Web広告研究会セミナーレポート

BtoB企業に必要なデマンドセンター構築とマーケティングオートメーションの役割と考え方

なぜマーケティングオートメーションが注目されているのか、その仕組みや導入のポイントが語られた
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

近年、海外のマーケティングオートメーション開発企業が続々と日本市場への導入を進め、注目を集めている。だが、具体的にどのような機能を備え、何を自動化できるのか、明確に認識できているだろうか。Web広告研究会の2015年10月月例セミナーでは、「『CX』と『BtoB』が今、一番熱い ~カスタマーエクスペリエンスとBtoBマーケティングの基礎講座~」と題し、第一部では、なぜマーケティングオートメーションが注目されているのか、その仕組みや導入のポイントが語られた。

世界標準のマーケティング環境が整いつつある

シンフォニーマーケティング株式会社
代表取締役
庭山 一郎氏

第一部は、「BtoB企業が持つべきマーケティングの仕組みとは」と題し、シンフォニーマーケティングの庭山氏が登壇。「BtoBのデジタルの領域は変化が非常に早い」とする庭山氏は、「デマンドセンター」を中心に話を進めてく。

案件を創出することを「デマンドジェネレーション」と呼び、米国ではこのための組織・部署の「デマンドセンター」が存在するのが一般的だ。その評価軸は、ROMI(Return On Marketing Investment)で測られる。BtoBでは、案件が発生してから成果になるまで数年の時間がかかり、単年度でのROIを出すことが難しいため、年間にどのレベルの案件を何件生み出せたかがひとつの評価指標となる。

このデマンドセンターのマーケティングチームが使うプラットフォームが、「マーケティングオートメーション(MA:Marketing Automation)」だ。そして、MAで創出した案件を営業部長などが管理するプラットフォームが「セールスフォースオートメーション(SFA:Sales Force Automation)」で、この2つのプラットフォームは、米国ではセットで導入されている。これまで、国内では、SFAを先行して導入するケースが多かったが、MAが一般的になることで世界標準のマーケティングを行える環境が整ってきたと庭山氏は説明する。

企業の成長やグローバル化に必要不可欠となるデマンドセンター

営業の機会をつくるのがデマンドセンターの役割になるが、「これからの日本企業にとってデマンドセンターの構築は重要課題である」と庭山氏は話す。

多くの日本企業は、既存顧客とのコミュニケーションを重視した「引き合い依存」の営業体質のため、既存顧客に既存製品を売ることには長けている一方、新製品を既存顧客に売ったり、新規顧客を開拓して売ったりすることが得意ではないからだ。既存客から既存製品の発注が伸びれば好景気になるが、既存取引先の他の事業部に新製品を営業しようとしても、面識がなく、コミュニケーションを取ることができない。新規開拓でも同様だ。

そこで必要になるのがデマンドセンターだ。デマンドセンターが社内の顧客データを統合管理し、Webサイトからの問い合わせや資料請求、直近や過去の営業活動などの情報をとりまとめ、リードナーチャリングを通じて見込み客をスコアリングすることで、有望な見込み顧客の情報を営業に渡していく。これにより、営業は飛び込みではなく、ある程度見込みのある潜在顧客へと効率的に営業できるようになる。

また、既存製品を新たな顧客に販売する場合は、どのような企業課題をどのように解決する製品なのか、製品事業部とディスカッションし、企業属性情報を絞り込む。その上で、そのような企業の社員が多く集まる展示会やセミナーはどれか、興味を引く事例は何かを考えていく。これらの企業属性や、過去および直近の行動解析をスコアリングして導き出されるのが潜在顧客となる層だ。

保有する見込み顧客のデータを統合管理して案件につなげる

庭山氏は経験上、ナーチャリングを経ない電話営業などのコールドコールのアポイント率は1%以下であるが、ナーチャリングによって、上記のように3軸でスコアリングしたリストに対してのアポイント率は20~30%となると説明する。このように既存顧客への新製品の営業や、新規顧客への既存製品の営業の成功率を高めるためには、デマンドセンターの存在が不可欠であり、これからの日本企業が成長し、新規市場に出ていくためには必須となると庭山氏は述べる。

