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「ロン・ポール効果」は本物か? 選挙におけるネット/CGMの効果を検証する

しょっちゅうウェブを見ている人なら(これを読んでいるということは、その可能性は高いだろう)、共和党の大統領候補ロン・ポール氏に、熱狂的で狂気に近い支持が集まっているらしいことに気付いているに違いない。オンラインの世界で、ポール氏のキャンペーンに触れている例は非常に多い。

実際のところ主流メディアさえも、非常に懐疑的な見方ながら、明らかに「Dr. No」(ポール氏のあだ名)に草の根の支持が急速に集まっていることをようやく認めつつある。たとえばABC Newsは「ロン・ポール効果」を特集し、オンラインで高まっているこのダークホース的候補への支持が、オフラインの世界での支持と報道に結び付くかどうか検証している。

僕はロン・ポール氏支持の増大が、オンラインでもオフラインでも本物かどうか確かめるため、数字を探ってみようと思ったんだ。ロン・ポール氏は、あらゆる層の人々から大きな支持を得ているのか? それとも少数だけど忠誠度の高い(そしてウェブに精通した)人の支持を集めていて、その支持者らがバイラル型政治手法という概念において、他の候補者の先を行っているだけなのか?

※1 一部のRedditユーザーは、Diggがロン・ポール氏に関係するものを自動的に排除していると主張しているようだ。

  • 現時点でRedditのHot 50に入っているロン・ポールネタの数:7
  • 現時点でDiggのTop 50に入っているロン・ポールネタの数:0(※1

頻度はどうあれ、定期的にRedditを読んでいるなら、それこそ石を投げればロン・ポール氏の美徳と統計的勝利(資金調達、討議会に関するオンライン世論調査での勝利など)を賞賛する投稿に当たるというくらいな状態だ。オンラインマーケティング屋なら、DiggやRedditのフロントページに自分の話が載ることの価値(すなわち注目度や獲得リンク数)をよく知っている。でも政治の世界では、この注目がウェブ全体に波及するだろうか?

gtrendspolitics

Google Trendsのデータを見ると、ポール氏は検索数において明らかに大きく伸びている。特に(5月4日からカリフォルニア州で始まった)共和党討議会の時期に急増した。共和党の最有力候補ルディ・ジュリアーニ氏は、このグラフを見る限りかろうじて検索トラフィックがある程度だ。民主党候補のヒラリー・クリントン氏とバラク・オバマ氏は、一年を通じてほぼ同じ検索数を記録している。

これを見ると、ポール氏には幅広い関心が集まっているようだ。5月の討議会で一気に著名になってからも安定して伸びている。しかしながら、結論を急ぐ前に別の指標も見てみよう。

alexapaul

AlexaのデータはGoogleとほとんど同じだ。安定して伸びていて、5月からは民主党候補も上回っている。

直近180日間の「ron paul」に関するブログ投稿数
直近180日間の「barack obama」に関するブログ投稿数
直近180日間の「hillary clinton」に関するブログ投稿数

数度の突発的増加を除けば、このTechnoratiのデータからわかるのは、5月以降「Ron Paul」に関するブログ投稿数は、平均して「Obama」よりやや少なく、「Clinton」よりはかなり少ない(それぞれ縦軸のスケールが違うことに注意)。

最後に、さまざまなソースを使って利用データを出しているCompete.comを見てみよう。

Compete.comに見るロン・ポール氏対Hillary Clinton氏対Barack Obama氏の戦い

ポール氏は予想どおり5月から安定して伸びているが、クリントン氏とオバマ氏にはまだ及ばない。

では、これらを総合するとどうなるか? うーん難しいな。出てきた数字からは、次のようなことがわかる。

  • 討議会での成績といろいろなメディア報道から、ロン・ポール氏は米国民の関心を集めていて、民主党全国委員会の有力候補クリントン氏とオバマ氏の水準に近づきつつある。
  • ロン・ポール氏の熱烈な支持基盤(ポール派)は、戦略的にポール氏のバイラルキャンペーンを構築するのに成功し、その結果彼はオンラインの寵児となり、多くの関心を集めた。
  • Fox Newsなどは、ポール派がバイラルマーケティングに成功したわけではなく、見付けられた限りのあらゆるフォーラム、アンケート、コメントスレッド、ソーシャルメディアのポータルで、手当たり次第スパム行為を働いたに過ぎないという。

