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平均指標のKPI 全13個 | KPI大全 第3章-1

平均指標は、簡単に測定・計算できるものだが、KPIとしては、その定義に注意するべきである。

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The Big Book of Key Performance Indicators
By Eric T. PetersonWeb解析のためのKPI大全
エリック・T・ピーターソン 著
株式会社デジタルフォレスト 訳

指標

KPIは数限りなくあるので、このリストでは「平均」と「比率」の2種類の指標群にまとめた。この区分は人為的なものだが、多くの人がデータというものを考えるとき、最もしっくりくるグループ分けなのではないか。たとえば、「コンバージョン率」「リピート訪問率」「1訪問あたり平均ページビュー」といえば、データの種類が一目でわかるだろう。

平均指標

平均指標は、簡単に測定・計算できるものだが、KPIとして使用する場合は、その定義に注意するべきである。本書で言うところの平均、すなわち「算術平均(arithmetic mean)」を、wikipedia (wikipedia.org)で調べると、以下のように説明されている。

算術平均(arithmetic mean)」は、一般的に言う「平均(averageまたはmean)」である。平均はさまざまな用途に使用されるが、対象が正規分布以外の分布をしている場合、誤った結論を導いてしまうことがある。

典型的な例が「平均所得」である。算術平均は、多くの人の所得を、実際の所得より多く見せてしまう。普通は、平均値を見ると、値は概ね平均値の近くに分布しているものだと考えるだろう。しかし実際には、この平均値は大部分の人の所得よりも高い値を示している。なぜなら、所得のきわめて高い「かけ離れた値」が、平均値を高くしているからである(対照的に、「中間値(median)」で示す平均所得は、より妥当な値となる)。そのため、この「平均」は、中間値(median)に所得が近い人数に関しても、最頻値(mode)に所得が近い人数に関しても、何も情報を含んでいない。ところが、「平均所得」と「大部分の人の所得」を安易に結び付けてしまうと、集団全体の所得を高い方に誤解してしまう可能性がある。

たとえば、{1,2,2,2,3,9}という要素の平均は3.17だが、実に6個中5個は平均を下回っているのだ。

このため、平均で表されるKPIレポートを使う際には、分布のゆがみによって誤った結果が出ることがあると肝に銘じておくことが重要だ。これが特に顕著なのは、ページ平均閲覧時間の指標である。特にデータには異常がないのに、平均閲覧時間が長すぎる(もしくは短すぎる)値を示していたら、試しに中間値(値を小さい順に並べたときの、ちょうど中央に来るもの)を算出してみるといい。

ゆがみの問題に加えて、もう1つ問題がある。それは、ぴったり平均値そのものの現象(平均的な訪問、平均的な訪問者など)は存在しないということだ。訪問者はすべて、少しずつ違っている。平均指標を使用することが、誤った解釈につながるという意見もあるが、私は平均指標は非常に有効な指標だと考えている。以下に述べるKPIは、平均的な訪問・平均的な訪問者を考えることによって、一般的な訪問者について理解するためのものである。最も望ましい訪問者、最も望ましくない訪問者のことはわからないが、「大部分の訪問者」の行動や習慣がわかるのである。平均的な訪問者の行動に従って、サイトに全面的な改訂を加える必要はないが、その行動に常に注目しておく必要はある。上級者の場合、すべての訪問者の平均という制約から離れるためには、訪問者のセグメンテーションを行い、それに沿ったKPIを設定するのが有効である。セグメンテーションを行うことで、よりターゲットを絞って行動解析ができ、そのデータをもとにして、的確な対応ができるはずである。

1訪問あたり平均ページビュー

1訪問あたり平均ページビューからは、訪問者がどの程度サイトに興味があるか、ナビゲーションがスムーズにできているか、この2点がわかる。

  • 定義

    一定期間の総ページビューを同じ期間の総訪問回数で割ったページビュー。

    {総ページビュー数}/{総訪問回数}={1訪問あたり平均ページビュー}

    異なる訪問者セグメントごとにこの指標を計算すると、より高度な解析ができる。多くの解析ツールは、この値を自動で計算してくれる(図4

    図4 1訪問あたり平均ページビューの日別推移
    図4 1訪問あたり平均ページビューの日別推移
  • 表現形式

    広告収入モデルの場合は1訪問あたり平均ページビューの補足として、1ページビューあたりの金銭的価値を使用できる。表示1000回あたりの広告料金(CPM:Cost Per Thousand)を用いて、平均価値を算出すると、計算式は、

    ({平均CPM}/1000)×{1訪問あたり平均ページビュー}={1訪問あたり平均価値}

    となる。たとえば、平均CPMが25ドル、1訪問あたり平均ページビューが3だとすると、

    ($25÷1000)×3.0=$0.075

    が、1訪問あたり平均価値となる。

  • 想定される結果

    想定される平均ページビューはビジネスモデルによる。

    • メディア、コンテンツサイト ―― ページビューが多いほど収入が上がるCPM課金制の広告ビジネスでは、1訪問あたり平均ページビューを増やして、1訪問あたり平均広告価値を上げることを目指す。
    • マーケティングサイト、ECサイト ―― マーケティングサイト・ECサイトは普通、訪問者をひきつけ、1訪問あたり平均ページビューを伸ばすことを目指す。しかし、Webサイトのゴールによっては、ページビューが多すぎるとき、訪問者の一部が混乱しているということもある。
    • サポートサイト ―― サポートサイトでは、この指標は低いほど良い。特に、どこにどの情報があるかを示すナビゲーションページを通る回数は、少ないほうが望ましい。
  • 行動

    1訪問あたり平均ページビューが、期待に反する値を示しているときは、ページビューに影響を与えるいくつかの構成要素をチェックしてみるとよい。

    • ナビゲーション ―― ナビゲーションがわかりにくいと、訪問者は欲しい情報にたどり着くために、いくつものページを経由しなければならない。そのために、諦めてサイトから出て行ってしまう可能性はある。
    • コンテンツ ―― webライティングの基本を押さえておらず、サイトの文章が不明瞭な場合、訪問者は去ってしまう。逆に、文章がわかりやすく、興味を引く書き方をしていれば、訪問者は「次を読もう」という気になるため、ページビューが上がる。
    • 検索性能 ―― サイト内検索の精度が低いと、情報を探すために何度も検索しなければならない。検索の精度が高ければ、少ない検索回数で見たい情報にたどり着くことができるので、ページビューが下がる。
    • マーケティング努力 ―― マーケティングのターゲット設定が甘いと、訪問者はあまり多くのページを見ないだろう。逆に、適切なターゲティングをしていれば、訪問者は多くのページを見てくれる。

    1訪問あたり平均ページビューに関する問題を分析するときは、使用しているツールが提供しているのであれば、サイト滞在時間とページ平均閲覧時間を参照するのも有効である。また、サイト内検索がどのように使われているかを判断するには、「検索利用率」「検索結果ゼロ率」「1訪問あたり平均検索回数」の指標をチェックすると良い。

    図5 Visionalistによる平均滞在時間のグラフ。1訪問あたり平均ページビューに関わる問題の診断に有効。
    図5 Visionalistによる平均滞在時間のグラフ。1訪問あたり平均ページビューに関わる問題の診断に有効。
用語集
CPM / CTR / Cookie / KPI / RSS / アクセス解析 / アップセル / キャンペーン / キーワード広告 / クリックスルー率 / クロスセル / コンバージョン / コンバージョン率 / セッション / ナビゲーション / フィード / ページビュー / 検索エンジン / 訪問 / 訪問者 / 顧客生涯価値

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