企業ホームページ運営の心得

Webマーケターに問う。マーケティングを翻訳せよ

ホームページ制作業者の現場から実践マーケティングを紹介
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百参十六

Web担は独立しろとはいったが

前回、Web担当者ならば「独立」も選択肢だと指摘しました。そしてホームページ制作業での「起業」は容易です。しかし、本当に脱サラするなら「Web」の知識だけでは危険です。自営業となれば消費税を受け取りそれを納めます。各種社会保険料の計算に加え年末調整も自己責任ですし、東京都の場合、「都税」と「区税」をそれぞれ別の場所に納めに出向かなければなりません。外部に委託するのも一考ですが、外注先が親切とは限らないのは世の常と心得、あらましをチェックできるぐらいのノウハウは習得しておくべきでしょう。そしてなにより「マーケティング」が欠かせません。

私の所には「同業者」からの相談が多く寄せられるのですが、そのほとんどが「マーケティング」です。前回の「独立」に触発された方向けのフォロー号。Webマーケッターの語る美しい理論の登場しない、泥臭いホームページ制作業者の実戦マーケティングを紹介します。

泡沫起業が生まれる理由

参入しやすい業界で廃業率が高くなるのは、そもそも起業する実力のない人が参加するからで、ホームページ制作業界にも当てはまる数式です。

自分の会社のホームページを作っているうちに商売になっていた
知り合いのサイトを手伝ったら仕事がはいった

きっかけとしては悪いことではありません。しかし、このような理由だけで独立すると「廃業リスク」が高まります。それはマーケティングという概念が抜けているからです。経営は継続性が求められ、知人や友人からの受注は飲み干せば終わる「一杯の水」にすぎません。短期的な成功に永続性を持たせるのもマーケティングの役割で、これを「儲る仕組み(方法)」といいます。ミヤワキ流に超訳すれば「枯れない泉を探す」ことです。余談ですがマーケッターを名乗りながら「マーケティング」を自分なりの日本語で説明できる人はまれです(笑)。

ネットビジネスの正体

同じ「ホームページ制作業者」でもマーケティング手法は会社によって異なります。たとえば、マーケティングツールとしてホームページを扱っている業者と、制作が主力商品の会社では顧客へのアプローチが違ってきますし、同じ「制作会社」のなかでも元請けか下請けかで異なり、方法に絶対の正解はありません。それは枯れない泉は掘り方により取水量がかわるものだからです。

あるホームページ制作業者のマーケティングツールは人脈です。社長ブログで「忙しくて徹夜が続いています」と告白するデスマーチな状況でも、友人の出展する展示会に足を運び、友人を招いた飲み会を開き、友人の結婚式には2次会まで出席しています。よく学び、よく遊び、よく働きというポリシーなのかと、丹念にブログを読み進めると、登場する友人はすべて「取引先」でした。

フォトショップが使えなくても

これを一般社会では「営業活動」といいます。親しくなった先から仕事を取る古典的な昭和の営業手法です。彼の会社の主力商品であるホームページ制作は、無料のブログシステムをカスタマイズするもので、ショッピングカートは市販品、ブログパーツはネットに転がっているものを流用します。さらに同じブログのなかで「フォトショップが苦手」と堂々と告白しており、率直に言えば何も特徴がない制作業者ですが、それでも商売が成立しているのは社長の人脈から湧き出る泉=営業努力につきます。ちなみに社長はWebクリエイターと自称しています。

彼の人脈利用は起業時にさかのぼります。創業の地には、自営業を営む実父と取引のある地域金融機関が運営する、創業者支援施設を格安で拝借しました。実父の口利きです。つぎに地域掲示板サイトを公開し、地域活性化に利用してほしいと異業種交流会に売り込みます。大家である地方金融機関に仲介を依頼しての参加です。

茨の道を歩むか否か

順調に地元企業の「CIO(最高情報責任者:Chief Information Officer)」に就任したのも束の間、情報起業家のセミナーで知り合った人脈からより美味しい話が転がり込むと、あっさりと職を辞して地元を離れます。彼を非難するのはナンセンスです。人脈をマーケティングツールとする以上、儲けの少ない人脈に拘ることはマーケティングポリシーに反する行為で、より良い条件を求めるのは商売人ならば当前です。手段の好みは別として、マーケティングはきれいごとだけの世界ではなく、泥にまみれることは日常です。

「人脈」も立派なマーケティングです。人脈を頼りに次々と新しい顧客を得る方法を「狩猟型」とするなら、私のそれは「農耕型」で長期間の取引を基本とします。これの最大のメリットは「継続性」の高さです。

マンモスよりも稲作

狩猟型はマンモスを狩ることもあるでしょうが、何日間も空腹に晒されるリスクと背中合わせです。私に帰る実家はなく、妻も養わなければならないことから狩猟型のリスクは大きすぎました。その点、実れば確実に長期間、食事にありつける農耕型をチョイスしたのです。

具体的な方法を詳しく述べれば、本一冊分は優に越えるので「さわり」だけですが、「農耕型は自分の農園を作りそれをシェアしてより大きな収益につなげるという方法で、マーケティングの古典的手法です。この農園ではKPIにLPO、PLO(株価維持操作)など不要で、人と人がつながり、人を集め、人を育てます。デメリットは短期間での荒稼ぎができないことでしょうか。

狩猟型と農耕型を優劣で比較するのは無意味です。どちらにも一長一短があり、適度に組み合わせるのが理想的で、最終的には好みの問題です。私も多少は名前を知られるようになりましたが、それでも人脈をマーケティングに使うことはありません。それは人脈経由の依頼では、イヤな仕事も請けなければならず、イヤな客に「あんたなんか嫌いだ」という自由が奪われるからです。そして好き嫌いをハッキリさせることもマーケティングの1つ。これについては機会があればいずれ。

最後にマーケティングを学ぶ時のヒントを。「Web●●」は避けるべし。Webツールを紹介する都合からマーケティングのテクニック論に傾斜し本質が掴みづらいので。

♪今回のポイント

独立を考えるなら、まずマーケティングを学ぶべし。

枯れない泉は堀りかた次第で取水量が変わる。

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