【レポート】Web担当者Forumミーティング 2017 Autumn

データ活用で顧客体験を改善する新手法~デジタル行動観察の効果と成功事例

結果から原因を探る定量分析の限界を超えよう
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デジタルマーケティングの花形といえば、データの「定量分析」だ。統計データの集まりの中から、隠された傾向を浮き彫りにする。しかし、それだけでは顧客の真の姿を理解したことにはならない。そこで「定性分析」の出番だ。

橋本 公彦氏
株式会社ビービット
ソフトウェアサービス
コンサルタント
橋本 公彦氏

ビービットの橋本氏が、「Web担当者Forum ミーティング2017 秋」において、「データ活用で顧客体験を改善する新手法~デジタル行動観察の効果と成功事例」と題し、データ分析における「定性」の視点の重要性を解説した。

実は難しいデータの定量分析、こんな失敗例が……

デジタルマーケティングにおいては、各種データをいかに分析するかが腕の見せどころだ。特に「定量分析」、つまりアクセスログなどの数値データをもとにした科学的分析は、勘や経験に頼ったマーケティングとはまた別の手段として、存在感を発揮している。

ただし、定量分析がそう簡単ではないのもまた事実だ。橋本氏は講演冒頭、ある2つのサイトにおける失敗事例を紹介した。

1つめは、低価格商材を中心にラインナップするECサイトの例。ここは1ユーザーあたりの継続購入率を高めたいという目標があった。

このECサイトではデータ分析の結果、「5回の購入で継続利用率が高まる」ことを発見した。これを施策に落とし込むべく、4回購入した客に対して「5回目購入時の送料無料キャンペーン」を実施した。しかし、結果として継続利用率は向上しなかったという。

失敗事例その1

2つめはB2Bでソフトウェアを販売するサイト。Webサイトからの問い合わせ・資料請求を増やすのが当面の目標だ。

サイトアクセスを解析の結果、「価格ページを閲覧したユーザーのコンバージョン率が高い」ことが判明。そこで価格ページへのサイト内誘導を強化したものの、やはりコンバージョン率の向上にはつながらなかった。

失敗事例その2

定量データだけで「因果関係」はわからない

なぜこのような事態が発生してしまうのか? 橋本氏は次のように説明する。

定量分析は相関は教えてくれるが、顧客の状況や因果は教えてくれないからだ

1つめのECサイトの例では、確かに5回目の購入と継続利用率になんらかの相関関係があるのは間違いない。しかし、5回目の購入をしたユーザーが、その瞬間にロイヤルカスタマーに変身するわけではない。サイトのポイント施策、商品のラインナップなどが長期的に奏功したとみなすのが普通だ。

2つめのB2Bサイトについて、橋本氏は「恐らくは因果が逆。価格ページを見たから買いたくなるのではなく、検討を重ねたユーザーが最終的に価格ページを見たから、コンバージョンにつながったというのが真相だろう」と解説する。

このように「結果から原因を探る」のは、定量分析では限界がある。橋本氏はそこへ「定性分析」の要素を加え、あくまでも「データをユーザー1人1人の行動に分解して、観察することが重要ではないか」と強調する。ビービットではこれを「デジタル行動観察」と定義している。

失敗の原因。定量分析には限界もある
失敗の原因。定量分析には限界もある
定量的な分析に加えて定性的な分析が必要という
定量的な分析に加えて定性的な分析が必要という

定性分析を身近にする「デジタル行動観察」

一般に「定性分析」とは、自由回答式のアンケートや、対面でのインタビュー調査などを指す。ユーザーの気分やその理由など、数値化が難しい要素を顕在化するための手段として知られる。

また、定性分析の一種に「行動観察」がある。小売店の店内における客の振るまいなどを文字通り観察するものだ。客自身の無意識の行動なども発見できるため、従来の枠にとらわれない新しい発想・手法を編み出すことにもつながる。

ビービットが定義する「デジタル行動観察」は、こういった従来型の定性分析をWeb上での行動観察にも応用しようというもの。○月○日にどの広告を見て、実際にどの商品の詳細ページにたどり着いたのか。そして最終的にどう購入したのか。それら一連の流れを「見える化」するのだ。

ビービットが打ち出している「デジタル行動観察」とは
ビービットが打ち出している「デジタル行動観察」とは

従来の定性分析手法と同じことを目的としているが、実際にユーザーを招集したり行動観察用の専門人員を手当したりする必要がないため、デジタル行動観察はコストパフォーマンスの面で優れる。

従来型定性分析との比較
従来型定性分析との比較

もちろん従来の定性的な調査には価値がある。しかし、どうしても手間がかかる。企業にもよるが、頑張っても1年に2回やれるかどうかだろう。その一方でデジタルマーケティングの分野ではPDCAサイクルが非常に速い。そこで、橋本氏は次のように指摘する。

サイクル回す上での重要な判断材料となる定性分析が年に1~2回で果たしていいのか

PDCAの中でも特にD(Do、施策の実行)の精度を向上させるためには、低コスト・短スパンでのデジタル行動観察が有効だとアピールした。

「デジタル行動観察」で何がわかる?

