして提供)も導入している。以前から導入を検討していたが、コスト面で折り合いがつかなかった。しかし、価格改定されたことで導入が決まったという。

ad hoc analysisを使うとクロス集計が簡単にできるので、もうこのツールなしの環境には戻れないと感じるほどです。

同じような分析はSiteCatalystでもできないわけではないのですが、Webベースからad hoc analysisのアプリケーションベースになったことで、処理スピードが大きく改善されました

データウェアハウスのデータを分析するには、以前はSiteCatalystから条件指定するとメールでログデータが送られてきて、それを加工する必要がありました。期間を比較するとなると再度出力が必要で、指標を追加しようとするとさらに再出力……。それがアプリケーションになったことで、サクサクと処理できるようになりました

セグメント分析も簡単になり、『流入経路×デバイス×コンテンツ×訪問回数』といった条件指定も思いのままなので、細かいセグメントを見るときに重宝しています」(加納氏)

また、「Adobe Target」(以前はTest&Targetとして提供)も2012年から導入しており、これまでに20程度のテストを実施してきたという。Adobe Targetは、SiteCatalystやad hoc analysisとともに、AdobeがWebマーケティングソリューションとして提供しているテスト用のツールだ。

保険商品はコンバージョンまでの検討期間が長いため、サイトのパワーを計測することが困難でした。相対評価できっちりと結果がわかるということで、Adobe Targetの導入を決めました。

ボタンのラベルの違いといった細かい変更から、ページ全体をガラリと変えるといったことまで、ABテストを実施してその結果を反映しています」(向井氏)

加納氏も、一連のツールがWebサイト運営にとって不可欠な存在であると強調する。

PDCAサイクルを回すうえで重要なのは、P(Plan:企画)をいかに生み出して、組織内の合意を得て実施できるか。そのスピードが、SiteCatalystやad hoc analysisを使うことで大きく改善されました。仮説と検証なしには、何も前に進められませんから。

『いけるはず!』と思った仮説が外れることは少なくありませんが、それも含めて良し悪しを客観的に判断できることは貴重です」(加納氏)

乗り換えによるコスト削減よりも蓄積されたノウハウを重視

向井純太郎氏、渡邉直俊氏、加納龍二氏

SiteCatalystの導入当初はともかく、現在ではさまざまなアクセス解析ツールが存在する。あらためて見直すことで、機能面やコスト面でSiteCatalystよりも改善できる可能性はないのだろうか。

この質問に対して、向井氏は「これまでに蓄積されたノウハウの価値と天秤にかけると、乗り換えが必ずしもプラスになるとは限らない」と説明する。

ツールの営業はよく受けますが、これまでの5年間で蓄積されたノウハウを考慮すると、乗り換えるまでの判断には至っていません。もちろん、現状でやりたいことができていて不満がないことも大きいです。以前は動作の重さが気になることもありましたが、現在ではそれも改善されました」(向井氏)

SiteCatalystは、豊富な機能とカスタマイズ拡張が特長である反面、使いこなすには相応のスキルが求められる。ライフネット生命保険がアクセス解析を活用できている要因の1つには、パートナー企業である株式会社メディックスの存在が挙げられるという。

メディックスは、ライフネット生命保険の創業時からWebマーケティングの代理店として関わっており、そのノウハウをもとにアクセス解析やテストツールの導入から運用までを支援している。

現在もライフネット生命保険のWebチームを陰で支える存在であり、マーケティング施策や分析のためのアドバイスを受けている。SiteCatalystを使い続けることは、これらのサポートが得られることも意味している。

長年培ってきたノウハウは、代えがたい資産です。仮にSiteCatalystの利用コストが高かったとしても、乗り換えで生じる社内のインフラ変更や再トレーニングのコストまで含めると差は少ない。むしろ、使い続けるほうがコスト面で有利という結論になりました。

AdobeブランドとしてSiteCatalyst以外のツールも集約されたことで、ad hoc analysisやAdobe Targetとの連携などさらなるメリットも生まれてきました。そういった点も評価しています」(向井氏)

さらなる飛躍の鍵は「パーソナライズ」と「マルチデバイス対応」

ネット専業であるライフネット生命保険にとって、Webサイトは生命線だ。その運営を担当するWebチームは、同社の命運を握っているといっても過言ではない。そんな重責を担う3人に、今後の展望を聞いてみた。

Webサイトを訪れた方に対して、同じような接し方をするだけでは、これ以上効率化できる余地はないと感じています。伸びしろがあるとすると、属性によって個々のお客様に合わせた情報の出し分けやパーソナライズを行うアプローチではないかと考えています」(加納氏)

ツールの導入によってPDCAサイクルのPが軽くなりましたが、それをさらに加速したいです。ad hoc analysisによってC(Check:分析)が楽になった分を、PやD(Do:実行)につなげていきたいです。

もう1つは、スマートフォンやタブレットをはじめとして利用デバイスが増えているので、1人のお客様がそれらのデバイスをまたいでどう行動しているかを把握できるような施策を考えています」(渡邉氏)

パーソナライズやワンツーワンのアプローチ、そしてマルチデバイス対応が、次の大きな目標です。

保険という商品は、加入していただいたあとは、事故や病気があるまでお客様との接点がほとんどありません。かといって、お客様とのコミュニケーションを頻繁にするためのしくみを用意するべきかといえば、必ずしもそうではありません。そのためにコストアップしてしまっては、当社の商品のメリットを打ち消してします。

対面ではないと忘れられやすい。また、お客様が変わったことに気づきづらい。こういったデメリットを軽減し、逆にネット専業のメリットを増大させていくにはどうするか。

ネット専業の生命保険としてこれからも業界をリードしていけるように、アクセス解析を駆使しながらこの課題にチャレンジしていきたいです」(向井氏)

Web担当チームの5人
Web担当チームの5人
ライフネット生命保険株式会社
ライフネット生命保険株式会社Webサイト
  • 本社所在地 ● 〒102-0083 東京都千代田区麹町2-14-2 麹町NKビル
  • 事業内容 ● インターネットを主な販売チャネルとした生命保険の引き受け(保険商品の販売)、資産の運用など。
  • URL ● http://www.lifenet-seimei.co.jp/
用語集
Adobe Target / Discover / Facebook / KPI / SiteCatalyst / ad hoc analysis / アクセス解析 / キャンペーン / コンバージョン / コンバージョン率 / スマートフォン / フィーチャーフォン / ページビュー / ユニークユーザー / 訪問
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