どんな切り口であれ、ポール氏は米国政治史上初めて、オンラインでの活動だけで(ねらい通りか偶然かはともかく)政治的な勢いを効果的に得た大統領候補の1人だ。

もっとも彼自身は、このオンラインにおける露出に感動し、また驚いたという。ABCの記事にあるように、「泡沫」と呼ばれる候補について、主流メディアはたとえオンラインの支持基盤や科学的でない調査で驚くべき結果を出しただけに過ぎなくとも、幾度となく取り上げる必要に迫られる。動機は疑念、軽蔑(君のことさ、Sean Hannityさん)、または驚きだか何かはわからないが、主流メディアはロン・ポール氏のキャンペーンが興味あるエピソードだと考えた。そしてそれが、オンラインにいるポール氏の味方が引き出した結果のすべてだ。

記録的な資金調達や、支持の広がり、討議会後の調査での優位、果てはラスベガスのブックメーカーが示す配当倍率の急低下などは、ロン・ポール氏のオンラインでの勢いが現実の世界にも及びつつあることの現れなのかもしれない。

しかしそこには断絶がある。実際には、対面式の科学的な調査で、ロン・ポール氏はほとんど得票していない。2007年3月に行われたGallupの調査では、ロン・ポール氏の支持は有権者の1~3%(4月に3%で、カリフォルニアでの討論会後注目度が急上昇したが10月には2%に落ちた)だけで、共和党の対抗馬の後塵を拝している。最近アイオワ州で行われたAmes Straw Pollでは、連邦議会議員であるポール氏は9.1%の投票を獲得し、7位に入った。トップ(Mitt Romney)からは大きく離されているが、ダンカン・ハンター氏やトム・タンクリード氏など、ポール氏よりは資金が豊富で泡沫でない候補(見方にもよるが)よりも上位だった。

ロン・ポール氏は、ウェブにあまり詳しくない主流の有権者にアプローチできないのだろうか? おそらくそうなのだろう。序盤の予備選挙の調査で、ポール氏は投票者のアンテナにほとんど引っかからなかったようだ……死刑宣告にはならないが、実に難しいハードルだ(序盤の予備選挙での失敗後崩壊したハワード・ディーンのキャンペーンの例がある。それにポール氏は共和党員だ。共和党では調査結果が実際の結果通りになることがずっと多い)。ポール氏のキャンペーンは、オンラインの資金調達で勢いをつけて、先週からテレビ広告を始めた……ニューハンプシャー州で。ここは共和党の予備選挙日程表で5番目の州だ。残念ながらこれは、Dr. Paulのオフラインにおける主流メディアでのキャンペーン活動が、アイオワ州での議員総会の3週間(そして有名4州の予備選挙の)後、そしてスーパーチューズデイのたった2週間前に登場することを狙っているということだ。これは、控え目に言っても、野心的なスケジュールだ。

ロン・ポール氏がオンライン活動でインターネットのスターに昇りつめたり、驚くべき額の資金調達を実現したのは、およそポール派の不断の努力の賜物と言えるだろう。これはオンライン戦略として、2004年のディーン氏のキャンペーンに比すべきものとなり得る。だが、この勢いを実際の得票数に結び付けるには、もう遅すぎるかもしれない。残念ながら、ロン・ポール氏が予備選挙でふるわなければ、評論家の多くはそれを科学的でない調査が粉飾だった証左で、「ロン・ポール革命」は一部の熱狂的でウェブに精通した支持者が作り出した徒花だと結論付ける可能性が高い。全米規模のマーケティングキャンペーンは、オンラインだけでは成り立ち得ない。

ウェブを使った広告キャンペーンは、マーケティング費用に対して最高のROIをもたらすかもしれないが、大統領選挙のように、要求範囲の広いキャンペーンには、主流メディア、特にテレビが、実証済みでおそらく不可欠な媒体になる。これは将来変わるかもしれない。Dr. Paulが行ったようなキャンペーンは、インターネットを使うことで、熱烈かつやる気があり、雄弁で気前の良い有権者に到達できるということを示しており、その変化の先駆けとなるだろう。しかし、ロン・ポール氏がオンラインでの勢いをホワイトハウスの重要な選挙に転換できる候補者になるかどうかは、今後の展開を待たねばならない。

RANDから一言:参考資料が欲しいという人のために、ブログとニュースの検索における比較データを紹介しよう。

Google Blog Searchの結果:

Google News Searchの結果:

コメントで指摘されているとおり、これは肯定的な話なのか否定的な話なのか、検証する方法を僕らは持ち合わせていない。でも少なくともこの記事は、今回の話題について、オンラインでどれくらい活発にやり取りがあるかを示している。

追伸:政治に関わる投稿では、インターネットマーケティングとSEOに話題をしぼってほしい。ポール氏とその支持者の政治的な意味を議論する場は、他にもウェブ上にたくさんあるしね。

用語集
CGM / SEO / キャンペーン / ソーシャルメディア / バイラル / リンク / 認知度 / 選挙
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