では、「デジタル行動観察」を行うとどんなことがわかり、マーケターにどんなメリットがあるのだろうか?

橋本氏は、あるカラーコンタクトレンズのECサイトでの事例を紹介した。同サイトはリピート客が多く、会員データベース分析の結果などから「いつも買っている同じ商品にしか興味がない」との仮説を立てていた。しかし、まとめ買いキャンペーンを実施しても効果が出ない。

そこでデジタル行動観察を実施したところ、実際には複数の商品の詳細ページや口コミをつぶさに閲覧しているユーザーが少なくなかった。しかし、最終的にいつも購入している商品をリピート購入していた。つまり「他の商品にも興味はあるが、決めきれない」のが実情ではないかという新仮説が導き出された。

カラーコンタクトECサイトでの事例。デジタル行動観察によって、ユーザー像を大幅に修正できた
カラーコンタクトECサイトでの事例。デジタル行動観察によって、ユーザー像を大幅に修正できた

そこでこのサイトでは、口コミ規約の改定など、ユーザーの購買を後押しする口コミの質を向上させるための取り組みを強化した。着用写真の投稿にあたっては必ず購入者自身が撮った写真だけを受け付けるようにし、宣伝素材などを排除した。さらに投稿の監視体制を強化するなど取り組みを継続して行った。

最終的にこのECサイトでは、低減傾向だった売上を回復させることに成功した。

機能していなかった口コミ機能を改修
機能していなかった口コミ機能を改修

また、女性向けのコスメECサイト「DAZZSHOP」の事例も紹介した。新製品の発売にあたって、トップページなどで告知をしていたが反応が悪い。そこでやはりデジタル行動観察を実施。すると、多くのユーザーがトップページの表示からものの1~2秒で「いつも購入する商品のページ」へ移動してしまっていた。つまり、トップページでの告知がそもそも見てられていなかったのだ。

これを受け、DAZZSHOPでは告知場所をトップページ以外に製品詳細ページへも拡張。「客の普段の行動パターン」の中で自然に新製品を目に触れられるようにした。この変更から1週間後には売上が140%に伸びた。

「DAZZSHOP」では新作コスメの売れ行きが悪かった。なぜ?
「DAZZSHOP」では新作コスメの売れ行きが悪かった。なぜ?
デジタル行動観察の結果をもとに、告知方法を変えると売上が改善した
デジタル行動観察の結果をもとに、告知方法を変えると売上が改善した

「デジタル行動観察」をするためのツールとは?

「デジタル行動観察」を実践するための手段としては、Googleアナリティクスのユーザーエクスプローラーがある。2016年4月にリリースされた機能で、個々のユーザーが実際にどんな順番でページを閲覧したかをチェックできる。

ビービットは、より専門的なツールである「Usergram(ユーザグラム)」を提供している。顧客行動を最長2年にわたってさかのぼることができ、さらにWebやアプリをまたいでの分析にも対応する。

ビービットが提供する「Usergram(ユーザグラム)」の概要
ビービットが提供する「Usergram(ユーザグラム)」の概要

また、定性分析は、具体的にどのようなユーザーに調査を行うかの選定自体が非常に重要。そこでUsergramでは調査対象のユーザー絞り込み機能を充実させており、性別や年代といった属性別だけでなく、「サイト内である特定の行動をとった」ユーザーだけ、ピックアップすることもできる。

橋本氏はまとめとして、定量分析だけで顧客の利用実態を探るには限界があると改めて強調。「定量分析では因果がわかりづらく、具体的な打ち手につながらないことがある。そこでユーザー1人1人の行動をよく観察することで、施策の精度が上がったり、失敗の頻度が下がったり、さまざまな効果が期待できる。定量と定性、両方の視点をもつことが重要」と呼び掛け、講演を締めくくった。

講演のまとめ。定量だけでなく、定性の分析もまた重要
講演のまとめ。定量だけでなく、定性の分析もまた重要

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