企業ホームページ運営の心得

「俺は客だ」という傲慢を切り捨てる高飛車営業という心得

客とは下請けの関係ではなく、パートナーになることで適切なアドバイスができるようになります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百九十壱

小僧を小僧と呼んでますが、なにか問題でも

取引先の担当者を「坊や」と記した記事「見積もりが高いといわれたら。Noという交渉術」に「お客様に失礼だ」とお叱りのメールを頂戴しましたので、客を崇め奉り、絶対服従でへりくだることを正しいとは思わないと回答しました。ひとことでいえば「価値観の相違」です。だから私は無礼で非礼な人間を「坊や」どころか、もっと酷いスラングで呼ぶこともあります。

価値観を変えれば「仕事をください」と口にすることはなくなります。前回予告した「売り込まなくても売れる」と、前々回に機会があればとした「ビジネスパートナーになら“なってあげる”というスタンス」もこの価値観からのものいいです。高飛車という人もいるでしょうが、お客様は神様ではなくビジネスパートナーであるべきだと考えます。

そういえば連載、書籍、講演にシンポジウムなども、「仕事をください」といって請けたものは1つもありません。

昭和の頃は当たり前だった

まず価値観の基本を確認しましょう。

客と店(企業)は対等

取引とは互いにメリットがあるから成立するもので、お客が支払うお金は布施や寄付ではありません。店が提供するサービスもボランティアではなく、手渡す商品は炊き出しではありませんし、さらに踏み込めば、お客は支払う金銭以上のメリットを得られるという期待から購入するのです。

立場を入れ替えると話は簡単。一杯1,000円のラーメンを注文するのは、1,000円以上の価値があると思う人だけです。味、ボリューム、満足感やレア度のいずれかを総合して1,000円以上だと感じるから、1,000円のラーメンを注文します。つまりは「お互い様」なのです。

そしてラーメン同様に魅力が十分に伝わっていれば売り込む必要はありません。

売り込まなくても売れる

魅力を伝える努力は実店舗では当たり前に行われていることで、書店員の手書きポップや、「ジャパネットタカタ」の高田社長のトークがそれにあたります。「泣ける」を期待する読者向けに「泣ける」を強調し、さまざまな使い方を高田社長が楽しげに説明することで客は「欲しい」と思います。

売り込まずに売るのは「欲しい」と思わせるところがポイントです。Web屋でみれば、ブログやCMSの利便性を「自分で更新できる」と訴えても、それだけで「ほしい」と思う客はわずか。そもそも「更新しなければならない理由」をわかっていない方が多いからです。そこで「毎日イベントを告知できる」「雨が降ったらタイムセールを開催」「常連限定の特売」と、いつでもホームページで宣伝できることが「更新」だと、更新ではなく更新する内容の説明にフォーカスして、「ほしい」という感情を揺さぶるのです。

ツイッターは見込み客になるか

損得をもちだすと刹那的になりますが、客と店が対等であることは「昭和時代」には当たり前の風景でした。近所の酒屋に「お使い」に行き、商品を手提げ袋に入れてくれた若旦那を見上げ「ありがとう」というのは子供のたしなみで、店が客に感謝するのと同様に、客は店に感謝するものだったのです。この図式についてはブログで書きましたので、興味のある方はどうぞ。

傲慢になれとはいいませんが、必要以上にへりくだることはありません。

商売においてもっとも大切なものは「客」です。宗旨替えして善人ぶるつもりはございません。客がいなければ「取引」が成立しないという事実を述べたまでです。売り込まずに売るためのもう1つの必要条件が「見込み客を多く集める」です。ネットにおいてはメルマガの読者、ブログへの訪問者、そしてツイッターのフォロワーがそれにあたります。ツイッターで売り上げアップという話には懐疑的ですが、「見込み客あつめ」のチャネルとしてなら否定しません。

客のためにも高飛車

具体的な方法は、業種や求める客層で異なりますので割愛しますが、客と対等な関係を目指す「高飛車な営業」は「Web屋の客」にとってメリットがあることも見逃せません。

取引は両者対等であるというのが私の立場ですが、一般には受注側が下手に出る場面が多いでしょう。すると、そこに上下関係が発生するのは、序列を気にする日本人の性です。上下関係が固定化すると、下のものが上に進言することが困難となります。たとえ間違っていても暴走を止めることができないことは、数々の企業不祥事が証明しています。そして日進月歩でトレンドが変化し、ヤフー(ジャパン)の中身(検索の仕組み)がグーグルに変わるWebの世界では、客のコンセンサスが「時代遅れ」になっていることも珍しくありません。このとき「お恐れながら」と進言し、聞く耳を探すのはクジラの耳を探すほどに困難です。一方、「高飛車」とそしられても、「対等」な関係を構築していれば「No(違う)」と正しくアドバイスすることができ顧客の利益につなげられます。

客の考えがわかる

下請けの話にも耳を傾けてくれる。という反論をお持ちなら、良いクライアントに恵まれているのでしょうから大切にしてください。パートナー意識の高い企業は下請けに頭を下げます。

皆さんがお取引してくださるお陰で、手前どもの商売も繁盛させていただいております

取引は相互利益の原則を理解するどころか、支払いに上乗せして感謝を述べられれば、作業は通常より迅速に丁寧に、多少の無理は喜んで協力しようという好循環が生まれます。一方、パートナー意識の低い客は、「金を払っているのだから偉い」と居丈高になります。「高飛車営業」へとシフトすると傲慢な人間は離れていきます。金を払う自分が偉いと思っている人間は、私の高飛車な態度を罵りながら遠ざかっていくのです。

一方、私を信じて声をかけてくれるお客様がいます。この方々に私は、曇りのない感謝の心を捧げつつ、恋人に「尽くす」ような気持ちで仕事に取り組みます。

今回のポイント

取引は対等で互いのため。

ほしいと思わせれば客から求めるようになる。

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