案件を作るマーケッターと案件と受注を管理する営業

デマンドセンターでは、「案件をつくって安定供給するマーケティングのファネル」と「営業案件を受注するまでを管理するファネル」という、サイズの違う2つのファネルを連結することがセオリーになる。これを実現するためには、2つのファネルのそれぞれにノウハウを持った人材と、プラットフォームが必要だ。

案件を安定的に提供する緑のマーケティングのファネルと、営業案件の受注までを管理する赤のファネルの2つが必要

案件管理のノウハウを持った人材はどの企業にもいて、SFAを利用している企業もある。しかし、案件をつくって安定供給するノウハウを持つ企業は少ないため、MAを導入する前にどのようなマーケティングを行うかを決めておく必要がある

案件を創出するのがデマンドセンターの役割

では、マーケティングやセールスのどの場面でデマンドセンターの効果が出てくるのだろうか。庭山氏は、売り上げの方程式として「売上=案件数×決定率×案件単価」を示した。いずれかの変数を上げれば売り上げは上がるが、案件単価を上げると他の2つの変数にマイナスの影響が出てくる可能性がある。

また、決定率を上げるために営業コンサルやSFAを導入してきた企業は多いが、日本企業はもともと決定率が高いため効果が出ているとは言いがたく、案件数が少なければ決定率を上げても効果が薄いのだという。そこで案件を増やすためにデマンドセンターを設置し、増やした案件の決定率をSFAなどで上げることによって、売上増を目指せると庭山氏は説明する。

シンフォニーマーケティングでは、前述のように2つのファネルに分けてデマンドセンターを捉えているが、庭山氏は、2つのファネルで担当者の気質がまったく違うため、分ける必要があったと説明する。営業は狩猟型の気質を持って案件を取りに行くが、デマンドセンターで必要なのは農耕型のBtoBマーケティングであり、展示会やWebで種を撒き、数年かけて案件を育てる必要がある。

データマネジメントでマーケティング活動を正しく評価する

デマンドセンターでは、過去に展示会で集めた名刺や営業名刺、WebやCRMで集めた情報をデータマネジメントして統合し、企業と個人のひもづけたり、競合や得意先などの企業属性情報を整理したりしていく。データマネジメントには、主に次の4つのステップがある。

  • 名寄せ
  • 企業と個人のひもづけ
  • 競合企業など、非営業対象リストの排除
  • 営業活動に役立つ属性情報(年商、従業員数など)の付与
社内にちらばった顧客情報を統合するデータマネジメント

これらの情報は、企業内の各部署で管理されていたり、バラバラな場所に散在したりし、データの形式もさまざまだ。これらを統合してデマンドセンターで使えるマーケティングデータとするのには大きな苦労が必要だが、統合できれば、展示会や営業などの、どの場面で集めた情報が全体の何割を占め、アポイント率が高い情報はどれかが見えてくる。

たとえば、「これまで活用できていなかった展示会で集めた顧客情報が、実はアポイント率が高く、案件につながりやすい」といったことがわかるようになってくる。成立した案件から逆引きし、効率的なマーケティング活動を見直すことも可能だ。

データを統合した後に必要となるのが、ナーチャリングのためのコンテンツマネジメントだ。製品に興味がありそうな人を集客できるコンテンツや事例を集めたWebサイトを運用し、招待メールを送る。そして、どの会社のどのような人がメールのどのコンテンツに反応してWebサイトまで閲覧したのか、また資料請求をしたのかなど、スコアリングする。

これらのスコアリングを分析して、行動解析や属性で絞り込んでいけば、統合したデータの中のどの人物にアポイントを取ればよいかが明確になり、見込み客リストをもとに案件を生み出して営業活動を行えるのだ。

日本型デマンドセンターのイメージ

デマンドセンターによって、最前線の営業マンや特約店を後方支援して、よりよい案件を渡すことができる。そのためには、正しいマーケティングを設計する必要がある(庭山氏)

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:
「BtoB企業に必要なデマンドセンター構築とマーケティングオートメーションの役割と考え方」 2015年10月23日開催 月例セミナー 第1部(2016/01/08)

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