企業ホームページ運営の心得

JPに負けるアドワーズ。携帯メール会員解約率100%の集客法

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の八十参

アドワーズからの撤退

各種値上げが続いております。ガソリンを筆頭にバター、パスタ、カップラーメン、ついには物価の優等生と呼ばれる玉子も「森のたまご」「しんたまご」といったブランド卵が値上げします。消費者としては苦しいところですが、しかしモノを売る側に立てば永らく続いた「デフレ=安売り」から脱却できるチャンスと前向きに捉えるほうが建設的です。それがやせ我慢であっても。

多くの人が頭を使うことを嫌います。「数字」を上げ下げするだけの「安売り」は頭を余り使いません。利益を半分にしても倍働けば同じだと身体を酷使し「思考力」は奪われ、抜けだせなくなります。「安売り」は即効性がありますが、強力な常習性をもつ麻薬のような存在です。

今年の6月、私はあるクライアントをアドワーズから撤退させました。

無駄金を使わないというチョイス

アドワーズの出稿直後からアクセスが増えました。しかし、アドワーズの月間広告費が高卒初任給を超えると、採算がとれなくなりました。同業者の参入が入札価格を吊り上げたのです。「安売り合戦」ならぬ「値上げ競争」です。

検索連動型広告の入札価格の値上げ競争も安売り合戦も本質は同じです。数字合わせで結果がだせるツールへの依存は常習性が強く、致命傷となりかねません。

業種によっては検索されることが少なく、ライバルもいない「ニッチキーワード」を増やすことで、安価なままインプレッション総数を稼ぐこともできますが、このクライアントは単一の商品で営業しておりその手法は使えません。また単純にアクセス数を増やしても意味はなく、売上につながりそうなクリックが望める「儲かるキーワード」を狙い続けるなら、同業者が存在する限り競争は避けられません。そこで撤退を提案したのです。

費用対効果が低い営業ツールなら使わないという「我慢」も一手です。

検索連動型広告よりも強いツール

営業ツールの選択は重要です。

「ハウスクリーニング」を例に見てみます。「ハウスクリーニング」で検索すると7月14日現在、アドワーズで18件、オーバーチュアで40件の広告が出稿されており、ダスキンのルームサービスから家事代行の個人商店までひしめき合っています。FCの代理店募集を除けば個人宅向け(家庭用)サービスがほとんどです。

素朴な疑問です。需要は個人宅だけでしょうか?

賃貸物件ではほとんどの場合、退去時のハウスクリーニングが契約に織り込まれています。このときの発注者は「不動産業」です。需要は家庭だけではありません。ならば戦術変更です。検索連動型広告に使う予算をJP(日本郵便)で発送する「DM(ダイレクトメール)」に廻すのです。

個人と法人で異なるノウハウ

発送部数により変動しますが、切手代の80円にDMの印刷代金などを加えて1通150円~200円ほどでJP経由のDMは送れます。一見、検索連動型広告のほうが安いでしょう。しかし、不特定多数が対象となる検索連動型広告は、客にならない「ひやかしクリック」での無駄金は避けられません。その点、DMはあらかじめ不動産業と「業種」を絞り込んで発送するのでターゲットのロスはありません。業種ごとの住所は「タウンページ」が教えてくれます。また「ハウスクリーニング」のように、取引できる地域が限定される商品なら「日本全国」をカバーするインターネットは過ぎたオモチャです。

BtoBを目指すなら覚えておいてください。企業の「担当者」は保守的で、トラブルでもなければ業者を変えたくありません。それはわざわざ新しい仕事を増やすようなものだからです。そこで、JP経由のDMの封筒に「メリット」を印刷するのは定石です。これで担当者の興味をくすぐるだけでなく、上司や社長の目にとまる「可能性」もあるからです。電子メールで行うこともできますが、保守的な担当者は「突然知らない人から届く電子メール」を警戒しますし、削除した瞬間に誰の目に触れることもなく闇に葬られます。

解約率100%の携帯メール会員

法人相手ならばDM、個人には「チラシ」が有効です。

IT系の個人向けツールとして割引券やクーポン、お買い得情報がメールで届く「携帯メール会員」があります。たとえば、マクドナルド、ツタヤ、ドンキホーテなどが「携帯メール会員」の獲得に熱心に取り組んでいますが、私の周辺の主婦(ヤフーとグーグルの区別も覚束ない子育てに追われる主婦)を調査すると「解約率100%」でした。解約するので利用はしています。つまり、利用する直前に会員登録し、割引特典を受けた直後に解約するのです。

理由を尋ねると口を揃えて「メールがうざい(わずらわしい)」といいます。友人からのメールかと見て「売り込み」だとカチンとくると。ある専業主婦は新聞に折り込まれたドンキホーテのチラシで、お目当ての商品を見つけると、道すがら「お気に入り」に登録してある携帯サイトへアクセスして会員となり、店頭でクーポンを発行し支払います。そして帰り道で「解約」します。

携帯クーポンも一役買っていますが、第一に「集客効果」をもたらしたのは昭和より生き残るチラシです。

ここでも「ペルソナ」が登場

SEOもSEMも客を集めるための技術論でしかありません。検索連動型広告も万能ではなく、商売により向き不向きがあるのは当然のことです。これまた当たり前ですが、インターネットは万能ではありません。

地域限定の法人向けならJPによるDMが、専業主婦の集客にはチラシがまだまだ有効で、グーグルよりもヤフーという客層および日本全国不特定多数ならオーバーチュアに分があるでしょう。営業ツールはリアルも含めて検討しなければなりません。

ツールの選択にも「ペルソナ」を使います。自社の商品、サービスの想定客をイメージして、彼らのもとにどうやれば届くのかを考え選びます。「ペルソナ」が設定されていなければ「顧客台帳」から探してもいいでしょう。法人か個人か、主婦か学生か。客層により効果的なツールは異なります。

要するに「何を売るかではなく誰に売るか」で、SEMのM、「マーケティング」をかじった人間なら誰もが知っている話しです。

♪今回のポイント

商売は客を見るという基本。

ホームページもチラシや封書と同じツールでしかない。

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