企業ホームページ運営の心得

テレビCMだけじゃない。ライザップ躍進の裏にWebの力あり

EC事業の経験を活用し、ネット上でも効果的な施策を打ち出しています
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

※8/7更新 札幌証券取引所の名称をアンビシャスに修正いたしました。

心得其の419

ライザップの成長力

phototechno/iStock/Thinkstock

事業開始から3年で100億円の売上を達成したダイエットジムの「ライザップ」。香取慎吾、赤井英和ら、有名タレントを起用したテレビCMのイメージが定着していますが、成功の影にWebがあることはあまり知られていません。

彼らは巧みにWebを利用し、今の成功をたぐり寄せたのです。いえ、Webがなければ、今のライザップは生まれていないと言っても過言ではないでしょう。Web活用における「ライザップメソッド」は、多くのWeb担当者にとっても、学ぶところがあります。

そしてなにより本稿は、お盆休みに帰省した際、あるいは学生時代の友人と旧交を温める際、「Web担当者」として自慢げに語ることができるトリビアです。「知ってた? ライザップってさあ」というように。

快進撃は楽天から

ベテランWeb担当者なら、ライザップという名前にピンと来なくても、「健康コーポレーション」という名前に聞き覚えがあるかもしれません。

健康食品の通販会社として2003年に産声を上げ、2004年に楽天市場に出店します。成長の起爆剤となったのは、豆乳とおからを使った「豆乳クッキーダイエット」の大ヒット。2006年に札幌証券取引所のアンビシャス市場へ上場してからは、M&Aを繰り返し「健康帝国」を拡大していきます。

そして3年前の2012年、ライザップを始めたときに駆使したのは「豆乳クッキー」でのノウハウでした。

費用対効果が合わない

私が初めてライザップの存在を知ったのは、開始間もなくの3年ほど前。鮮明に記憶しているのは、テレビCMの内容です。

ローカル放送局だったと記憶していますが、不特定多数に大量販売できる通販と違い、表参道に1店だけしかない、完全個室のパーソナルトレーニングではキャパシティに限界があり、テレビCMにかかる費用から、「採算性」に首をひねったからです。

しばらくして、新聞折込チラシにライザップを見つけたときには、すでに多店舗展開しており、「大資本」を背景にしていたのだと気がつきます。みなさんもご存知の「大量CM」が始まるのは、このもう少し後です。

ダイエット方法に個人差は激しく、どんな秀逸なメソッドであっても不平不満の声は上がるものです。「ビリーズブートキャンプ」において、フィニッシュに「ビクトリー」と叫ぶ体力があれば太っていないだろうという、そもそも論のツッコミに代表されます。ところがブレイクした直後のライザップへの不平不満を、Web上で見つけるのは困難でした。

ネガティブキャンペーン対策

「ライザップ 評判」「ライザップ 不満」で検索すると、ずらっと並ぶのは礼賛記事ばかり。グーグルが表示する見出しは、検索キーワードに添ったネガティブなモノですが、クリックした中身を見ると、すべてほめているのです。

「不満をぶちまけます(仮)」と宣言したブログは、「そのつもりだったけど、やっぱり最高」や、「本当の評判は?(仮)」と掲げながらも、本文では批判者を攻撃し、ライザップを擁護します。

ネガティブなキーワードとの組み合わせで、ポジティブなサイトを量産するのは風評被害対策の1つの手法です。

そこで疑ったのが「自作自演」です。見つけたブログのドメインには、「rizap」と織りこまれているものが多く、公式ブログと錯覚するものまでありました。ところが、ドメインの公開情報にあった名前を調べてみて結論に至ります。彼らは「アフィリエイター」だったのです。

有力アフィリエイターを支援者に

アフィリエイターとは、提携企業の商品やサービスを紹介し、一定の成果によって報酬を受け取る人々。有力アフィリエイターのなかには、年間数千万円を稼ぐ人もいるといいます。

ライザップを運営する「健康コーポレーション」は、健康食品のネット通販で成長した企業です。「豆乳クッキーダイエット」はもちろん、その他の商品でもアフィリエイターを利用しており、いわば彼らの力によって成長した企業と言っても過言ではありません。そしてライザップでも彼らを活用していました。

アフィリエイターは「売る」ためのノウハウを持っています。どんなキーワードが人を集めやすく、どう誘導すればバナー広告をクリックしたくなるかを研究しているプロです。そして力量のあるアフィリエイターの数は限られています。つまり、アフィリエイトを販促に利用するには、有力アフィリエイターを集めることが肝心なのです。

ダイエットのノウハウがある

『週刊新潮(2015年6月18日号)』がライザップの企業体質を問うた告発記事には、専門家の声として「広告宣伝費が売上の20%に達しているのは異常」という指摘がありました。

しかし、外注費の性格が強いながらも、アフィリエイターへの支払いは「広告宣伝」にカウントするのが一般的で、その報酬としての20%なら突出したものではありません。経理処理における見解の相違で、Web系のビジネスに疎い専門家の目には、異常に映ったかもしれませんが、「広告宣伝費」の高止まりは、アフィリエイターを多用するネット通販会社にとっては珍しいことではありません。

ここまでの「ライザップネタ」をまとめると以下の3点。

  1. ライザップの運営は健康食品EC会社
  2. アフィリエイターは風評被害の防波堤になる
  3. アフィリエイトの活用は有力アフィリエイターを集めること

ライザップの躍進は、Web担当者にさまざまなヒントを与えてくれますが、ここで字数が尽きました。東証一部上場への鞍替えが噂されるライザップは、自社の記事にセンシティブになっているという噂をメディア界隈で耳にします。

本稿に圧力がかからなければ、次回は「ライザップの広告の秘密」について踏み込むかもしれません。

今回のポイント

手に取れるモノでなくても通販ノウハウは使える

アフィリエイターの活用にはコツがある

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