Web広告研究会セミナーレポート

Webのコーポレートブランディングはどうする? GEジャパンのコミュニケーション事例

ハートを動かしてこそのブランディングだと語るGEジャパンの取り組み
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

企業Webサイトの目的として、ブランディングはよくある指標の1つだが、明確な数値として成果を測ることは難しい。Web広告研究会の2017年10月月例セミナーは、「コーポレートブランディング最新事例―みんなどうしてる?」と題し、GEジャパンの清水智美氏が登壇。米国市場とは異なる市場環境で事業を行う同社のコーポレート部門として取り組むブランディング活動を紹介した。

デジタル化に挑戦するGEのブランディング

GEジャパン株式会社
清水 智美 氏

発明家トーマス・エジソンが創業し、エネルギー、輸送、医療などの事業を行うGE(General Electric)は、185か国に事業拠点を持ち、従業員数33万人が働く、巨大グローバル企業だ。近年は、デジタル・インダストリアル企業へと戦略的変革を進めており、かつては50%以上の売上を生み出していた金融事業を売却するなど、選択と集中をしている。

「BRAND」の語源がBURNED(牛につけた焼印)であることは、マーケターの間ではよく知られている。このように、ブランディングとは「識別しやすくして差別化し、わかりやすく印象付けること」だと清水氏は説明する。

GEは重工業のなかで、いち早くデジタル化に取り組んだ企業だ。「The Digital Industrial」と掲げ、これまでにないジャンルの事業を行う先駆的企業として認知を広げる必要があったと清水氏は話す。そこで同社は、これから世の中にもたらそうとしている価値とそのインパクトを分かりやすく示してきた。「The Power of 1%」と謳い、例えば、ソフトウェアの力で発電効率をわずか1%向上させるだけでいかに巨額のコスト削減が行えるかを示し、デジタル市場を拡大していった。

事業を大きくデジタルにシフトし、ビジネストランスフォーメーションを完遂するためには、東海岸の企業ながらもシリコンバレーの働き方を実践する必要があったという。そのために、社員1人ひとりの働き方を根本的に変え、すべての働き方を再定義していった。

人材育成に年間10億ドルを注ぐ同社だが、すべての部門がCUSTOMERを起点に物事を考え行動するよう働き方や行動評価のあり方を再構築し、そうした価値観やカルチャー自体もブランドの構成要素のひとつとして広報している。

コミュニケーション部門が事業成長に関与する

GEのコミュニケーション部門の目的とゴールは、事業成長にあるという。しかし、コミュニケーション活動が事業成長に貢献したという直接的な因果関係を示すことは、ECサイトでもなければ難しい。

そのため、事業成長に寄与するためにコミュニケーション部門ができることをブレークダウンした。それらの要素を指標化して計測し、ターゲットの意識変容と行動変容がどのように起こったかを見ている。

コミュニケーションの要素を細分化し、それぞれの指標を定めた

1つひとつのコミュニケーションのアクティビティを考えるときには、ビジネス上の目的やターゲットを考え、それにふさわしいメッセージングや施策を考えていく。清水氏は、「露出することの先にある事業上の目的を常に意識している」と話す。

米国コンテンツのコピーはしない、日本独自のニーズを探る

「どんなときでもコンテンツがすべて」だと話す清水氏は、企業として伝えたいメッセージは多いが、オーディエンスが聞きたいことや関心のあること、課題解決に役立つことを伝えるようにしているという。

たとえば、米国のGE本社が発表したコンテンツをそのまま日本に持ってくるのではなく、市場特性の違い、認知度の違い、文化や法規制などの違いを考えて、ゼロベースでオーディエンスの価値観を探り、関心の高いコンテンツ展開する。

限られたコミュニケーション部門の予算のなか、日本のブランディングの主要ツールとなっているのが、オウンドメディアの「GE Reports Japan」だ。

GE Reports Japan
https://gereports.jp/

GE Reports Japanは2014年に立ち上げられ、以降、清水氏が運営を担ってきた。GE Reports Japanはフロー型のストーリーテリングマガジンとして旬の情報を届け、GEジャパンのコーポレートサイトは情報をスリムにして情報が陳腐化するのを避けている。

一連の運用体制を整えるため、従来から利用していた外部ツールについて、YouTubeは動画コンテンツの格納場所と割り切り、Facebookの運用もGE Reports Japanのコンテンツ拡散目的に切り替えるなど、デジタルコミュニケーションツールを活用したエコシステムを作り上げた。

また、「東京オリンピックを一緒に作っていこう」というメッセージを掲げた「GE2020.tokyo」を新たに立ち上げ、国内のGEブランド形成を図っている。

ハートを動かしてこそのブランディング

2015年には産業IoT市場の創出のためのソートリーダーシップイベントを開催した。そこで使用したロゴのデザインには、日本の企業と共に取り組みたいという意思を表して水引を用いた。

イベントの目的と主催者としての意思を示すため、日本の伝統である水引を用いた

重要なのはCIガイドラインを守ることではなく、ブランドの意思を正しく認知していただくこと。GEの日本支社である我々は、日本市場のお客様に選んでもらえなければ撤退するしかないため、日本のことをとことん考え、真に貢献したいと思っている。その誠意と意思を表現したもの

ブランディングの意味するところが、「差別化する」「印象付ける」「覚えてもらう」「選んでもらう」ことであれば、人間は感情の生き物であるため、ハートを動かして行動変容してもらうしかない。

耳障りのよい表現だけでなく、時には胸に突き刺さる表現も用いなければハートを動かすことはできないと清水氏。上のイベント開催時にも、最初の1分で参加者のハートをつかみたいと考えてオープニング動画を制作したという。その中では「IS JAPAN READY FOR CHANGE?」という強いメッセージを伝え、GEが参加企業と共に本気で日本の革新に取り組んでいきたいことを印象付けた。

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:「Webのコーポレートブランディングはどうする? GEジャパンのコミュニケーション事例」2017年10月24日開催 月例セミナーレポート 第1部(2018/01/09)

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