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コンテンツ戦略だけでは不十分、その理由は……(後編)

テクノロジではなく「人間」をマーケティングの原動力とし、「より良い企業」を築くために考えるべき点

3回に分けてお届けしてきたこの記事も、今回が最終回となる。ここでは、テクノロジではなく「人間」をマーケティングの原動力とし、「より良い企業」を築くために考えるべき点を見ていこう。→まず前編中編を読んでおく

テクノロジではなく、「人間」をマーケティング活動の原動力にしよう

世界で際だつ存在になっているこういった本物の企業は、私がヘアスプレーのアクアネットを使ってハマーパンツをはいていた頃に両親が働いていた企業とは、ビジネスの方法がまったく異なる。

高度にデジタル化された世界で顧客との関係を築き、つながりを構築し、信頼を得ることに成功している企業は、それがマーケティング戦略だけで得られるものではないことを知っている。

これらの企業は、顧客に対しきわめて人間味のある体験を提示することに成功している。なぜならそれは、彼らのまさに核となる部分から命を吹き込まれている情熱や考え方から生み出されたものだからだ。そして、マーケティング部門だけでなく企業全体でこれを育てている。

社内的には、いかにして部門間の壁を打破し、コミュニケーションをとり、組織を目標に向かって一体化するかを理解しているので、顧客やコミュニティが本当に必要としているものを提供できる。内部の効率化を進めるためにはHipChatやSlackといったテクノロジも使っているかもしれないが、直接向き合うことが最も必要なときに、テクノロジで代用するようなことはない。

目まぐるしく変化する世界で企業が自らの立ち位置を知り、生き残るために必要な調整を施しているなかで、マーケティングはもはや他のチームと切り離しては機能できなくなっている

  • 出荷チームや製品チームは、ウェブサイトチームやソーシャルチームと緊密に連携して、遅延やバグをリアルタイムで顧客に伝える必要があるのではないか?

  • マーケティングチームとエンジニアリングチームは、どちらも、顧客サポートチームに寄せられるフィードバックを役立てられるのではないか?

  • ソーシャルチームとコミュニティチームは、営業チームとの連携で、オンラインでもオフラインでも関係を育むべきではないか?

企業が完全に本物になるためには、内部の実態とはまったくかけ離れた統一プレゼンスを外部に見せて誤解を与えることがあってはならない。

さらに、社内でも社外でも、人々が協業できず、仕事仲間と歩調を合わせることができず、企業の包括的なビジョン達成に協力して注力できなければ、企業がシームレスな体験を提供することなどできない。あなたが顧客との信頼を築かなければならないとするなら、あなたのチームのメンバーにも顧客との信頼を築く機会が与えられなければならない。

チームに対しては、自己管理をして、さまざまな階層でリーダーになれるよう互いの力を高め、より効果的に仲間とコミュニケーションをとるよう後押しするツールを用意しなければならない。組織内部の仕組みを変えると、従業員がより効果的な協業の仕方を見つけ出す機会が得られるのは間違いないが、ずっと広い視点で見ると、企業の軌跡にも影響が及ぶ。

組織全体が、あらゆるタッチポイントで顧客体験に責任を負っている。これはつまり、チームの枠を越えて主体的に協力できる力を従業員に与えることであり、社内のより多くの人々が顧客に注力できるようにするということだ。同様に、従業員が企業の直面している課題を認識して、修正する解決策を見つけ出すため、率先して協力できるということでもある。こういった行動がすべて、利益に影響する。

顧客とつながる方法を見出すのも、企業全体の従業員一人ひとりにかかっている。マックス・レンダーマン氏は著書『Experience the Message』(メッセージを体験する)でザ・リッツ・カールトンの事例を紹介しており、顧客サービスだけでなく顧客データに対するアプローチについても書いている。ドアマンやコンシェルジュは毎日チェックイン名簿を渡され、それを暗記しているという。宿泊客はホテルのスタッフから、個人的に名前であいさつを受ける。

ホテルのスタッフは、宿泊客の好き嫌いや習慣を覚えるなかで、顧客関係管理(CRM)データベースにこれらの特徴を記録していく。顧客は宿泊回数が増えるほど、より当人に合わせた体験が得られるというわけだ。客はまた泊まりに来る。何度も。ザ・リッツ・カールトンの宿泊客は、平均して生涯に10万ドルをホテルに費やすという。

ただし、こうしたデータを持っているからといって、顧客の信頼や関係が構築できるわけではない。信頼や関係を構築するのは、ザ・リッツ・カールトンのスタッフが、宿泊客との1対1の非常に行き届いた個人的なやり取りにデータを生かすからだ。スタッフのトレーニングツールとして役立つその価値のためだ。ホテルの都合で宿泊客を利用するのではなく、彼らの体験をより良いものにするためにデータを生かす使いかたをするからだ。

残念ながら、テクノロジは両刃の剣だ。多大な恩恵を得られるのは間違いないが、一方では企業に、よりリアルで人間的になりたいと貪欲に追求させる原因にもなっている。

私たちは、CRMシステムやマーケティングオートメーションプラットフォームが、適切な時に適切な場所で人とやりとりさせてくれ、売上を生み出す役に立ってくれると考えている。

しかしそれは、機械がすることではない。それは私たちが、人として手に入れるものだ。これらのシステムは単なるツールにすぎず、ツールは解決策にはならない。より良い体験を生み出し、最終的にはブランドがより人間的になる役に立つように活用するべきものだ。

より良い企業を構築しよう

世界の進み方は、企業がどのように自らを形作り、マーケティングするべきかに大きな影響を及ぼしている。

コンテンツ戦略だけでは十分ではない。すぐに成果を挙げようとする既存のマーケティング手法では、人とのつながりが失われていくからだ。

私たちは、自らの影響力がほとんど及ばないカスタマージャーニーを無理やりコントロールしようとしている。テクノロジが顧客との関係を構築してくれると考えているが、これほど真実からかけ離れた見方もない。

ただ、これらは確かに大きな課題だが、大きな機会でもある。消費者や、さらには他のブランドさえもが日々直面している月並みな体験を凌駕するチャンスが得られることでもある。

コンテンツがきわめて重要であることは今後も決して変わらない。コンテンツ戦略を立てるときはクロスチャネル体験全体を考慮しなければならず、そうすることで、使っているツールを指針として、オーディエンスと効果的に本物のやり方で関わり合えるようになる。ただし、顧客が望むような価値ある企業であることを自ら示さなければ、素晴らしいコンテンツを制作するだけではうまくいかない。

企業が本物であるかどうかは、成果の証明が難しいのが特徴だ。目的を持ったブランドを構築して顧客基盤を固めるには、より多くの労力と時間が要る。しかし、これこそが顧客を長くとどめるポイントでもある。顧客が友人に伝えたくなる動機づけになる。しかも、これは競合相手が一晩で構築できるものではない。こうしたことに意欲的に取り組もうとする企業は、今後長く勝利を収めることになるだろう。

こういった企業こそ構築すべき企業だ。群を抜いて優れた企業だ。本物のブランドを構築することに時間を投資すれば、人々の耳に入る。そうなれば、人々の方から探してやって来る。ハマーパンツだって、なんだってそうだ。

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